チョコレートは甘いだけじゃつまらない!!

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作者:ドリームズ
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読了時間目安:9分
一人のツタージャが、凄く不機嫌そうな顔をしながら鳥居前へと歩いてくる。彼女が来ている着物の裾は、秋風によってヒラヒラと靡いている。

(はぁ……何でこんな寒い中、外で朝礼なのよ……。)

彼女は名をツツジといい、晴雪堂せいせつどうに勤める祈祷師の一人だ。晴雪堂が位置するのは、瑞雪町ずいせつちょうという町で、夜桜堂がある地域より一つ程季節が遅れている。
今は二月。真冬日の気候で寒いのが当たり前だが、ここは季節が遅れているため、今は秋。空には雲一つなく、秋晴れの清々しい朝……と言いたかったが、やはり秋といっても十一月中旬並みの気温。なかなかに肌寒い。そして、ツツジは草タイプのツタージャ。朝っぱらから寒い外に出るなんて、拷問だと彼女は思った。しかし、嫌だと言って拒む訳にもいかない。彼女は集合場所に着くと、手のひらに息を吹き掛け寒さを凌ぐ。彼女の口から放たれた憂鬱は、白く靄を作り、また消えた。

「おはよう、ツツジ!」

ふと、後ろから声を掛けられた。彼女のチームメイトである、マフユという一人のロコンだった。彼の羽織っている着物風ポンチョも、風に煽られ靡いている。彼は通常のロコンと違い、白い毛並みをしている。タイプも通常と違い、氷タイプを持っている。ツツジと彼は幼なじみであり、二人でチーム霜の経しものたてという名前で活動している。
ツツジはマフユを見るなり、眉をひそめる。それは彼の容姿にあった。

「寝癖立ってる……」
「へっ!?」

彼の頭を飾る真っ白な美しい毛並み。その中の一束が流れに逆らって飛び出している。彼はそれを聞くと、恥ずかしそうに顔を赤くする。自分で触っても分かる程の跳ね方だった。これに自分は気づかなかったのか!?
一方、その行動を見ていたツツジは、ため息を吐く。マフユは、普段は優しくしっかりしているのだが、所々抜けている所がある。まあ、そこが愛嬌なのだが。
ツツジは朝礼が終わると、マフユを自分の部屋へと連れていった。
















「よし、これで大丈夫。」
「有り難う、ツツジ!」

朝礼が終わった後、ツツジはマフユの寝癖を直してやっていた。鏡を通して映る自分達を見る。今ではもう見慣れた光景だ。祈祷師になる前から彼は寝癖を作ってくる事が多く、気づいたツツジがそのたびに直してやっていたのだ。

「でも気をつけてよ?あんたの、ただでさえうねりやすいんだから。」
「うん、気をつける。有り難うね!」

マフユは満面の笑みをツツジに向ける。その瞬間、ツツジは顔を背けてしまった。その行動を見て、彼は少し不安そうな顔をして、何かを言おうとした。が、その言葉が放たれる前にツツジは早口で言葉を放った。その声は少し上ずっていた。

「いっいいのよ。早く仕事しに行くわよ。」
「うっうん!」

















「それは恋じゃないですか?」

机を隔て、向こうに座っているトゲキッスが言った。彼女は頬杖をつきながらツツジを見つめる。その目は少し細められており、いかにその状況を楽しんでいるかが手に取るように分かる。

「ッ!?何言ってるのよ、ツバサ!そんな訳ないじゃない!!」

ツツジは一瞬で顔を赤くする。
彼女は依頼から戻ってくるやいなや、ツバサの元へと向かった。決して、マフユといるのが耐えられないとかそういう事ではない!……と思っておく。彼女は、ツツジからすると一つ上の先輩祈祷師で、新米の頃によく面倒を見てもらっていた。その事から、よく相談相手になってもらったりする。しかし、今回は相談相手を間違えてしまったらしい。ツバサは身を乗り出し、彼女の顔の前に自分の顔を持っていく。ツツジは、反射的に顔を後ろへと引いた。

「本当にそうなんですか?」
「そうに決まってるじゃない!」
「じゃあ、何故顔が赤いんでしょうね~?」

ツバサは、わざとらしく語尾を伸ばして言う。その言葉に、ツツジは肩をビクッと震わせた。それは、本当の事を言われた時に彼女がよくする、所謂癖という物であった。正直に言うと、図星なのである。最近、マフユとまともに顔を合わせる事が出来ない。もしやとは思ってはいたが、彼女はどうしても認めたくなかった。何故なら、相手は幼なじみの絶対にタイプじゃないと思っていた者なのだ。付き合うなんてとんでもないと思っていた者なのだ。そんな相手の事を好きになるなんて……。彼女のプライドが許すはずがなかった。
ツバサは、静寂を破るように声を放った。

「今は二月。明後日はバレンタインデーです。その時に思いきって告白してみてはいかがです?」

ツバサはいつもの優しげな表情へと戻っていた。ツツジは小さく頷いた。その頭を、ツバサは優しく撫でていた。















そしてバレンタインデー当日。ツツジは、四季桜の幹に身体を預けてぼぉーっとしている。無事に手作りチョコも作り終わり、あとはマフユを待つだけだ。もう既に、彼にはこの場所へ来るように手紙を届けている。じきに来るだろう。んっ?チョコレート作りはどうだったかって?……聞かないでくれ……。

「ツツジ~!!」

突然、声が響いた。それはマフユであった。その瞬間、ツツジの心臓の鼓動が激しくなる。彼女はつい下を向いてしまう。

「どうしたの?急に呼び出すなんて。」

彼は相変わらず笑顔で話しかけてくる。それに耐えきれず、ツツジは半ばやけくそで、手に持っていたチョコレートを彼に突き出した。

「これは……」
「チョコよ。今日、バレンタインでしょ?」
「あっ、そういえばそうだったね。有り難う!」

マフユは嬉しそうに、可愛らしくラッピングされた袋を見ている。これでいいのだ。やはり幼なじみは幼なじみとして生きるべきなのだ。これでいいのだ。 







本当にいいのか……?

彼女は自分の部屋へと戻ろうとする彼を、ポンチョの裾を引っ張るという事で止めた。その顔はリンゴのように真っ赤だった。

「私……あんたの事が好きだ!!」
「……知ってた。」

その爆弾発言に、ツツジは絶叫した。なんと、私な恋心は、もう既に見破られていたのだ。なんてこった……。彼女は更に顔を赤くした。それはもう、頭にやかんを置いた瞬間、ピィーッと音をたてて沸騰してしまいそうな勢いである。そして、マフユは更に彼女に追い討ちとばかりに、ある言葉を放った。

「だって……僕も好きだから……。」

マフユの頬も、ほんのりと赤くなる。いざとなると、こんなにも恥ずかしい物なのだなと思う。

「本当は自分から告白しようと思ってたんだけど、先越されちゃったや。」

彼は苦笑いを浮かべながら言った。それからしばらく、この場は静寂の支配下となった。しかし、それを断ち切るように、彼は口を開いた。

「これ、食べてみてもいいかな?」
「えっ、あっ、どうぞ……」

なんて情けない声なのだろうか。唐突の事で、ツツジの声は上ずっていた。しかし、そんな事はお構い無しに、マフユは一つチョコレートを口に入れた。

「美味しい……。」

その、程よい甘さとカカオの香りが広がっていく。しかし、マフユは一つ思う事があった。 

「少し苦いね。」
「そりゃそうよ。ビターチョコだもの。」
 
ツツジはマフユが飽きないようにと、味をミルク、ビター、そして、ホワイトの三種類用意していたのだ。

「僕、ビターはそんなに好きじゃないんだけど、何故かこのチョコはいけるんだよね。ツツジが作ってくれたからかな……。」
「……バカ……。」

マフユは、サラッと恥ずかしい事を言ってくる。ツツジはその言葉を聞き、悪態をついた。その頬は赤かった。











恋という物は、甘い。しかし、甘すぎるだけではつまらない。苦味や酸っぱさがあってもいい。それでこそ、恋という物ではないだろうか。
二人の心は溶け合ったのであろう。正に、このビターチョコレートのように……
久しぶりに短編に手をつけたドリームズです!
今回はバレンタインデーが近いという事で、恋愛小説を書いてみました。凄い少女漫画みたいになってますけど……気にしたら負けです!

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