未来予知

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作者:雪椿
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読了時間目安:4分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

未来が見えたからこそ、こうしたんだ。
 ある村に、百発百中未来や過去を当てることができると言われるネイティオがいた。村に住むポケモン達は何か不安や問題ごとがあったりするとネイティオを尋ねては過去や未来を視て貰い、それらを解決していた。
 ネイティオは自分が過去や未来を視ることで相手の助けとなるのならと文句は言わなかったし、村の者達もネイティオのことを頼りにこそすれ利用しようとはしなかった。こうして、村は平和を保ち続けていた。
 ある日のこと。村から突然ネイティオが姿を消した。何事かと思ったポケモン達は彼を探し回ったが、ネイティオが見つかることはない。恐ろしい事件に巻き込まれたのでは。村のポケモン達の脳裏にそんな言葉がちらつき始めた時、一旦村に戻っていたポケモンが慌てた様子で戻ってきた。
 不思議に思ったポケモンの一匹がその者に尋ねると、何と村がなくなっているというではないか! ネイティオを探すどころではなくなったポケモン達は、大急ぎで村へと戻っていった。
 皆が息を切らせながら帰ってくると、確かに村があったはずの場所にはただの大地が広がっている。見慣れた景色は消え去り、ただ彼らが見慣れない生き物が木を伐り、家を潰している光景が目に映る。
 一体自分達の村に何が起こったというのか。様々な憶測がポケモン達を飛び交う中、現実を見たくないからか空に視線をやっていたポケモンが声をあげた。何と、今まで探しても見つからなかったネイティオが悠々と空を飛んでいるというではないか!
 皆が一斉に空を見上げてみると、そこには確かにネイティオがいた。村がなくなっていく未来を知っていたというのに、ネイティオは誰にも教えようとはしなかった。そして、現実に村がなくなっていくのを見ても彼は止めようともしなかったのだ!
 怒りに頭を支配されたポケモン達は降りてくる気配のないネイティオに向かって怒り、失望したと告げた。ある者は怒りに任せて怒鳴り散らし、ある者は技を放ってネイティオを傷つけようとした。誰かが放った毒針が彼の傍を掠めた時、見知らぬ生き物の声がポケモン達の耳に届いた。
 どうやらポケモン達を見て何か騒いでいるようだった。ある者はこちらに指を向け、ある者は赤と白の球体を構えてギラギラとした目で見つめている。これはネイティオに怒りを向けている場合ではなくなった。そう理解したポケモン達は、ぞろぞろと集まってくる生き物達に向かって走り出した。

*****

 村にいたポケモン達が違う生き物……人間に向かって走り出したのとほとんど同じ頃。ネイティオは翼を動かして空を泳いでいた。やはり、自分の視た未来に偽りはなかった。その思いだけがネイティオの中を渦巻いていた。
 ネイティオも知っているにも関わらず伝えなかったのではない。見物しようとして見物していたわけではない。過去、または未来を知ったからといって、全てがどうにかなるわけではないのだ。
 あの人間達は自分達の土地を広げるためにネイティオの、ポケモン達の土地を奪った。やろうと思えば返り討ちにできるだろうが、人間達は誰もかれも世が認める優れたポケモン使いだった。強いとはいえ、野生のポケモンである彼らが叶う相手ではない。
 ネイティオが視たのは、敗れてボロボロになり、あるいは相手の球体に吸い込まれ望まぬ主を手に入れるポケモン達の姿だった。悪いがネイティオはそんな未来にまで付き合うつもりはない。だから逃げた。

「ワタシは何も悪くない。未来が見えたからこそ、こうしたんだ。」

 誰にも届くことのないネイティオの呟きは虚空を漂い、ひっそりと姿を消していく。彼が次に視るのはどのようなものなのか。それは彼にしかわからない。
 ちなみにこの僅か数日後、ネイティオはとても不思議な森に着き、そこで何とも珍しい前世を持ったポケモン達と出会うことになるのだが――、彼の目には既にそのことも映っているのだろう。


「未来予知」 終わり

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