喰いしん坊“ギジギジ”

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
作者:襾石ノ杜
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:5分
ただ、お友だちが、ほしかった。
お父さんは、地方各地を飛び回る研究者です。

ある時 カロス という遠く離れた地方から、お父さんは なにか、“シンギジュツ”というモノを持って帰って来ました。


「ゴメンな、今まで構ってやれなかったけど、これからはいっぱい遊んでやれるようになるぞ!」


お父さんのその言葉が、アタシはとても嬉しかったのを覚えています。


「この技術さえあれば、発電所をハウオリに作って、莫大な金が──」


でも、その後に言っていたお父さんの言葉が、幼かったアタシにはあまり理解できませんでした。

そのバクダイナカネやらと、アタシのどっちが大事なのかな? とぐらいに感じていました。


そして数日後。

ある時に、小さな小さなポケモンが、ポトッと、アタシの頭上に落ちてきました。


『グジジ……』


あなた、お名前はなんて言うの?
どこからやって来たの??


アタシには、友だちはいませんでした。
お父さんの都合で、転校ばかりしていたのです。

だから、多分、アタシは、友だちがほしかったんだと思います。


単純に、本当に単純に──


『ギジジジ…………』


アナタ、うなってばっかだね。
うん、そうだ、付けてあげる。『ギジギジ』なんて、どう??


『ジ?』


あ、気分を悪くしないでね。
私、あなたと仲良くしたいんだ!!


『ジ〜〜♪』


アタシは、このコと散歩に出かけることにしました。

お父さんに黙って、こっそり……と…………。


でも、ハウオリシティで。
アタシたちに向けられる目線が、なんだか可笑しいのです。


「なんなの、あれ……」

「ポケモン……? でも、あんなの見かけたことない…………」

「アタシたちの前に、出てこなければいいのに…………」


(……)


アタシとギジギジは、お家に帰ることにしました。

でも、その夜、アタシはお父さんに、物凄く怒られました。


「あれ程一人で出掛けるなと言ったろう! この畜生がッ!!」


頭を叩かれました。
お腹を蹴られました。
思い切り、殴られました。


「ごめんよ、私はお前のことを本当に心配しているんだ。だから、もう、勝手に出て行ったりしないでくれよ……」


……うん、わかったよ、お父さん。


アタシはこう、応えました。


いつからだろう、お父さんが暴力を振るうようになったのは。

いつからだろう、お父さんが上っ面だけの優しさで、アタシに接するようになったのは。


いつからだろう。

暴力を受けても、全然痛くなくなったのは──


やがて。
お父さんの待望の発電所が、アタシたちの住むハウオリに完成しました。


でも……。


【アローラウィーク 299号 ハウオリ発電所 爆発事故!!!】


・発電所の所長はカロス地方から違法に入手した兵器の力を悪用し、
 発電を行っていた疑いがもたれている。

・実の娘に対しても兵器の力を注入しており、
 娘は異形の姿にと変わり果ててしまっていた。

・ハウオリシティ全体が爆発の際の有毒ガスに侵され、
 不毛の地と化してしまった。


現在、島人に大規模な非難勧告が……。


------------------------


お父さんは、逮捕されました。

カタクソウサクによって、アタシの姿を見た警察の人は、こう言いました。


「なんて、ヒドい……」

「幼い女の子が、こんな酷まじい……」


アタシは、なにがヒドいのか、なにもわかりませんでした。

ただ、お父さんが連れ去られて、アタシは叫びました。



『ギジャアァァァァァアァァァァァアーーーーッ!!!!』



「ひっ、ひぃっ……!!」

「やはり化物だ、もう……逃げろッッッッ!!!!」


アタシは、ギジギジでした。
ギジギジは、アタシでした。

ギジギジは、さみしかったアタシが頭の中に創り出した、もう一人のアタシだったのです。

今までも、これからも、アタシはずっと、一人だったのです。


『クガァァァァァア…………』


叫び声でした。

泣きじゃぐったつもりが、おぞましい叫び声でした。



……
………


ハウオリには、いえこの星には、誰もいなくなりました。

みんな、みーんな、遠くの星に非難してしまいました。


アタシは今でも、第二のギジギジでも降ってこないかと、待ち望んでいます。

せめてこの星をキレイにして、その時を待とうと、アタシは“掃除”をずっと行い続けています。


------------------------


???「あれ、キミもしかして別世界の人? えっ、あの生物について?」

……。

「あのコはね、食いしん坊クンと言ってね……」



食いしん坊“ギジギジ” - 完 -
閲覧して頂き、ありがとうございました

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想