心の翳り

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作者:ドリームズ
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読了時間目安:5分
何で私達だけ……

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文化祭が無事終わった。私_キルリアのカナデは、部室に向かう。今年の文化祭は昨年と比べると、そこまでいい出来とはいえなかった。しかし、今年は自分達の実力を示すべく、箏曲の中でも上級者用の曲を弾いたのだ。全体はそこまで良くなかったが、難しい曲を弾ききったという達成感が、それを取っ払っていた。私は少し上機嫌になっていた。しかしその感情は、箏が保管されている教室の中を見た瞬間、消え去った。

「なっ……何これ……」

この教室は、文化祭当日にベビールームとして使われていた。以前もそのような事があったので、気にしてはいなかった。と言ってしまうと嘘になってきまう。少しばかり気にしていたと言っておこう。しかし、そのような事になってしまったのなら仕方がない。少しの間だけなのだから……。
しかし、その教室に戻されたであろう机達を見て、私は後悔した。左前にあったであろう机が四つ、後ろの方へ貯められている。全体的に後ろに来ているせいで、箏が取り出せない。おまけにそれらの机は全て、ガタガタに並べられていた。
私は体育大会の練習で、クタクタになった体に鞭を打ちながら、全ての机を並べる。綺麗に列を整え、一つ一つ。

「ハァ……」

無意識にため息が出る。そして思うのだ。私達、箏曲部への扱いが酷くないかと。この教室を使われた事は何回もある。別に使うなという事ではない。そこまで私の器は狭くない。しかし、全員が無断で使うから腹が立つのだ。
思えば全てそうだ。オープンスクールの時も、文化祭の時も。終いには、吹奏楽の奴らまで無断で使ってくるのだ。本当に迷惑極まりない。
全て私の被害妄想なのかもしれない。しかし、ここまでされるともう、奴らの手の中で踊らされているとしか思えないのだ。
体育大会の練習で疲れた体に、机の重みがズシリとのしかかる。しかし、それよりも悲しみという感情の方が、自分を押し潰してしまいそうだった。
これは何かの舞台で、不運な少女を私が演じ、それを誰かが何処からか嘲笑いながら見ているような、そんな感覚に襲われた。

~~~~~~

部活の時は中一もいるので、平静を装った。しかし、もうこの場で吐き出してしまいたい衝動に駆られる。しかし、グッと我慢した。そんなみっともない姿なんて、後輩には見せられない。
そして、下校時間となった。いつも通り、遅くなってしまったので、中一の子達には先に帰ってもらった。私と高一の子で、鍵を返しに行く。しかし、そこである出来事が、私の留め金を外してしまう。
私が部活の鍵を返しに行くと、男性の先生に呼び止められた。私のクラスの数学を受け持っている先生で、生徒会の方も担当していた。私は返事をする。

「はい。」
「カナデ。ベビールームに使われてた教室の、間仕切り用に使ってたボードあるだろ?あれってまだ残ってる?」
「はい……」

少し嫌な予感がした。

「お願い!明日、下まで持ってきてくれないか?」
「ッ……分かりました!やっております。」

私は出来るだけ笑顔を作った。怪しまれないように。そして、足早にその場を去った。

~~~~~~

「先輩!どうしたんですか?」

どうやら足早に歩いていたせいで、後輩達を置いてきてしまっていたようだ。私とした事が……。

「いやね……何か箏曲部への扱い酷くないかなって……」
「それは思う!」

どうやら、彼女達も薄々思っていたらしい。一人は言葉で、もう一人は頷き、態度で示す。そして、私は全て思っていた事を吐き出した。それはもう早口で。彼女達は若干引いているように感じるが、そんな事はお構い無しに話し続けた。
そして、全て言い終わった。口元が上がったまま戻らない。私は影で吐き出すタイプ。それは自覚している。私の嫌な所。私の卑怯な所。
だけど、それしか出来ないんだ。だって、それほど意気地無しなんだもの……。堂々出来るものならしたい。それが一番ベストで、相手も傷つかない。しかし、それが出来ないから困るのだ。だって、相手が悲しむかもしれない。嫌がるかもしれない。場合によっては……
この話しは止めよう。あの時がよみがえってくる。私が自信を持つ事が出来る日は、来るのだろうか……。


そんな事は絶対思われていないと思っていても、何故か被害妄想をしてしまう事ってありませんか?人間ってそういう所が面倒臭いですよね……。でも、それを捨てる事は出来なくて……止める事も出来なくて……。この感情は一生付きまとってくる物なのでしょうね。

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