ひゃくれべハクリュー

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作者:ギガヤンマ
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読了時間目安:4分
「ここで……セレクトBB!」

Lv.100。

ポケモンとしての成長の頂点。

強さの頂点。

私は今、その頂点に登った。

「おお!すげえ!ホントにできた!」

………全く不本意な形で。

私のトレーナーは、謎の禁断の魔法か、はたまた別の何かを使い、相棒である私のレベルを100まで上げた。

「あれ……?……嘘だろ!?」

彼は愚かで、浅はかだった。このような禁断には弊害が付き物であることを理解していなかった。

「進化できない………!?」

そう。私は頂点へと登ると同時に、そこから上へと飛び立つ翼を得られなくなってしまったのだ。

~~~~~~

「ご、ごめんよ、ハクリュー……君はカイリューに進化できないみたいだ……」

「……………」

こいつは馬鹿野郎だ。私の人生を好奇心だけで踏みにじった。

「………怒ってる、よね?」

私は怒りと軽蔑を込めて彼を睨み付ける。いつでもお前を殺せると、強い意思を込めて。

「……悪かったよ! 悪かったから! 僕にできることならなんでもする!」

なんでもする。その交渉条件に、望みが一つ、ポツンと沸き上がるが、すぐに忘れようとした。

「ね?お願いだってば……」

彼はどうすれば良いのか分からないのだと思う。
私もどうしようも無い状況にある。

何をしても外すことのできない強さのリミッターと共に生きていく。

沸き上がる不安に侵食されていく私の脳を、ふとした彼の一言が遮る。

「……じゃあさ」

「………?」

「俺、ハクリューをバトルで活躍させてみせるよ!」

「…………」

訝しげな視線を送る。こんな状況でも、私の心の1割が期待に踊っているというのが悔しい。

「これ、見てよ」

そう言うと彼は携帯電話の画面を私に見せた。
紫色の光を放つ石が映されている。

「“しんかのきせき”だよ。これを進化前のポケモンに持たせると……」

すると彼は携帯に動画を映した。

「ほら見ろよ!すごくないか?これ」

その輝く石を片方の口にくわえたジヘッドが、相手の攻撃を容易く耐えていた。

私の心のもう2割程が期待に踊り始めた辺りで、彼は携帯をポケットに仕舞った。

「……………」

彼が突然黙る。何かを思い出したのかに見える。

疑問の視線を向けようとした瞬間。

「俺、できる事ならなんでもするって行ったけど、撤回させて」

「…………?」

疑問符が一つ、二つと沸き上がり、三つ目が沸き上がると同時に……

「やっぱ俺、どうしてもハクリューと一緒にいたい」

戯言を口にした。

馬鹿らしい裏技の実験台にしておいて、まだ私との友好を求めると言うのか。

「俺、ずっとカイリューが見たかったんだ。それで……」

それでお前は失敗した。私に一生消えない失敗を植え付けた。

「早とちりして……やらかして………でも!」

「ハクリュー!君の姿でも良いって思えた! だから君をバトルで活躍させる方法を必死で探した! 君のために!」

彼の声に珍しく心が入る。
君の姿で良い。君のために。
そんな簡単な言葉にでも、少し胸の底が震えた事を、認めたくなかった。

「こうしてじゃないと出逢えなかった君の姿を大切にしたい!」

何故だろう。
この男は失敗の言い訳をしているだけじゃないか。
それなのに、私は………!!

「リューッ……」

覚悟を決めた。自分でも信じ難い感情を受け入れた。

私は彼の身体に絡み付きながら這い上がり、その首を軽く絞める。

「ぐぉっ!? だ、だよな……許してくれない……よな……」

そして、絞めを緩める。

「………え?」

仕方なく付き合ってやる。そう思っている私がいる。
そんな私を卑しいと思う私もいる。

でも今は、そんな事忘れて。

恥じらいを捨てて。

私の口を…………

彼の耳へ………

近づけて……

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