いたずら図鑑

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作者:しろあん
読了時間目安:19分
「それじゃあ、ちょっと買い物に行ってくるから留守番よろしくね、ピカチュウ」
「ピッカ!」

 とあるアパートの一室。トートバッグを持った若い女性が、見送りに来たピカチュウに軽く手を振りながら玄関のドアノブに手を掛けた。
 ガチャン、と扉の閉まる音が響き、ピカチュウは一匹ぽつんと部屋に取り残される。

『あーあ、トレーナーさん。また出掛けていっちゃった』

 ピカチュウは誰に言うでもなく、ポケモンの言葉でぼそっとそう呟いた。

『でもお買い物だけならすぐ帰ってくるよね。それまで何して遊ぼうかなー?』

 部屋の中に戻り、ピカチュウは辺りをきょろきょろと見回す。
 ワンルームの間取りの部屋は小さなキッチンとバスルームこそついているものの、独りで暮らすのがギリギリといったレベルの狭さで、ベッドやタンスにテレビ、そういった必要最低限の家具だけで部屋のスペースは殆ど埋まってしまっていた。

『うーん……あ、そうだ。久しぶりにポケモン図鑑でも見てみよっと』

 そう言って、ピカチュウはタンスの上に置かれていた革表紙の分厚い本を引きずりおろした。それは昔ながらの紙媒体のポケモン図鑑で、様々な地方のポケモンの説明がイラスト付きで記されている。
 ピカチュウは図鑑を部屋の真ん中にある小さなテーブルの上に広げ、小さなその手でページをぺらぺらとめくっていく。

『ロコンに、ミズゴロウにー、こっちはムックル!』

 イラストを指差しながら知っているポケモンの名前を唱えるピカチュウ。書いてある文字は読めないが、こうして図鑑に載っているイラストを眺めているだけでもピカチュウにとって充分楽しい時間であるようだった。

 ────バンバンッ

 それから暫くした時、突然ピカチュウの後ろでガラスを叩くような音が聞こえてきた。ピカチュウは驚いて後ろを振り向く。

『な、なんだろう……?』

 この部屋にあるガラスといえば一つだけ。小さなベランダへと続くガラス戸だ。トレーナーが寝るベッドも、そのガラス戸に隣接するようにして設置されている。

『誰か居るの?』

 ピカチュウは恐る恐るベッドの上に乗り、中途半端に開いている両開きのカーテンを全て開けようとした。その瞬間、今度はピカチュウの背後からビリビリッ、と紙が破けるような嫌な音が聞こえてきた。

『え、嘘でしょ!?』

 ピカチュウは図鑑が破けたのではと思い、慌ててベッドから飛び降り、テーブルの上に置かれた図鑑のページをぱらぱらとめくって調べる。

『ど、どうしよう……もし図鑑が破れてたら、トレーナーさんに叱られちゃうぞ……』

 しかし、その心配は杞憂だったのか、特に破れたページは見当たらず、ピカチュウはほっと息をついた。そして、ゆっくりと顔を上げて、今度こそベランダを確認しようと再びベッドの方へと振り返った。
 すると、ベッドの上には紙で出来たペラペラのロコンが歩いていた。

『……あれ?』

 何かの見間違いかと思い、ピカチュウは目を擦って再びベッドの上を見た。
 ……見間違いではない。確かにそこには見覚えのあるロコンのイラストが、まるで人形劇みたいに上下に小刻みに揺れながらテクテクと歩いていた。

『えええええええっ!?』

 ピカチュウは慌てふためきながら、ポケモン図鑑のロコンが載っていたページを開く。するとピカチュウの予想通り、ロコンのイラストの部分だけが綺麗に切り取られて無くなっていた。
 もう一度ピカチュウはベッドの方へと振り返る。紙のロコンは暫くベッドの上を動き回った後、きょろきょろと辺りを見回すような仕草をとった。紙ロコンの裏側にはびっしりと書かれた文字も一緒に切り取られており、図鑑から飛び出した子で間違いないということを決定付けていた。

『まるで生きてるみたい……』

 紙ロコンの細かい仕草を見て、ピカチュウは思わずそう呟いた。もう少し近くで見てみようか。そう思い、ピカチュウが顔を近づけた瞬間、紙ロコンはいきなりピカチュウの顔に飛びかかった。

『うわっ!? イタタタタ! やめて、暴れないでって!』

 紙ロコンがペラペラの体を折り曲げたり開いたりして執拗に顔を攻撃してくるので、ピカチュウは堪らずその場でひっくり返ってしまった。倒れた時の衝撃で紙ロコンはピカチュウの顔の上から飛んでいったが、直後、ビリビリと紙が破ける音が再びテーブルの方から聞こえてきた。しかも今度は結構音が長い。
 まさか、と思いピカチュウは急いで体を起こす。

『うわああああ!? いっぱい出てきてる!?』

 図鑑のページが独りでにめくれ、そこに描かれているポケモンのイラストが次々に飛び出していく。フシギダネにゴマゾウにキノガッサにレントラーに……名前を挙げていくとキリが無いが、とにかく図鑑から切り取られたポケモンが洪水のように部屋中に溢れ返り、それらが一斉にピカチュウに向かって襲い掛かり始めた。

『わ、ちょ!? 待って、ボクが何したって言うの!?』

 ペラペラなポケモン達の攻撃はさほど痛くないが、とにかく数が多い上、ズバットやキャモメなどといったひこうタイプのポケモンは紙の翼をはためかせ、上空から襲い掛かってくるので、ピカチュウは対処が出来ず慌てふためいて部屋の中を逃げ回った。
 そんな時、ふと部屋に置かれていたオンボロ扇風機がピカチュウの目に入った。確か、今年の夏みたいな春の気温への対策としてトレーナーが急遽用意したものだったとピカチュウは思い出す。
 降りかかる紙ポケモンの嵐をギザギザの尻尾を使って振り払いながら、ピカチュウは扇風機目掛けてジャンプした。そして扇風機にしがみついた後、自身の体重を利用して首の向きを下向きに変え、そのまま足で「強」と書かれたスイッチを押した。
 カチリという音が鳴ると同時に扇風機の羽根が高速で回転を始め、下向きに吹いた強風がちょうどピカチュウの体に当たって、貼り付いていた紙ポケモン達を吹き飛ばした。

『こ、これで近づけないはずだ!』

 強風を盾にする事によって紙ポケモン達から身を守る作戦。これなら無敵も同然だろうとピカチュウはそう思ったが、なにやら吹き飛ばされた紙ポケモン達の様子がおかしい。

『……あ、あれ、なんか集まってきてない?』

 吹き飛ばされたメグロコ、ブイゼル、ペルシアン、ホウオウ、他もろもろの紙ポケモン達が一斉に一箇所に集まっていく。集まった紙ポケモン達はどんどん合体していき、あっという間に一つの大きな紙手裏剣を形成した。
 突然のトランスフォームにピカチュウが驚いていると、紙手裏剣はふわりと空中に浮き上がり、独りでに回転を始める。

『これってもしかしなくても、まずいんじゃあ……』

 紙手裏剣の回転がどんどん早くなっていくのを見て、嫌な予感がピカチュウの脳裏をよぎった。その予感通り、次の瞬間には高速回転する紙手裏剣が扇風機の強風を受け流しながらピカチュウの元へ飛んでいった。

『うわあ!?』

 慌ててその場を飛び退き、飛んできた紙手裏剣を紙一重で回避する。しかし、紙手裏剣はピカチュウが扇風機の前から離れたその隙を見逃さず、まるでヒトデマンのように高速スピンを繰り返し、再びピカチュウ目掛けて飛んでいった。

『く、来るなー!』

 ピカチュウは叫びながら部屋中を駆けずり回る。時折、テーブルをひっくり返したり、枕やタオルケットを投げつけたりしながら襲い掛かる紙手裏剣に抵抗し続けたが、それでも紙手裏剣の攻撃は止まず、とうとうピカチュウは玄関の前まで追い詰められてしまった。
 どうしよう、とピカチュウは辺りを見回す。そこで、玄関から少し進んだ所のすぐ右手────キッチンの流し台に置かれたコップが目に入った。ピカチュウは急いで宙に浮いている紙手裏剣の下を潜りぬけ、流し台の上へと登り、コップを持ち上げた。

『よし、このコップに水を汲んで……ってうわあ、冷たい!』

 紙ならきっと水に弱いはず。そう踏んだピカチュウは水道のレバーを上げ、自身もびしょ濡れになりながらもコップに水を汲んだ。そんなピカチュウの背後に、懲りず突撃してくる紙手裏剣の影が。

『食らえっ!』

 ピカチュウは振り向き様に、水がなみなみに汲まれたコップを紙手裏剣目掛けて振り上げた。ばしゃあ! と豪快に紙手裏剣に水がかかる。水分を含んでへなへなになってしまった紙手裏剣は、ゆっくりと浮力を失って地面へと落ちていく。それでもピカチュウは安心できなかったのか、追い討ちとばかりにでんきショックを放って紙手裏剣を黒こげにしてしまった。

『はぁ、はぁ……な、何だったんだろ、今の?』

 水道の水を止め、濡れた体を振るって乾かしながらそう呟くピカチュウ。そんな時、キッチンに置かれていたやかんの後ろから何かがふわりと飛び出してきた。

『わっ、何!? またさっきの紙のやつ!?』

 新たな紙ポケモンの登場に、反射的に身を守ろうとするピカチュウ。しかし、その紙ポケモンはふわりと浮遊し続けるだけでピカチュウを襲おうとはしない。ピカチュウは恐る恐る顔を上げてその紙に描かれたポケモンのイラストをよーく見てみた。
 薄い桃色の体に、長い足と尻尾。実際に見たことはないが、ピカチュウはそのポケモンの名前を知っていた。

『ミュウ……?』

 「幻」の名を冠するそのポケモンは、ただのイラストであるにも関わらず、不思議な存在感をピカチュウに感じさせた。紙のミュウはピカチュウがこちらを見ている事に気が付いたのか、ふわふわとキッチンを離れ、部屋の中へと飛んでいく。
 ピカチュウも後を追って部屋の中に戻ると、ミュウはガラス戸の前で宙を漂っていた。

『そういえば、さっきベランダの方からドンドンって叩く音が聞こえてきてたよな……』

 ピカチュウはベッドの上に登り、恐る恐るガラス戸のカーテンを開く。が、しかし、ベランダには誰の姿も見当たらない。ピカチュウは首を傾げながら、鍵を外して戸を開けてみた。

『ばあっ!!』
『うわあああっ!?』

 その瞬間。ベランダの死角から一匹のポケモンが急に飛び出してきて、ピカチュウは驚いて後ろに倒れてしまった。

『あっははは! 引っ掛かった、引っ掛かった!』
『ううっ、だ、誰?』

 いきなり驚かしてきた挙句、面白おかしそうに笑うものだから、ピカチュウはかなり不機嫌な顔になって相手のポケモンにそう問いた。

『見たら分かるでしょ? 僕はニャオニクスさ』
『ニャオニクス?』

 ピカチュウはゆっくりと体を起こし、驚かしてきたポケモンの姿を確認する。全身は紺碧の体毛で覆われており、折りたたまれた耳や二本ある大きな尻尾には白い模様が入っている。こちらを覗き込む目は吸い込まれるように綺麗な翠眼だ。

『…………初めて見るポケモンだよ』
『え、ウソ? ちょっとあの図鑑古すぎるんじゃない? 大体ポケモン図鑑って言ったら今は電子式が主流でしょ』
『あれはトレーナーさんの大切な図鑑なの! というかキミ、もしかしてさっきのずっと見てた?』
『見てたも何も、図鑑のポケモンをサイコキネシスで切り取って操ってたのは僕だし』

 ニャオニクスはくすくす笑いながらそう言った。

『……お前かぁー!』
『わー! ごめん、ごめんって! ついついイタズラしたくなっちゃっただけなんだって!』

 ピカチュウは衝動的にニャオニクスに飛び掛かり、ぽかぽかと体を叩いた。ニャオニクスも飛びかかってきたピカチュウを退けようと体をじたばたさせている。

『図鑑を破ったら怒られるのはボクなんだぞ!』
『そりゃご愁傷様! コレを機に新しい図鑑買えば!?』
『そういう問題じゃないんだよちゃんと反省しろー!』

 怒ったピカチュウが思いっ切り殴りかかろうとしてきたので、ニャオニクスは咄嗟に目を白く輝かせ、サイコキネシスで無理やりピカチュウを引き剥がした。

『まぁまぁちょっと落ち着きなって……』
『どの口が言うんだよ! ちゃんと一緒にトレーナーさんに謝るまでは帰さないんだからね!』
『あ、それいいね。ついでに僕を君のトレーナーの手持ちに加えてくれたりしないかな?』
『はいぃ!?』

 初対面なのにさらっとそんな事を口走るニャオニクスに、ピカチュウは猛反対の意を示した。

『ダメだよそんなの! なんで見ず知らずの君と一緒に過ごさなきゃいけないんだよ!』
『えー、良いじゃんか。野生で生活するのもいい加減疲れてきたのさ』

 ニャオニクスは若干の苦笑いを浮かべながら、勝手に部屋の中に上がりこんでピカチュウにそう言った。

『僕ね、少し前まではとあるトレーナーと一緒に旅をしてたんだ。でも、旅の途中で捨てられちゃって』
『……それはまた、どうして?』
『君のイタズラにはエルフーンもビックリだ。手に負えない、だってさ』
『あぁ~なるほど……』

 妙に納得した素振りをみせるピカチュウに対して、ニャオニクスは笑いながら、酷いなぁ、と零した。

『流石に今はちょっと反省してるよ。でもさ、イタズラした時ぐらいしかトレーナーは僕に構ってくれなかったんだもん』
『その気持ちはまあ……ちょっと分かるかも。ボクのトレーナーさんだって、最近ボクを留守番にさせる事が多いし……』

 ピカチュウはベッドの上に座って、少し寂しげにそう言った。そこに、ずずいとニャオニクスの顔が迫る。

『ねね、僕が居ればきっと留守番も退屈しなくなると思うよ!』
『それボクにイタズラするつもりだよね? トレーナーさんの下で暮らそうたって、そうはいかないからね?』
『違うよ、イタズラじゃないさ! 僕、これでも色んな地方を旅して色んなポケモンを見てきたんだよ? 図鑑を眺めるなんかよりも、もっと面白いポケモンの話を教えてあげる』
『……それじゃあ、ホウオウとかミュウの話も教えてくれたりするの?』
『あ、それはテレビでしか見たことないからよく分からないな』

 潔いニャオニクスの返答に、ピカチュウは呆れた顔をする他に無かった。そんな時、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。

「ピカチュウ、ただいま~!」
『あ、トレーナーさん帰ってきちゃった!』
『ピカチュウのトレーナーって女の人でしょ? ちょうどベランダに侵入したのが出かける直前だったから知ってるんだよね』
『わぁ、趣味悪っ。というかココ3階なのによく登ってこれたよねキミ!』

 そんなやり取りをしながら、ピカチュウは大急ぎでひっくり返したテーブルを元に戻し、投げ捨てた枕とタオルケットもベッドの上に戻した。やがて、女性トレーナーの驚いた声がキッチンの方から聞こえてくる。

「ちょっと! なんで床がびしょ濡れになってるの!? ピカチュウ、何かやった!?」
『違うんですよトレーナーさん、それには深い訳が……ってニャオニクス、何それ?』
『ダンボール箱。前のトレーナーに捨てられた時にこの中に入れられたのさ』

 どこからともなくダンボール箱を持ち出してきたニャオニクスにピカチュウが怪訝そうに首をかしげていると、トレーナーが怒りの形相で部屋の中に入ってきた。しかし、見知らぬポケモンが部屋にいる事に気付くと、表情を一転させた。

「あれ、何そのポケモン? すっごい可愛い~!」
「ピカッ!?」
「ニャオ!」

 トレーナーはうっとりとした表情でダンボール箱の中に入ったニャオニクスに近づく。ピカチュウへの怒りの感情は一瞬の内に無くなったようだった。

『なんかボクの思ってたトレーナーさんの反応とは違うんだけど……』
『僕に一目惚れしたみたいだねぇ』

 トレーナーに頭をなでられ、顔を綻ばせながらそう話すニャオニクス。その直後、トレーナーがダンボール箱に何か文字が書かれているのを発見した。

「『拾ってください』……? あなた、捨てられたポケモンなの?」
「ニャオ」
「あらま、それは災難だったわね……分かった、私が養ってあげる」
『待って待って待って』

 ニャオニクスを家に迎え入れる事を即決するトレーナーに、ピカチュウは慌てて待ったを掛ける。ピカチュウは床に落ちていたポケモン図鑑を拾い上げ、ポケモンのイラストだけが切り抜かれたページの数々をトレーナーに見せた。

『ほら見て! そのポケモンはトレーナーさんの大切な図鑑のイラストを破ったんだよ!? 家に置いたら何をしでかすか分かんないって!』
『他ポケの印象操作とは、感心しないなぁ、ピカチュウ』
『印象操作も何も全部事実でしょ!』
「ああ、図鑑の絵が……!?」

 驚いた表情をするトレーナーを見て、ピカチュウはこいつがやりましたと言わんばかりにニャオニクスを指差す。トレーナーは指差されたニャオニクスを暫く見つめた後、いきなりぎゅっと抱きしめた。

「すごーい! こんな綺麗にポケモンの絵だけを切り取るなんて、あなた天才よ!」
『いやなんでそうなるのー!?』

 てっきりニャオニクスの事を叱ると思っていたのに。トレーナーの予想外の反応に、ピカチュウは思わず突っ込まざるを得なかった。当然、ポケモンの言葉が人間に伝わる筈もないのだが。

「でも、次からは勝手に本のページを切り取ったりしたらダメよ? 良い?」
『はーい』
『えええええ!? トレーナーさんちょっとニャオニクスに対して甘くない!?』
『まぁまぁ、そうやきもち妬くなってピカチュウ。これから仲良くしていこうじゃん!』
『なんかもう友達気取りになってるし!?』

 ────そんなこんなで、ニャオニクスはトレーナーに引き取られ、この日以降ピカチュウと一緒に暮らすこととなった。
 最初の出会いこそこんな形だったものの、結局のところ二匹の仲は大して悪くはなく、ニャオニクスは色んなポケモンの話をピカチュウに教えてあげ、ピカチュウもそれを興味深く聞いたりしていた。しかしそれよりも、野生で過ごしていたときには出来なかったイタズラがまた出来るようになった事が嬉しかったのか、ニャオニクスはトレーナーに迷惑を掛けない範囲でピカチュウにたくさんイタズラを仕掛けていた。

『ニャオニクスー、この図鑑ってどうやって操作するんだっけ』
『えっとね、ここのボタンを押して、見たいポケモンのデータを選ぶのさ』
『こう? ……あ、ディアンシーのデータが出てきた』
『あぁ、ディアンシーならベランダの向こうで空を飛んでるよ』
『え? どこどこ?』
『隙ありッ!』
『うわあっ!? ……ちょ、何これ、布!? 前が見えないんだけど!』
『くっふふ……! ピカチュウが、ピカチュウが布を被って、これじゃまるでミミッキュだね! あっはははは!』
『もう、何が面白いんだよぉ!』

 時々、ニャオニクスが度が過ぎたイタズラをしてしまい、ピカチュウ共々トレーナーに怒られることもあったが、それでも二匹は大喧嘩をする事もなく、一緒に楽しい日々を過ごしていた。
 そしてある日、女性トレーナーが「旅に出ようかな」と呟き、それを聞いたニャオニクスが目を輝かせて賛同して、あまり乗り気じゃないピカチュウを強引に説得しようとするのだが、それはまた別のお話。

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