Morder ~穢れた薔薇~

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作者:ドリームズ
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読了時間目安:8分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「お前さえいなければ、俺はこんなに困らなかったんだ!!」

鈍い音と共に、ぐわんと頭の中の物が揺すられる。オレは音を立てながら、崩れ落ちた。こんな事は日常茶飯事だ。起き上がろうとするオレに、父親おとこは脚蹴りを食らわす。丁度腹部辺りにクリーンヒットし、危うく中のものが込み上げてきそうになった。オレは床にへばりついているしかなかった。
オレ_リオルのカイトが幼い頃から、あいつは手を出していた。オレが物心ついた時から、あいつは母さんと良く口喧嘩をしていた。最初こそ、そこまで激しくはなかったものの、それは日に日にエスカレートしていった。ある日、あいつが母さんに手を上げたので、オレは咄嗟に割って入った。

『父さん、止めてよ!』
『テメェ、親に口答えするのか!?』

そう言って、あいつはオレに平手打ちをかましてきた。リオルだった事もあって、オレの体は軽く飛んだ。激しく打ち付けた背中から、じわじわと広がっていく鈍い痛み。今でも覚えている。それからは、毎日が地獄だった。毎晩あいつに仕事の八つ当たりともとれる暴力を振るわれた。あいつは毎回『躾だ!』と言っていたが。そして、オレが中一の時だった。両親がついに離婚した。けれど、離婚についてはどうも思わなかった。どうせこうなるだろうと思っていた。オレがショックだったのは、母さんがオレを置いていった事だった。あの時はオレが助けてやったのに……母さんはオレを置いていった。正直、凄く悲しかった。けれど、今は納得している。母さんにとっても、オレはお荷物だったんだろう。
あいつはようやく気が済んだのか、寝室に戻っていった。オレは遅い風呂に入る。洗面台の鏡を見ると、美しい青い毛並みが、少し赤くくすんでいた。いつか、この青い毛並みが赤く染まり……
なんて考えながら、オレは風呂に入った。

~~~~~~

朝になり、オレは学校に行く支度をする。鞄にいる物を全て放り込み、フード付きのパーカーを羽織る。そして、頭までスッポリとフードで覆い隠す。やはり、自然回復では間に合わない事もある。切り傷や刺し傷がその類だ。あいつは、特別機嫌が悪い時には、刃物類を使ってくる事がある。最初こそ、痛くて恐ろしく感じたが、今ではそれさえも感じなくなった。傷は浅ければ、一日すれば大体治るのだが、深く深くやられた傷は、さすがに治らず誤魔化す事が出来ない。痣は青い毛並みに隠されて、殆ど目立たないのだが。なので、オレは毎日フード付きのパーカーを着ていく。家でこんな事をされている事が知られたら、誰も寄ってこなくなってしまう。まあ、今でもだいぶ警戒されているけれど。これ以上失ったら、オレは……って何考えてるんだ!オレはそんな事さえ思ってはいけないんだ。何も感じちゃいけないんだ。何も考えちゃいけないんだ。

~~~~~~

「ねぇ、あれカイトじゃない……?」
「ほんとだ……」
「本当におっかない顔してやがる……」

オレが学校内に入るやいなや、そばにいたやつらが口々に言う。オレは笑う事が出来ない。表情筋というやつは、何処かで落としてきてしまったようだ。そのせいで、他のやつらはオレの顔を見て、寄ってこない。オレは好きでこんな顔をしている訳じゃない。つい心の中で反発してしまう。そう思うのは、気づいて欲しいと思っているからであろう。そんな感情は、オレは持ってはいけない。オレはその感情を、頭から消し去る。一体、オレは何のために生きているのだろうか……。何でオレは死なないんだ……。一生、あいつの暴力を受けていかないといけないのか……?そう思うと、何だか胃が変になってきた。オレは、他のやつらに悟られないように、トイレへと急いだ。

~~~~~~

トイレまでたどり着くと、個室に入り、素早く鍵を閉めた。扉にもたれ掛かり、どうにか抑え込もうと、荒い呼吸を繰り返す。しかし、駄目だったようだ。

「うっ……お゛え゛っ」

オレの嗚咽く音と咳き込む音だけが響く。幸い、ここのトイレが生徒に使われていなかったのが救いだった。こんな音を聞かれたら、一瞬で気づかれてしまう。虐待を受け始めてから、もどすという行為は結構な確率でしている為、慣れてしまった。オレが一番心配なのは、学校でこの行為を目撃されないかだ。もし、誰かに目撃されて、上手く虐待の事まで発覚してくれるのならいいが、そんな事はないだろう。あいつに言いくるめられて、オレがいじめの標的になって、「ゲロマシーン」とか言われるのが落ちだ。学校にも居場所がなくなるのは、ごめんだ。

~~~~~~

今日もオレは、誰とも話さず一日を終え、帰路に就く。あいつは夜にならないと帰ってこない。それまでに今日出た宿題を終わらせようと、鞄から教科書やらプリントやらを取り出し、リビングへと向かう。ここで寛げるのは、あいつがいない今だけだ。どうせならテレビを見ながら勉強してやろうと思い、オレはテレビをつけた。そこに映ったのは、映画か何かの殺人シーンだった。普通なら、「映画の放送でもしているのだろう。」で済むはずだった。しかし、オレは違った。

「そうか……最初からこうすればよかったんだ……」

それを見た瞬間、オレはどんな顔をしていたのだろう。オレの中で、何かが切れた気がした。

~~~~~~

その夜、いつも通りあいつはオレを痛めつけた後、寝室へと戻っていった。オレは、あいつが寝静まるのを待った。そして、寝た事を確認すると、オレは台所へと向かった。そして、ある“物”を手に取ると、あいつの寝室へと向かった。オレは、音を立てないように気をつけてドアを開ける。そして、あいつが寝ているベッドの際まで近づくと、それを高く高く振り上げ、あいつの胸元へと突き刺した。その瞬間、噴き出す鮮血。美しい……実に美しい……。それらは壁へと飛び散り、これまた美しい花を咲かせていく。まるで薔薇だ。あかかった。赤い、紅い、朱い、緋い薔薇だった。不吉な音がなるたびに咲いていく薔薇達。美しくて、美しすぎて、ゾクゾクしてくる。仕舞いには、オレは嗤っていた。

~~~~~~

何回か同じ動作を繰り返していたオレは、あいつが動かなくなった事に気づいた。オレはそれをじっと見ると、部屋を出た。
おれは風呂場へ向かい、体を洗った。そして、自分の部屋へと戻ると、いつも着ているフード付きパーカーを羽織った。そして、いつも通り深く深くフードを被る。昔買ってもらったリュックサックに必要な物を詰め、先ほどの“物”をタオルに包んで優しく入れた。そしてそれを背負い、先ほどの部屋へと戻る。窓を開けると、冷たい風が吹き抜け、カーテンを巻き上げる。ふと、後ろを振り返った。 

「バイバイ……父さん……」

オレは窓から外へ飛び出した。持ち味の身体能力を生かし、建物を伝い、屋根へと上る。下を歩くと、ポケ目についてしまうからだ。オレは屋根から屋根へと飛び移り、家から離れる。もう戻る場所はない。オレは変わったんだ。だから……お願いだから……









殺人鬼ありのままのオレを受け止めてくれよ。
初めての殺人物です。あまりグロテスクな表現にならないように心がけました。このような出来事は、現実でも起こりうる事です。少しでも、そのような子が減ればいいんですけどね……なかなか難しいですからね……。

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