Bloody Friend

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作者:雪椿
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読了時間目安:21分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

俺達は、最高の友達だ。
 俺は物心ついた時から、戦いの中で生きてきた。周りに森しかないこの世界では、戦うことでしか未来を掴むことができない。ぼうっとしていたら、牙が、角が、爪が俺を切り裂こうとしてくる。木の実などの食料をのんびりと探す暇があるのなら、こちらを喰らいに来た敵を逆に喰らった方が遥かに早かった。

 親? 知らない。顔も見たことがない。だが、蔓と葉の袋でできたお守り? の中にあった綺麗な石からして、誰かに飼われていた可能性は否めない。この近くにそんな石は一つも落ちていないからだ。ただ綺麗なだけの石に情を抱く理由などこちらにはないのだから捨ててもよかったのだが、今も蔓の長さを変えてまで身に着けているのは、少しでも親の「愛情」を感じたいからなのか、何なのか。

 仲間? 話が通じそうなやつと手を組んでその場限りの関係ならあるが、長い間関係を持つなんてことはない。友達なんて、もってのほかだ。もし、万が一友情が芽生えたらどうだ。俺はそいつに対して警戒心をなくし、裏切られた時にはその裏切りに気が付くことなく地面の下に行ってしまうだろう。わざわざ死にに行くほど、俺もバカではない。
 だから、俺は友達なんていらないんだ。


 なのに。


「……何でいるんだか」
「何か言った? 大トカゲ君」
 そいつは俺がポツリと零した言葉をしっかりとキャッチし、手頃な木の下に使った仮の寝床から上体を起こしてこちらを見てくる。そいつは緑の頭に緑と白の体をしていて、胸には刃のようなものが生えていた。最初にそれを見た時俺は大層驚き、敵の可能性もあったのに大丈夫なのかと思わず声をかけてしまった。今になって考えると、それがダメだったのかもしれない。
 俺に声をかけられたそいつはへらへらと笑いながら、自分はこういう種族なのだから平気だと言ってのけた。そいつはエルレイドと名乗り、なぜか俺と友達になってくれないかと言ってきた。こんな世界で友達になってくれないか、なんて言うやつは見たことも聞いたこともないと言い返すと、ここにいるじゃないかと言われる始末。力づくで追い払おうとしても、一時的な進化をして俺を負かしてまでついてこようとするからいつもの敵よりたちが悪い。何も言わずとも共に敵を倒してくれるからいいものの、本当に何が目的なのやら。
 身の安全のために何度も寝床を変えても、エルレイドはひょっこりと現れては今のように寝床で横になっている。お前は俺の親なのかと言いたくなってくるほどのしつこさだ。一回冗談でそう尋ねたこともあったが、「僕と君の種族じゃタマゴグループが違うから無理だよ」とまるで小さな子どもに聞かせるような口調で答えを返された。タマゴグループという、俺の知らない言葉を知っていることから、俺や敵とはどこか違うことを知った。だからといって、友達になる気はさらさらないが。
「大トカゲ君」
 いつの間にか立ち上がり、俺のすぐ傍まで来ていたエルレイドが、鋭い目で俺を射抜いてきた。使い物にならないから、という理由からこれまで一度も開くことのなかった右目まで開いている。その瞳の奥に今まで感じたことのない、明確な強い「意思」があることに気が付いた俺は、不思議に思いつつも口を開く。
「何だ。いつもの友達の押し付けならいらんぞ」
「違う」
 静かに首を横に振ったエルレイドは、ゆっくりと口を開く。まるで、何か覚悟を決めたかのように。
「僕と一緒に、ここを抜け出そう。大トカゲ君。今ならきっと、間に合う」
「はぁ?」
 意味がわからなすぎて、思わず間抜けな声が出る。ここを抜け出す、ってどういうことだ。ここは広大な森の中。どこかに閉じこめられているのならともかく、森の中では抜け出す必要などない。次から次へと疑問符が浮かんでくる俺に対し、エルレイドはなぜか悲し気な表情をした。まるで、何も知らない子ネズミを見るかのように。
 その態度に苛立ちを覚えた俺は、妄言なら他所で言えと吐き捨て寝床で横になる。気配からして、敵は近くにいない。いつ疲れ(精神的なものを含む)を取れる時間があるかわからない。今のうちに休んでおかなければ。
 そう思い、ゆっくりと瞼を閉じていった。その時。

「――!!」

 背後から寒気がするほどの殺意を感じ、起き上がると共に二度蹴りで地面をえぐりつつその場から離れる。全身を這いまわる寒気を意識下に追いやり、殺気を感じた方向に視線を向けると、そこには身に纏うオーラをガラリと変えたエルレイドがいた。タイミングや位置からしてある程度は予想していたものの、それが事実だと知るとややショックを受ける。いや、何でショックを受けているんだ。友達でも何でもないのに。
「お前、一体どういうつもりだ? 殺意を向けるのであれば、こちらも相応の態度を取らせてもらうぞ」
 言葉を発すると同時に攻撃の構えを取る。エルレイドも刃のような腕を構え、鋭い視線を送りつけてくる。答える気はない、ということか。それならば話は早い。無理やりにでも話して貰おうか!

「うおおお!!」

 戦いはスピードが命だ。俺は先手必勝! とばかりに電光石火を発動しながらエルレイドの頭をかみ砕こうとする。だが、俺が捕らえたのは虚空だった。エルレイドの姿はどこにもない。走ったり、避けたという感じではなかった。まるで、始めからそこにいなかったみたいで――、

「まさか!?」

 テレポートを使ったのか、と言う暇もなく上空からの気配を感じ、片腕に発現させたリーフブレードを構える。その刹那、同じ色の刃がぶつかりガキィンと刃同士がぶつかる音が森に響く。
「ふん、気配でバレバレなんだよ」
 作戦が失敗したことにより計算が狂ったのか、慌てて距離を取ろうとするやつの背後に回って辻斬りをしかける。が、何かがおかしい。手応えは確かにあった。やつは音もなく地面に倒れた。勝利が確定したはずなのに、本能は危険信号を発している。
 とりあえず本能に従ってやつから距離を取り、俺の体よりも太い幹を持った木の後ろに隠れる。チラと様子を見ようと覗き込んだ時、そこの地面が爆発した。慌てて顔を引っ込めると、視界の端を土や木片が飛んでいく。何が起こったのかはわからないが、あのまま本能を無視していたら無事ではなかっただろう。
 深い息と共に胸を撫で下ろしていると、風切り音が聞こえたと共に腹部に違和感を覚えた。空腹時などに覚えるようなものではない。まるで腹に氷でも仕込まれたかのように冷たく――、いや。冷たいなんてものじゃない。これは。

「あああぁぁぁぁ!!!」

 体が燃えるかのような痛みが腹から広がり、口から悲鳴が零れる。原因を取り除こうと下を向くと、俺には似合わない桃色の刃が顔を覗かせていた。一刻も早く痛みと別れを告げるため、激痛に耐えながら刃を引っこ抜く。確かにそれは刺さっていたというのに、傷口は一向に開くことなく刃は空気に溶けていった。回復のため光合成を行いながら、考える。
 あいつ、エルレイドが使えそうな技から考えると、サイコカッターを使われたのか? しかし、以前俺が見たことのあるサイコカッターは桃色の三日月のような刃だった。とすると、サイコカッターの応用版、みたいなものか。記憶が正しければ切られた敵はもれなく赤い噴水装置となっていったはずなのだが……。
 もしや、刃だと思っていたけど刃じゃない? 手加減を、された?
「っ! バカにしやがって!!」
 あれだけの殺気を浴びせながらも手加減をする、という矛盾した行為に怒りが沸々と湧き上がる。やるなら思い切りきやがれ、ってんだ! 本当にあいつは何なんだ!?
 風が止んだことを確かめてからありったけの怒りを込め、幹越しにエルレイドがいたはずの場所を睨む。恐らく、エルレイドはまだやられていない。あの爆発がそれを表している。それに、さっきは「地面が爆発した」と言ったが、よく思い出してみると「地面が弾け飛んだ」という表現の方が合っている気がする。地面が何もなしに爆発するはずがないからな。
 つまり、エルレイドは地面に向けて何かしらの技を放ったんだ。あれだけの威力を出せる技というと、インファイトあたりか。あの技は威力は強いが使った後相手の攻撃に弱くなる、とあいつは言っていた気がする。使った後はしばらくぼうっとしていたから、もしかしたら反動もあるのかもしれない。そんな技を使った後なら、すぐに攻撃をすれば反撃の糸口になるかもしれない。いや、糸口になる「かも」じゃない。糸口に「する」んだ!
「喰らいやがれ!」
 木の前に躍り出ると、こちらに近づかれる前にとタネマシンガンを放つ。ガガガガ、と抉れた地面にタネが吸い込まれていき、土埃を巻き起こす。悲鳴も何も聞こえない。これでは勝ったのかどうかがわからない。
「……チッ」
 仕方がない。見に行くか。周囲に小さな鎌鼬を発生させ、風の力で土埃を取り除きながら進む。鎌鼬が成長しきらないうちに空に打ち上げ、自身が傷つかないようにしていく。距離が距離だったため、すぐに目的のところへと着いた。さてさて、エルレイドはどのような顔倒れているのやら――。
 期待や不安を覚えながら、完全に大きな穴となった場所を覗き込む。土埃が完全に取り払われていないからか、穴が深すぎるのかエルレイドの姿は見えてこない。もしかしてタネマシンガンの衝撃で土が崩れ、結果的に埋めてしまったのか? その考えに頭を拳で殴られたかのような痛みを覚え、体がどんどん冷たくなっていく。
 何だ、何でだ。何で友達でも何でもないあいつのことで、こんな状態になるんだ。……いや、もしかして。俺は、あいつのことを。

「……既に、友達だと思っていた?」

 すぐに消えそうなほど小さな言葉が空気に溶けた瞬間、首元に耐えがたい衝撃と痛みが走り、体が穴へと吸い込まれる。受け身を取る余裕などない。二つの衝撃で意識が飛びそうになるのを堪え、首元に手を当てるとぬるりとした感触が伝わる。どうやら派手に切られたらしい。幸い穴に差し込む光で光合成を続けられるが、これは痛い。先ほどのサイコカッターが可愛く思えるほどの痛みだ。この痛みの強さを考えると、使われたのは燕返しあたりだろう。威力はそこそこだが愛称を考えると侮れない。
 せっかく重要なことに気が付いたというのに、この状態ではどう反応していいのかわからない。この状態と言えば、俺は最初のリーフブレードからエルレイドの姿を全く見ていない。サイコカッターならともかく、燕返しは近距離じゃないと使えないはず。なのに全く見えないとはどういうことなんだ。テレポートを使うにしても、全て死角に入った状態でやるのは厳しいように思える。俺もずっと同じ方向を見ているとは限らないからな。
 本当に、わけがわからない。唯一わかることと言えば、エルレイドはここに落ちてはいなかったということだけ。地面の感覚がそれを伝えている。混乱の中に少しだけ安堵が加わり、俺の頭はもうごちゃごちゃだ。誰でもいいから説明してくれ。そんな思いを抱きながら空を仰ぐ。
 今の状態で敵に襲われたら俺は袋のネズミだろうが、気配のけの字もないからそこだけは安心していいだろう。敵だけならともかくエルレイドの気配もしないのは安心に入れていいのかどうか、悩むが。
 とりあえず今は十分に傷を癒し、体力も回復させることを優先としよう。ぽかぽかと暖かな陽気に思わず状況を忘れ、思瞼をゆっくりと閉じた時。

「全く、どこまで行っても大トカゲ君は大トカゲ君なんだね」

 どこからかエルレイドの声が聞こえ、何かがひび割れる音がした。


*****


「は!?」
 突然飛び込んできた出来事に眠気を忘れ、起き上がりつつ目を開ける。すると、目の前にはさっきまで全く姿を見せなかったエルレイドがおり、あの時見た進化を遂げていた。それだけならともかく、その両腕は紅に濡れている。その様子に違和感を覚え周りを見てみると、俺は寝床にいてどこにも傷はない。更に見回してみても地面が抉れている場所などどこにもなく、まるで時間が巻き戻ったかのようだ。
「……本当に、気が付かなかったんだね」
 そんな俺の様子を見て、エルレイドは苦々しい笑みを零した。


 元の姿に戻り、川で腕を綺麗にして帰ってきたエルレイドの話によると、俺が戦っていたと思っていたエルレイドや森は一種の幻だったらしい。俺はやつの目に射抜かれた時、同時に催眠術をかけられいつの間にか眠りの世界に落ちていた。夢の主導権はエルレイドにあるのだから、自分の姿を見せるか否か、技のタイミングなどはやつの思い通り。俺は夢の世界で透明な敵と戦っていた、というわけだ(最初は見えていたが)。言われてみればどこかしらのタイミングで気が付きそうだが、なぜ気が付かなかった、俺。今更だが、よく今まで生き延びてこれたな。
 俺が夢の世界に行っている間、エルレイドは近づいてきた敵を切りまくっていたそうだ。メガシンカ? はさっさと片づけるためにしたのだとか。ちなみに、切った敵は全て埋めたらしい。俺だったら有難く頂戴するが、思えばこいつは敵を喰わない主義だったな。
 そして、一番重要な話。どうして俺にこんなことをしたのか、だが……。

「ここが『シセツ』の中!?」

 シセツというものがどういうものなのか、いまいちよくわからない。だが、エルレイドの説明によりこの世界は本当の世界ではないことだけはわかった。
「そう。ここはある組織が持っている施設の一つで、蠱毒のような感じで強いポケモンを育てている。素質がある種族には、大トカゲ君みたいに予めメガストーンを持たされるんだ。メガストーンともう一つの石を使うと、さっきの僕みたいにメガシンカができる。最も、ここのものは色々と改造されていて、トレーナーとの絆や位置関係は完全に無視しているけど」
「ちょっと待て。お前は石を持っているように見えないんだが、どうしてそれができるんだ?」
 次から次へと入ってくる情報に頭をパンクしかけながら、そう質問する。こいつの姿はよく見ているが、俺のような状態にして首からぶら下げている感じではないし、何かの形で身に着けているようにも見えない。思い当たることと言えば、いつも閉じていた片目だけ。……もしや。
「片目を加工しているのか?」
「いや、違うよ。確かにそれもなかなか浪漫があるけど、僕の場合は違う。僕のメガストーンは、この心臓に埋め込まれているんだ。どうやったのかは知らないけど、捨てようと思っても捨てられないから仕方なく使っている」
「……そうか」
 何か、悪いことを聞いてしまった気がするな。それにしても、俺もこいつみたいにメガシンカというものが出来るのか。俺は一度も体験したことがないな。発動権利はトレーナー? という存在が握っているからか? だとすると、エルレイドはよく好きなタイミングで進化ができるな。
 不思議に思い聞いてみると、エルレイドはテレパシーという能力で進化したいタイミングをトレーナーに伝えていたらしい。幸運にもエルレイドの担当であるトレーナーは組織の中でも優しい方で、今までの情報を流してくれたのもそいつなんだとか。そう考えると、俺の担当はそれほど優しくないらしい。俺が意思を伝える手段を持っていないから、というのもあるかもしれない。
「で?」
「で? って、何が……、ああ。まだ肝心なことを言っていなかったか。それで、今日トレーナーに伝えられたんだ。そろそろいい時期だから、残ったやつを回収して次の段階に行くって」
「次の段階? もしかして、今のよりヤバいのか?」
「うん。ここで行われている内容から考えても、ここよりずっとよくないことだけは確かだ。だから、僕は施設を出ることに決めた。大トカゲ君も誘おうとしたんだけど、万が一ということもある。それで色々と試すつもりで……」
「ああした、というわけか」
 俺の言葉にエルレイドが頷く。正直試すのであればこんな回りくどいことをしなくてもよかった気がするが、あれには俺の見抜く力がどこまであるかを知るという目的も含まれていたから問題ないらしい。で、どこまでやっても俺は全く見抜くことができなかったため、呆れながら催眠術を解いたというわけだ。
 この世界にも何の疑問も抱いていなかったから、俺の見抜く力は皆無に違いない。……これまで敵が来たら、気配がしたらすぐぶん殴る、の形でやってきたから、身につけようがなかったのかもしれないが。
「それで、俺は合格と不合格どっちなんだ?」
「もちろん合格だよ。見抜く力に関しては問題しかないけど、それは僕がフォローすればどうにかなるだろうし。友達を置いていくことなんて僕にはできないし」
「……そうだな。じゃあ、早速行こうぜ」
 すぐに返答した俺を、エルレイドはポカンとした顔で見つめる。ん? 変なことは言っていないはずだが――、ああ。俺がいつものように「いや、友達じゃないだろ」とは言わずに受け入れたからか。話の内容からして俺の夢の内容も知っているはずだが、あの言葉はかなり小さかったから把握できなかったのだろう。
「変な顔すんなよ。俺達、友達……だろ?」
 二カッと笑うとエルレイドもつられたように笑い、「じゃあ、行くよ」と真剣な顔つきになる。コクリと頷いた瞬間、周囲の景色が一変した。こういう時、こいつのテレポートはとても役に立つ。
 ……で、ここは一体どこだろう。森ではないことは確かだ。突然現れた俺達に慌てふためく生き物が多数いるが、一体何を言っているんだ? エルレイドはテレパシーを使っていたことから考えてある程度わかるとは思うが、俺は全くわからない。そういう経験が全くもってないからな。


〈なぜSceptile××とGallade××がここに!? 対策はとっていたはずだ!〉

〈くっ、上に報告をしなければ! 誰か、対抗できるポケモンを!〉

〈Sceptile××とGallade××の担当だったやつはどこだ!?〉

〈Sceptile××の方は昨日から顔を見せていません! Gallade××の方は今確認をしてみましたが、どこにもいません! まさか、逃げたのでは――〉


「なあ、あいつらは何て言っているんだ?」
「……僕達を消そうと言っているね。邪魔だから、こっちが消してあげようか」
「だな。俺はまだ生きていたい」
 互いに頷きあうと、それぞれ「敵」に向かって躍りかかる。さあ、戦いは始まったばかりだ!












 俺は少し前まで、仲間など、友達などいらないと思っていた。それがきっかけで死ぬことがあるかもしれないと考えていたからだ。だが、実際はどうだ? 俺の仲間は、友達はこんなにも最高の存在だ! もしかしたら、俺も心のどこかではそのことに気が付いていて、仲間や友達を求めていたのかもしれない。
 チャプチャプと水たまりの中を歩きながら、俺達は出口を探す。どうやらエルレイドのテレポートも万能ではないらしく、好き勝手には使えないらしい。あと、インファイトには反動などないそうだ。インファイトは今の状況には関係ないが、俺が何か勘違いしていることに気が付いてどうしても訂正したかったらしい。確かに勘違いしたままだったら今後の対応にも影響が出てくるな。しっかりと記憶しなければ。
 これまで教わった知識をしっかりと記憶に刻みながら、チラと隣を歩くエルレイドを見る。今のこいつは元が緑や白だったとは思えないほど紅に染まっている。それを言ったら俺も似たようなものなんだが、これがなかなか面白い。ある意味お揃いだからなのかもしれない。
「外に出たらどこに行こうか」
「出た後で考えればいいだろ」
「そうかな」
「そうだろ」
 どうでもいい会話を続けながら、俺達は歩き続ける。途中で意見がぶつかって危ない時もあるだろうが、結局何とかなってしまうのだろう。そんな予感がする。
 ふと視線を下げると、水たまりに映る自分と目があった。動くことで波紋が広がるからか、その表情はどこか歪んでいる。エルレイドのはどうだろうか。視線を横にずらすと、紅の中のあいつと目が合った。だが、これは波紋が見せる錯覚だろう。そう考えて、再び視線を前に戻す。
「…………ふふっ」
 視線を戻す直前、水たまりのエルレイドがとても楽しそうに笑うのが見えた気がした。


「Bloody Friend」 終わり

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