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ホウエン地方に住んでいた私は、ガラル地方へ引っ越すことになった。
パートナーのアブソルとは何やかんやあったが、この子との生活は楽しかった。
けれども、ガラルには『入国制限』と呼ばれるものがあった。
そしてアブソルも、その対象となるポケモンだったのだ。








「ホウエン地方から来た、長崎雪奈ながさきゆきなさんです」
先生が私を皆に紹介する。でも、話したくない、目立ちたくない。
けれども、これは転校生としてこっちに来た私には、どうにもできなかった。
「あ…あの…、なが…長崎…雪奈です…」
詰まりながらも自分の名前を言い、席を探す。
出席番号は、このクラスの一番最後だ。席も、廊下側の一番後ろ。
席に着くと、早速、地味な顔の男の子が声を掛けてきた。地味な顔だから、黒い制服が似合っている。
「君、転校してきたんだ。僕は風雪ふゆき。パートナーポケモンはまだいない。これからよろしく」
落ち着いた、優しい声。これでイケメンだったら最高なのに。と思ったところで、風雪くんの顔が地味なことは変わらない。
そんなことよりも友達を作るほうが先だ。アブソルがいない寂しさを受け止めてくれそうな人。
まず、風雪くんとは仲良くなっておこう。
「風雪くん、こちらこそよろしくお願いします」








転校してから一週間がたっても、寂しさは変わらなかった。
私がため息をついてばかりだったので、風雪くん以外に友達もできず、時間だけが過ぎていった。
それだけだった。
さすがにこれでは風雪くんと友達になった意味もないので、放課後に冬樹君と遊んでみることにした。
「雪奈、おまたせ」
私服姿の、風雪くん。制服とは違い、白中心の服装だが、相変わらず地味だ。
「こっちこそ、早すぎたかな。ごめん」
対する私は…同じく地味。もともと目立つことは好きではないから、自然と普段着も地味になった。
「風雪くん、集合したはいいけど、何するの」
「ワイルドエリアに、行こうかな」
「ワイルドエリア!?」
私は驚いた。
風雪くんは軽々しく言ったが、そこまでは歩いて2時間。とてもじゃないけど、今日中には行ってこられない。
「安心して。頼むよ、トゲキッス」
「どうしたの。パートナーポケモン、いないんじゃなかったの」
「このためにママから借りたんだ。さあ、乗って」
そういいながら、風雪くんは、トゲキッスの背中に乗る。まさか、空を飛ぶのだろうか。落ちないといいのだが、心配だ。
「大丈夫。このトゲキッス、特性は強運だから」
凶運の間違いではないのだろうか。不安になりながらも、風雪くんの後ろに乗る。
トゲキッスは、一気に空へ飛びあがった。








「そろそろパートナーポケモンが欲しくてね。ここで、そのポケモンに会えるんだ」
「そうなんだ」
確かに、ここ、ワイルドエリアには、たくさんのポケモンがいる。風雪くんの欲しいポケモンも、いるかもしれない。
「どんなポケモンが欲しいの」
「え~と、緑色で、地面タイプで、空飛んでて」
この特徴を持つポケモンは、少なくとも私の知る中では、一種類しかいない。
「フライゴンのこと?」
「そうそう、どこにいるのかな」
風雪くんは、一人で歩き出す。
すると、突然、風雪くんの目の前に、フライゴンを連れたおじいさんが現れた。
「今日も来たか、少年」
おじいさんと風雪くんが当然のように会話をするが、私にはあまりよくわからなかった。
「この人、誰」
「このあたりじゃ有名なフライゴン使い…」
「じゃがもう、この歳じゃ。じゃからこの少年に譲ろうかと思っておるんじゃ」
おじいさんは、一度、話を区切る。そして大きく息を吸い込み、力強く言った。
「それ相応の強いトレーナーでないといかん。わしと勝負するのじゃ」
「わかっています。そのために、ママからもう一匹借りてるんです。ドラパルト!」
ドラパルト。ツノの中にドロンチが入っている。なかなかかわいい。
「効果抜群技とダイマックス禁止。それがおぬしの提案したルールじゃが、それでいいのじゃな」
「はい、大丈夫です」
「早速、フライゴン、雷パンチじゃ」
おじいさんの力のある声と共に、ドラパルトの目の前にフライゴンの拳が迫る。
「ゴーストダイブでかわせ!」
風雪くんも負けじと声を張る。ドラパルトもぎりぎりで隠れた。
「この時間も利用するんじゃ。竜の舞」
その舞は美しかった。竜を極めた、そんな舞。
ほかのポケモンには真似のできないような、とても美しい舞だった。
「ドラパルト、そこだ、ゴーストダイブ」
竜の舞を使ったフライゴンは、それによって上昇した素早さで、攻撃を回避しようとする。
しかし、フライゴンは逃げきれずに攻撃を受けてしまった。
「なかなか速いのう。じゃが、負けるものか。フライゴン、地ならしじゃ」
地面が揺れ始める。それは少しづつ広がり、ドラパルトも巻き込んだ。
「ソーラービーム」
フライゴンは、まともに動けないドラパルトに近づき、光を集め始める。すると、その力は、異常な速さで溜めるまっていく。
パワフルハーブ。溜めが必要な技もすぐに使えるようになる道具だ。
ソーラービームは、相性としてはあまりよくはない。だが、雷パンチと地ならしを受けているドラパルトにとどめを刺すには十分だろう。
「ドラパルト、かわせ!」
ドラパルトは、その掛け声で攻撃をかわす。その動きは、踊っているように見えた、いや、踊っていた。
フライゴンと比べるとぎこちない動きで、まだ不完全だったが、それでも、美しく、踊っていた。
竜の舞。この技を覚えるのはフライゴンだけではない。もちろん、ドラパルトもこれを使える。
気づけば、私は涙を流していた。この二匹の踊りに、感動したのだ。
敵をも魅了する踊りと、負けじと追いかける踊り。それが私の心に、鋭利な刃物のように、刺さった。痛みを感じるほどに、感動した。








結論から言うと、風雪くんは、負けてしまった。
攻撃をかわしたのはいいものの、そこに雷パンチが食い込み、ドラパルトはやられたてしまった。
もちろん、フライゴンを譲り受ける権利は得られなかったが、風雪くんはドラパルトをパートナーにすることを決めた。
彼も、パートナーポケモンを手に入れた。
けれども、私の、パートナーとの再会だけは、まだ叶っていない。
私は、結局一人なのか。
今日は学校を休み家でテレビを見ていた。
「お昼のニュースをお送りします」
ニュースキャスターが告げる。もうこんな時間か。
テレビから目を逸らし、今度は手に持ったロープを見る。どうせなら、気が変わらないうちに。
ニュースなんか見ていても、アブソルと会えないのは変わらないのだ。
…そう、思っていた。
「11月の制限緩和で、新しく『入国』できるポケモンは、チルタリス、トドセルガ、ジーランス…」
ニュースキャスターが、ポケモンの名前を言う。
そんなもの私にとっては、何の意味も成さない。
いや、成さなかった・・・・・・。この時までは。
「ガブリアス、アブソル、メタグロスなどです」
一瞬、聞き間違いかと思った。
何度も確認した。スマホでも調べた。
本当だった。あと数か月で、また、アブソルに会えるんだ。
心の底から喜んだ。そんなに元気なら学校に行きなさい、と、母に怒られた。


アブソル。
一人にして、ごめんね。でも、また、会えるよ。
11月には、迎えに行くから。
その時は、また、遊ぼう。
そういえば、あなたも。
フライゴンやドラパルトが竜の舞を使えたように。
あなたも剣の舞を使えたよね。
ガラルに来たら、見せてほしいな。
きっと、誰のどんな舞よりも美しいから。
これからもよろしくね。


ロープは窓から投げ捨てた。

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