フェアリータイプ:ぼくを食べなよ

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作者:八十嶋 牢哉
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読了時間目安:3分



 私には友達がいる。名前はペロッパフ。綿菓子みたいな見た目をした、とっても小柄で可愛らしい妖精みたいなポケモンである。大きな身体を持つ私としてはその愛らしい見た目や大きさが、とても羨ましかった。
 そのペロッパフは、見た目に似合わず、ちょっとだけ難しい話をするポケモンだった。

「才能ってなんだと思う?」
「えっ?」

 そう、こんなことを言うポケモンだった。

「例えば、腕を食いたいだとか、爪の垢を煎じて飲ませたいだとか、いかにも他者の才能を食べ物のように扱うけどさ。結局はそんな簡単な者なのかな」
「それは……まあ、才能とまではいかなくても、個性なんかは食べ物のようにホンワカしてると思うよ」

 唐突な難しい質問に、そう答えるのが精一杯だった。けれどペロッパフはそんな私に更に小難しい話を振ってきた。もう、大変なんだからね。

「けどさ。個性ってのはそれぞれに植え付けられているから個性っていうものであってさ……それを食べ物のように欲する意味が、ぼくにはよくわからないよ」
「そうかな……けど、私はペロッパフみたいな賢くて可愛い子には憧れるけどなあ」

 私がそう返すと、ペロッパフは難しそうな顔をして、目線を空に遣る。なんだ……私が憧れている可愛いペロッパフでも、そういう悩んだような顔をするんだ。まあ、それもまた可愛いって思うんだけれどな。
 そして、ペロッパフは遂に結論に至った。

「じゃあ……ぼくを食べてみる?」
「えっ?」
「ぼくの個性に憧れるんでしょ? じゃあ、あるいはぼくを食べれば君だってぼくのようになれるかもしれないよ?」
「ちょっと……冗談にしては面白くないよ」

 私がそう返しても、ペロッパフは至って真剣な顔をしている。冗談じゃ……ない?

「さあ、ぼくを食べなよ。君のイメチェンに、一役買ってあげるからさ」
「な、何言ってるのさ……!」
「ぼくは……君みたいな大きくて強いポケモンに憧れてたんだ。だけど、そんな個性は手に入れられない。だから、せめて君の糧になって生まれ変わりたい」

 ペロッパフは、矛盾でもしてるようなことを言った。自分は個性なんて手に入れられないと思っているのに、私にはそれを手に入れられるように差し向けている、自分の身体を。
 私は……それを、ペロッパフなりの優しさを、友情表現を受け入れるべきなのだろうか。
 考えれば考えるほど、涙が止まらない。

「さあ、ぼくを食べなよ。今まで楽しかったよ、ありがとう。ガチゴラス」
「…………ううっ!」

 私は友情のために、ペロッパフの身体を噛みちぎった。来世では、もっと純粋な友情を築けたら良いなと、心から思った。それでも。

 ありがとう。


 

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