三日月織りなすエルドラド

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作者:理想の湊
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読了時間目安:12分
ある一人の青年の物語。人間の世界で暮らす者がポケモンの世界に触れていくお話です。

※少しよくわからない表現とかもあると思いますが気にしないでください(´・ω・`)
※メッソンが出てきます←(´・ω・`)(´・ω・`)ココジュウヨウ
天頂に輝く星、東の空には大きな天の川が見える。暗闇の夜空、空にはそれだけが輝きを放っていた。
そんな中、俺は自室で机に突っ伏して絵を描いていた。机で描いているのはポケモンの絵だ。机の上には他にも今描いている絵以外にも画用紙に描いたポケモンの絵がたくさん散らばっていた。今描いているのはメッソンだ。頭の上に黄色い帯のようなものが付いていて水色をした小さな生き物。くるりとしたしっぽがとても特徴的だ。そしてそのメッソンは水に触れると姿を消すことができるのだ。他にも頭に双葉のようなものが付いている緑色で僕のようなものを持っている猿のような生き物や白とオレンジ色の色をした元気に走り回っているウサギのような生き物など…机の上の画用紙にはそんな“ポケモン”と呼ばれる生き物が数多く描かれていた。決して絵の出来は上手とは言えないがこのポケモンはこんなことができるんじゃないのか…このポケモンはこんな性格をしているのではないか…など、俺はそんなポケモン達の絵を描いて想像を膨らましていたのだ。そして今日もそんなポケモン達の絵を描いて想像を膨らましている。

あの時見た夢のように…


* * *


あれは一年前の出来事だ。
これは今でも変わらずだが俺の母親は俺に対して強くあたることがほとんどなのだ。
家の中で母親からの罵声の声が響く。昔から俺の母親はヒストリックなところがありチクチクと嫌味を言ってきたりするのだ。
いつものように罵声のあとは暴力をくわえられる、俺のいつもの日常だ。

『辛い…死にたい…』

そう思うことは多々あった。俺は今は母親と二人暮らしをしている。父親はいない。だから誰も俺を庇える人がこの家にはいない。反抗したらどんな目にあうか…多分今よりもっと痛い思いをすることになるだろう。そう思うと俺はただ耐えるしか方法がなかった。

『誰も助けてくれない…反抗もできない…』

そんな日常を過ごしていると精神的にもかなりの疲弊も生じてしまうものだ。ある時、俺は決心する。

『明日、死のう…』

このまま死ねばこんなところで苦しまずに済む…ラクになれるんだ…だったら…さっさと死んだ方がいい…俺がいなくなっても母さんにとってみれば何も不便はないだろう…逆に俺がいるから母さんが怒ってしまうんだ…
そう考えると頭の中は自殺のことで埋め尽くされる。自殺したらどうなるんだろう…痛いのかな?苦しいのかな?ラクになるのかな?そういうことしか考えられなくなってしまった。
…明日、あの場所で…人知れずに死のう…
あの場所、自分が心を癒してくれたあの場所で…
そう心に決めると俺はベッドの上に寝転がった。今は寝よう。


その日の夜、俺は夢を見た。

明晰夢といった方がいいのか、夢と認識しているが意識がはっきりとしている。あたりは深い森で覆われていた。頭上で木漏れ日が差し込む。木漏れ日はずっと森の奥の方へ続いていた。その木漏れ日の方からなぜかふんわりとした心地よい感覚が感じた。いつもなら夢を見ている時は自分で夢の中を探索したりすることはできなかった。いつも見る夢は夢の中で自分が勝手に動いている。しかもこのような一人称視点ではなく三人称視点で自分、もしくは人物を見ているという感じだった。今のような一人称視点でしかも自分で動くことのできる夢、明晰夢を見るのは初めてであった。どこかいつもと違う新鮮味を感じる。
木漏れ日をたどっていくと石造りの小さな建物が見えてくる。白い大理石でできたような神殿とも思えるその建物を向かって俺は歩みを進めていった。建物の前には鳥居のような門がかまえてあった。門をくぐり建物の前に立つ。

「ちょっと、そこの人!」

不意にどこからかそう言われる。…誰? と言うとその声の主らしき者が目の前に現れる。空中に浮遊した発光体のようなもの。その光がだんだんと人のような姿へと変わっていくと光は後光へとわかりその現れた者を照らしていた。

「あなたは人間でしょう?どうしましたか?道にでも迷ったのですか?」

剣のようなものを持って後光のさした姿をした彼は俺に向かってそう問いかけた。俺は仏にでも出会ってしまったのかと思い頭の中が真っ白になる。理解が追いついていないことを察したのか自身について語り始める。

「私はここを守護する者です。名は…“ミカヅキ”とでも呼んで頂ければ結構です。あなたは?」

ミカヅキと名乗った彼、どうやら声的に男性のようにも捉えることもできそうな声で姿も若い男性のような姿をしている。

「あ、俺は…“ツキオリ”…」

ツキオリは俺の苗字だ。しかし何故か自分の下の名前が思い出せない。何故かツキオリということしか覚えていないのだ。

「ツキオリさん…ですか…」

ミカヅキは俺が下の名前を言う前にそう返した。そしてミカヅキは目をつぶって手を前に出し俺の方に手のひらを向ける。何をやっているのか理解はできなかったが今ここにいるミカヅキではない何かに見られているような感じがした。

「…あなたには月の属性が宿っている…人間にしては珍しい…」

目を開いてそうミカヅキが言うがなんのことを言っているのか俺には理解できなかった。月の属性とはなんなのか…しかしこちらのことをやや警戒していた彼の表情が少し柔らかくなっていた。

「ここはポケモンの世界、私が守護している世界です。あなた…どうやら道に迷ってしまったみたいですね。私が元の世界まで案内しましょう…」

彼の口から出たポケモンという言葉。今まで生きてきた中で初めて聞くその名に困惑する。俺はその“ポケモン”についてミカヅキに尋ねた。ポケモンとはこの世界に生きる生き物のこと。俺たちの人間の世界では見られないような変わった生き物が住んでいるとのことだった。

ミカヅキの話を聞いている時、俺は背後から何かの気配に気づく。後ろの方をゆっくりと見てみる。そこには30センチほどの大きさの生き物がそこに鎮座していた。驚いたというよりなんか…この子かわいいな…という感情の方が大きかった。水色の体にくるりとしたしっぽ、黄色い帯のようなものが頭についていて、こちらに対して笑顔を見せている。俺はその子に近づいて持ち上げる。あまり重いとは感じはしなかったがその子は俺が持ち上げても変わらずに笑顔を見せてくれた。その子を撫でると気持ちよさそうに鳴き声をあげてくれた。

「…その子は…メッソンですね。ここに迷い込んでしまったのでしょう」

ミカヅキによるとその子はメッソンというこの世界に住むポケモンの一種らしい。見たこともない生き物ではあったがこの子を愛らしいと思えた。この子自身も俺に対して好意を示してくれているかのように絶え間無く笑顔を見せてくれた。ミカヅキはその子を元の場所に帰すついでにポケモンの世界を少しだけ見せてあげると言ってくれた。俺が了承するとミカヅキの手をとる。
ミカヅキの背中にあった羽が大きく羽ばたいたかと思うと空へと向かって飛んでいった。俺はミカヅキの手を握りもう片方の手でメッソンをしっかりと抱きかかえた。

空高く舞い上がると森の外に草原が見える。そこには数多くの見たこともない生き物、“ポケモン”たちが多くいたのだ。草むらを駆け回る亀のようなポケモン、ふわふわと草原を舞うポケモンなどなど…
その草原を越えると広大な砂漠が広がっていた。オレンジっぽい黄色の砂の大地が広がり、その砂漠の真ん中に小さな町のようなものが見え始める。ミカヅキはその町から少し離れたオアシスに降り立つ。
ポケモンの世界といえども砂漠というだけあってとても暑い。近くにあるオアシスで少し涼んでいるとメッソンがオアシスに向かって飛び込んだ。メッソンがどこにいるか確認しようとするも水面からは何も見えなかった。かなり透明度の高いオアシスの水、ふつうに水面からでも底が見えるのにもかかわらずメッソンが見当たらないのだ。不安になって探していると俺の目の前にいきなり姿を現したのだ。笑顔で笑っているメッソンを驚きながら見ていると、ミカヅキがメッソンは水に触れると姿を消すことができるということを教えてくれた。人間にはできないようなことができるポケモンに対して俺は好意と同時に興味も湧き始めた。しばらくメッソンとオアシスで涼み、しばらくしてメッソンを帰す事になった。メッソンが住んでいるのはオアシスから見えるあの町のようだ。メッソンは俺とミカヅキに手を振って町の方へと駆けていった。その様子を見届けると俺とミカヅキは再び空を飛んでさっきまでいた森の神殿の方に向かって飛んでいった。
神殿まで戻ってくるとミカヅキは今度は俺を元の世界に帰す番だ と言う。ミカヅキは俺のことをしばらく見つめたあとこう口にした。

「あなたはまだここへくるべきではない…辛くなったらこれを見つめてください…」

そう言ってミカヅキは俺の手の甲に何かの模様を描く。二重の円で上半分だけが黒くなっている不思議な模様。ミカヅキは模様を描くと次に この門をくぐったら振り返らずに森の奥へ向かって歩いて欲しい と言う。俺が頷くとミカヅキは再び最初に出会った時のように光となってそのままどこかへと消えていった。俺は門をくぐり神殿をあとにする。森の奥に向かって歩みを進めていく。どれくらい歩いただろうか、ふと後ろの方を振り向こうと立ち止まって後ろの方に顔を向けようとする。
その時目の前に眩い光が差し目を瞑る。気づけば俺はベッドの上で寝ていた。
俺はベッドから飛び起きて時計の方を見る。時刻は朝の6時半、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。手の甲を見てみると夢の中でミカヅキに描かれた不思議な模様が描かれていた。



あの時の手の甲の模様は手を洗っても取れることはなかった。ミカヅキが言っていた言葉を思い出す。

『辛くなったらこれを見つめて』

結局、自殺をすることはやめていつも通りの日常を送る事にした。朝起きて自分でトーストを作って朝ごはんを済まして学校へ行く。学校が終わった後は家に帰って自分の部屋に閉じこもる。なるべく母親と顔を合わせないようにするためだ。顔を合わすのは夕食の時だけ。夕食を食べる時にいつものようにぐちぐちと嫌味を飛ばしてくる。いつものことだ。たまに機嫌が悪い時は嫌味の他に暴力も飛んでくる…それもまた俺にとっては日常なのだ。精神的にも疲弊する俺の日常。辛くなって逃げ出したくなる時もある。あの日のように死にたくなる時もある。それだけ精神的な面でかなりボロボロになってしまっているのだ。

そして今日もそんな日常を過ごしている。
あの日、ミカヅキに描いてもらった模様、辛くなった時にいつも見つめるとその日の夜、夢の中でポケモンの世界を覗くことができた。夢で見たポケモンを学校から帰ってきたあとにいつも思い出してそのポケモンの絵を描いて頭の中で想像を膨らませる。
それが今の俺にとっての唯一の楽しみでもあった。

もしかしたらミカヅキは俺の自殺を止めてくれたのかもしれない。家の事情は今までと変わらないが夢でポケモンの世界を覗いてそこで見たポケモン達の絵を描く…ただそれだけであったがあの日以降死を選ぶような真似はしなくなった。



* * *



「月居さん…あなたはまだこの世界へ来るべきではない…いつかあなたのその力…必要になる時が来る…その時まで…」

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