チョコが紡ぐ絆

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作者:豆シヴァ
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読了時間目安:6分
恋愛にトラウマを持つ青年トレーナーと、パートナーのサーナイトが主人公の、バレンタインデーに向けたお話です。いつもよりちょっと長めになっております。
 どうも初めまして。私はとあるポケモントレーナーのパートナー、ほうようポケモンのサーナイトです。私のマスターはジムバッジを四つも獲得していて、バトルでは巧みな指示で高い勝率を誇る素晴らしいトレーナーなんです!パートナーとしても非常に誇らしいマスターなのですが、一つだけ悪いところがあります。それは…

 「ケッ、リア充が…仲良く手繋いでんじゃねぇよ。さっさと別れちまえばいいのに」

 大きな失恋をした経験があるらしく、街中を歩いてる時に恋人同士が仲睦まじくしていると、恨めしそうに暴言を吐くところです。ラブラブカップルとのダブルバトルでは、まるで般若のような顔に変貌して、相手を徹底的に痛めつけるんです。その時、エスパータイプの私が感じ取ったのは、マスターの奥底から湧き上がるドス黒い感情。憤怒・嫉妬・怨念などが混ざり合った、得体の知れない負のエネルギー。この鬱憤をバトルで発散するかのように、マスターは次々にジム戦を挑み、怒涛の勢いで今日も五つめのジムバッジを手に入れる為に挑戦する。

 「四つ集めても未だに心の溝が埋まらねぇ…。あと何個集めれば、俺は楽になれんのかな?」

 ポケモントレーナーとしてではなく、自己満足の為にジムバッジを集めるマスターですが、私は何も言えません。正直言うと、マスターが抱える心の傷は、ひたすらバトルをするだけでは治りません。勝った時に一時的に痛みは消えますが、またすぐに戻ってしまうのです。それでも私が止めないのは、それがマスターの勝負強さの原動力になっているからです。
 このままではいずれ、マスターは負の感情に支配されて、悪の組織に加入してしまうのではないか…。そんな予感がして私は不安になってしまいます。
 そんな感情を抱いていたせいなのか、私はバトルに集中できず、ジム戦は負けてバッジを獲得できませんでした。

 「も、申し訳ありませんマスター!私がもっとしっかりしていればこんなことには…どうか厳命な処罰を与えてください!」

 「気にすんなサーナイト、お前は何も悪くねぇよ。交代のタイミングを間違った俺の責任だ。今日はもう休んでくれ」

 マスターは私の頭を撫でながら、いつもの穏やかな表情で慰めてくれました。普段はこんなに優しくて頼もしいのに…どうすれば心の傷を癒やしてあげられるのでしょうか?
 何か良い解決策が無いか、街中を一人で散歩していると、どこからか甘い香りが漂ってきました。それと同時に、どこかで聞いたことのある音楽が流れてきました。

 チョコレイト ディスコ♪チョコレイト ディスコ♪

 「この曲は…!もうそんな時期になったのですね…」

 某三人組ユニットの映像が看板近くに映し出され、お店の中には女性客が楽しそうに商品を選んでいます。意中の相手に気持ちを伝える為に、時折真剣な表情でチョコレートを選ぶ姿に、羨望と嫉妬のようなものを感じました。

 「もし私が人間だったら、気兼ねなくマスターに送れるのですが…」

 恋愛にトラウマを持つマスターに送っても、心の傷口を広げるだけ…。そう理解しているつもりなのですが、私は店から目を離せずにいました。

 代わりなんかになれなくても、せめて隣に立つことくらいなら私にも…。


 そう決意を胸に抱いた私は、力強く一歩を踏み出してお店に入りました。そしてその店でチョコを購入した後、今まで経験したことの無い胸の高鳴りを感じながら、私はマスターにチョコをプレゼントしました。

 「えっ…これを俺に?何でチョコレートなんだ?」

 マスターは信じられないような表情で私を見ます。第一印象が驚愕というのは、ちょっと残念ですね。というか、チョコを渡されてその反応は酷いです。せっかく店員さんが選んでくれたのに…。

 「今日はバレンタインデーなので、感謝の気持ちを込めて…マスターに…その…チョコを…渡したくて…」

 あ〜私のバカっ!帰り道にさんざん繰り返し練習したのに、途中から恥ずかしくなって言葉が詰まってしまいました!マスターの前では完璧なポケモンでいたかったのに…。

 「そうか…今日はバレンタインだったのか。すっかり忘れていたよ、アハハハ…。
 最初は何で急にチョコをくれたのか、一瞬戸惑ってしまったよ」

 マスターは照れ臭そうに頭をかく。バレンタインの存在すら忘れていたなんて…私が必死に熟考していたあの時間を返して下さい。しかし残念ながら、時間はクーリングオフ対応していません。現実は非情なのです。

 「…それでも、サーナイトの気持ちはすごく嬉しいよ。俺が恋愛に対して、敵意を持っていることを承知の上で、ハート型のチョコをプレゼントするとはな…。
 確かに、いつまでも過去に縛られるわけにはいかねぇよな。サーナイトみたいに俺も、もう少し前向きに頑張ってみようかな…」

 私がプレゼントしたチョコを見つめながら、マスターは憑き物が抜けたような清々しい表情をしていました。ずっと感じていたドス黒い感情も抑えられて、いつもの優しいマスターに戻ってくれました。
 それからのマスターは変わり、恋人同士を見ても暴言を吐かなくなりました。ラブラブカップルとのダブルバトルでも、般若の顔つきにならなくなりました。ジム戦も難なく突破して、次の街へ向かう旅を続けています。バレンタインデーのおかげで、私とマスターの絆は、チョコのようにガッチリ固まりましたとさ。
         めでたし めでたし…









 「…そういえばさ、サーナイトってオスなのに、よくあんな女々しい店に入れたよな?しかも、そこそこ高いチョコレートなんか買っちゃってさ…」

 「すっごく緊張しましたよ!店員さんにもメスって間違われて、ハート型のチョコを勧められたので、仕方なく買っちゃいました!おかげで手持ちはすっからかんですよ…」

 「俺は別にロ○テや明○の安い板チョコでも良かったんだけどな〜」

 「…マスター、さすがにバレンタインでそれは無いです。というか、単に食べたいだけですよね?」

 「アハハハ、バレた?」

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