大切なカード

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作者:悪戯な秋雨
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「あれ? ない! ない!」


 たっくんが、わー!っと叫んだのは、お友達のゆーくんと一緒に児童館でたくさんあそんで、おうちに帰ってきた時でした。


「どうしたのたくま、大きな声なんか出して。」


 たっくんのお母さんが、大きな声をきいてたっくんにたずねます。


「ぼくのカードがなくなっちゃったの! ポケモンのカード!」


「ポケットの中はさがした? バッグは?」


「全部さがしたよ! でもないの!」


 その場でぐるぐると回ってたしかめながら、たっくんは答えました。お母さんは少し困った顔をしています。


「いちばん最後はどこで見たの?」


「ゆーくんとあそんでた時は持ってたんだもん! 帰るときにちゃんと見たもん!」


「じゃあやっぱりバッグの中に入ってるのかもね。」


 もう一度見てみなさいと言って、お母さんは夜ごはんを作りにキッチンに戻ってしまいました。たっくんはもう一度バッグを見てみますが、やっぱりカードはありません。


 なんどもなんども自分の持ち物を見ているうちに、たっくんはだんだん悲しい気持ちになってきました。見つからないカードは、キラキラの、ゆーくんが自分にくれた大切なカードだからです。


「どうしよう……。見つからなかったらゆーくんにゼッコウされちゃう!」


 もしかしたら児童館にカードを置いてきてしまったのかも。そう思ったたっくんですが、もう取りに行く時間はありません。夜ごはんのいい匂いがたっくんの部屋にも流れてきました。今日はたっくんの好きなとりのからあげです。





 夜ごはんの時も、たっくんの心はもやもやしたままです。いつもなら大好きなからあげも、今日はぜんぜんおいしくありません。


「どうしよう、ホントに見つからないよ……。」


 ゆーくんからもらった大切なカードは、やっぱりどこをさがしてもありません。お部屋のどこにも、キラキラ光る場所はありません。


 そのうち、たっくんはねる時間になってしまいました。もうさがしている時間はありません。


「明日学校に行ったら、ゆーくんにあやまらなきゃ……。」





 翌日、ランドセルを背負ったたっくんは、気まずさといっしょに学校へ行きました。いつもと同じなら、もうゆーくんは来ているはずです。


「ゆーくん、いるかな。」


 いっしょに登校してきた友だちとお別れして、たっくんは自分の教室へ向かいます。教室のドアを開けてゆーくんをさがします。


 いました。ゆーくんは教室の真ん中あたりで別の友だちとおしゃべりをしています。たっくんが教室に入ると、ゆー君がそれに気がついて、こっちにやってきました。たっくんはちゃんとあやまる事ができるでしょうか?


「ゆ、ゆうすけ、あのね。」


「たくま! 昨日はありがとな! すげえ楽しかった!」


 ゆーくんはたっくんより先にお話を始めてしまいました。たっくんには少し大変な時ですが、たっくんはなんとか、勇気をふりしぼります!


「ゆうすけ、ごめん!」


「ど、どうしたんだよたくま。」


「ぼく、ゆうすけからもらったポケモンのカード、なくしちゃったんだ。」


 たっくんは、なんとか勇気をふりしぼってあやまることができました。でも、それをきいたゆーくんはどこかぽかんとした顔をしています。


「あ、あのカードか!」


 するととつぜん、ゆーくんは何かを思い出して、自分のバッグを取りに机にもどりました。帰ってきたゆーくんは、手に何かをもっています


「これだろ? 昨日帰ってデッキ作ってたら出てきたんだよ。まちがえて持って帰っちゃってたんだ。」


 そう言ってゆーくんがたっくんに見せたのは、たっくんが無くしたと思っていたあのカードでした!


「俺の方こそごめんな? すぐ連絡できれば良かったんだけど、あのあと塾に行かなくちゃいけなくて。」


「ううん! いいんだ! ゆうすけにもらったカード、見つかってよかった!」


 そう言いながら、たっくんはゆーくんからカードを受け取ります。大切なキラキラのカードは、最初にゆーくんからもらった時と同じで、きれいにきれいに光っています。もう絶対に、なくしたりはしません!


「ねえ、ゆうすけ。」


「ん? なんだ?」


「今日もあそべる?」


 たっくんのその言葉に、ゆーくんは目をかがやかせます!


「お、いいな! 俺も昨日から2つもデッキ作ったんだ。塾は休んでも全然問題ないし、今日も遊ぼうぜ!」


「いいの?!」


「もちろん! 今日は勝つぞ!」


 その時先生が入ってきて、ゆーくんは自分のつくえにもどりました。たっくんも先生に言われて自分のつくえに行きます。もうその顔には、家を出るときに持っていた気まずさはありません!


「今日もいっぱいあそばなきゃ!」


 大切なカードをしっかりポケットにしまって、たっくんはうれしそうにほほえみました。


 たっくん、ちゃんとあやまれて良かったね!




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