ライジング!

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作者:TaKa
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読了時間目安:63分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

ポケモンだけが暮らすベーア大陸。すべてのポケモンは自然の力を借りて、魔法を使うことができました。魔法はポケモン達の生活を便利にしてゆき、皆は幸せに暮らしていました。


50年前までは。

50年前のある日、謎の影が太陽を覆い被さってしまいました。太陽が闇に覆われて日光が当たらなくなり、光を操る光魔法と、土や植物などの自然を操る大地魔法の力が衰えていきました。逆に、闇を操ることができる闇魔法の力が強くなりました。しかし、「俺たちはやってない」と闇魔法を扱うポケモン達が無実を訴えましたが、疑惑は深まるばかりです。
太陽がなければ24時間夜です。植物が育たず食糧難になってしまいます。
大地魔法使いや光魔法使いのポケモン達の不満は募ってゆくばかりでした。
その不満を解消するために、リヒトシティに住む18歳、エレキブルのブリッツは、上空高くに太陽の代わりとして50年間光を照らし続ける強力な魔法を放ちました。仮の太陽ができたことで、植物は育ち、争いは避けることができ、大陸の危機は回避することができました。
ブリッツはその後、町の長となり、リヒトシティ英雄として称えられました。
「おしまいおしまい。」
そう言ってバグフーンのシャーンは薄い本を閉じた。

「あ~ッ、昔話はもうウンザリだ。やめてくれ。その話は小さい頃から1000回は聞いたよ。」
マグマラシはため息をついた。
ベッドに入ってもう寝ようと思っていたのに母さんのしつこい読み聞かせのせいで目がパッチリになってしまった。
「ジン、二十歳の誕生日おめでとう。」
「えっ、もう日付変わってるの。」

午前0時、時計のがぁんという音が響き、マグマラシの青年、ジンは今日で二十歳の誕生日を迎える。ジンの両親はリヒトシティの長、父はエレキブルのブリッツ、母はバクフーンのシャーン。町の長の息子ということもあり、他の誰よりも勉強や魔法の特訓をさせられた。そのおかげで光魔法ならたぶん自分が一番デキると思っている。
エアツェールにおいて右目の色はそのポケモンがどの魔法を使うことができるかを示している。大地の魔法であれば橙色、海の魔法は藍色、空の魔法は水色、光魔法は銀色、闇魔法は黒色だ。その色が濃ければ濃いほど魔法の実力があるということだ。住んでいるリヒトシティの中で一番銀が輝いているのはジンだった。


目が覚めてしまったジンはベッドから飛び出して外に出た。外は相変わらず晴天だった。太陽の光がさしてまぶしい。午前0時を過ぎても太陽が顔を出していた。ブリッツが上空に仮の太陽を作ったせいでこのベーア大陸は24時間365日ずっと昼だ。天気は晴れと雨の2つしかない。昔は雪の降る日や真夏日もあったそうだ。今では太陽が同じ位置にいるから気温は変わらない。そしてジメジメした雨が降る。窓が湿気で曇ったりして最悪だ。

そんな眩しい空をジンは眺めていると母さんが近づいてきた。
「母さん、夜ってどんな感じだった?」
ジンはまだ、夜を知らないのだ。
「うん、綺麗だった。真っ暗な空に、小さな光の魔法のつぶが組体操で何かを作ってるみたいだった。」
「なんだそれ分かりにくいな…」
「いつか、夜の空を見れたら、いいね。」
母さんが目を閉じて呟いた。
「さぁ、もう寝なさい。明日は長の任命式よ。体調不良で欠席だなんて恥ずかしいことしないでよ。」
「はぁい」





翌日午前10時。
今日から父に変わってジンが長を努める。オヤジのブリッツはもうすぐ70歳を迎えるというのにとても元気だ。白い布を両手に巻いて、左目は薄い紫、右の眼は銀に輝いている。だが歳の理由もあって銀の輝きは失いつつあり、今ではジンのほうが眩しい色をしている。ジンが二十歳という若い年齢で長になるのには理由がある。
ジンの左目は緑色で輝いていたからであった。 まるでエメラルドの宝石のようだった。左目にはそのポケモンがどのような運命をたどるかの暗示がある。緑は希望を意味していて、その色は一万匹に一匹しか現れない色だと言われている。ブリッツは息子に大きな期待を抱いていたからである。
「50年間光り続ける太陽の魔法がもうすぐ消えてしまう。お前はこの町の長になってもう一度太陽を作って町の平和を守ってくれ。」
ブリッツは昔、太陽の代わりとして50年光を照らし続ける魔法を使い、大陸の危機を回避させた。しかし、歳のせいで今はそれほどの強い魔法を使うことはできず、息子に託すことにしたのだ。
「ジン、あとは任せたぞ。」
ブリッツは持っていた箱を開けて小さな首飾りをジンに見せた。
「これは…」
「500年前から大切に守られてきた首飾りだ。死ぬ気で大切にしなさい。」

死ぬ気でって……無茶言うなよ……
とジンは思うのであった。受け取った首飾りは小さく、とても綺麗だった。光鉱石という光を放つ鉱石を贅沢に使い、細やかな編目のチェーンは眩しく光っている。中心に光るはダイアモンドの宝石だった。


自宅の2階、自分の部屋に戻りもう一度首飾りの入った箱を開けてみた。それにしてもこの首飾り、本当に綺麗だ。
ジンはベッドに転がり、首飾りのダイアモンドの宝石を太陽に透かしてみた。すると
「………? 宝石の中に、何か入ってる…?」
気のせいだろうか…宝石をくるくる回して光の当て方を変えた一瞬、なにかが見えたような…。

宝石のことを知ったのは確か俺が10歳の頃だ。それと同時に、こんな歌も教えてもらった。たしか古くから伝わる歌だったとか。

お星さまはきれいだな~
みんなと手をつないで夕日が沈むまであそびましょ~
疲れちゃった今日はねんねんころり~
私も早くお星さまになりたいな~♪

その歌を唄った瞬間

パキッ。

「………ん?」

首飾りの宝石に亀裂が入ってしまった!

「……えっ」

うそおおおおおおお?! どうしよう俺500年前から守り継がれてきた死ぬ気で守れって言われたその日に壊しちゃったよぉぉぉ?!

「……?!…これは…」

ジンは割れてしまった宝石の中を見ると小さな鍵が出てきた。
小さな鍵に小さい文字で何か書いてある…

その文字を読もうとした瞬間、誰かが家のドアをノックする音が聞えた。焦ったジンはすぐさま首飾りと小さな鍵を箱に戻した。
「はい? どちらさま?」
玄関のドアを開けるとギルドマスターのフーディン、トニスがそこにいた。

「おぉ、トニー! どうしたんだい?」
フーディンのトニスは本名とは別に「トニー」というあだ名で親しまれている。右目は銀色をしていて左目は情熱に満ちた綺麗な赤色をしていた。歳は40代とジンの大先輩だが光魔法はジンの方が優れているためいつも敬語で話しかけてくる。ジンは「タメ口でいいのに」と言うがトニスは「いえいえ、せめての礼儀です」と謙虚だ。

「長、先ほど、闇魔法使いの輩が乗り込んできて中央広場で捕らえたのですが、いかが致しましょう。」

「なんだって?」
ジンは急いで輩が捕まった中央広場へ走った。



















ここはフィンターニス。リヒトシティから半日ほど南に歩くとその街が見える。ここでは「闇鉱石」という鉱石が光を吸収する力を持っており。仮の太陽の光は当たらず、一日中暗くて静かな街だ。
50年前の事件をきっかけに、世界を壊そうとした悪魔が住む街として毛嫌いされた。それからほとんど闇魔法使い以外のポケモンはこの町を訪れることはなかった。この街の警備員のジュプトル、リーフは今日も町の警備をしているが

「今日は誰も来ないだろうな」
この街に訪れる闇魔法使い以外のポケモンはほとんど来ることはない。来たとしても3日に1度くらいだ。

「よぅブリーフ! 相変わらずまじめに仕事してるな!」
「オレの名前はリーフだ!! パンツじゃねぇ! ったく…」

リーフに話しかけてきたのは7歳のガキンチョ、クスネのスリックだ。13歳も年が離れて知るというのにコイツはいつもオレをブリーフ呼ばわりしてイジってくる。生意気でやんちゃなガキンチョだが、さみしがり屋だ。いつも大人に話しかけているが中々構ってくれず、最終的にオレかギルドマスターのヨルノズク、ディオンのところへ来る。スリックは好奇心旺盛でこの前、旅で道に迷って旅行客がこの町を訪れたとき、案内がしたいと言い出し、案内役隊長に任命した。それからちょくちょく、この町に来たポケモン達に案内をしている。

「ブリーフ! オイラとかくれんぼしようぜ!」
「まったく…何度言ったら分かるんだ…仕事中にかくれんぼは出来ないって何度も言ってるだろぅ。」
「いいじゃん! ケチ! 別にいいもん! オイラ、オマエのおやつの隠し場所知ってるもん! こっそち食べちゃお~」

「はぁ?! なんでオレの大好きなチーズかまぼこの隠し場所知ってるんだ?!」
「ディオンさんが教えてくれたんだ~!」
「ディオンめ…あいつぅ……!」
ギルドマスターのヨルノズク、ディオンとジュプトルのリーフは竹馬の友だ。今でも仕事の話をしながら一緒にお酒を飲んだり、仲が良い。ディオンは冷たいヤツだが子供に対しては意外と優しかったりする。



静かな町だが何かと騒がしい。クスネのスリックにチーズかまぼこを食べられてから5日後のある日だった。

今日もなにかと忙しく町の警備をしていたが…
「……なんだか今日は…寂しいな…」
いつもスリックがオレにちょっかいをかけにやって来るのだが、最近来ないな…何かあったのだろうか。

今日も仕事を終えて隠れ家ギルドへ報告書を書きに行く。
「報告書ここに置いておきますね。お疲れさまでした。」
首元に紫のスカーフを巻いたギルドマスターのヨルノズク、ディオンが作業している机に3枚の紙を置いたとき
「リーフ、あとで一杯、付き合ってくれ。大事な話がある。」
「……? いいですよ。でも、大事な話って何ですか?」
「詳しいことは、いつものバーで話す。午後8時に来てくれ。」
「分かりました。」

…ディオン、いつも以上に険しい顔をしていたな…。



午後8時、リーフはカランコロンとバーのドアを開けた。暗い部屋にぼんやりとライトが光り、ジャズの音楽がバーに来たポケモンの心を癒してくれる。この店に働くマスターのニドクインにいつものジンジャエールのカクテルを注文して、ディオンの横のカウンター席に座る。

「ディオン今日はどうしたんだ? いつも以上に深刻な顔をしてたじゃないか。」
職場では身分が違うためリーフは敬語で話すが、オフの時は友達として会話する。

「リーフ、俺はもう限界かもしれん。」
「? マジでどうしたんだ? 今日はオマエ変だぞ。」

「最近、スリックが顔を見せてないよな。」
「まぁたしかに、そうだけど。」

ディオンが苦虫を嚙み潰したような顔をして言った。
「スリックの母親から話を聞いた。最近、何処からか知らんが子供がこの町に訪れたそうだ。スリックは街の案内をして、その子供とすっかり仲良くなったそうだ。だが、スリックの右目が黒いことを知って……」

「知って…?」

「羽交い締めにされて嫌なことをされたらしい。」

「……!!」

「それがショックで数日、家から出るのが怖くなったらしい。」

「な…なんだって……!!」

瞬間、ディオンがグラスに入ったシャンパンを一気に飲み干してグラスを机に叩きつけた。
「スリックは何も悪いことはしてない!! それなのに…右目が黒い闇魔法使いだから…そんな理由でアイツをいじめていい訳がないだろ!!! 闇魔法使いは悪魔だの昔からさんざん言われてきた! 俺はもう限界だ!! スリックは…なにも悪くないぞ…くそ…」

ディオンは涙目になった。そのことをリーフに悟られないように手で目を拭かず、必死に堪えた。

「く…くそ…」
思わずリーフも下向きになってしまう。
「太陽を覆い被さった犯人は闇魔法使いじゃないって昔から訴えてるのに…みんな耳を傾けようともしねぇ…もうウンザリだ…!!!」
とうとう、ディオンが涙を流してしまった。
「リーフ、俺は明日、ルマをぶん殴りに行く…! 今までこんなクソみたいな偏見を、見て見ぬふりをしやがったルマをどんな手を使ってでも、ぶん殴りに行く! そして、俺たちの無実を証明してやる!」
ディオンは握りこぶしを作ってリーフの方を見た。ルマとはフィンターニスの実質的な長、ムウマージのことである。彼女は非常に変わり者で、誰かの前に姿を現すことを避け、ずっと家に籠っているという噂が広まっている。フィンターニスの住人ですらめったに彼女を見かけることはない。

「ディオン、オレはあんたの共犯者になるぜ。そしてオレたちでこの問題、解決したいな。」

「“解決したいな”じゃなくて“解決しなきゃならねぇ”んだ。もう二度と、罪のない子供が涙を流すことがないように。」

「だな、相棒。」
リーフは呟いた。




翌日、リーフとディオンはフィンターニスの住宅街にある不気味な3階建ての大きな建物に訪れた。長のルマが住んでいると言われている家だ。庭も建物もピカピカだ。しかし、この家に入れば二度と戻ってこれないと思わせるほどの恐ろしいオーラがあった。さらにルマは恐ろしい呪文の練習をしているとの噂があった。だから誰も近づこうともしないし、その家に入りたいというポケモンはいない。

「「………。」」
リーフとディオンは唾を飲み込んで恐る恐るルマ家の玄関ドアをノックして開ける。ドアを開けただけなのに体中から冷や汗をかきまくっている。今すぐに逃げ出したいほど怖い。ハァハァ…と喘ぎ声が出てしまうほどだった。

「ルマさん。いますか。」
ディオンは冷静に言った。冷や汗が止まらず、顔から滴れ落ちたが、スリックの無念を晴らすために、逃げてはいけない。ディオンは深呼吸し、手で顔の汗を拭き、真剣な面をして言った。それをリーフは見て勇気を持つことができた。

「ルマ! 話がある! 返事をしてくれ!」
威勢のいい声でリーフは言った。しかし一切返事がない。恐る恐る玄関の先を進むとガチャンと勝手に玄関のドアが閉まって

ガッ!

鍵が掛けられてしまった! リーフとディオンは慌てて緊急時の逃げ道を確保しようと玄関のドアをこじ開けようとしたが…ドアノブがない!

もう、戻れない!

「「………。」」
リーフとディオンはお互い向き合って死を覚悟した。手を繋いで、微かに明かりが見える3階へ、螺旋階段を上った。そして小さな蝋燭が2本立ててあるドアに着いた。そこには赤文字で「立ち入り禁止!」と書いてある紙がある。間違いない、ここにルマがいる。リーフは勢いよくドアを開けて

「ルマ!!!!!」
叫んだ! すると…?

「ひぃぃぃぃぃ…!」
小さい声で誰かが叫んだ…

リーフはドアを開けてすぐそばにある電灯のスイッチを押すと、

「ひぃぃぃぃごめんなサイ…」
「…え?」

むウマージのルマはうずくまって怯えていたのだ。






「ホホホ、つまりそういうことですわヨ。」
リーフとディオンはルマの話をいろいろ聞くと、安心してほっと一息ついた。どうやらルマは極度に憶病だったのだ。さらにルマは寂しがり屋で構ってもらいたく、街で広まる“ルマは恐ろしい”という噂はルマ自身が流したのである。好奇心で近づいてきてくれる誰かを待っていたようだ。

(そんな怖い噂広めたら誰も近づく訳がないと思うんだが……)
リーフがディオンに耳うちする。
(それな。憶病&寂しがりな性格って一番面倒くさいかもな…)
ディオンが耳打ちで返事をした。


「くくく…全部聞こえてますわヨ……そんなに…責めないでクダサイ……オネガイシマス……グスン」

「あっ……す、すみません…本当にごめんなさい…」
リーフは慌てて土下座した。

「デモ! 恐ろしいという噂は本当ですわヨ。ワタシは闇魔法とは違った、コワーイ呪文の練習をしているのデ。」

「「なんだって…?!」」
二匹は驚愕した。ポケモンは生まれつき、大地、海、空、光、闇の自然のどれか1つと繋がっておりその自然の力を借りて魔法を使うことができるのだ。だが2つの自然と繋がっているのはおかしい。

「でも…“練習をしている”って…どうして2つも魔法が使えるんですか?! そもそもどうやって?!」

「失礼ネ! ワタシは闇の自然の力を借りて封印魔法を練習しているのデス。暗黒竜を封印するタメのネ!」

「封印魔法…暗黒竜?!」
「なんだそれ…聞いたことないぞ…?!」
リーフとディオンはさらに驚く。闇魔法とは別種類の魔法があるだなんて!

「アナタたち、リーフとディオンだネ。昔から知ってるわヨ。それデ、闇魔法の無実を証明するためにここまで来たのよネ。強い味方がいてくれて安心できるワ。今から大事な話をするから耳くそほじくってヨク聞きなさイ…」

「「わかりました。」」
リーフとディオンはルマに来た理由を一切言っていないが、ルマには全部お見通しだ。ルマは太陽が謎の影に覆われた事件について何か知っている。どんなことを言われようと動揺しないぞとリーフとディオンは深呼吸をして聞いた。


「簡潔に言いまス。太陽を陰に隠した犯人は、暗黒魔法を操るギラティナ。伝説のポケモンヨ。暗黒魔法は、闇魔法とは全く別次元の魔法。したがって闇魔法は無実。」

「オレたちは無実なのか!!」
思わずリーフは叫んだ。

「最後まで話を聞いテ。暗黒魔法はとても恐ろしい魔法ヨ。なんせ太陽を影で覆い被さったのだからネ。ギラティナは50年前に復活して、今、魔力をためているノ。そして間もなく…この大陸…この星を影で覆って滅ぼそうとしていル……。」

「50年前に復活?! もうすぐ俺たちの大陸を滅ぼうとしている?! もう少し詳しく話を聞かせてくれ!」
ディオンが叫ぶ。

「えェ。実は500年前にも同じことが起こっているの。太陽が隠れてギラティナがこの星を滅ぼそうとしたノ。そいつを封印して危機を阻止しタ。そのことが伝記に書かれていたノ。」

「500年前の伝記…。そんなの聞いたことないぞ?!」

「知らなくて当然ヨ。この伝記はフィンターニスの秘密の部屋に隠されていたのだからネ。テキトーな場所に保管して、もしも火事で伝記が燃えてしまったら、この星は滅んでしまうからネ。隠し部屋へ通じる魔法の鍵を10年前に見つけて、ずっと家に籠って調べていたノ。その鍵は、ワタシがお父様からもらった三日月のアクセサリーについている宝石の中に入っていたノ。その宝石を見つめながら子守唄を歌っていたら宝石が割れて、その中から鍵が出てきたの。」

「……。」
リーフとディオンは息をのむ暇もなく聞き続ける。

「伝記によると、“ギラティナは復活してから50年で力を完全に蓄えてこの星を滅ぼす”と書かれているワ。その50年になるまであと一週間。」

「「なんだって?!」」

「じゃ…じゃぁ、あと一週間で…」
「この星は消滅してしまうというのか?!」

「えェ。そうヨ……。あと一週間しかないノ……。」
リーフとディオンは冷や汗をかいてしまう。

すると突然、ディオンがルマに近づき、殴りかかろうとした…!リーフは必死にディオンの腕をつかんで

「どうしたんだよディオン!!」

「どうして…どうして…この星の危機だというのに…どうして何も言わなかったんだクソ野郎!! ずっと家に籠りやがって!! どうしてみんなに訴えようとしなかったんだ!! クソクソ野郎!!!!」

「………ワタシだって……言おうとしたヨ……でも! 怖いの…! 誰かと目が合うのが怖くて怖くて仕方なかったの!! 死にたくなるほど怖いの!!! 貴方たちは! この目を見て何も分からないの!?」

ルマは、大きく目を見開いた。その目は涙にあふれている。
右目は真っ黒。
左目は深い紫をしていた。

「………!」
左目はそのポケモンがどんな運命をたどるかを示している。紫は、悲劇とシリアスを意味している。このムウマージ、ルマは、誰かと会うのが怖くなるくらい、誰かと話すのが怖くなるくらい、悲惨な運命を辿ってきたことが分かる。右目が黒いだけで、どれほど凄まじく、苦労をしてきたのだろうか。分かる。その深い紫がすべてを語っている。


ディオンの体は力が抜け、殴ろうとしていたその行動は、土下座に変わっていた。
「何も知らずに…殴ろうとしてしまって…本当に…ごめんなさい…」


「…気にしないで。大丈夫ですヨ。」
ルマは微笑んで返した。

「ギラティナのことについては関係者以外、誰にも話さないでネ。あと一週間で星が消滅するだなんて聞いたらこのベーア大陸の全員が大慌てしちゃうからネ。大丈夫、一週間もあればギラティナは封印できるワ。いや、永遠に封印できるワ! ワタシはそのためにずっと練習してきたのですもノ。」

「…オレたちに何かできることはありますか?」
リーフが言った。

「あるワ。ギラティナを封印するタメには、封印魔法が使えるワタシ、光魔法使いの左目が緑色の勇者、闇魔法使いの左目が緑色の勇者がいなきゃならなイ。でも、これで残るはあと一匹ネ!」

「あと一匹? 闇魔法の勇者と光魔法の勇者は?」

「何言ってんだよリーフ。闇魔法の勇者はお前のことだろ。」
ディオンはリーフを見た。そう、リーフの左目は、まるでペリドット宝石のような鮮やかなグリーンなのだ! 見ていて心が癒されるような輝きをしていたのだ!

「勇者が…オレ…? 冗談じゃない! オレはだたの街警備員だぞ?!」

「いいエ、リーフ、貴方ヨ。緑の宝石のような目は一万匹に一匹の逸材だと言われているノ。」

「よかったな! リーフ! カッコいいじゃねぇか! じゃぁ俺はお前のサポートをしてやるぜ! 勇者は俺じゃなくてお前だってのがちょっと悔しいがな! 感謝しろよ相棒!」

「オレ…そんな急に言われても…ギラティナと戦うことになるんだろ? 正直言って怖いよ…」

「なーに言ってんだ! そんなクソ野郎、パパっとやっつけて、無実を証明して、スリックを笑顔にしてやろうぜ!」

「……そうだな! 笑わせてやりたいな! よっしゃ! ギラティナなんざぶっ飛ばしてやる!」

「アリガトウ。あとは光魔法の勇者ネ。貴方たちにお願いがあるワ。光魔法の勇者をワタシの家に連れてきてほしいの。ワタシはコワくて行けないから……。勇者さん以外に連れてきてもいいけど、必要最低匹数ね。あと、リヒトシティにも魔法の鍵があると思うノ。秘密の部屋に入っていた物の詳細を教えテ。任せたわヨ。」

「「わかりました。それでは行ってきます。」」


そう言ってリーフとディオンはルマの部屋を出た。
その瞬間、ルマは恐ろしく震えていた。これから彼女を苦しめた光魔法使いに会うのだ…。そんなやつと一緒にギラティナと戦わなくてはならないのか?! そう彼女は思った。自分から「ワタシの家に連れてきて」といったが、今になって恐怖が彼女を襲った。いくら深呼吸をしても落ち着かない。ルマは無駄だと分かっていても何度も深呼吸をし続けた。








早速、北へ、光魔法使いが住むリヒトシティに向かった。
ディオンはヨルノズクだ。リーフはディオンの背中に乗ってリヒトシティへ飛んだ。歩いて半日以上かかるが、なんと2時間で着くことができた。


「……闇魔法使いが何の用だ。ここへ何しに来た。」
「帰れ下衆ども。」
リヒトシティの門番、デンリュウとレントラーに激しく警戒されてしまった。

「リヒトシティの長に話がある。通してくれ。頼む。」
リーフは息をのんで言った。

「長に何の用だ。」
「それは言えない。」
レントラーが鋭い目つきでリーフを見る。ギラティナ、星の消滅のことは関係者以外に教えるなとルマから言われている。要件を言うわけにはいかない。ましてや、嘘をつくわけにもいかない。怪しまれるだけだ。

「リヒトシティの長は今日、マグマラシのジン様がご就任なさった。まさか、新しい長の命を奪おうと企んでいるんじゃないだろうな。」

「神様に誓ってそのようなことはしないと誓う。頼む。話をさせてくれ。」
「まず要件を言え。内容次第で通してやる。」
「くっ…」
ますます怪しまれてしまう…。ディオンは渋っ面をした。

するとデンリュウが手を耳に添えて電気信号を使って誰かと会話をし始めた。なにかぼそぼそと喋っている。微かに、最後の部分だけ会話が聞き取れた。
「捕らえろ」
その瞬間、目の前がピシャッッッッッ! と光り、リーフとディオンの視界は真っ白になった。そして、二匹とも白目をむいて倒れた。





「……フ……おいリーフ! 起きろ!」
「………はっ…!」
いつまで寝ていたのだろうか…?! 気絶していたのか?!
「…!」
うつ伏せになった体を起こそうとしたが、体が動かない…! 手から足先まで、光をまとった鎖に縛られている! 光魔法なのだろうか! まるで蜘蛛の巣に引っかかった蝶になったような気分だ。リーフとディオンは必死にもがこうとするも、ピクリとも動かせない。
「ここはどこだ?!」
「どうやらリヒトシティの街の中心で俺たちの羞恥を知らしめられているみたいだぜ。街にはなんとか入れたが、屈辱的だ…クソッ…。」
周りを見れば大勢のポケモンがこちらを見て、ザワついている。「魔界へとっとと帰れ! この悪魔!」だの「悪魔なんか消えろ!」だの罵声が聞える。悔しくて、涙が出てしまうそうだ…! リーフは歯を食いしばって堪えようとしたが…もう限界だ…!


すると、誰かの足先が見えた。
「闇魔法使いが何の用だ。」
必死に顔を上げるとフーディンが見下していた。
「我はギルドマスターをしているトニスだ。まず、この街へ来た要件を教えてもらおうか。」
立派な白ひげを生やし、光鉱石が持ち手にはめられたスプーンを左に持ち、片眼鏡をかけたフーディン、トニスが見下しながらサイコキネシスをオレたちにかけようとしてくる…! 言わなければどんな目に合うか分からない…!

「オレたちはっ…」
「ダメだリーフ! 言うな!」

「ほほぅ、言えないのか。なぜだ?」
トニスにますます怪しまれてしまう…!

「トニー! どうしたんだい? 闇魔法使いが来たんだって? どうしていきなり捕まえたりするんだよ。」
そう言ってマグマラシは急ぎ足でフーディン、トニスのもとへ駆け寄る。

「長、この輩どもが争い話を持ってきたようです。」
「馬鹿を言え! このジュプトル、泣いているじゃないか! 泣きながら宣戦布告をする奴がいるわけがないだろ!」
「ですが長…皆の前では言えない要件だと言っているのですよ。」
「実際いままで闇魔法使いが俺たちに何か危害を及ぼしたか? 何の要件かは分からないが俺は信用していいと思っている。」
そう言ってマグマラシはリーフとディオンの呪縛魔法を解いた。

リーフは魔法の束縛で力んでいた体が解放され、荒い息をして、その場に倒れこんだ。ディオンも同じくだった。
「うちの仲間が無礼をしてすまない。俺はリヒトシティの長のジンだ。お前たちの名前を教えてくれ。」
マグマラシが頭を下げながら言った。


「はぁはぁ…はぁはぁ…オレは…リーフだ…横にいるのが…ディオン…」
リーフは力を振り絞って言った。

すると何故か、体の疲れが少し抜けて、なんとか立ち上がれるまで回復した…!
「俺の回復魔法だ。少しでも楽になればいいが。」
光魔法使いは「フェア・ゲーエン・リカバリ」と唱えれば回復魔法が使える。効果は微少だが止血ができるなど危機的場面ではとても役に立つ魔法だ。魔法が優秀なジンとトニスは病気を和らげたり、軽傷を完全に回復させることができる。

「我らに危害を加えない意思はよく分かった。だが、隠し事はダメだ。この街に来た要件を話してもらおう。」
トニスはため息をつきながらディオンに回復魔法をかけて肩を貸した。

「どうしても言えないことなのか? 言えないことなら、俺に耳打ちしてくれ」
ダメだ…! いくら小言でも聞かれてしまう! 闇魔法の一つで陰口を聞き取る魔法があるのだ。もしかしたら光魔法でも存在するのかもしれない。みんながパニックにならないように、どうやって説明すればいい…? 考えろ…。
少し黙り込んで、リーフは口を開いた。
「宝石の中に…隠されている鍵ついて…知ってるか?」

これなら大丈夫なはず…! とリーフは考えた。

「宝石……鍵……だって……!?」
ジンは目を見開いた。これは脈ありだ!

「長、何か知っているのですか?」

「あぁ、リーフとディオンって名前だったよな? 今すぐ俺の家に来てくれ。トニーも来てほしい。大事な話がある。」







「えぇぇぇぇぇぇぇぇ?! 500年前から伝わる首飾りが壊れてるじゃぁねぇかぁぁぁ! 長?! 何してるんですか?!」
トニスが驚くもの無理はない。トニス、リーフ、ディオンの3匹はジンの家に招待され、寝室には砕けた大切な首飾りが置いてあるのだから。

「トニー、俺は偶然、この首飾りについてる宝石を眺めながら子守唄を歌っていたんだ。そしたら宝石が割れて、この鍵が出て来たんだ。」
ジンは手に持っている小さな鍵をトニスに見せた。おそらく光鉱石で作られたのだろう。500年も眠っていたにも関わらず、その鍵は新品同様の輝きをしている。持ち手、キーヘッドは星形をしていて、鍵穴に挿入するためのギザギザは何とも不気味な形をしていた。まるで茨の棘のように細かく鋭い。ギザギザに触れてしまったら手を切ってしまうのではないか。それほど鋭かった。リーフとディオンは「これがあの鍵なのか…」と興奮気味だ。

「フィンターニスにも同じように宝石に鍵が隠されていたんだ。そしてこれは秘密の部屋を開けるための大切な鍵。秘密の部屋を探そう。」
リーフはジンの家のドアを開けようとするが、トニスに腕を掴まれてしまう。

「ちょ……ちょっと待て! 話が急すぎて理解が追い付かない! 何をしようとしているのか教えてくれ。ここなら大丈夫だ。防音で外に声が漏れることはない。」
トニスが冷や汗をかきながら言った。

「……分かった。すべて話す。でも、誰かにこの情報を広めるのは絶対に控えてくれ。」

「承知した。」
ディオンが言うとトニスは大きくうなずいた。







「「なんだって?!」」
「あと……たった一週間で…この星は消滅?!」
「それで…あと一週間以内にギラティナというポケモンを封印しなければならないだと?! そんなバカみたいな話があるか!」

「本当なんだ。信じてくれ、証拠はあとで見せる。秘密の部屋に行こう。今は時間がない。秘密の部屋の場所は分かるか?」
半信半疑なジンとトニスに早く信じてもらいたい。ディオンはそれしか考えていない。


「長、何か覚えはありますか?」
「トニー、今は敬語は無しにしてくれ。緊急事態だ。」
「わかりま……ゴホン。承知した。それでジン。秘密の部屋、見覚えは?」

「そんなの見たことがない。………まてよ。鍵に小さく何かが書いてあったぞ。」
ジンは小さな鍵の持ち手を見たが細かすぎて見えない。虫眼鏡を使って見るも、500年前の古代文字だ。全く読めない…。

「古代文字だって? 我が見てやろう。こうみえて考古学は好きだからな。」
トニスは虫眼鏡で文字を覗き、ぶつぶつ言い始めた。


“天使の指す場所にすべてあり。時が来たれば開かれる。”

「天使の指す場所…指差す方向ってことか?」
リヒトシティの中心に大きな天使の翼が生えたリザードンの石像がある。おそらくそれだ。ジンは指す先を考えるも目印になるものは思いつかない。
「早速行ってみよう。」


光鉱石だけで造られた、天使の翼が生えたリザードン。まっすぐ上斜め45度に指差している姿は壮観だった。500年前にギラティナを倒した英雄のだろうか。石像に近づいて指さす方向を見つめるが、指差している方向が斜め上、空しかない。

「これ…おい見ろ!」
トニスが念力で浮いて石像の指差す方向、ではなく、指先を見て気が付いた。なんと指先の爪に小さな鍵穴があったのだ! さっそくジンがリザードン石像の指先に小さな鍵を刺し、右に鍵を回すと。石像の中でゴゴゴゴゴぉと大きな音を立てて地面が揺れ始めた。リザードンの石像の目が光り、気が付けば足元に隠し階段が現れたのだ。



「なんだこの部屋は!!??」
3分ほど階段を下ると秘密の部屋に着いた。古く錆びついたドアノブを強引にひねってドアを開けると、不思議な光景が飛び出してきた。壁や床は全て炭で作られていたのだ。目の前には黄金に輝く本と大きな木箱が置いてある。小さな部屋だ。壁や床が炭でできているのは、部屋の除湿をするためだろう。炭は湿気を吸い取る効果がある。本にカビを付けないために。それほど大切なのだ。木箱を開けると剣が2本でてきた。ただの片手で持てる普通の剣だが、試しにリーフとジンはその剣を持つと……


「「うおぉぉっ!!」」
全身に鳥肌が立った! リーフが剣を持った瞬間、普通の鉄の剣がみるみる黒色に染まっていく! ジンがもう片方の剣を持てば、青白く光りだした!

「それが伝説の退魔の剣か……」
大切に保管してあった本をペラペラとページをめくって読み漁っているトニスは言った。

「この本によると、その黒剣と白剣で必殺技を放ってギラティナを弱らせて、封印したそうだ。必殺技は… “フェア・ゲーエン・ライジング” というのか。へぇ、最大魔力を込めて剣を握ると、剣が巨大化して、その攻撃でギラティナを弱らせて封印魔法で封印したそうだ。ギラティナを封印すれば、影に覆われた太陽が息を吹き返し、この星を平和にする…と書いてある。」

「なんだと?! ギラティナを倒せば…本物の太陽を見ることができるのか?! 夜は来るのか?! 季節は来るのか?!」
ジンは目を丸くしてトニスに叫んだ。
「そうだ。できる。夜は来る。季節は来る。」
トニスは伝記を閉じてリーフとディオンに向かって言った。
「どうやら、星の消滅、言っていることは真実のようだな。太陽を闇に隠した真犯人は暗黒魔法使いだということも分かった。今まで半信半疑…というか言ってることのほとんどが嘘だと思っていたが、貴様らを全て信じてやる。ギラティナの封印に手を貸してやる。」
トニスは、ずれた片眼鏡をかけ直してリーフとディオンを見た。

「ハハッ、トニーが片眼鏡をかけ直す仕草をしたときは、あんたたちを信頼しているっていうサインなんだよ。だよな?」

「ジン……それをいちいち確認しないでくれ……恥ずかしくて死にそう」

トニスが照れくさそうに言うと、3匹はハハハっと微笑んだ。

「リーフ、ディオン、一緒にギラティナを倒そう。ギラティナを倒せば本物の太陽を見ることができる。闇魔法の偏見は消えて平和を取り戻せる。」
ジンはリーフに肩を組んで言った。

「よっしゃ! そうでなくちゃぁな!」
ディオンもリーフと肩を組んでにこにこ笑った。リーフも「だな!」とにっこり笑った。





リーフとジンは剣を腰につけて、トニスは伝記を手に持って、4匹は部屋を出て階段を上り、地上へ出てくると、秘密の隠し階段は石のタイルが敷き詰められて見えなくなった。空から何かが降ってくる。ジンは両手で優しくキャッチしたのは、リザードンの石像に刺した小さな鍵だった。
「時が終われば、返しに来い。武運を祈る。」
リザードンの石像は静かに笑って言った。オレたちは頷いて先を急いだ。

「それで、ギラティナを弱らせる方法は分かったが封印は誰がやるんだい?」
リヒトシティの街外に出たときにジンが言った。

「俺たちの街に封印魔法が使えるルマってヤツがいる。彼女に頼まれて俺たちはお前らを連れてくるためにリヒトシティに来たってわけだ。ジン、トニス、頼む。俺たちの街フィンターニスに来てほしい。ルマに会ってほしいんだ。」
そう言ってディオンは翼を大きく広げて飛ぶ準備をした。OKだという返事が来る前提でディオンは準備をしているようだ。そして空中でホバリングをした。

「もちろん、行こう。会わせてくれ。だが、どうしてルマは一緒に来なかったんだ?」
ジンが言った。


「誰かと目が合うのが怖くて外から出たくないんだとさ。お前らのせいでな。」
「……そうか……。」
ディオンが鋭い目つきでジンに言った。ジンは下向きになって目を逸らした。

リーフは「ディオンよせよ」と言いたかったがルマのことを考えると言えなくなってしまう。リーフも下向きになってしまった。

お互い仲良くやっていけると思っていたが、難しいのかもしれない、光魔法使いは闇魔法使いに対して偏見を持っている。太陽を影に隠した犯人だと。一方、闇魔法使いは光魔法の他、いろんな魔法使いたちに偏見を持たれ、社会的差別を受けた。右目が黒色だということだけで街に入ることすら拒まれた。リーフとディオンだってそうだ。手荒な歓迎をされ危険な状態にさらされた。ここ50年で闇魔法使いのポケモンは一体どれほど苦労してきたのだろうか。だから闇魔法使いは自分たち以外すべての魔法使いのことが嫌いなのだ。

光魔法使いと闇魔法使いが仲良くやっていけるわけがないのだ。
この気まずく、重い空気が4匹を包み込む……。



「なぁトニー。」
この重い空気に、輝く突破口を切り開こうとしたのはジンだった。
「ルマに謝って、俺たちのこと認めてもらおうよ。そんでリーフ、ディオン、ルマと一緒に協力してギラティナをぶっ倒してやろうよ。“Good Byeギラティナ作戦”だ。どうだ?」


リーフとディオンは口角を上げて微笑んだ。ジンはオレたちを信じてくれ、闇魔法使いとの関係を変えようとしてくれている。これほど嬉しいことが今、起こっている。

それに釘を刺すようにトニスが苦笑いをして言った。
「はは…気持ちは分かるが…作戦の内容が薄すぎないか…?どうやれというのだ…。ルマは我らに恐怖心を持っているんだぞ…」


「なんとかなるよ。ルマは優しいからね。オレが保証してやる。」
リーフは渾身の笑顔で周りを和ませた。

「リーフ! 本当か! お前の言うことなら安心した!」
「ジン……リーフを信用しすぎなのではないか…? 闇魔法使いは我らの敵だったのだぞ…もう少し警戒心ってのが…」
「トニー。大丈夫だよ。親友は嘘をつかないさ。」
「おいおい…闇魔法使いを親友と呼ぶだなんて…いつから親友になったのだ…?」
トニスはまだ、闇魔法使いに対しての偏見が残っているようだった。

「さっき歩いてるときにリーフと話してたんだけど、意気投合しちゃってさ! まさかリーフがあの人気アニメ、仮面ダイバーの熱狂的ファンだったなんてな! 最高だぜ!」

「仮面ダイバーの26話は神回だったな。」
リーフが呟くとジンが「それな~!」とニヤニヤしながら言った。

「………フッ」
トニスは熱弁を面白半分で笑った。
「あははははは…! 我は深く考えすぎていたようだな! あっはっは…! 今まで闇魔法使いを疑ってきたのがバカみたいに思えてきた…! 結局ノリと勢いだけで何とかなると思ってんだろぅ?! あっはっはっは! やれやれだ! なぜだか分からんがノリと勢いでいける気がしてきた! ジンは若いくせして勉強とか魔法は秀才なのに、そういうとこがまだ子供というか、バカなんだよなぁ…あっはっは!」
トニスは顎が外れるほど大きく笑った。笑いすぎて涙目にもなっている。

「はぁぁぁ?! トニー、今まで俺のことバカだと思ってたの?! まじでふざけんなだしー!」

「「「「あははははははははは」」」」
4匹は笑い声をあげて、今までに起きた面白トークをしながらフィンターニスに向かった。









「ルマ!! 連れて来たよ! 光魔法使いの勇者とギルドマスターをね!」
4匹は勢いよくルマの家に乗り込み、バン! とリーフは豪快にルマの部屋のドアを開けた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!???!?!?」

誰かに会うことが怖い上、恐怖を感じている光魔法使いが勢いよく家に乗り込んできたもんだからルマは悲鳴を上げて魔法道具などで散らばった机の下に隠れて怯えてしまった。

「(やっべ…話が盛り上がりすぎてルマの事情を忘れてた…!)しょ…紹介するよ!マグマラシのジン! こいつが光魔法の勇者だぜ! 目もエメラルドグリーン!バカなとこあるけど勉強と魔法は完璧らしいぜ!」
ディオンがルマに説明するがルマは恐怖で机の下にうずくまり、振り向いてくれない。

「ちょっとまてさっき俺のことバカ扱いしただろ。」

「たぶん気のせいだよ。ハッハ! そしてリヒトシティのギルドマスターのフーディン、トニスだ! トニスは恥ずかしエピソードを何個も持ってるぞ…! 後で教えてやるよ!」

「おい、ディオン。それ以上言ったら我、ぶん殴るぞ」

「あははははははは!トニー! 一つくらいいいじゃないか! ルマさんに教えてあげようよ!」
リーフとディオンはトニスのことをあだ名で呼ぶようになるほど仲良くなったのだ。
「さんせーさんせー! トニーの妻とショッピングに付き合ってる時に、洋服店でマネキンと思って手を触れたら本物のポケモンだったんだぜ! 何回も頭下げて謝ったんだよな? トニー?」

「ジンやリーフまでも……我、そろそろ怒りが限界だぞ? 殴るぞ?」
トニスはなんでも完璧に仕事をこなすが、仕事以外になるとおっちょこちょいなので街のみんなにイジられてしまうキャラになったそうだ。「殴るぞ?」と圧をかけてくるが、殴ったことは一度もないらしい。トニスは冷たそうな性格をしているが、実はとても優しいのだ。

「トニーは殴らないから大丈夫だよ!」

「「「あははははははっ!!」」」
「おい!!! マジで殴るぞ?! ……ったく…最近の若い連中はどいつもこいつも…」

「………?」
ルマは恐怖で震えることしかできなかったが、突然4匹から笑い声が聞こえて不思議な気持ちになった。たった一日そこらで、光魔法使いと闇魔法使いが、冗談を言いあうほど仲良くなれるの?! ありえない…! だって、お互い嫌って憎み合う関係だったでしょ…?!
ルマは振り返ってリーフとディオンの顔を見た。リーフ、ディオン、ジン、トニスの4匹が笑い合っている光景を見て、怯えていた自分が恥ずかしく思えてきた。50年間、苦しみを感じてきたのに、それをたった一日で嘘みたいに仲良くなってしまうだなんて…

これが、世界の運命を救う、勇者の力なのね。
ルマは深呼吸をして
「リーフ、ディオン、アリガトウ。おかげデ勇気が出ましたワ。今まで怖がっていたのが嘘みたいネ。貴方たちを見ていたら安心しちゃっタ。」
ルマはにっこり笑ってジンとトニスを歓迎した。「今まで偏見をもっていて本当にごめんなさい」とジンが頭を下げて謝ったとき、ルマは微笑んで「気にしないで下さイ。大丈夫ですよ♪」と言って、許した。

「ほらね、言ったでしょ。ルマは優しいって」
リーフはジンに肩を組んで言った。

「ほんとに優しい方だなぁ! 女神みたいだよ。」
ノリノリでジンは返事をする。

赤面して焦るルマ、腕を組んでうなずくトニス、「さっきの発言はセクハラなのでは?」とニヤニヤしながら責めるディオン、「あっはっは!」と最高の顔でリーフは笑った。

このチームでなら、必ずギラティナを封印できる! とルマは確信した。



ルマを含めて5匹はギラティナについての情報共有をして、対策法や封印方法、退魔の剣で使う必殺技の使い方、みんなの役割など、夜から始まって翌日の昼まで一睡もせずに話し合った。
「…それじゃァ最終確認ヨ。目的はギラティナの永久封印、太陽を取り戻して闇魔法の無実を証明するこト。伝記に書かれていることによるト、ギラティナが潜んでいる場所はポラル島といわれているワ。」

ベーア大陸の最東にあるメーア村から180km北へ海を進んだ位置に、ぽつんと謎の島がある。それがポラル島である。なぜか、ポラル島の上空が常に嵐雲に覆われていて、あまりにも危険なため調査は一切行われていない。ポラル島は常に嵐だ。水ポケモンがポラル島に近づこうとすると荒波に襲われて溺れそうになったそうだ。飛べるポケモンが近づこうとすると風に襲われて海に落ちそうになる。何とか上陸はできるが、一日動けなくなるほど体力が削られてしまう。調査隊は後退せざるを得なかったそうだ。

「それでも行かなくチャいけなイ。島への侵入方法ハ、まずメーア村へ行ってラプラスが運営している海の送迎屋の力を借りてポラル島近くまで送ってもらウ。その先はワタシ達だけでなんとかしましょウ。嵐で視界が悪くなるからワタシはトニスさんに暗視共有をして進みまス。飛べないリーフさんとジンさんはディオンさんの背中に乗って行ってくださイ。」

「了解した。このディオンに全て任せろ。飛ぶことに関しては自信がある。」

「島に上陸出来たら協力して、魔法で洞穴を掘って休憩場所を作りましょウ。全員の体力が回復するまで休憩して、そこから先は情報が無いからギラティナの住処を手当たり次第に探しましょウ。悪天候で離れ離れにならないタメに別行動は禁止でいきましょウ。」

「「「「了解。」」」」

「ギラティナと戦う時の役割を確認しまス。ワタシはリーフとディオンの護衛、オヨビ封印魔法の準備をします。トニスさんは?」

「我は拘束魔法でギラティナの動きを封じ込める、だな。」

「どれほど巨大な敵なのか分からなイ。準備を入念にお願いしまス。次にディオンさん」

「俺はリーフとジンを背中に乗せて移動するんだよな。ギラティナは空を飛ぶらしいからな。どっちが高く飛べるか勝負だ。」

「勝負はしませんヨ。リーフとジンの攻撃が当たる距離まで近づく大事な任務ですからネ。頼みましたヨ!」
ルマは真面目な顔をしてディオンを見た。「おう、任せろ」とディオンがうなずく

「そしてリーフとジンは」

「「必殺技を使えるようにする」」

「そウ。最低あと5日で技を完成させるこト。難しい課題かもしれないけど頼んだわヨ。」

「「まかせろ!!!」」










トニスしか使えない秘伝技、テレポートを使い5匹はリヒトシティへワープし、リヒト電鉄 メーア村行き快速特急に乗り、ギラティナ封印への旅(?)に出た。トニスのテレポートは行きたい場所が遠くにあるほど、大匹数であるほど魔力を消費するらしく、直接メーア村に行くのは困難だった。だからリヒトシティから電車に乗ることにしたのだ。リヒト電鉄の快速特急は光魔法を使うことにより時速450km/hと非常に速いので900km離れているメーア村までたったの2時間で着く。

メーア村の海の送迎屋に頼んでポラル島付近まで近づいてもらった。1日ほど北へ海を渡ると、穏やかな波が徐々に荒れてくる。雲行きも怪しくなってきた。ポラル島へ近づいた証拠だ。5匹はラプラスの背から降りてポラル島へと飛び立った。ルマはトニスと手を繋いで暗視共有をしながらサイコキネシスの力で浮き飛ぶ。リーフとジンはディオンの背中に乗りポラル島を目指した。

島が見えてくる頃には雨が降り始め、雷が鳴り始める。風は強く、翼が濡れて高く飛ぶことができないため低空飛行で3匹は進むが、

「うおっ?!」
荒波がまるでディオンの足を掴もうとするかのように襲い、ディオンの足に強い水しぶきが当たってバランスを崩してしまう!
「リーフディオン!しっかり捕まってろ! 少々熱いかもしれんが我慢しろよ!」
ディオンの必殺技、ゴッドバードでディオンの体は燃え上がるように熱くなり、戦闘飛行機の如く豪速でブッ飛んだ。




「はぁはぁはぁはぁ…なんとか着いたな…」
ポラル島に到着し、光魔法フェア・ゲーエン・ビートという高熱の球を投げて爆発させる魔法で洞穴を掘り、ずぶ濡れの5匹はそこで休息をとっていた。トニスとルマは疲れ切った表情だ。「ちきしょう足が痛ぇ。こんなクソ島もう二度と行きたくねぇぜ」とディオンはため息をつく。
リーフとジンは疲れ切った3匹が回復するまで退魔の必殺技フェア・ゲーエン・ライジングの練習をした。しかしどれほど剣に魔力を込めても巨大化することはなく、数時間が経ってしまう。休憩を終えて5匹はギラティナの住処を探すべく嵐の中を進み続ける。2時間ほど歩くと、急に雨風が止み、視界が開いた場所に辿り着いた。台風の中心、“目”に来たのだろうか。

「なっ……」
「「「「「なんだこれは……」」」」」

5匹の視界に入った光景は、草も木もなく、まるで火山の噴火が起きた後の荒れ地のようだった。ごつごつした岩や石が転がっており、その先には!

ドス黒く、巨大な竜巻が雲を越して天高く、凄まじい上昇気流を起こしながら渦巻いている! 街一つを飲み込んでしまうくらいの大きさだ!
「あれを見てみろ…!!」
リーフが指差したのは…ドス黒い竜巻の一番下には小さな穴がぽっかりと開いている。まるで5匹を「上で待っているぞ」と誘っているかのように…

「?! なんだこれ?!」
竜巻に吸い込まれるかのように5匹の体は竜巻に引き寄せられていく! 後ろへ退こうとするも体が勝手に吸い寄せられていく! これがギラティナの暗黒魔法の力なのか?! 戻る手段を失った5匹は自ら竜巻へ突っ込む! もうそれしか方法はない!

「待ってろよ…ギラティナ!」
「必ず倒す…! 永遠に封印してやる…! オレたちの未来のために…! スリックの無念を晴らすために!」
ジンとリーフは雄叫びを上げながら竜巻へ突っ込むと上昇気流の影響によって上へ上へと吸い上げられる! その瞬間! リーフとジンの腰につけている退魔の剣が熱くなった! 宿敵ギラティナに反応しているんだ! 必殺技を使う条件は宿敵が現れたときだ! リーフとジンは確信した。

「リーフ! ジン! 俺に乗れ!!」
ディオンが猛スピードで2匹に向かって急上昇し、リーフとジンの腕を掴んで背中へ強引に乗せた。
「もうすぐ頂上だ! 2匹とも準備はいいか?」

「OKだ!」
「もちろん!」

「よし、俺も闘う覚悟はできてる。いくぞ!!」

「ワタシも覚悟はできてるワ! 行きましょウ!」

「我もだ!! いくぞ!!!」

5匹は竜巻の最長部に辿り着き、その遥か高くに待ち伏せていたのは

「「「「「ギラティナ!!!!!」」」」


ギラティナは鋭い目を光らせながら黒い吐息を吐いた…
そして
全身が黒に染まった!

「で…でかすぎる……巨大すぎる…」
トニスが声を漏らした。

近づいてくるその巨体はおよそ6メートルはある…! 今から、こんな巨大な敵と戦うのか…?!

ギラティナに鋭い目つきで見下され、5匹は凍り付いた。ハァハァと荒い息をした。

すると間もなくギラティナは口を大きく開けて黒い球体を吐き出した! その黒い球体はぱっと消えて、気がつけば5匹の背後に再び現れた!

ゴォォォォォォォォッッッ!!!!!

大きな風がなびき、5匹はその黒い物体に吸い寄せられる!

「これは……! ブラックホールだ! みんな気を付けろ! 飲み込まれたら死ぬぞ!」
トニスが全員に叫ぶ!
まるで吸引口を大きく開けた掃除機に吸われるように、飛んでいる3匹を吸い込もうとする! ルマ、トニス、ディオンはブラックホールに飲み込まれないように飛び続けるのに必死で魔法も技も使う余裕がない!

「くそっ! このままじゃギラティナに近づけないぞ! どうする?!」
「知るか! 俺は吸い込まれないように必死に堪えるのが精一杯だ!」
リーフはディオンの背中を必死に掴みながら言ったが即答された。どうすることもできないと。

「フフフフ…マヌケがぁ…500年前はちと油断して封印されてしまったが、今度はそうはいかぬぞ…500年! 吾輩は溜まりに溜まった鬱憤を晴らす時が来たぞ…」
ギラティナが喋った。するとギラティナは口を開いて何かエネルギーを溜め込んでいる…!

「まずいぞ! 破壊光線を撃って来るぞ!」
「マジかよッ!! クソッ!」
トニスが警告するも、どうすればいいのか分からない!ディオンは舌打ちをした。

「素晴らしいだろぅ…このコンビネーション…マヌケ共はブラックホールに吸われないように精一杯泳がせて…成す術もなく破壊光線の餌食になるのだ…さようならだ! 喰らえッッ!!!」

ギラティナの口にはエネルギーが大量に溜められて…それを一気に5匹へ放った!
「「「「「うぅあぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」
全員叫んだ。もうだめなのかもしれない…!
その瞬間、一瞬だけ目の前が真っ白になった! はっ! と気が付けば…前いた位置から少し右に動いていた! トニスがテレポートを使ったのだ! 少しの距離だが全員を、破壊光線が避けれる位置にワープさせたのだ! 破壊光線はブラックホールの中へ吸い込まれていった! なんとか避けた! しかし! トニスの体力の消費が大きかった! 念力で飛んでいる最中にテレポート、技を同時に2つ使ったのだ! どちらも集中力を高めて使う技なので、その反動でトニスはめまいを引き起こした!
「トニー! 大丈夫か?!」
「……………すまん………かたじけない……」
ジンはとっさにトニスの腕を掴んでブラックホールに飲み込まれるのを阻止した!


「ほほほぅ……避けるのかマヌケ共め…! だがテレポートはもう使えないらしいな! 次でトドメだ!!」
ギラティナは2発目を準備している! まだブラックホールは消えず、トニスはダウン! テレポートは使えない! 5匹はまたもや絶体絶命のピンチ…!

「ジン! ディオン! オレに、いい考えがある。耳を貸せっ。ギラティナに聞えないように。」
リーフはジンとディオンに耳打ちをする……その内容を聞いて2匹は……

「「はぁぁ?! 無茶すぎるだろ!!」」
「これしかない! 一か八かの一発勝負だ…!」

「……よし、やろう。」
「まじかよ……仕方ねぇ……何もできないまま終わるよりマシか…!」

「ルマさん! トニーをサイコキネシスで持っててくれ! 俺たち、今からアイツをぶっ飛ばしに行くから!」
「持つのはいいけド…! どうやってギラティナを倒しに行くノ?! ギラティナに全く近づけないの二!!」

「「大丈夫、まかせて」」
リーフとジンはルマに親指を立ててグッジョブサインを送った。

「リーフ! ジン! 来るぞ! 構えろ!」


「「フェア・ゲーエン・ゲルド!!!」」
リーフとジンは魔法で盾を作り、身構えた。

「盾を使う気かァ……だが、所詮その程度の小盾で吾輩の破壊光線が防げると思ったかァ? 甘いんだよォォォ! マヌケ共がァァァァ!!!」

「チャンスは一度きりだ。いくぞ…」
「おう」
リーフとジンは盾の取っ手を強く握りしめた。

「くたばりやがれェェェェェェェ!!!」
ギラティナの破壊光線が…放たれた…! 来るッ!

まだ、まだだ…もっと引き寄せて…

「今だ!!!!!」

リーフとジンは盾を正面まっすぐに、ドンピシャのタイミングで

押し出して!

破壊光線を!


キィィィィィィィィンンッッッッ!!!!


はね返した!!!!!


「なにィィィィーーッ!!!!??」
その破壊光線はギラティナに向かって突き進み、ギラティナの脇腹に直撃した!鼓膜を破れそうなほどの爆発音とともにギラティナは大きく仰け反った!
「うゴォォォォォォォォッッ!!!」
その瞬間、5匹の背後のブラックホールがだんだん小さくなって、消えた!

「リーフ! ジン! よくやった! しっかり掴まっていろよ!!」
ディオンは真っ直ぐギラティナに突っ込む! 「いつのまに?!」とギラティナが思うほど凄まじいスピードだった。リーフとジンの剣が届く距離まで近づいて


「いまだ! 思い切りジャンプしろ! 必殺技を放て!!」
ディオンは叫ぶと、リーフとジンはすぐさまディオンの背中を蹴ってジャンピング! 2匹は剣を抜き取って
「いくぜ!!」
「究極の必殺魔法!」

「「フェア・ゲーエン・ライジング!!!!」」
剣が黒く、白く、光沢が輝き、剣が大きくなった! それなのに簡単に振り回せるほど剣が軽い!

「「うおおおおおおお!!!!」」
「これがオレたちの力だ!」
「いっけぇぇぇぇ!!!!」

リーフとジンは剣を両手に握りしめて、Xを描くようにギラティナを切り裂いた…はずだった…!


「フフフフフフフフフフ……」

「なっ…」
「まじかよ…」
切り裂いたはずだった! なのに、弾かれてしまった!

「フフフフフフフ…吾輩も…盾なら使えるぞォ……」

暗黒魔法で作られた盾に弾かれてしまったのだ! ドス黒く、巨大な盾がリーフとジンの視界を覆った。ギラティナは手も使わずその盾を押し返した! 押し返した盾は2匹に直撃した…!

「がっ…!」
「はうっ…!」

まるで走行中の車に激突するかのようなすさまじい衝撃とともに2匹は吹き飛ばされる…! そして落下…

「リーーーフ!! ジン!!」
ディオンは素早く飛んで、落ちてくる2匹を背中で受け止めてなんとか落下死を防ぐことができた。


「フフフフ……フハハハハハ!!! 見ろ! 勇者が両方とも気絶してるじゃァないかァ! みっともない姿だなァ…!」
ギラティナは嘲笑うと回復魔法を自分に唱え始めた。破壊光線を受けた脇腹の傷が、なにもなかったかのように元に戻った…

「リーーフ!! ジン! 目を覚ませ! お前らが倒れたらギラティナは倒せないんだぞ!」
ディオンは必死に背中で倒れているリーフとジンに声をかけるが返事はない。

「リーフさン…ジンさン…ワタシは一体どうすれバ…」
遠くでその光景を見ていたルマは冷や汗を垂らしていた。
「…………ルマ………今、どうなってる……」
ルマが手を握っていたトニスの眩暈がようやく治まり、意識が回復し始めた。
「トニスさん…! どうすれバ…! リーフさんとジンさんが倒れてしまいましタ…!」
「……なんだって……」
頭痛でまだ頭がズキズキする…
トニスは自分のポケットに20粒ほど入っている頭痛薬の小瓶を手に取り、すべて口に流し込んで噛み砕いて飲みこんだ。
トニスは優秀な魔法使いである故、街で困っているポケモンを助けたりするために、魔力を使いすぎることが多く、いつも頭痛薬を常備している。
まさかこんなところで使うことになるとはな。
トニスは左目の片眼鏡を外し、一息ついて目を閉じた。すると突然、トニスの全身が光のオーラに包まれて持っているスプーンがぐにゃりと曲がった。

「ト…トニスさん…一体…」
「話しかけないでくれ。今から本気を出す。」
トニスの目つきが変わった。右手を胸に添えて、誰かに話し始めた。

「リヒトシティの皆! 光魔法使いの皆! 我に力を貸してくれ!」
なんと、数千、数万もいる大陸すべての光魔法使いにテレパシーを送ったのだった。普通は数匹でテレパシーのやり取りをするのだが、ここまで数が多いと体力の消費が桁違いに激しくなる。だがトニスは、何ともないかのように話し続ける。これが一肌脱いだトニスの「本気モード」だ。
「我等は今!ポラル島でギラティナと戦っている! 太陽を闇で覆い隠した真犯人だ! ギラティナは闇魔法とは全く種類が違う暗黒魔法を使っているんだ! その魔法でギラティナを倒すことができる勇者が倒れた! 勇者を完全に回復させる魔法を使うには皆の協力がいる! どうか! 北東のポラル島に向かって、回復魔法「フェア・ゲーエン・リカバリ」を放ってくれ!! 皆頼む! 力を貸してくれ!」
トニスは状況、指示を的確に、簡潔にすべてを話した。
すると少しずつ、光が放物線を描いてポラル島へやってきた。
「「「「もちろんさ!!」」」」
「「「「トニーのピンチはみんなのピンチ!」」」」
「勇者よ少しだが受け取れ!」
「「「「俺たち光の回復魔法!」」」」

「「「「「「「「フェア・ゲーエン・リカバリ!」」」」」」」」
たくさんの声がテレパシーを通じてトニスの心を刺激した!

そして数千、数万の光が、まるで虹を作るかのように放物線を描き、リーフとジンに届いた。
「ぬおおおおお?! なんだ?! 眩しいっ!」
リーフとジンを背中に乗せたディオンが驚く。リーフとジンが光に覆われて自分までもが光に包まれて視界が真っ白になるほどだった。

リーフとジンのケガは徐々に消えていき、2匹は意識を取り戻した。
「「……!」」

「やっと気が付いたか2匹とも。まだ疲れが残って必殺技は放てないだろう。我が必殺技をもう一発だけ撃てるように回復させてやろう。」
「ワタシも手伝いまス!!」
トニスとルマはそう言って両手を掲げて
「「フェア・ゲーエン・リカバルト!!」」
呪文を唱えると大きな光と闇の玉を作って2匹に向けて投げた。
「「うおおおおおお!!!」」
力が湧いてくる…! そして再び! 勇者の剣が黒、白のオーラをまとった!

「リーフ! ジン! これが最後の必殺技だ! もう次はないぞ! 気合入れて撃て!!!」


「「おう!!!」」

「もう一度飛ぶぞ掴まれ!!」
ディオンはギラティナに向かって急加速した!

「キシャァァァァァァァ!!!!」
ギラティナはストーンエッジを繰り出した! ナイフに匹敵する数百の鋭利な石が3匹に襲いかかる! ディオンは雄叫びをあげて“ゴッドバード”で次々とストーンエッジを避けながら突き進む!!! ディオンの体は炎に包まれて、背中に乗っているリーフとディオンは体が炭になってしまうほど熱くなった! 特にリーフは草ポケモンだ。全身にやけどを負ってしまうほどダメージを受けたが、アツアツパワーで気合が入る!
「チィィィィィィィ!!!!」
ストーンエッジを全て避けられ、ギラティナは守りの姿勢を見せた。
また、暗黒魔法で盾が作られる! さっきよりも強い魔力で必殺技を撃たなければ盾は壊れないだろう。リーフとジンは深呼吸をして集中力を高める。

「マヌケ共にこの盾が壊せるとでも思ったかァァァァ!!!?」
ギラティナはまた、暗黒の盾を作った…はずだった。

「………?! か……体が動かんぞ……?!」
なんと! 光の鎖のようなものがギラティナの周りを締め付けていたのだ!

「……残念だったな。ギラティナ。盾は使わせないぞ。」
「なっ…何ィィィィィィィィィッ!!!???」
トニスが魔法を使ってギラティナの動きを封じ込めたのだ!
「「「リーフ! ジン! 今だ! 撃てえぇぇぇぇぇ!!!!」」」
ディオン、ルマ、トニスは叫んだ!!

リーフとジンはディオンの背中を蹴って叫んだ!
「「フェア・ゲーエン・ライジング!!!!」」


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「「うおおおおおお!!!!!」」
叫ぶと、剣が前よりさらに大きくなった!!!
ギラティナは鎖に縛られて全く身動きがとれなくなっている!ギラティナは思わず「キシャァァァァァッッ!!!」と歯を食いしばって叫んだ!


「「母なる自然よ!!」」
「太陽を取り戻すために!」
「皆の無念を晴らすために!」

「「俺たちに力を貸してくれ!」」
天の神様は願いを聞き入れてくれたかのように剣はさらに大きくなっていく! 最終的にはなんと! 身長の2倍ほどに大きくなったのだ!
リーフとジンは渾身の力でギラティナに剣を振り上げた!

ドシュッッッ!!

切りつけた! 切り口からは大量の禍々しい魔法のオーラが飛び散った!
「ゴオアァァァッッッ!!??」
ギラティナは大ダメージを受けて口からも真っ黒なオーラが飛び散っていく!

「「ギラティナが弱っている! ルマ! 封印しろ!!」」

「任せなさイ!」
ルマはこの瞬間を待っていた。一体いままでどれだけ封印魔法を練習してきたのか、彼女がギラティナのすぐそばに作り出した巨大な魔方陣を見ればすぐに分かった。陣内には隅から隅まで細かい紋章が刻まれ、紫色の光がギラティナを包み込む!

「フェア・ゲーエン・スィーリング!!」

ルマが叫ぶと、紫色で巨大なシャボン玉がギラティナを包み込んだ! そして、3m、2m、1m、シャボン玉の直径はどんどん小さくなっていく! シャボン玉から抜け出すことができず、ギラティナは悶え声をあげて苦しんだ! シャボン玉はどんどん小さくなり最終的に1センチにも満たない小さなシャボン玉になって、



パチン! と跡形もなく弾けた。





「……俺たちは…やったのか…?」

ジンがルマに聞いた。ルマは振り向いて

「大成功ヨ!」
とにっこり笑った。

5匹は「やったぁぁ!!」と踊りだしたくなるほど嬉しくなり、抱きしめ合った。







それから2週間が経った。仮の太陽は消えて、夜を迎えて、朝になると本物の太陽が元気に顔を出すようになった。
太陽を闇で覆いかぶさった犯人が闇魔法使いではないことが証明されて周囲から少しずつ認められるようになった。

そして皆は幸せに暮らすことができたそうだ。
ジンは優しい女性が好きでルマに一目惚れしたらしい。ルマに猛アピールしたら友達からということでお付き合いをしているそうだ。
どうかお幸せに♡


「お~い! ブリーフ! オイラ達と追いかけっこしようぜ!」
「だ~か~ら! オレはブリーフじゃなくてリーフ! パンツじゃねぇ!」
クスネのスリックはそれから元気を取り戻し、街の案内役隊長として訪れたポケモンにフィンターニスの街案内をしている。暇があれば街に訪れた子供のポケモン達と遊び、隙さえあればリーフにちょっかいをかけてくる。
「きっしっし! オイラ、オマエのおやつの隠し場所、また見つけたもんね~ほらここにあるよ」
「なっ?! それは俺が仕事終わりに楽しみにしている大好きなチーズかまぼこ!」
「ディオンさんに隠し場所教えてもらったんだ~!へっへ~!返してほしけりゃオイラ達と鬼ごっこしようぜ~! ブリーフが鬼な! みんな逃げろ~!」
スリックとその友達はうわ~っと散らばって逃げた。リーフは「やれやれ」と思いつつもにっこり笑って
「まてぃ~全員捕まえてやる~!」
とスリックたちの後を手加減しながら追いかけたんだとさ。

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