うちのラティアスさん

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作者:きとら
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読了時間目安:11分

この作品は小説ポケモン図鑑企画の投稿作品です。

 俺は一応、ポケモントレーナーをやってる。
 大して腕は強くない。ちょこちょこっと観光気分でジムを巡って、そこそこポケモンたちを鍛えながら旅をしてる。
 ポケモンリーグの戦績? 聞くなよ。

 まあぼんやりしてる奴だから、ポケモンには好かれやすい。たぶん人畜無害な奴だって伝わりやすいんだろうな。たまにちょっと悔しくなるけど、総じて悪くないポジションだと思ってる。
 おかげで俺は好きなポケモンに囲まれていられるからね。



 ここで仲間を紹介しよう。
 まずは俺のパートナーであるカイリューさん。
 マジメというか、おとなしいというか。誰に似たんだろうな。

「がお」

 次に悪戯好きのニャスパーさん。
 しょっちゅう俺のおやつを盗み食いするクソガキ。

「ニャッス」

 三番手はしっかり者のクチートさん。
 料理洗濯お片付け、何でもこなせる綺麗好き。

「クチ」

 最後はもふもふ担当フォッコさん。
 正直こいつがいればあとは何でもいい。ぎゅーってできればそれでいい。

「フォコ!」

 以上の4匹でした。



「おい」

 ダメだよね。
 うん分かってる。一番重要な奴が抜けてたね。



 そいつと出会ったのは、俺がふらふらっとアルトマーレにやってきた時のことだった。
 というか、出会いよりも他にも言いたいことが山ほどある。訪れた日の真夜中にすげぇ出来事があったとか。夜起きて風に当たってたら、突然街中で檻が生えたり、プテラとカブトプスが暴れ回ってたり、大津波が襲ってきたり……まぁそれは置いとこう。
 要はその後だ。

 次の日、俺はアイスを買ってフォッコを抱きしめながら食べていた。ちょうど桟橋の方に差し掛かった辺りで、少年少女があまーいキスをしてたのを見かけて、慌てて引き返した。
 いいなー。俺も彼女欲しい。甘い言葉を囁き合ってイチャイチャするの。
 ほんと……うらやまじいいい。

 観光3日目。
 大聖堂を回って、適当に食べ歩きながら街を歩いた。

 ここまでは普通の観光。
 でもこっからちょっと不思議な話。

 俺は一応ポケモントレーナーだから、旅先で出会ったポケモンと友情を育むことにした。
 ほら、あそこポッポとかやたら多いからさ。水飲み場で水浴びしてる1匹が可愛かったからゲットしちゃおうかなって、ボールを投げてみたら見事に外れた。近くの窓を割って怒られた。
 大運河にかかる橋から下を眺めて落ち込んでたら、チョンチーがゆらゆら泳いでるのが見えた。そういやランターンって可愛いよな、と思ったから、またボールを投げてみた。そしたら何とビックリ、当たったんだよ。
 やったー! チョンチーゲットだぜー! ってはしゃいだのも束の間。早速ボールから出してみたら、それはチョンチーじゃなかった。

 はいお察し。
 ラティアスでした。じゃじゃーん。

「……グー」

 なんか低い声で唸って、そいつはいきなり俺の胸ぐらを引っ掴み、運河の中に引きずり込んだ。
 そのまま俺は溺れ死んだ。



 次に目が覚めた時、天使を見た。明るく元気に跳ねた茶髪。白い帽子。ちょっとキツい目。
 ストライクだった。

「つ……付き合ってください」

 ビンタを浴びて、俺は飛び起きた。



「お爺さん! 問題も問題、大問題よ!」
「いや、しかしなぁカノン」

 遠くで繰り広げられる少女と老人の言い争い。
 俺は人気のほとんどない庭園にいた。ちょろちょろ流れる水路が心地いい。
 いいところだなぁ。ここで彼女とデートできたら最高だろうなぁ。

「グー」

 まーた地鳴りみたいな鳴き声がした。
 俺の周りをうろちょろ飛んでるこいつが、どうやら議論の対象らしい。
 そりゃそうだ。確かこいつはアルトマーレの守り神。川でのんびり泳いでたこいつをうっかり俺がゲットしたって言うんだから大変だ。
 早く逃がしてここから逃げたい。そう思っていたところに、さっきの少女がさらにキツい顔して近づいてきた。

「ラティアスが、連れていって欲しいんだって」
「……はあ」



「え、何で?」



「何で?」



 という訳で、ラティアスが仲間になった。
 本編スタート。






 うちのラティアスさんはボールに入りたがらない。
 だからいつも女の子の姿に化けている。俺が恋した女の子の姿に。
 ……酷くない?

 ラティアスが仲間になって4日目、船でジョウト地方に戻ってきた。
 ヨシノシティのポケモンセンターで目が覚める。

「おはよう、ラティアスさん」

 目をこすりながら、もうひとつのベッドでスゥスゥ寝てるラティアスさんにご挨拶。
 見た目と鳴き声は可愛いんだけどなぁ。ほらみんなも聞いてごらん、クゥーって鳴くから。

「おぁ…よぅ?」

 シャベッタ。



 うちのラティアスさんは飲み込みが早い。
 言葉を教えるとスポンジみたいにどんどん吸収していく。

「オボン」
「おもん」

「テレビ」
「れれみ」

「ラティアスさん」
「らしあるはん」

「俺」
「ばか」

 このアマ……。



 うちのラティアスさんはポケモンたちと仲がいい。
 みんなと意気投合しまくってる。何だか最近俺の方がハブられてんじゃね? って思える勢いで。

「おーし! みんら! あそぼ!」
「ガウー」
「クチー」
「ニャー」

 俺を慰めてくれるのはお前だけだよ、フォッコ。

「フォコ!」

 いてっ……殴られた。






 ひと月経つと、ラティアスさんはだいぶ饒舌になってきた。
 言葉も完璧と言っていい。きっと俺の教え方が良いおかげだろう。

 そこである日の晩、森の中で焚き火をしながら休んでいる時に、思い切って聞いてみることにした。

「ラティアスさん、ラティアスさん。ちょっと」
「あ〜? 何? 歯磨きは終わったよ」
「どうしてラティアスさんは俺のポケモンになったの?」

「さ〜?」

 ガチで首傾げてる。

「お前があたしを見つけたからかな!」

 おいやめろ。
 その顔で眩しい笑顔はやめろ。
 くそっ可愛いなちくしょう。

「ありがとう、ラティアスさん。俺こんな個性的なポケモンと仲間になれて嬉しいよ」
「ああ、あたしもだ! お前は没個性だけどな!」

 言葉教えるんじゃなかった。







 うちのラティアスさんは髪型を変えた。
 そもそもラティアスは人に化ける時、光の屈折をしているらしい。だから少し調整するだけで良くて、実際に切る必要はないらしい。よく分からないけど、魔法みたいなものなんだろう。

「これ可愛いかな?」
「ガウー」

 カイリューさんが残念そうに首を横に振る。
 ラティアスさん、それ箒頭っていうんだよ。

「こういうのはどうだ?」
「チー!!」

 クチートさんが悲鳴をあげた。
 どこぞの井戸から出てくるお化けじゃあるまいし……。

「これならどうだ!」
「ニャアアアアー!!」

 あーあ、ニャスパーさんがお腹抱えて笑い転げてる。
 それアフロヘアじゃん。どこでファッション学んだの。

「ううー……じゃあこれ」

 あっ。

「フォコ……」

 髪を下ろしてサイドテールを作ったんだ。跳ねっ気のある名残もあるし。
 うん、可愛い……いいよそれ。

「フォッコ! フォッコ!」

 フォッコさんも大絶賛だ。
 ラティアスさんは顔を真っ赤にして目を逸らした。

「えへへ……」



 うちのラティアスさんはゲームが好きだ。
 せっかくポケモンセンターで充電したのに、ラティアスさんが毎日ゲームやるせいですぐに充電がなくなる。
 今日、持ち歩き用のバッテリーを2つ新たに買った。

「あーっくそ、やられたー!」
「今日は何やってんの?」
「オクタトゥーン2。めっちゃやばい」
「あれ、そのソフト買ってたっけ?」
「あたしがダウンロードして買ったー」

 やばい、気がする。



 うちのラティアスさんはすぐに極める。

「ねえラティアスさん、そろそろゲーム俺にも代わってくれない?」
「やだよ。お前まだランクB+だろ? お前に貸したら、せっかくあたしがS+カンストしたのにランク下がっちゃうじゃん」
「だからそれ俺のゲーム機なんだけど!」

 もう一台買うべきなのかなぁ、ヌンテンドースイッチ。







 なんだかんだ、1年が過ぎた。
 ジョウト地方を一通り回って、ポケモンリーグにも出た。予選敗退。1日で終わった。
 まだスタジアムが熱気に包まれてる中で、俺はホテルに戻った。みんなポケモンリーグの観戦に行ったのだろう、ほとんど人がいなかった。受付の人たちもテレビを囲んではしゃいでいた。

 エレベーターで上がって、5階へ。カードキーを入れて、部屋に入る。
 ポケモンたちは、いない。みんなポケモンセンターに預けてきた。明日の朝までにはみんな元気になるそうだ。受け取ったら、みんなを連れておいしいものを食べにいこう。
 俺は早速、布団にダイブした。

「……なー、まだ?」

 忘れてた。

「もういいよ」

 すると、ラティアスさんがシュワワーっと光に溢れて現れた。いつもの人間の姿じゃなくて、赤い翼を持った白い竜の姿で。宙に浮いていた。
 ラティアスさんは腕を組んで、俺の腹にのしかかってきた。

「ぐるじい」
「なんだよ、こうして慰めてやってるだろ? この前ドラマで見たぞ」
「あの泣きながら抱き合ってる奴? どうしたらそれと同じ姿勢がこれになるの?」
「あー、そうか」

 ラティアスさんはそのまま俺の上に倒れこんだ。
 重い。
 ……とは言えない。言ったら八つ裂きにされる。

「ラティアスさん? 何してんの?」
「よしよし。いいこいいこ」

 ラティアスさんのぷにぷにした柔らかい手が俺の頭を撫でる。
 何これ。

「やめろって、子供じゃないんだから」
「えー。でもこうしたら良いってこの前ドラマで」
「何のドラマ?」
「お母さんとご一緒って奴」
「それドラマじゃねえ」
「うるさい! 細かいこと言うな! いいこー!」

 意地になって、ラティアスさんは俺を撫でくりまわした。

「……俺だってちょっとは勝ちたかったよ」
「うん」
「みんなとここまで一緒に来たんだからさ」
「うん」
「優勝! ……とは言えないけど、せめて入賞したかった」
「うん」
「……うん」
「うん」

 やがてお互い黙り込んだ。ラティアスさんの手は動いたままだけど。
 どうしよう。ここはアレかな、抱きしめていいのかな。なんか抱きしめやすい位置にいるし。アロマみたいないい香りするし。柔らかいし。ちょっとひんやりするし。
 おそるおそる腕を回そうとする、寸前。いきなりラティアスさんの笑顔が眼前に迫ってきた。

「次、頑張れ! な!」

 ……ら、ラティアスさあああん!!

「ぎゃー! ぐるじい! 離せ!!」



 うちのラティアスさんは優しい。
 とまあ、なんかよく分かんない話だったけど、俺たちとラティアスさんの旅はまだまだ続くよ。

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