死にたい? 死ねない…

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作者:ドリームズ
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読了時間目安:7分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

もう嫌だ、こんな世界…
死にたいのに…死ねない…

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「ゴミ箱こんな所に有ったんだ!」
「どこいったのかと思ったよ。」

私に降り注ぐ、大量の生ゴミ達。マイナンのノゾミ。それが、私の名前。くだらない、私の名前。ノゾミの「ノゾミ」が叶うのなら、ただただ、死にたい。それだけである。
私は、昔から気が弱い。そのせいで、学校でいじめという名の遊びに付き合わされる。最初さえ、抵抗はしていたが、もう、今となっては何も感じなくなった。物理的にも、心理的にも。操り人形マリオネットと化した私は、もはや、やつらの玩具だ。やつらの命令に忠実に従う、面白い「物」なのだ。










「死ね。」

廊下で、やつらの一人とすれ違う度に言われる。けれど、その命令には従えない。だって、私は気が弱いから。死にたいと思っても、死ねないのだ。だから、代わりにお前が、私を殺してくれる死神てんしになってくれよ。そしたら、私もお前も幸せになれる。










今日も頑張って死ぬ訓練をする。何回この訓練を繰り返してきただろう。最初は、首吊りに挑戦したが、首をかけたところで止まる。次は、包丁を使ってみたが、胸の前で何かに遮られるように、止まってしまう。溺死もやってみたが、泳げるほうなので、沈み方がよく分からない。最後に、飛び込みもしてみたが、崖の先端で、足が止まった。
今日は飛び降りに挑戦する。校舎の屋上に佇む。夏の夕方独特の涼しい風が吹き抜けていく。きっと、この風を体に浴びながら、私は…なんて考えながら、柵になっているコンクリートの壁の上に立つ。しかし、また止まる。今日も駄目だった。壁から降りようとした瞬間、後ろから声を掛けられた。

「何してるの?」

私は驚き振り返る。そこにいたのは、同い年くらいのピカチュウだった。しっぽの先がハート型だから、女だろう。それはそうと、今の行動を見られていたという事か。そうならば、どうにかして誤魔化さなければ。

「別に何も…というか、誰なの?」
「あたし、カレン。貴方は?」
「私は…ノゾミ…」
「ノゾミか…可愛い名前だね!!」

それが、彼女との最初の出会いだった。

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私達は、毎日放課後に屋上で話をした。ある日、彼女は私に聞いてきた。

「ねえ、ノゾミって、いつも暗い顔してるけど、どうしたの?」 

それはまさに、確証を得るような質問だった。彼女は、私の顔を覗き込むようにして見る。彼女の黒い瞳に、何もかも吸い込まれるのではないか。そんな感覚さえ覚えてしまう。

「別に何でもない…」
「何でもなくないでしょ!あたし、知ってるんだよ?」
「えっ」
「貴方がいじめられてる事。」

えっ…嘘だろ…全部、私が話す前に、既に知られていたというのか。

「最初に会った時に、壁の上に立ってたのって、飛び降りようとしてたんでしょ?」

私の真実を、ズバズバと言っていく彼女。しかも、飛び降りようとしていた事も、見破られていた。もう、おしまいだ。友達になれたのに、また一人になるんだ。そんな事を考えていたら、彼女から突拍子もない質問をされた。

「死にたい?」

そりゃ、死にたいから飛び降りようとしていたのだ。死にたいに決まっている。それがノゾミの「ノゾミ」なのだから。だけど

「死ねない…」
「それは何でだと思う?」
「そりゃ…私が意気地無し「違う!」!!」
「違う!そんなんじゃないよ。」
「じゃあ、何なのさ!」

私はムキになって聞き返した。すると、彼女は先程と一転して、落ち着いた表情で語りだした。

「それはね…貴方が、心の中では、生きたいって思ってるからだよ。」

何だって?私は、心の片隅では、生きたいと願っていたのか?

「だって、そう思ってなかったら、踏みとどまる事なんて出来ないよ。」

彼女はそう言うと、ふわりと笑った。

「心がそう思ってるのなら…生きときなよ。その方が絶対楽しいって!」

彼女がそう言った時、屋上に通じるドアが開いた。私の方に走ってくる人物。それは、私の担任だった。

「よかった。間に合った。」

彼女は息を切らしながら、私の前で止まった。

「この頃元気がないから大丈夫かなって思ってたの。辛かったね。」

そう言って、彼女は私を包むようにして抱きしめる。その瞬間、私の心の氷は溶けたようだ。それは、輪郭を伝う雫となって現れた。

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それからは、私がいじめられる事はなくなった。どうやら、担任が、生徒達に私が自殺しそうになった事を伝えたらしく、さすがに不味い事をしたと気づいたらしい。私はクラスにも馴染み、友達も出来た。しかし、誰に聞いても、カレンという人物を知っている者はいなかった。不信に思った私は、担任に聞いてみた。

「カレンっていうピカチュウ?そんな子は、同じ学年にはいないはずだけど…」

彼女は暫く考え込んでいたが、何かを思い出したように、目を見開いた。

「確か、二年前に受け持ったクラスに、そんな子がいたわ!」

彼女はカレンについて語りだした。どうやら、カレンは私と同じようにいじめにあい、屋上から飛び降りたらしい。彼女を助けられなかったのが、担任の心残りなのだという。じゃあ、私が話していたカレンという少女は…

「でも、何で彼女の事を知っているの?」

私は彼女に、あった事全てを話した。すると、彼女は上を見上げ、言った。

「そうだったの…きっと、カレンが、貴方を助けてくれたのね。」












私は屋上を訪れた。すると、いつもの場所に、カレンは佇んでいた。

「カレン…貴方」
「あっ、ノゾミ。」

彼女は私を見て、凄く幸せそうな顔をした。

「生きようって、思ってくれたんだね。」

私は頷く。すると、彼女の体は淡く光りだし、光が、天へ昇るように散っていく。その体は、半透明になっていく。

「あたしも、貴方のおかげで、成仏出来そうだよ。ありがとね。」

私は首を横に振る。そして、閉まった喉から声を絞り出した。

「私こそ、ありがとう」

その言葉を聞いた瞬間、彼女の原型は、跡形もなくなった。しかし、最後に見えた彼女の笑みが忘れられない。私は、空を見上げた。屋上を吹き抜ける風が、私の目から溢れ出た物を、すくい取っていった。

~~~~~~~~

ノゾミの「ノゾミ」は、死にたいだった。
だけど、今は違う。
ノゾミの「ノゾミ」は








死ねない!
口では死にたいって言っていても、心では生きたいって思ってたら、生きた方がいいって私は思うんですよね。その方が絶対楽しいし、死んじゃったら後悔しても遅いですからね。

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