私たち、結婚します。~お母さんへ~

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 この作品を読む前に「とりあえずキスだけしようか?」「闇の自分に負けないで」を読むことをオススメします。
 すっかり僕らの街も緑が映える季節になった。青空に浮かぶ白い雲、太陽の光がとても眩しく感じる。若干厳しい表情をした夏が近いんだなと感じる……………そんな5月の第2日曜日のことだった。


 「ココく~ん!今日はどこに行こうか?」


 麦わら帽子を被って日傘を射すという…………おおよそ中学生とは思えないくらい大人びたオシャレをして登場したのはキレイハナ。バレンタインデーに気持ちを伝えてからずっとそばにいてくれる僕の彼女だ。ちなみに“ココ”とは、モココである僕のニックネーム。ゆうひポケ中学校3年生だ。縁あってキレイハナと同じクラスにもなった。


 「……………今日は母さんの命日なんだ。キレイハナにはいつ伝えようかずっと悩んで結局言えずじまいだった。ゴメン………」
 「そうだったんだ………」


 僕の言葉にキレイハナが途端に沈んだ表情へと変わる。それを見たとき、ちゃんと伝えることは伝えるべきだったと僕は後悔する。しかし彼女は言った。


 「お母さんに会わせてもらっても良い?…………伝えたいことがあるの」
 「え?………べ、別にいいけど」


 その言葉に僕の方が逆に驚いてしまう。でも特に断る理由も無いので、彼女も母のお墓参りに同行させることにした。





 「ここが…………」
 「そう。ここが僕の母さんの墓」


 ゆうひタウンを西側郊外に霊園、“れいえんのぞみ”は存在する。ここを抜けると海岸という丘陵地帯。東側には隣町の“あさひタウン”に跨がる大きな森、“かがやきのもり”が存在するため、海側に墓地を作ったという訳だ。ここはカントリー公営霊園となるため、各地から墓参に来るポケモンが集まる。


 「うちの母さんはガンだったんだ。僕が小学校3年生のときから。少ししてから入院しちゃってね。中学校入学してすぐに死んでしまった。でもたまに面会に行くと無理して笑顔を作るくらい…………それくらい変に優しすぎる人だったんだよ………」
 「そうなの……………」


 キレイハナは母さんの眠る墓に向かって手を合わせる。僕も少し遅れて母さんに手を合わせる。


 「僕が御守りにしてる“いのちのタネ”。前に放したように、これは母さんの形見。小さい頃泣き虫だったからさ、僕。強くなれるようにって渡されたんだ」
 「それでそのお母さんの後押しもあって、私に気持ちを伝えられたってわけね?」
 「うん、あのときは本当に強引になってゴメン………」
 「なんで謝るの?」
 「あれで良かったのかなぁって………。ちゃんと君の気持ち汲み取れてなかったし」
 「汲み取れてなかったら今ここで一緒にいないんじゃない?」
 「ハハハ、そうだよね…………」


 僕とキレイハナはそんなイチャイチャしたやり取りをする。


 「ところでキレイハナは何を伝えたいんだい?母さんに」
 「ありがとうございますって」
 「え?」
 「お母さんがココくんに渡した御守りのおかげで、私は物凄く優しい方と巡り合えて………幸せですってね」
 「キレイハナ…………」
 「これから私がお母さんの代わりに、ココくんの苦しいときの支えになれるように頑張りますからって………約束したの」
 「そうだったんだ…………」


 キレイハナはそのように恥ずかしそうに笑っていた。そして驚きの言葉を口をしたのだった。


 「ココくん。私、学校卒業したらココくんと一緒に暮らすね」
 「え!?」
 「あなたと結婚する…………。決めたの!その方が幸せになれる気がして…!!」
 「ちょっとちょっと!話が早すぎるよ!もうっ!君はいつも強引だなぁ!!」


 僕は顔を真っ赤にしてしまう。でも彼女は気持ちを変える様子はなさそうだ。なぜなら、


 「お母さん、見てて下さいね。私がココくんを幸せにしますから」
 「何なんだよ~………」


 あの日護るべき存在なんだと誓って告白した相手は、すっかり僕より強くなっていた。でも嬉しい…………。そこまで僕に気持ちを寄せてくれていたことが。


 チョコの無いバレンタインデー、御返しの無いホワイトデー、そして花や感謝の気持ちを渡すべき相手がいない母の日。


 君と過ごす特別な日って何だか変な感じ。





  
 「母の日」短編小説、いかがでしたか。楽しめていただけたら幸いです。

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