希望の未来で

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作者:豆シヴァ
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読了時間目安:9分
「ふう…今日の依頼はこれで終わりか。少しずつだが、皆が住みやすい世界になってきたな」

―キサギの森に建つ一軒家―
探検バッグの中にある持ち物を片付けて、俺は肩を回しながら首をひねる。未来を変える代償として、自らの消滅を受け入れる覚悟をし、ディアルガと死闘を繰り広げた俺は、使命を終えた後も奇跡的に生き延びることができた。しかし未だに、暗黒世界だった頃の影が残っていて、助けを求めるポケモン達が数多くいる。
俺は共に戦ったヨノワールとセレビィと協力して、世界各地で動けるポケモンを集い、出来るだけ多くのポケモンを助ける活動を始めた。これから生まれてくる新たな命のためにも、俺たちがより良い世界を築いていかなければならない。多分それが、俺に課せられた新しい使命だと信じて…。

「あ、ジュプトルさん!今日もお疲れ様です!今日送られてきた依頼書、部屋にまとめておきましたよ!」

「あぁ、ありがとうセレビィ」

「…ジュプトルさん、もう一回言って下さい」

「え、あ、ありがとうセレビィ…」

「キャアアアー!!ジュプトルさんに二回も褒められた〜!」

胸に両手を当てたまま、セレビィはリビングから出ていく。相変わらず騒がしいやつだな…。
戦いが苦手なセレビィは、この家の近くで木の実などの栽培や、依頼書の管理を行っている。食料問題で苦しむポケモン達を助けるために、セレビィが飛行できるポケモンなどに、木の実やリンゴの配達を依頼するのが役目だ。

「何やら騒がしいと思ったら、帰ってきたかジュプトル。私も先程依頼を終えてきたところだ」

「そうなのか、さすがだなヨノワール」

セレビィのすれ違いで入ってきたのは、ヤミラミ達を率いて治安維持や住処を作る設計を行っているヨノワールだ。元々は闇のディアルガの部下として、未来を変えようとする俺たちの邪魔をしてきた。しかし最後には、自分が望む本当の答えを見つけ出し、今では世界を再建するために尽力してくれている。

「それよりもジュプトル、明日は本当に活動を休んでいいのか?確かに最近連戦だったこともあり、ヤミラミ達にも疲れが出てきているが、こうしている間にも世界のどこかで、助けを求めるポケモンがいるかもしれないのだぞ?」

「仕方ないだろ、セレビィがどうしても明日休みにして!って言ってきたんだ。他のポケモン達にも休んだ方が良いって言われるし、明日は俺もヨノワールも英気を養うことにしよう」

セレビィの強い要望もあり、明日は休みとなった。どうやらセレビィは、明日の休日に向けて何かをずっと計画しているようだったが、俺には教えてくれなかった。少し変わったヤツだとは知っていたが、一体何をするつもりなのか?

そして翌日…。俺とヨノワールは、セレビィにキサギの森のとある場所まで案内された。家でのんびりするのかと思いきや、突然外に来てほしいと言われ、俺にはセレビィが何を考えているのか全く分からなかった。

「おいセレビィ、そろそろ教えてくれ。俺たちをどこへ連れて行くつもりだ?」

「私も今日は、一日中読書でもしようかと思ったんだが、これはどういうことなんだ?」

「二人ともうるさいわね、もうしばらくしたら着くから我慢して!」

セレビィに叱られた俺とヨノワールは、とりあえず黙って後をついていく。その途中、ヨノワールが小さな声で俺に問いかけてきた。

「ジュプトル…まさかまたセレビィを怒らせるようなことをしたのか?」

「おい待て、なぜ最初から俺に原因があると疑うんだ?今回ばかりは心当たりが全く無いぞ」

「フム、そうか…。ヤミラミ達も朝から見当たらんし、一体どこに行ってしまったのだ?」

「お前が思いっきり首を締めたり、容赦なく殴ったから逃げたんじゃないのか?」

「…いつの頃の話をしているんだジュプトル?お前を嵌めるための演技とはいえ、あの後私はヤミラミ達にしっかり謝罪した。大切な部…仲間にそんな真似はしない」

「…フッ、ヤミラミ達のこと、信頼しているんだな」

「う、うるさいぞジュプトル!リーダーとして彼らを心配するのは当然だ!」

少し顔を赤らめながら、苦し紛れの言い訳をするヨノワール。ディアルガの部下を辞めてから、こいつも色々と変わったなぁ。
しばらくして、ようやくセレビィが目的地に着いたと教えてくれた。そこはキサギの森の最深部になっていて、色とりどりの花や木の実がたくさん育っている。そして、その花畑を一望できる中心に生えた大樹に、ヤミラミ達が俺たちの到着を待っていた。

「お待ちしてましたヨノワール様!皆でセレビィと協力して、こんなに綺麗な花畑を作ってました!」

俺とヨノワールは、目を見開きながらその美しい景色に心を奪われていた。セレビィがたくさんの木の実を栽培していたのは知ってたが、まさかこんな絨毯のように広い花畑を作っていたとは思わなかった。

「お、お前達…まさか最近疲労で動きが鈍かったのも…」

「はい、花の水やりなどで忙しくて…本当に申し訳ありません!それと、ヨノワール様に渡したい物があるんです!」

そう言ってヤミラミ達は、黒い布巾に包まれた四角い箱をヨノワールに差し出した。

「お、お前達…これは一体…?」

「いつも俺たちを助けてくださるヨノワール様に、感謝を込めて作ったお弁当です!どうぞ召し上がって下さい!」

ニコニコと笑うヤミラミ達を見て、俺はとある昔の出来事を思い出していた。
幻の大地でヨノワールを倒した後、部下のヤミラミ達は上司のヨノワールを置いて時空ホールに逃げた。あの時俺は、皮肉のようにヨノワールを馬鹿にしたが、今思えばコイツも少なからず、部下に見捨てられた時の悲しさを感じたはずだ。
そんなヨノワールが、ヤミラミ達と深い信頼関係を築いたのだと思うと、思わず俺も嬉しくなってくる。

 
「…悪いがヤミラミ達よ、私はこの贈り物を受け取らない」


ヨノワールは顔を下に向けながら、衝撃の発言をした。思いもよらぬ返答に、ヤミラミ達の表情が固まる。まさかヨノワール、幻の大地での裏切り行為をまだ根に持っているのか?

「ヨ、ヨノワール様…そんな…」

今にも泣き出しそうなヤミラミ達。思わず俺はヨノワールに詰めかかろうとしたが、顔を上げたヨノワールが笑顔でこう言った。


「私だけ頂くのは勿体ないだろう。皆で分けて食べるぞっ!」


その瞬間、ヤミラミ達がウイィーッ!!と歓声を上げて、ヨノワールに駆け寄る。全く、一瞬ドキッとしたじゃないか。

「ジュプトルさん、私たちは木の裏側に行きましょう!」

セレビィに手を引かれて、俺はヨノワール達と反対の方角に座る。確かにあの雰囲気は邪魔したくないな。

「一時はどうなるかと思ったが…ヨノワールのヤツ、なんだかんだで信頼されてて良かった」

「そ、そうですね…。じ、実は私もジュプトルさんのために、お弁当作ってきました!」

セレビィが差し出したのは、ピンクの布巾に包まれた四角い箱。まさかの出来事に驚きながら、俺はそれを受け取る。
さっそく中身を開けてみると、木の実やリンゴをバランス良く切り分け、俺の好物の若草グミまでも入っている鮮やかな配色がされていた。
セレビィが見守る中、俺は若草グミを一口パクっと食べる。そしてうさぎさんリンゴに、食べやすく切り分けた木の実。様々な旨味が口一杯に広がる。


「う、美味いじゃないか…。こんなに美味しい弁当を食べられるなんて、俺は世界で一番の幸せ者だな」


セレビィに惜しみない賛美と素直な気持ちを伝える。するとセレビィの顔が、まるでクラボの実のように真っ赤になっていく。

「ジ、ジュプトルさん…もう私、幸せ過ぎて死にそう…」

「おい、しっかりしろセレビィ!お前がいないと俺は生きていけないんだ!」

「あぁ、また幸せの言葉が…このまま目を閉じて、私は宇宙の星となって、ジュプトルさんを照らす光になるの…」

「何わけの分からないこと言ってんだ!とにかく起きてくれセレビィー!」

二人が騒ぎ立てる中で、花畑に風が吹き荒れる。そしてその花畑の中に一つだけ、グラデシアの花が咲いていた。

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感想

お名前:ioncrystal さん
・デレビィの呼び出しに悪いことしか想像できない二体、朴念仁で純粋だなあ、と思うのだけど、そこにも萌える方向でいいのか…?
・キザキ森深部(旧暗黒の森?)ってとこがまたいいよな。
・「俺は一番の幸せ者だな」作者「分かってる」…分かってる奴だよこれ…
まず第一に。セレビィとジュプトルはあの消滅する一刻、確かに幸せだったし、その刹那は永遠だったし、
それがこの時間軸の一瞬においても続いているのはポケダン時闇本編テーマから順当なのよ。
第二に、セレビィをしてそういう言葉を真顔でジュプトルから放たれる、ジュプトルへのセレビィの個人的な感情というのも原作通りでもあり、あの時から流行ってたひとつの解釈としてじんじん来る…
…ってのがこのテキストから語れるというのは、まあご存知草の大陸星の調査団入団テスト補助試験、ジュプ←セレ検定初級レベルなんだけどさ。(語れるかどうかの試験などないよ??)
まあ順当にデレビィに感情移入するキモい奴なんだけども。 ジュプトルが推しキャラの星の下に生まれてたら絶対ここで(デレビィに感情移入し過ぎて)死んでたよ… 
Q,ジュプトルは推しキャラではないんですか?
A,ぼくは自分で普段言うほどキャラ萌えの星の下のオタクとして産まれてきてないようです。
少なくともそういうタイプのキャラ萌えに身も心も委ねるほど素直ではまだない…

・グラシデア、「誰の」象徴でしょうね。
何でもない感じの、普遍的雰囲気で締める判断、むしろ気になって好きです。

ここまでが読んだ当時の言葉だそうなのですが。
一言で、死んでも残った印象を1つ述べればですね。萌え殺すつもりか。
書いた日:2019年07月06日
お名前:花鳥風月さん
投稿お疲れ様です!

私事で大変恐縮なのですが、ポケダン探検隊ってわたしがポケモン二次創作を始めるきっかけになった思い入れ深い作品なんです。故に、暗黒の未来トリオがこうして和やかに過ごしている姿を見れたことはとても嬉しかったです!
ジュプトルさんの言葉にときめいちゃうセレビィはもちろん、ヨノワール様のためにお弁当をはりきって作っちゃうヤミラミカワウィィ……ウィィィィ……。んでもってお弁当をみんなで食べるぞって言うヨノワールさんダンディ……ステキ……。
歴史を変えることをめぐって対立していた彼らですが、そのしがらみから逃れられて幸せな日々を送っているその姿が見れただけで涙がちょちょ切れそうです。
グラシデアに合わせて、この幸せな作品にありがとうを伝えたいです。
書いた日:2019年06月29日
お名前:円山翔さん
ポケモン不思議のダンジョンの後日談ですね。遊んだことがないのですが、かつては敵同士だった面子がこうやって仲良くやっているのは、みていて微笑ましいです。ここで描かれているような、ヨノワールとヤミラミの関係が好きです。ゲームでどうであったかは知りませんが、少なくともこんな風に戯れて欲しいなって思います。
書いた日:2019年06月13日