砕ける鎧と砕けぬ闘志

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作者:要石の森
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読了時間目安:18分
──そのカブトプスと少年の出会いは、何気ないものだった。


少年「採れない……」

カブトプス(人間の子供。木の実を採ろうとしている。


チッ……俺が先に目ぇつけてたのに。
と、野生のカブトプスは思った。


少年「ハァ……」

カブトプス(諦めたか)

カブトプス(……待てよ、どうしてだ?)

少年「……帰ろうかなぁ」


少年は、どうやら帰路につくようだ。
しかしカブトプスは、どこか腑に落ちない。


カブトプス(あんな距離のきのみ、少し手を伸ばせば届くハズだ。苦労するワケない。それにアイツ……なんか、足を引きずってないか?)

少年「……今日も、行かなきゃ」


カブトプス『『オイッ!!!』』


少年「!」ビクッ

カブトプスは、威勢よく少年に呼びかける。
しかしポケモンの発語。驚かすのには成功しようと、人間には意味など通じない。

少年「え、キミ……ポケモン?」

カブトプス『どーせわからねぇと思うが、お前、男だろ? ちんちんついてんだろ? それなのに、情けねぇ』

少年(なにを鳴いてるのかわからないけど、もしかしてこのコ……あのきのみがほしかったのかな?)

少年「……だったら、自分でとりなよ。ボクには、あのきのみは取れなかったから」

カブトプス『だから、なんで取れないんだ?』

少年「ポケモン、かぁ……」

カブトプス『?』

少年(皆 ポケモントレーナーになっていく中、ボクだけこの病気でなれていないからな……)


病気を治すために医師探しで引っ越しばかりして。
友だちもできずに。

一生、このままなのかなぁ。


カブトプス(わかった、コイツは苦しんでいる。……のは感じたが)

少年「」ウジウジ

カブトプス(この態度、見てられねぇ)


乗りかかった船だ。
だったら、もう、どうとでもなれ!



カブトプス『おいッ、お前ッッ!!
俺が……お前のポケモンになってやるッッッ!!』ドオォッ



少年「……!?!?」


カブトプス(……言っちまった。でも、どうせわからねぇよな……)

少年「……あ、そうだ。“コレ”があったんだ。耳に付けてっと……」カチャッ

カブトプス(ん……?)

少年は、補聴器らしき何かを耳へ装着する。

少年「ねー、キミ、もう一回言ってみてくれる?」

カブトプス『あーもう、お前のポケモンになってやるって言ったの! これだから人間は』

少年「えッ!?」

カブトプス『えッ!?』


……まさか、俺の言葉を理解している!?


カブトプス『嘘だろおい……さっきまではなんとも』

少年「あぁ、これね……『プラズ・マ・イヤー』って言ってね。付ければポケモンの言葉を理解できるようになるんだ!」

カブトプス『……そんなハイテクな代物……どこで』

少年「それより! ……キミ、ボクのポケモンになってくれるの!? ホントにッ!?」

カブトプス「あー……。あぁ言ったよチクショウ。オスに二言はねぇ。なってやるよッ、お前のポケモンになッ!! ほら、ボールだせや。入ってやるから」

少年「ちょっと待って……突然のことで、嬉しくて……。でもボク、その、ボール持ってないんだ……」

カブトプス『突然のことなのは俺も同じだ。しゃあねぇや、ボールをショップまで買いに行くぞ』


──そして、フレンドリィショップ


少年「……」ゼェゼェ

カブトプス『おい、大丈夫か?』

少年「うん、“今は”まだ……」

カブトプス『ならよかった。さてボールを──』


???「おや、これは偶然にも。ボク……。立派なポケモンをお持ちだ。いつの間にポケモントレーナーにお成りで?」


カブトプス『……?』

少年「あ、久し振りです……」


少年に声を掛けた人物は、学者風の男である。
少年とは、“とある事情”で顔馴染みだ。


男「プレゼントした『プラズ・マ・イヤー』、その後お役に立っていますかね?」

少年「うん、たった今 役に立ったよ!!」

男「ほう、それはそれは……。で、いつかの件、考えてくれましたかな?」

カブトプス(誰だ? この質問攻めのきな臭い野郎は)

少年(そんなこと言っちゃダメだよ。この人はどこかの研究施設の施設長らしいんだ。つまり偉い人ってワケ)

カブトプス(で、なんでそんな偉い野郎が、お前なんかと知り合いなんだ?)

男「……まだ考えあぐねているというワケですか。では、いずれまた会いましょう」

少年「は、はい」

男「良い返事を、お待ちしております──」


……そう言い残し、その男は去って行く。


少年「あの人はね、ボクの病気を研究して、治してくれるかもしれないんだ」

カブトプス『いいことじゃねぇか。つまり手術ってワケだろ? ……はーん、お前、手術が怖いのか』

少年「うん、とても怖いよ」

カブトプス『……あのさ、そこは否定しろよ。男だろ?』

少年「あと、ふんぎりがつかないんだ。病院じゃなくて、どこかの研究施設でもないと治せない程の難病。手術しても、前より悪くなるんじゃないか。って……」

カブトプス『……。まぁ、よく考えるこっt』ガンッ

カブトプス『『痛っつぃっ!!』』ビュンッ

少年「ど、どしたの?」

カブトプス『あぁ、言い忘れたっけ。俺の特性はな──』



俺の特性は“くだけるよろい”。

ちょっとの衝撃ですぐに甲羅が剥がれる。それだけの、マイナス特性だ。



少年(あれ、でも……)

カブトプス『さ、ボールを早いとこ買って、俺を収めてくれ。個人的には、ダイブボールに入りてぇな……』


──そして 少年の家

お母さん「あ、お帰りなさい~」

少年「お母さん、ボク、自分のポケモンを手に入れたよ! てか、初めての友だちだよ!!」

カブトプス『おいおい、トモダチときたか』

お母さん「あらぁ~、そうなの。へー、立派なカマキリちゃんねぇ。さっそくだけどカマキリちゃん、その立派なカマでこれ切ってもらえるかしら」ドンッ

カブトプス『え』

お母さん「ほら、大根とキャベツとえのき。いまから味噌汁作るんだから、ちゃんと手……いやカマ洗いしてからお願いねー!」

カブトプス『俺、カマキリじゃ』

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──ザクザク


カブトプス『強引で天然であと、怖いもの知らずだなお前の母さん。こんな怖そうなポケモン、フツー家にそうそう入れんぜ』

少年「そこがね、いいところ。僕にもさっきの手術を楽観的に勧めてくるし。でも中々ね、気持ちがね」

カブトプス『そういえばその『プラズ・マ・イヤー』も、研究施設の賜物を貰ったってワケか』

少年「技術は本物だよ。あるいは信頼してもいいかもしれない。……ホントに僕、懐疑主義者なんだなぁ」


こうして、少年はポケモントレーナーとなり、少年とカブトプスは共に生活を営むこととなったのだ。

ーーー

カブトプス『……』ムシャムシャ

お母さん「よく食べるわねー、カマキリちゃん」

少年「ホント、よく食べる……。ポケモンフーズじゃなくて、僕らと同じものを食べてるし」

カブトプス『まぁ、悪くはないんじゃないかな。人間の食べ物ってのも……でも少しカロリー高めか? あと洗い物面倒だからか大皿にてんこ盛りに盛ってるのもマイナスポイン……痛っ、舌噛んだっ!!』

お母さん「なんて言ってるの?」

少年「美味しいだってさ」

ーーーー

少年「この流れ、前に書いた奴と一緒だね」

カブトプス『セルフオマージュと言いな。あと風呂ぐらい喋らずにゆっくりと浸かろうぜ。しかし、お前といると──』

少年「なに?」


カブトプス『楽しいよ』


少年「……」

カブトプス『俺、野生のポケモンだから……暗い洞窟でずっと一匹だったからな。だから、今が楽しい。とても……楽しい』

少年「……勇気だよ、カブトプス」

カブトプス『?』

少年「カブトプスは、『ボクのポケモンになる!』って言ってくれたよね。本当に、それって、とても勇気のいることだと思うよ」

カブトプス『……照れるな。なんか。ハハ……』

少年「あ、カブトプス。顔真っ赤だよ」

カブトプス『おいおい、よせよ』

少年「いや違う! もうこんな時間だ! 長いこと……風呂に……浸かりすぎ……たカらノボセ」クラッ

カブトプス『お、おい、しっかりしろ!』

ーーーーー

少年「最近ス○ッチ買ったんだ。ヤ○ダ電気に奇跡的に売っててね」

カブトプス『マ○オカートか。それもいいけど、ド○クエ楽しみだなー。ほら。見ろ! 俺のドリフトテクニック!!』ギィギィ

少年「すごいねー、カ○ンでよくそこまでスピード出せるね。あとそのカマでよく持てるね。ジ○イコン。よし、僕も負けてられr」ボトッ

少年「あ」

カブトプス「お、おい、ジ○イコン落としたぞ。その……大丈夫か?」

少年「……」

カブトプス(そういえば)

少年「……ちょっと、身体がね。少し、ちょっちだよ。悪くなってるだけだから……アハハ」

カブトプス『……』


痩せ我慢だ。
コイツは少しずつではあるが、確実に悪くなっていっている。

息が切れるようになってきた。
食事を摂るのもダルそうな様子。
最近は、歩くだけでもやっとという有様。


全ては、“硬化”による症状だろう。


少年「……て、笑い事じゃないよね」

カブトプス『ちっとも笑えるもんか! お前がいなくなったら、俺は……!』

少年「…………だから、勇気を出すよ」

カブトプス『!』

少年「勇気を出して、施設の手術を受けることにする。症状を完治させて、カブトプス。キミと一緒に、ポケモンチャンピオンの道を目指すんだ!」

カブトプス『お前……』

少年「カブトプス。キミと出会わなかったら、ボクはそんな夢なんて抱くことすらできなかっただろう。キミは……本当に“光”のような存在だよ」

カブトプス『俺が、光──』

……。

俺は、輝かしいポケモンたちがいる一方で、そんな日陰に隠れてホソボソと暮らす、“影”のような存在だと感じていた。

チャンピオンになることなんて、夢の夢だと思っていた。


……そうだよな。
夢を見ることぐらい、自由だよな。

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カブトプス『俺は、影でいい』

少年「え?」

カブトプス「お前こそ、俺の光だ。病気もそうだが、俺はそんなお前の負の面を知り、全てを受け入れ、包み込む。そんな……影でありたい」

少年(そこまで……思ってくれていただなんて)

カブトプス「まぁ、なんだ。手術して、良くなろうな! 俺も応援しているさ」

少年「ありがとう……カブトプス。うん、ゼッタイにね!!」



しかし数日後。事態は……一変する──



カブトプス(今日も買い物ときた。あのお母さんめ)

《大丈夫大丈夫! このメモを店の人に見せて、お金を渡すだけだから!! できるってできるって。カマキリちゃん》

カブトプス(まぁ、そんなおつかいも楽しいもんだ)


……その時。


男1「なるほど、つまりは人柱ですか」

男2「そういうことですね。我々の輝かしい未来のためには……尊い犠牲が必要なワケです」

カブトプス(なんだ? ……あ、あの片割れの男)


『『では、いずれまた会いましょう……』』


カブトプス(あの時の……施設長じゃないか。そういえば前もここら辺で、奴に出会った……)


……カブトプスは何気なく、会話に耳を傾ける。


施設長「あの少年の身体から病気のウイルスを作り出し、少々改良させ、私たちの所有するポケモンたちに投与する」

もう一人の男「そして硬度の上がったポケモンたちを、『聖戦』に利用する。戦闘力は増大しますが、難点は……“長持ち”はしないということでしょうか」

カブトプス(!!?)

もう一人の男「すると、少年の家族にはどう説明するつもりで?」

施設長「ただ『失敗しました』とでも伝えればいい。慰謝料をたんまりと添えてね。それ以上の莫大な金が、この件によって我々に転がり込んでくるのだから」

もう一人の男「そう、全ては我々『プラズマ団』のために、か。フ……フフフフフフフフ」



「「アハハハハハハッ!!!」」



カブトプス(……コイツら、初めからアイツを利用して、後は殺すつもりだったのか……。許せないッ!!)

もう一人の男(プラズマ団員)「……ん?」

施設長(研究員)「コイツ……あのガキのところの……まさか、聞いたかコイツッ! プラズ・マ・イヤー 装着ッ!!」ガシュッ

カブトプス『察しの通り。そんな某ナックアニメのセリフを吐いたところで、今更遅い。聞いた以上、俺が……貴様らをぶっ倒すッ!!』

団員「チッ、どうします 同士ッ!!」

研究員「……いや、待てよ。これは良い機会だ。せっかくだ、“ヤツ”を扱ってみることにしよう」

団員「おぉッ、遂にヤツを……!?」

カブトプス(……ヤツ?)


研究員「いでよッ、古代より蘇りし暫定最狂兵器……『プロト・セクト』ッ!!」


研究員はそう言うと、謎のモンスターボールから、これまた得体の知れない異形なるポケモンを繰り出したのだ。



プロト・セクト『ギシャシャシャーーッ!!!』



そのモンスターは、全身が人造物を彷彿とさせる、鋭角的な姿で構成されていた。


カブトプス(コイツは……!?)

団員「プロト・セクトは、我がプラズマ団がカセキから復活させて科学の力によってパワーアップさせたポケモン! 未完成ながら、その実力は史上最強!! 凄まじいポケモンなのだ!!!」

カブトプス「……買い物は、後回しかな。コイツらの首を土産に帰るとしよう……。“すいとる”ッ!!」ヒュンッ


カブトプス、プロト・セクトの生気を吸い取りにかかるが。


プロト・セクト『……シャラッ!!』


──シュンッッ!


カブトプス(! は……や…………)


速さの理由は、プロト・セクトの“しんそく”である。


カブトプス(いっ……)


『くだけるよろい』発動。カブトプスの防御が下がる。


カブトプス『……“きりさく”ッ!!』ザザッ

研究員「同じく切り裂けッ、プロト・セクト!」

プロト・セクト『……ギシャラァァーーッ!!』ザシュッ


カブトプス『ぐぅッ…………』


カブトプス(まずいッ、どんどん防御力が下がっていく)


その後もプロト・セクトによる怒涛の攻撃が続く。
しかし一方のカブトプスは、もはや、心が折れにかかっていた。


カブトプス(俺、戦うの元々好きじゃなかったしなぁ。アイツに済まないことをした。チャンピオンには、なれそうにも、な──)



『諦めちゃダメだよッ、カブトプスッッ!!』



カブトプス『……!』


声の方に目をやると、いつしか少年が、カブトプスの前に居る。


カブトプス『お前──』

少年「……」ゼェゼェ


……少年の症状は、目で見る通りに進行していた。

多量の汗。筋肉の更なる硬化。
機器なしでは、呼吸もままならない。


しかし、それでも。


カブトプス(お前は、俺を……!!)

少年「あまりに帰りが遅くてね。ハハハ、文字通りの足手まといだけど、来ちゃったよ……」

カブトプス『心配し、来てくれた』

少年「話はわかった。アイツら、ハァ、僕を騙していた。キミと気持ちは同じだよ。……『『許せない』』ッ!!」

研究員「許せなかったら、どうなるっていうんだ? 死に損ないのポケモンに、貧弱な餓鬼がッ!!」

少年「カブトプス。ボクはキミにトレーナーとして、一度も支持を出したことなんてなかったね。……雑用ばかりで」

カブトプス『あ、あぁ』

少年「今こそ、その時だ。…………キミのその特性を武器に、ひたすら前へと前進するんだッ!!」

カブトプス「!!?」

カブトプス『何を言うんだ。そんなことをすれば、攻撃をモロに喰らって……』

少年「知らなかったのかい? キミのその『くだけるよろいは』……。防御力が下がる代わりに、素早さが上がるんだッ!!」

カブトプス『!』

少年「君自身も知らなかったようだね。でももう大丈夫。知ることは……叡智は、最高の武器になるッ!!」

カブトプス『よぉーし……いくぞッ!!』シュンッ

研究員「クッ、ひたすら攻撃しろッ、プロト・セクトッ!!」


──ガンッ、ドゴォッ!


カブトプス(クッ、一撃一撃がなんて重い。だけど、だけど……心が、諦めない心が……)




俺に、芽生えたッ!!!





プロト・セクト『ギシャゴラァーーーッ!!!』



剥がれる甲羅。折れる鎌。


だが…………闘志は砕けないッ!!!



カブトプス『……オォォッ!!!』ヒュンッ

研究員(……“しんそく”の速度を超えたッ!?)



カブトプス『…………斬り裂くゥゥウッ!!!』



 シ ュ バ ッ !


プロト・セクト『ゲシャゴラァーーーッ!!!』


その神威なる切り裂き攻撃が、プロト・セクトの身体を一刀両断。


研究員(……!!!)


カブトプス(ゴメンな、やっぱ。お前との約束、守れなかった──)



……
………

------------------------

その後、プラズマ団を名乗る男たちは、イッシュ警察によって連行されていった。

ボクとカブトプスは、詰まるところ、勝利を収めたのだ。


だが、その代償は──


少年「……」


──カブトプスの身体は、修復が間に合わない程に、砕け散ってしまっていた。



つまり、カブトプスは……死んだのだ。



少年(嘘、だったの……?)


ボクと一緒に、ポケモンチャンピオンを目指すって。



少年(う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!!)



──その時だ。


???「カブトプスの遺骸から血清を作れば、君の症状を完治させることができるだろう」

少年「!?」

アクロマ「私はプラズマ団のアクロマと申す者。迷惑を掛けた償いとして、その手伝いをさせて頂きましょう──」

・・・・・・

その後、そのアクロマさんの言う通り、僕の症状は完治した。

そして僕は、新しいポケモンを捕まえ、これからもポケモントレーナーとして活動していくこととなる。

お母さんは、相変わらず呑気だけど。
僕のことを、カブトプスの分まで応援してくれている。


頑張らなきゃ、いけないな。


……そう。

僕とカブトプスの、一人と一匹の三脚で──


………
……



……プロト・セクトをこのまま腐らせるのは惜しい。


アクロマ「“この”遺骸と組み合わさることによって、最強の完成体が生まれるだろう。そう──」


『ゲノ・セクト』が…………!!



……
………

くだけるよろいのカブトプス - 完 -

 & To Be Continued …

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