ひらり、舞う

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
作者:太陽
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:5分
見ていただきありがとうございます。
完全オリジナル設定で、小説内に人間を出したのは初めてです。
よろしくお願いします。
「ついに、明日は卒業ですね。三年間一緒だったポケモンたちとも、この日でお別れとなります」

 とある高校の教室で、先生はそう言った。
この高校ではコミュニケーション能力向上のため全ての生徒にポケモンが渡され、三年間一緒に暮らすことになっていたが、卒業式前日というタイミングで『自立』の意味もあり、ポケモンたちと別れることが決まっていた。

「仕方ないよね……」

「離れたくないよ……」

 生徒たちは寂しそうな顔で、机の上にあるモンスターボールをただ見つめるしかなかった。

「それでは全員のモンスターボールを回収します」

 先生が一人目の生徒の机の前に立ったその時だった。一番後ろの席の女子生徒が突然、立ち上がった。

「……嫌だ。私は嫌だ!!」

「桜井さん!?」

 その女子生徒――桜井さくらい桃菜ももなは、教室を飛び出してしまった。


――――――――――――――――――――


「チェリンボ、出てきて……」

 桃菜はモンスターボールからパートナーポケモンであるチェリンボを出した。

「チェリ?」

「ごめん、チェリンボ……私、どうしたらいいのか分からないよ……。私も一人前になれたはずだと思ってたのに、あなたと離れるのが怖くてつい……」

「チェリ……」

 チェリンボを抱きしめながら、桃菜は涙を流した。確かにこの三年間で彼女は成長できた。だが、それと同時にチェリンボへの愛情は深かったことが分かってしまったのだった。
そんなことを考えていると……。

「桃菜!」

「桃菜ちゃん!」

「杏子、梅華……」

 桃菜の友達である唐沢からさわ杏子きょうこ、そして花木はなき梅華うめかがやってきた。
どうやら、心配になって追いかけてきたらしい。

「桃菜……チェリンボと離れたくない理由も分かるよ。分かる、けど……」

「わたしたちとだって、離ればなれになっちゃうんだよ」

 ハッ、と桃菜は気づいた。「チェリンボと離れたくない」。そのことだけを考えてしまっていたことで、ずっと仲良くしてくれていた友達ともお別れになってしまう。そのことが疎かになっていた。

「ううっ……私、私……どうしてそんなことが分からなかったの……」

 先程よりも更に泣いてしまった桃菜。そんな彼女の頭をよしよし、と杏子がでる。

「あたしたちだって、大切な相棒と離れるのは寂しいよ。でも……そうやって、少しずつ大人になっていくんじゃないかな?」

「きっとまた会えると思いますよ。チェリンボとも、わたしたちとも……信じていれば、きっと……」

 杏子と梅華の言葉を聞き、ついに桃菜はふたりの胸に泣きつく。
そして、叫ぶようにこう言った。

「うわああああっ……! 杏子……梅華……ごめんね……ごめんね……!」

「……頑張ろう、あたしも頑張るから」

「わたしも……! まだ踏み出すのはちょっと怖いけど、一人じゃないと、思ってますから」

「ありがとう、二人とも……そして……チェリンボ」

「チェリ?」

「いつか……また会おうね」

「チェリ!」

 桃菜の問いかけに、チェリンボは笑顔で返事した。
杏子と梅華もふふっ、と彼女とチェリンボのことを微笑みながら見つめる。
その瞬間、近くにあった桜の花びらがひらり、ひらりと一斉に舞い始めた。
まるで、桃菜の背中を押しているかのように……。

――私は一人でも大丈夫。そう思えるように、一歩ずつ、一歩ずつ――
寂しいけど、別れも大きな一歩。
今のご時世、誰かと離れ離れになる方も多いのではないでしょうか。
でも、いつかまた会えると信じて…。
「頑張ろう」

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

オススメ小説

 この作品を読んだ方にオススメの小説です。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。