新緑の剣

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作者:レイミラ
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読了時間目安:12分
注意!

この小説は、ある企画で作成した物であり、連載小説の物とは一切関係ありません。また、連載している物とはかなり文章の構成を変えて作っております。ご理解ください。
 曇天の下に広がる大草原。周りに邪魔する者もいなければ、味方する者もいない。強い風が二匹の身体に吹きつけ、荒れる。お互いの痺れる睨み合いが続く中で、風に揺れた草共が騒ぎ立てるだけであった。しばらく観衆のざわめきを聴いたあと、遂に一匹のジュナイパーが声をあげた。

「今日、リベンジしに来た。」

それを聞いて怪しげな笑みを浮かべたジュカインが応えた。
「俺は…お前をずっと待っていた。永い年月が経ったな。ここは一つ、リベンジと言わずに新たな戦いとしようじゃないか。この勝負で全てを決めよう。」
「その話、乗った!あとの言い訳は聞かないぜ?」
「そんな格好のつかないこと、するわけねーだろ。」

二匹は挨拶を交わし、目を閉じ、後ろを向いた。二間は手が届くか届かないかくらい近接した、緊迫感の凄まじい距離である。すると風が止み、観衆は開始の合図を静かに待った。そして閑寂の時間が訪れたその時、両者は一気に目を開き、息の合った掛け声で、お互い風の如く勢いよく振り向いた。


「「いざ、勝負!!」」


両者のリーフブレードの激しい衝突で熱戦のゴングが鳴り響いた。



 両者は剣を交わし合い、互いに一歩も引かない。ギリギリで刃を弾き、攻めに転じてはかわされ、守られ、また相手の攻めを避け…一進一退の攻防が目まぐるしく展開されるなか、ジュカインが先に動いた。ジュナイパーの振り下ろした剣に合わせてジュカインは振り上げて弾き返した。ジュナイパーの胴に隙ができた。
「くっ!」

「甘いな!つばめがえし!」

「グハッ…!」
攻撃をまともに受けたジュナイパーはすかさず少し距離を置いてペースをずらす。合わせて間合いを詰めるため急接近したジュカインの足下にリーフブレードを自身の体の外へなぎ払うように振るう。しかしジュカインは軽快なジャンプでかわして、剣が通り過ぎて隙だらけなジュナイパーの身体にそのまま刺しにかかった。
「お前はまだ弱いな。」
と言葉をかけたジュカインだったが、ジュナイパーは外に払った剣を、滑らかに自分の中央に戻した。
「なっ…!」
その払い斬りは囮であって、あまり力を込めずに振ることで次の一手を速く積むことができた。飛んだことによって浮いたジュカインは焦って剣先を戻してジュナイパーの攻撃を守ったが、着地の体制が整わずにふらついた。

「これが、俺の成果だ!ブレイブバード!」

「グオオオオッ!?」
チャンスを逃さなかったジュナイパー、翼を広げて危険をかえりみず突進し、大きなダメージを与えた。追撃は止まらない。ブレイブバードの勢いで吹き飛んだジュカインの懐に
飛んでゆき、かげうちを放った。
「今のはやられたな…。だが、もう効かん!」
「こっちだって…負けられないんだ!」




 ────それは昔のことだった。

「キモリ〜!今日もバトルしよ!」
「またかよ、飽きねーな。どうせ俺には勝てねーよ。」
「勝てなくても、楽しいんだもん!」
「しゃーねーな、手加減しねーぞ。」
昔は、まったく歯が立たなかった。初めは触れることさえできなかったし、傷を与えてもカウンター攻撃されるしでどうしようもなかった。でも、だんだん自分が成長してるのが嬉しくて、楽しくて、だからこそ負けても彼とバトルするのが好きだった。…けど、彼は…。
「ねえ!どこ行くの!?」
「強い奴と戦いに行くだけだ。」
「俺の相手は…?またすぐに帰ってくるんだよね!?」

「…お前とバトルしても強くならねーんだよ。」

その言葉を聞いたら、止めることも出来なくなった。自分が弱いことくらいわかってたし、それで彼も弱くなるんだったら責任は俺にあるって。でも…でも、弱いって言われた気がしてならなくて、ココロが傷ついて…。君の背中が遠のいていく。それが、まるで俺と君の力の差を示唆するように地平線に消えてゆく。弱いって言われたからじゃない。自分が弱い為に止められなかったのが苦しくて、辛くて、その日は一睡もできなかった。

一夜明けて、俺もこの草原を出て一から教わり、学んで、ときに自分で考え、悩み、何度も何度も転んでは立ち上がって…泥水をすすってもひたすら励んだ。そう、すべて君が帰ってくることを願い、そして負かしてやりたい為だけに…!


 苦く、悲しかった想い…そして堅忍不抜のココロで復讐の想いをすべて懸けてジュカインの目の前に立ち、強気の表情を一時も変えず睨みつけている。逆に立ち上がるなり、急にニヤッと場に合わぬ顔を見せたジュカインは彼の強さに高揚していたのだった。
「…お前の覚悟、凄く伝わってくるぜ。俺に勝ちたい一心で強くなったのか?だが俺だって負けられねえんだよ…!」
「君に解るわけない!あの時俺がどれだけ心を痛めたのか!どれだけ悲しい思いで見送ったのか!!」

「俺だって辛かったんだよ!!!」
「!!」

ジュカインの叫びにジュナイパーは戦慄く。

「俺は…戦う度に強くなったお前が…怖かったんだよ…!」
「え…?」
「いつか越されるんじゃないかって、いつか負けるんじゃないかって、戦う度に自信を失ってく俺が…情けなくて…!最初は俺は強くなって永遠に越されることの無いような力をつけなければ…と。だがその考えは止めた!!何が最後の目的か、それは俺もお前と同じだった!」

曇天の中、ジュナイパーは眩い光を見た。翼で遮光して、光が治まったかと翼を下ろすとそこには別の姿のジュカインがいた。
「姿が…変わった!?」
「そうだ!今!!お前を!!ここで倒すことだけに意味がある!!」
「うぐぐ…!さっきよりパワーが…増してる…!グアッ!」
突如目の前に雷が落ちた。ジュカインの新たな姿…メガジュカインの尾が引き寄せたのだ。次第に雨雲が上空を覆い隠し、嵐となった。

「さあ…始めようぜ。」

そう言って再び剱を交わしあった。新たな力を得たジュカインの力は凄まじく、一方的であった。そして遂にジュナイパーの刃が折れてしまった。いくらでも作れるとはいえ、時間を要するためにジュカインの猛攻を受けていてはそんな暇もない。そこで距離を置こうとしても、大雨で足元が滑ってうまく引けない。そして何よりも速度が倍になったジュカインの前に成す術もなかった。
「グアア…!」
「まだだ。」
飛ばされては更なるスピードで追いつかれ、おいうちを食らう。
「ウゥ…。」
「もう終わりか?」
これでもかとシザークロス、アイアンテールと攻撃の押収だった。そして膝をつくジュナイパーにトドメと言わんばかりに、じごくづきを浴びせた。
「ハァハァ…ウグッ!」
手も足も出ないままその場に倒れ伏せたジュナイパー。身体は傷どころではない重傷を負い、ヒクヒクしている。無残な姿を目の前にジュカインは目を閉じた。
「…お前は俺に勝てないんだ。」




────そうかな?

「!?」

 再び目を開けたジュカインの目の前には、傷だらけの身体で笑顔でいた宿敵(ライバル)がいた。
(その笑顔は…!)
ジュカインは思い当たった。その笑顔はまさに昔見た、勝敗を気にせず、純粋にバトルを楽しむあのモクロー…。
(今まで俺は…コイツに追われて、焦って、本当の自分の意思を忘れていたんだ…。)
この光景は昔とさながら変わらなかった。あのとき、最高の友(ライバル)と過ごしたあのとき、いつも最後に二匹は笑っていた。立ち上がったジュナイパーは良き友に告げる。

「俺も、君も、忘れてたんだ。勝つことにこだわって…本当に欲しいものがなんだったのかって。今わかったよ。今まで欲しかったのは『勝利』なんかじゃない、『勝利』を巡った君と戦ってるこの時間だったんだ!!」
「焦りを感じたあまりに忘れていたどころか捨てていたのかもしれない…。お前は…その格好でもまだやるっていうのか?」
「ああ、もちろん!まだまだ遊び足んないね!行くぞ!!」
「フッ…いいぞ、かかってこい!!」

そして再び剣を手に────


 ジュナイパーは持ち味のテクニックでジュカインの強力なリーフブレードを受け流していく。ようやくジュカインのパワーの流し方を覚えて対等に戻した。
「その対応力…!俺はこれに怯えていたのか…!」
幼きあの頃、追いつかれそうになったジュナイパーのその学習能力の高さ…流石に二度は受けないようだ。ならばとシザークロスの構えをしたその時、
「ここだ!!」
ジュナイパーはリーフブレードをジュカイン目掛けて突き刺す。ジュカインは相手のいきなりの突きにシザークロスを使ってリーフブレードを弾き飛ばした。剣はジュカインの頭上に吹き飛んだ。が、その頭上には既にジュナイパーが読んでいたかのように空を舞っていた。

「まさか…大きな技を使わせて…!?」

ジュナイパーは真上に弾き飛んだ剣を再び掴み、そこから急降下でリーフブレードを振り落とした。ジュカインも攻撃を受けるギリギリでリーフブレードで対抗したが、その高さからのパワー、そして意表を突いた攻撃に対応しきれずに吹っ飛んでしまった。転んだジュカインに、奥義を構える。

「これが!!君への答えだ!!」

ブレイブバード…否、無数のかげぬいの矢がジュナイパーの周りを覆う。

「想いよ届けッ…!!シャドオオォォォアロォォオオオオズ…ストライクァアアアアア!!!」

光を放った鋭い矢は次々にジュカインに目掛けて火炎を纏って豪雨のごとく降り注いで襲う。防御の姿勢でじっと堪えるも、一発の強さが相当以上でいて、矢が地に刺さる度に小爆発を起こす。

「くっ…!俺も…お前に俺の答えを教える義務がある!!グオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

ジュカインは目にも止まらぬ速さで、落ちてくる無数の矢を剣一本で床に落ちる前に、爆発させずに弾く。しかし全て弾くことは出来ず、爆発と雷雨の嵐で草原一面が煙に包まれた。ジュナイパーはしっかり見えていた。苦しくも立っているジュカインのシルエット…それは勇ましかった。

「あの技を耐えた…!…そうでないとな…そうでなくっちゃ困るぜ!!」
「もっと俺を楽しませろよ…!」

再び剣の交わし合いが始まった。だが、もう終盤に入った今、傷痣だらけの勇者たちは気力だけで戦っていた。

「グアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ラアアアアアア!!!!」

ガキィィィィィン!と大きな快音とは裏腹に、至極の闘いに嵐にも消せぬほど命を燃やし、滾らせ、全てを互いにぶつけ合った。





 気迫と気迫の衝突に、遂にエンディングが見えた。

「「トドメダアアアアアアアアアアア!!!!」」

二匹のリーフブレード…ジュナイパーの振り下ろした剣は半歩届かない。攻撃をかわしたジュカインの刃はジュナイパーの胸を串刺した。ジュカインは刺さった刃を引き抜いた。体力の限界が来てかすれる意識の中、それでも最後の執念で前方に倒れるジュナイパーはジュカインにかげぬいを放った。その矢はジュカインの右頬をかすめて行った。


「勝った…!」
「…まだ…!」


ジュナイパーが倒れる直前の事だった。ジュカインの脚を目がけて意地のリーフブレードを払い切りを仕掛けた。

「グアッ!」

ジュカインは最後の足掻きを両脚にまともに食らった。そしてジュナイパーはそのまま強風に煽られながらゆっくりと地に顔を伏せた。…その足掻きはまるで図ったかのようだった。

(脚が…もう動かねぇ…。楽しかったぞ…。…そしてこの勝負は…。





















引き分けみたいだな…。)



右頬をかすめて行ったかげぬいの矢は嵐に煽られ威力を増して戻って、ジュカインの腹を貫いた。二匹はその場で傷が癒えるまで暫く笑顔で倒れていた。

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