あくタイプ:人間

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作者:八十嶋 牢哉
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 ワタシは、貴様らにとって一体何であるというのだろうか。
 ワタシは、小さな頃から頑丈な身体を持ち、それ故にそれこそが自分のアイデンティティであると信じていた。辛いこともあった。いじめられることもあった。このあたかも敵意を発しているかのようなギラリとした目つきのせいで、随分と嫌われてしまった。ワタシはそれを素直に、幼心故に悲しく感じていた。だから、ワタシはサナギの身体を……サナギラスという姿形に外観が変貌していったときは、正直嬉しさを抑えきれなかった。どうせワタシはいじめられるという事実を変えることができない。だから、どうせなら強固な身体をもってして、全てをいなして、無かったことにしてしまおうと率直ながら思っていたわけだ。
 そして、ワタシはサナギラスの先に、もう1つの転機を持っているであろうことを、おおよそ察していた。
 それは、くくりとしては『バンギラス』と呼ばれる姿である。バンギラスとは、山ひとつを悠々と破壊するほどの、驚異的なパワーを持っているポケモン。まあ、決してワタシはその姿を手に入れて今までいじめてきた奴らをコケにしてやろうだとか復讐してやろうだとか、そんなことを考えているわけではない。ただ、純粋に、何の混じり気もなく、強くなることで今までの境遇を打破できると考えていただけだ。自分の身を、ただ自分で守りたかっただけなのだ。

 そして、時は訪れる。嫌も否もなく、訪れる。
 ワタシはバンギラスになった。
 鎧のような体表と、背中や頭に生えた猛々しい棘、昔から変わらなかった敵意を放つ目つきの。全て、ワタシが自己防衛出来るためのパーツだ。
 だけれど、世界は思わぬ方向に捻じ曲がっただけだった。ただ、それだけだった。
 貴様らはワタシを何の脈絡もないレッテルのように『悪者』のくくりに嵌め込んで、畏怖すべき対象として恐れ遠ざけた。ワタシは何も悪いことをしていないのに、ただ真っ直ぐに『悪者の権化』のように恐れ、祀り上げた。
 つまるところ、ワタシは『悪者』以外の何物にもなれなかったのか。いじめられていた過去も、それを受け流そうとした進化も、何もかもが『悪者』の遺伝子を持っていたが故だったというのか。ワタシの過去も、『ワタシが悪かった』、そういうことなのか。
 やはりもって、納得がいかない。だが、復讐は決してしない。だって、復讐を働けば、理由はどうあれ、『悪者擬き』かもしれないワタシが『ホンモノの悪者』になってしまうことは避けられないのだから。
 だから、ワタシは繰り返し、唱える。
 ワタシは不満だ、限りなく不満だ。
 だから、貴様らに問いたい。
 『何故ワタシは悪者なのか』、と。
 陥れた張本人である貴様らならわかるだろう。
 ワタシの憎む……人間よ。


 

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