なわとび

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作者:太陽
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読了時間目安:6分
見ていただきありがとうございます。
太陽と申します。
拙いながらも頑張って書きましたのでよろしくお願いします。
「せーの!」
「いーち、にー、さーんっ、しーっ」

 とある小学校の体育の授業。
今日は大縄跳び。校庭ではみんなが楽しそうに回したり、飛んだりしている。

その中で私――大泊おおどまり陽花はるかは、不安だった。

「どうしたの? 大泊さん。怖そうな顔してるけど……」

 誰かに話しかけられた気がしたけど、怖くて気持ちが集中できない。だって私は幼稚園の頃から、人の『輪』に入るのが苦手な性格だったから……。

「大丈夫だよ。安心して。みんな跳べたんだから。大泊さんだってきっと跳べるよ!」

 みんなが跳べたから私も跳べる? ふざけないでほしい。誰だってそうじゃないってことにみんな気づいてない。

「わ、私……やっぱり無理!!」

「大泊さん!?」

 私はついに、走りながら逃げ出してしまった。ああ、やってしまった……。

「どうして、どうして……なんでみんなできるのよ!」

 涙が止まらない。みんなに合わせる顔がない。なんで? なんで?
私はただ、ひたすらに考えることしかできなくなっていた。
怖い。怖い。怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわいコワイコワイコワイコワイ。


――――――――――――――――――――


「カ……ルカ……ハルカ!」

「えっ?」

 誰かの声に呼ばれたのが聞こえて、私は目が覚めた。目の前には夢中でやっていたゲーム――ポケモンのチコリータだった。

「リコ……」

 そうだ。私は突然ポケモンの世界にいて、イーブイになってたんだ。そして今、私を呼んでいたチコリータはパートナーであるリコ。ポケモンになって最初に出会った子。
私とリコは、救助隊「リバティ」として、たくさんのポケモンを助けたり、お尋ね者を倒す活動をしている。現在はいろんなポケモンに協力してもらって、一緒の家に住んでいる。
そしてリコは、心配そうな顔で私に問いかけた。

「大丈夫だった? すごく苦しそうに寝てたから……」

「ああ、人間の時の夢を見てたから……なのかな?」

「夢?」

 私はリコに夢の内容を全て話した。

「そんなことが……昔のハルカは今と違って、誰かと関わることが怖かったんだね……」

「ポケモンになった時は、誰かを頼らざるを得なかったし仕方なかったんだけど……でも救助隊になって、私自身の性格も少しは変われたかなって……リコには感謝してるよ」

「えへへ。ありがとうハルカ! あたしもだよ」

 突然のリコのハグに、私は顔を赤らめ……。

「ちょっ、やめてよリコ! まぁ、今も悩んでることに変わりはないんだけどね……」

「と、いうと?」

「私……そのせいで縄跳びを跳んだことなくて……でも今なら練習すれば……もうこんな夢を見ずに済むかなって」

 そう。今日こんな夢を見たのは、もしかしたら逆に苦手を克服するチャンスかもしれない。私はそう思っているのだ。

「じゃあ、練習してみる?」

「えっ? 縄なんてうちにないよ?」

「『つるのムチ』だよ!」


――――――――――――――――――――


 私とリコは外に移動し、森の入り口付近まで来た。

「じゃあ、行くよ!」

「う、うん……」

「はあっ!!」

 リコは『つるのムチ』を出し、木の根元にしっかりと巻きつけ、固定させる。

「これでよし。さあ、回すよ!」

 ドキドキしてきた。人間時代の……あの頃のトラウマが蘇ってくる。でも……これを乗り越えた先に、何か待ってるかもしれない。

「せーのっ!」

 リコが待ってる……彼女のためにも、やらなきゃ……跳ばなきゃ!

「えいっ!」

 私は思い切って、リコが回すつるに飛び込んだ。

「おおっ! いーちっ、にーっ、さーんっ」

 あ、跳んでる……私、跳べてる?
まだ少し怖いけど、跳べたんだ……。
跳べば跳ぶほど、私はだんだん嬉しくなっていった。

「さんじゅーさん、さんじゅーよん、さんじゅー……あっ!」

 34回跳べたあと、つるに引っかかった。なぜだか私は、開放的な気持ちになっていた。

「リコ! 跳べた……私、跳べたよ!」

「良かったね! ハルカ……!」

 私とリコは、抱き合った。私の目からは、涙がポロポロとこぼれている。
嬉しくなった時に出る涙なんて、ポケモンになってからどころか、人生の中でも初めてのことだった……。

「あのね……私、ずっと怖かった。でも、今日で一歩踏み出せた気がする……またリコに助けられたね」

「そんな! ハルカと出会ってなければ、私は救助隊になってなかったし……あたしの方が、何倍もハルカに感謝してるんだから!」

「ううん。私の方が……リコのおかげで私は『理想の私』に少しずつ近づけたと思ってるんだよ。だから……」

 私はリコの目の前まで近づき……。

「ありがとう」

 優しくそっと、お礼を言った。

「そっ、そんなこと言われると……照れる……」

 先程とは違い、今度はリコが顔を赤らめる。
私は思わず「ふふっ」と笑みがこぼれた。


――――――――――――――――――――


ああ、怖がらないで良かったんだ。

一歩を踏み出すって、大事なんだ。

少しずつ、少しずつだけど、変われたらいいな……。

『憧れの私』、『理想の私』に近づけたらいいな……。
誰かの「輪」に入りたいけど、不安で仕方ない…。
そんな経験を、あなたも一度はしたことあるでしょうか。

苦手を克服するのは簡単じゃないけど、達成された時は、嬉しい気持ちがとても大きいと思います。

このポケダン小説が、誰かにとって、勇気を与えられるようなものとなりますように…。

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感想

お名前:紫雲さん
 読まさせて頂きました。

 人の輪に入ることへの恐怖が大縄跳びと重なり、その克服へと至ったハルカの成長が、短いお話の中にしっかりと記されていまして、その喜びに共感できます。ポケモンの世界でも彼女はこれからたくさんの困難に直面していく、そんなストーリーの入り口が見えてくるようでした。
書いた日:2020年02月07日
作者からの返信
紫雲様
初めまして。太陽と申します。
このような感想をいただけると思っておらず、とてもびっくりしてますが、嬉しいです!
誰でも人の輪に入ることがうまく出来ない経験はあると思うんです。その部分に共感していただいて、作者冥利につきます。
仰る通り、これからも沢山の困難が彼女を待ち受けています。この小説は、そんな彼女の成長…ステップアップを書いています。
まだまだステップアップ出来るかもしれない…と、そんな自分自身と彼女を重ねながら、この小説を書いていました。
続編の予定はありませんが、この感想でかなり勇気づけられました。これからも頑張ります!
この度は本当にありがとうございました!
書いた日:2020年02月15日