雨の日のぽろんぽろん

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作者:セイ
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 雨の日のぽろんぽろん(約800字)




 夏の終わりに、ハスボーは旅をしていました。ざあーざあーと雨の降りしきる昼下がり。見渡す限りのひまわり畑をすいすい歩いていきます。嬉しくてもぽろん、悲しくてもぽろん。あめうけざらはお空の涙を湛えて。垂れ込めた雲からぽつり、俯いた花びらからまたぽつり。ああ。どうしてひまわりたちは。雲の上の一点だけに恋い焦がれるこの花々は。雨から目を背けようとするのだろう。見上げたくても見上げられない空があるのに。寄り添いたくても寄り添えないあの子がいるのに――
 ぽろろん。ぽろろん。丘の果てから。青っぽい霧の向こう、朧に浮かび上がったそれは、泣いているポケモンの姿。親友のメッソンでした。「メッソンちゃん」と、頭の葉っぱにメッソンを乗せて、ハスボーは続けます。
「心配したよ。急にいなくなっちゃうんだもん」
「ごめんね、ハスボーちゃん」
「大丈夫? ずうっと、ここにいていいんだからね?」
「ありがとう。でも、ぼくが泣いて、お空がもらい泣きしちゃったら。ひまわりさんたちも悲しんじゃうんでしょう? ぼく、泣いちゃいけないんだなあって。ほら、ハスボーちゃんのことは大好きだけど、ここにいたら、また泣いてばかりになっちゃうから……。だから、必死でこらえて、悲しくても笑っていようって決めて。けど、結局泣き出しちゃって……それが何だか申し訳なくって……」
 ぽろろん。ぽろろん。目を閉じて。
 夏は、ゆっくりと閉じようとしていました。花柄の重みで傾いたひまわりたちが見せる、生き生きとした黄色い笑顔。弱りゆくその縁は、仄かな真珠母色に染まっていました。半ば鮮烈で、半ば色褪せた響きを伴って。2つの色や気持ちがお互いに受け入れ合っている状態。それは、衰えゆく夏の美しさでもある。悲しいことかもしれないけれど。
 ぽろろん。ぽろろん。絶え間ない移ろいの中で。
 泣いたっていいんだよ。この大きすぎる頭の葉っぱは。きみの涙を受け入れるためにあるんだから。

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