闇の自分に負けないで

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:4分
 こちらを読む前にココとキレイハナが出逢ったバレンタインデー短編小説「とりあえずキスだけしようか?」を読んで頂ければ。
 あれから1カ月が過ぎようとしていた。寒々とした光景から少しずつ新芽が伸び、日差しにも温もりを感じるような季節へと、周りは少しずつ確実に変化していった。


 「ココく~ん!おはよう!!」
 「キレイハナ!やあ!!」


 あの日から僕は毎日のように幸せだ。それまでを閉ざされた夜とか凍えるような冬と表現するなら、今はもう希望の芽が出てきた春というべきか。あの日強引ではあったが、自分の気持ちを伝えられて良かったと思う。


 ……………護るべき者が出来たのだから。


 「ココくん。今日は何の日か知ってる?」
 「え…………?」


 満面の笑みのキレイハナからの質問に、モココの僕は一瞬返答に困った。僕の中では彼女といる時間が幸せで、周りのイベントだとかをあんまり気にしてなかったから。


 「そうだ。“ホワイトデー”………だよね?」
 「ピンポーン!さすがココくん!」
 「そこまで褒めなくていいよ。恥ずかしいじゃないか」


 僕は顔を赤くする。彼女はいつもこうだ。ひとつひとつのことを大げさなくらいに賞賛してくれる。嬉しいんだけどね。まだ慣れてないというか………とにかく照れくさい。でもそれが可愛い。


 「バレンタインデーの日、覚えてる?」
 「忘れるもんか。僕が人生で一番命懸けた日なんだから」
 「もう…………大袈裟なんだから」
 「それに………キスもされたし!忘れられないよ」


 僕の言葉に僅かに俯き赤面するキレイハナ。あれだけダイレクトで、しかもインパクトのある恋愛の始まり方って我ながらなかなか無いと思う。でも、なぜ彼女はそんな話をするのだろうか。


 「あのさ?もしかしてお返しに僕からキレイハナにキスしてほしい…………って思ってたりしてる?」
 「………正解かな?」
 「マジですか…………」


 ここは通学路だ。他のみんなもたくさんいるこんな場所で、朝っぱらからそんなこと出来るわけがなかった。でもするしか無いのか………、と思ったその時である。


 「ウソだよ!もう、すぐに本気にするんだから。…………聞いてほしいの。私の話」
 「話?」


 僕は足を止める。今さら改めて何なのか気になったのだ。すると彼女はこのように話してくれた。


 「私、ココくんにはもっと明るくなって欲しいなって。昔のこととかたくさんあって難しいかもしれないけど。何だか私といるときでも、イマイチ気乗りしてないのかなって不安になるんだよね」
 「仕方ないよ。そればっかりは。元々感情を上手く出せない方だと思ってるし………」


 キレイハナの言っていることは理解できる。確かに僕は毎日幸せだけど、「楽しい」って感情は特にない。むしろ重荷が増えたので、もっと自分に対して厳しくなって、もっと真剣にならないとダメだって考えてる。まぁ、人はそれを「重たい愛」だとか言うけれど。


 「それが言いたかったの?ホワイトデーと全く関係無くない?」
 「別に良いじゃん。バレンタインデーだってあんな感じだったし」
 「変なの………」


 キレイハナの言葉に思わず苦笑いしてしまう僕。するとその姿を見て、彼女が笑って嬉しそうに言った。


 「笑った………!!そうだよ!その顔!いっぱい見せてほしいなー!!」
 「そんな………恥ずかしいな………。でも…………」



 ……………君がそれで幸せな気分になるなら……………たくさん笑うべきだよね?





 多分そうだろう。彼女は1か月前、運命を感じたボクの強引な告白を受け入れてくれたんだから。今度はボクがそのお返しに彼女のお願いを受け入れなきゃ。


 それがホワイトデーのお返しになるのであれば…………。


 最後に彼女はこう言って、手を繋いでくれた。



 「昔の辛い思い出とか、周りの冷たい言葉とかで辛いときもあると思う。でも、それでも……………」



 あなたの心に棲んでいる…………闇の自分に負けないで…………。





 僕とキレイハナの恋の物語はまだ始まったばかりだ。いつまでもずっとこの幸せが続いて………いつか花開きますように。


 ホワイトデーってバレンタインデーより影が薄くなりがちだけど、ちゃんとしたイベントなのには変わらない。「お返し」って意味でのキレイハナとの約束…………ココは守って生きていけるのでしょうか。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

 この作品は感想が書かれていません。