また、冒険しよう

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ボクの名前はグラン。種族はバクフーンで、ボクのご主人……マスターが大好きでいつも一緒に過ごしてきた。

そんなマスターだけど、仕事の都合で新しい地方に引っ越す事になった。その地方は『ガラル地方』と言って、マスターに聞いたらバトルでポケモンが巨大化する現象ーー『ダイマックス』を使ったバトルが盛んに行われている地方だよって言っていた。ボクも新しい地方に行くのは凄く楽しみだし、その『ダイマックス』と言うのも体験してみたいと思った。

でも、引っ越す一週間前ぐらいになってマスターの元気があんまり無いことに気付いた。ボクはそれがずっと気になって寝れない日もあった。多分、今住んでいるジョウト地方を引っ越すのが寂しいのかなって思っているんだけど、どうなんだろう。










そして今日、マスターと一緒にジョウト地方を離れる日になった。ボクはいつもの様に起きて、空港に行く準備をする。ガラル地方は遠くて飛行機で行くってマスターが言っていた。前日に荷物はまとめておいたし、後は飛行機の時間を待つだけなんだけどーー





「マスター、もうすぐ新しい地方だね。マスターは引っ越すの……寂しいの?」

「……」

やっぱりマスター、元気無い……何でだろう。

「どうしたの? 最近元気ないし、ボクと話してもくれないけど、何かあったの?」

いくら話しかけてもマスターは黙ったままだった。おかしい、いつもの優しくて思いやりのあるマスターじゃない。なんでだろう……ボク、何か悪いことをしたのかな……それとも何か辛い事でもあったのかな……

「ねぇマスター? ボクの方を向いてよ。何か辛い事とかあったの? もしそうなら、ボクに言ってよ」

ボクはマスターの顔を覗こうとした。するとマスターがボクの方を向いた。でも、マスターの瞳からは何故か雫が流れていた。

「!?……マスター?」

するとマスターはボクをぎゅっと抱き締めてきた。どうしちゃったんだろう……今までもこんな事は無かったわけじゃないけどーー

「グラン、ゴメンな……本当に」

「……? マスター、どうして謝るの? 何かあったの?」

「……連れて行けない」

「え……?」

「グラン、お前をガラル地方には連れて行けないんだ」

一瞬、頭が真っ白になった。ボクの事が大好きなマスターが、ボクを新しい地方に連れて行けないって言ったのが、ボクは混乱して分からなかった。

「マスター……? どういう事なの? どうしてボクを連れて行けないの?」

「……ガラル地方に入れるポケモンは、ガラル地方のポケモン図鑑に載っているポケモンだけに限るんだ」

ガラル地方の図鑑に載っているポケモンだけ……? ……じゃあもしかしてボクはーー

「え……? じゃあ、ボクは図鑑に……載って無いの?」

「……ああ、ガラル地方の図鑑にバクフーンは載っていなかった。だから、お前を連れて行く事が出来ないんだ」

「そう……なんだ」

ガラル地方の図鑑に載っているポケモンだけに限るーー その言葉で何となく予感はしたんだけど、いざ言われると、とても寂しい。マスターと一緒に行く事が出来ないーー つまりボクは今日、マスターと暫くお別れしないといけない……そう思うとますますボクは寂しいし辛かった。

「折角楽しみにしていたのにな……グランだけ連れて行けないんだ……本当にごめんな」

「そんな……どうしてマスターが謝るの?」

「一番好きなグランを連れて行けないから……それが俺にとっては一番申し訳ないと思ってるから……」

「マスター……そんな事……」

マスターとボクは幼い頃から一緒に育ってきた。ボクが進化した時は誰よりも喜んでくれたし、まだマスターがトレーナーとして冒険していた時はいつもボクを頼りにしてくれた。マスターとボクが離れた事なんて今まで一度も無かった。

だからなのかな……マスターは暫くボクを抱き締めたまま泣き続けていた。とっても寂しいんだと思う。ボクだって寂しいよ……マスターが居ないと。でも、マスターはボクの事を一番好きって言ってくれたから寂しさの反面、とっても嬉しかった。だから、マスターが居なくてもボク、平気だから。

「マスター、泣かないで。ボク、ちゃんとお留守番してるよ。マスターが帰ってくるまで良い子にしてるよ!」

「……グラン、俺はいつ帰れるかは分からない。それでも、寂しく無いか?」

「うん、ボクは寂しく無いよ。だって永遠にお別れするわけじゃないし、いつか帰ってくるでしょ。だから全然平気だよ」

「グラン……」

ボクはマスターの前でちょっぴり嘘をついた。本当はとっても寂しいし、もっとマスターの側に居たいのにーー




どうして、ボクだけ図鑑に載ってないの……?

どうして、図鑑に載っていなかったら一緒に行けないの……?










空港へ行く時間になり、マスターとボクは暫くの間お別れをしなきゃいけない時が来た。ボクがお留守番をする間、マスターのお友達がボクの家に一緒に住んでくれる事になった。これで多少は寂しく無くなるけど……でも……










「じゃあ、そろそろ行くよ。グランの事、宜しくな」

「おう、分かった。たまには電話して、新しいポケモンの話をしてくれよ」

マスターのお友達も一緒に見送りに来てくれいた。ボクは一度、マスターのお友達に挨拶をする。その人はマスターの家によく遊びに来ていたから、ボクの事も良く知っている。だから不安は無い。無いんだけどーー

「グラン君はお利口さんだから、マスターが居なくても大丈夫だよな」

「……うん」

……寂しい。マスター、やっぱりボクも行きたいよ。

「……!!」

ボクが落ち込んでいたのに気づいたのか、マスターがまたボクを抱き締めてくれる。それは今まで抱き締めてくれた時より、温かくて優しかった。どうしてだろう、目頭が熱くなる。

「辛いかもしれないけど、俺も辛い。だから約束しよう。またここに帰って来たら、また一緒にたくさん遊ぼう。それから、あの頃の様に一緒に冒険しよう。どんなに離れていても、俺はお前の事、家族だと思ってるから」

「……!! ますたぁ……うぅ」

堪えきれなかったボクは嗚咽を漏らす。……そんな事言わないでよ。ボク……もう泣きそうだから……マスター、泣いても良いかな。

「グラン、離れていても、大好きだ」

そう言われてマスターに撫でられた時、ボクは我慢出来ず、押さえ込んできたものが、瞳から溢れ出した。

「ぅぐ……嫌だ、まだマスターと一緒に居たいよ。ボク本当はとっても寂しいの……だから……もう少しだけ一緒に居てよ……」

「……本当にごめんな……グラン」

ボクは暫く泣き続けた。きっと今までで一番泣いたと思う。ボクが落ち着くまでの間、マスターはずっとボクを抱き締め続け、ボクの頭を優しく撫でてくれた。それから暫く側に居てくれた。ほんの少しだったけど、嬉しかった。

少しして、空港のアナウンスが流れる。もうすぐガラル地方行きの飛行機が飛ぶみたいだ。











「よし、急がないと飛行機に乗り遅れるからもう行くよ。後、頼んだぞ」

「おう、この子の事は任せておけ。じゃあ、新天地でも頑張れよ」

泣き過ぎて、元々赤い色の瞳を更に真っ赤にしたボクを、もう一度マスターがぎゅっと抱き締めてくれた。ふとマスターの顔を見ると、マスターもちょっぴり瞳から雫が流れていた。

「約束……絶対だよ。忘れたらボク、大噴火するからね」

「分かってる、約束だからな。じゃあ、ちゃんと俺の友達の言う事を聞くんだぞ」

「うん、マスター、お仕事頑張ってね」

お別れの挨拶を交わして、マスターは飛行機乗り場へと向かって行った。その背中が遠くなるにつれてボクは寂しくなる。





だけど、またマスターと一緒に冒険出来る日を待ってる。またあの頃の様に、たくさんバトルして、たくさん笑ってーー

だから、いつまでも待ってるよ。










マスターとまた一緒に、冒険出来るのを。

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感想

お名前:豆シヴァさん
ソウルシルバーでバクフーンを後ろに連れて歩いた自分にとって、この作品は胸にグッとくる内容でした。苦楽を共にした相棒と別れるのは、何よりも辛いことですよ…本当に。どのポケモンが出ないのか公表されてないので分からないですけど、ちゃんと実装されることを祈るしかないですね。
書いた日:2019年07月07日
お名前:円山翔さん
同じように涙を飲んだ方も多いと思われます。そんな方々の気持ちを代弁したような小説だと思いました。本当に大切に思っているからこそ、離れることになっても互いを想い合える。こういう関係には素直に憧れてしまいます。
書いた日:2019年06月29日
作者からの返信
こんばんは! 読んでいただきありがとうございます!

そうですね……あの情報が出た時、一体どれだけのポケモンがこう言った運命を辿ってしまうのか、そしてその時、主人とそのパートナーはどう思って別れるのか……書いているうちにこちらも悲しくなってしまいましたね。

一応今回の設定としては私の長年のパートナーでありますバクフーンを主人公にさせていただきました。

いつかは全てのポケモンがガラル地方へと旅立てれば良いのですが……そうなる事を祈るばかりです。

書いた日:2019年07月16日
お名前:花鳥風月さん
 投稿お疲れ様です!

 この作品が投稿されたのは投稿終了当日というギリギリのタイミングでしたが、まさにこの時期にうってつけの題材だったと思います。作者さんはバクフーンがお好きなのだろうか……?('ω')
きっとトレーナーの数だけ、愛しのパートナーとの別れもこれからあることでしょう。わたし自身も推しポケモンでこんなことがあったら涙ちょちょ切れてしまうだろうと思いながら読ませていただきました。
 ですがきっと、いや必ず、パートナー達との思い出は消えることはないと思います。いずれ、また何らかの形で各々が何年、下手したら10年単位で苦楽を共にしてきたポケモン達と最先端の技術で旅することができるようになるのを祈るばかりです。
書いた日:2019年06月15日