朽葉の鳥は無を嗤う

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作者:雪椿
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読了時間目安:3分
 よく晴れた日のこと。僕は幼馴染の強引な誘いにより近所の湖に行き、そこで何とか博士からポケモンを貰う、というビッグイベントを体験した(野生のポケモンに襲われる、というアクシデントも同時にあったけど、それはそれで後にいい思い出となるだろう)。
 それから色々と済ませた後、モンスターボール片手に博士のいる町へと向かう。僕が住んでいる町から博士のいる町までは遠くないから、それほど時間はかからないだろう。
「フン、フンフン……」
 鼻歌混じりに歩いていると、突然草むらが揺れて何かが飛び出してきた。何が飛び出したか、なんて考えるまでもない。この辺りに住んでいる、野生のポケモンだ。
「おおっと」
 慌ててボールを構え、飛び出してきたポケモンの姿を確認する。ここに来るまでにも少しの戦闘は重ねているから、野生のポケモンに相棒を倒される危険性は少ないが、万が一ということもある。
 僕はじっとポケモンの姿を確認し――、首を傾げた。僕の前に飛び出してきたのは、湖で僕と幼馴染を襲ったポケモン、ムックルだ。だけど、今目の前にいるムックルは先ほどやこれまで倒したムックルとはどこかが違う。
 どこが違うのだろう――と、少し考えてみて、ピンときた。
「そうだ、体の色が違うんだ!」
 ぼうっとしていたら見逃しそうだけど、このムックルは今まで見たムックルとは違い体の色が茶色だ。前にテレビで聞いたことがある、いわゆる色違いというやつだろう。出会える確率は忘れたけど、確かほとんど出会えないとてもレアな存在だ。
「おっし!」
 そんな滅多にお目にかかれない存在との出会いに、思わずガッツポーズをする。それから意気揚々とモンスターボールを投げ、相棒を草むらに呼び出す。相棒の具合を確認しながら、頭の中で素早くゲットのことを考えた。
 ポケモンをゲットする方法なんて、独学で学んだからすぐにわかる。まず手持ちのポケモンで体力を減らして、ある程度減ったと思ったらモンスターボールを――、

「ん?」

 そこまで考えて、ふと思った。僕、モンスターボール持っていたっけ? 慌ててポケットなどを探るけど、相棒のボール以外指に触れる物はない。
 それはそうだ。僕はついさっきポケモンを手に入れたばかり。店に行ってすらいないのに、モンスターボールなんて持っているわけがない。

「嘘だろおおおぉぉぉ!!??」

 辺りに僕の叫びが木霊する。そんな僕を嘲笑うかのように、ムックルがクルルと鳴き声をあげた。

「朽葉の鳥は無を嗤う」 終わり

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