短冊に願い事を…

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作者:ステイル
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読了時間目安:12分
時期外れにもほどがある(笑)
七夕「店員さん、この短冊お願いしますね?」
「あ、はい」
女の人が店内を掃除中に話しかけてきた。
現在、午後7時。
空は快晴。いや、夕暮れのほうが表現的にはあってるのか。時間的にさ。
坂の上にあるこのコンビニから見る夕焼けは遮るものがないからとても綺麗なんだ…っていつだか店長が言っていたような気がする。
「見ないでくださいよ?」
「わかってますよ。では預かりますね」
とは言っても短冊が二枚重ねになっているわけでも無いから嫌でも目につくわけで。
「いかん、いかん」
好奇心に負ける前にと店先に置いてある笹の葉に短冊を刺繍糸で結びつける。
それにしても店長はよくやろうと思ったものだ。確かに明日は七夕でどこにいっても笹の葉が置かれているけど。コンビニに笹の葉を置くのは…ねぇ?
ま、その店長には思惑があったりするわけだけど…。
「だってメルヘンじゃない。一年に一回しか彦星と織姫は会えないのよ?…………それに彼氏いない歴うん年の私は神にすがるしかないのよぉおおぉ!」
とか言ってわめいてたなぁ。
そのあと一人で発狂して泣きそうになりながら短冊と笹を置いて店から飛び出していったけど…。
つーかやるなら自分で管理しろよ…。
店長の短冊は誰よりも高い場所で風にそよいでいる。内容は見るまでもなく「彼氏欲しい」その一言だけである。
その内、見境無く男を求めるんじゃないだろうか?
苦笑いを浮かべながら頂点でそよいでいる短冊を見て一人で夕食を食べる店長を思い浮かべる。
そう言えばポケモンと一緒に暮らしてるんだっけ…。確かジュペッタだったはず。
初恋が終わった日から一緒にいる…とかなんとか言ってたような…。
なにか気配を感じて横を見ると9歳くらいの男の子が縁石に座っていた。
こんな時間に珍しい…と思いつつ俺は店内に戻る。どうせ待ち合わせか何かしているんだろうし、何もこちらから声をかける必要はないから。
それからと言うものの特にお客もいなく、男の子が外で縁石に座っているだけで車も通らない。
時計を見ると9時を少し過ぎたくらいになっていた。そろそろ警察に電話してもいいかな…?なんて考えながら外においてあるごみ箱の中身を回収しようと腰を上げる。
自動ドアの前に立つとチェーン店ならではの音が鳴った。
その音にびくっと肩を震わせる男の子。でも俺が特に何も言わなかったからか目も合わせない。
外に出ると夏ならではの蒸し暑い風がムワッと俺の体を撫でる。
俺は男の子を視界に捉えながら暑いなぁ…と呟く。
額に滲んだ汗を拭いながら裏手にあるごみ置き場に置きに行く。
それにしても暑い、蒸し暑い。あいつは何でこんな暑いのに中に入らない? 中に入ればクーラー効いてるし、飲み物も買えのに…。暇つぶしの漫画も立ち読みできる。………本当はしてはいけないんだけど黙認してやろうじゃないか。
とかなんとか考えてたら手に冷たく冷えた炭酸飲料を持って男の子の前に立ってた。
「ほら、やるよ」
男の子は困惑したような表情を作るとお金…と申し訳なさそうに呟いた。
「俺のおごり。つーかなに、金ねぇの?」
俺はちょっと待ってろと男の子に言い、店の中から今日の廃棄する予定だった弁当を二つ持ってくる。
「ほら、これもやる」
男の子は本当に困ったような顔をして受け取っていいものか考えている。
俺はそれを見かねて男の子の横に腰を掛けて自分の分にと持ってきたコーヒーのプルタブを開ける。
「どーせ、廃棄なんだし捨てるより食べてもらったほうがいいさ」
男の子の膝の上に弁当と炭酸飲料を置き、自分の口にコーヒーを流し込む。ちなみに俺は微糖派。
「家出?」
「うぅん…」
「じゃあなんでこんな時間に?」
「お父さんとお母さんが喧嘩してるから…」
どろどろしてるなぁ…と心の中で呟きながら口の中に唐揚げを放り込む。
うん、唐揚げがベチョベチョしてました。温め過ぎた…orz
もう一つ唐揚げを口の中に放り込み、空を見上げる。
とてもきれいな星空が広がっていた。
その空は自分という存在を吸い込んで行ってしまいそうで魅力的だった。
「綺麗だなぁ…」
俺の口からぽそっと零れたその言葉に男の子がぴくりと反応した。
「本当に綺麗?」
「うん?」
「……星、綺麗?」
「うん、…綺麗だよ?」
ぱぁっと表情を明るくして俺の言葉に反応する。いったい何が嬉しいのだろうか、俺にはさっぱりわからない。
「本当の本当に?」
「うん…まぁ…」
何となく周りが明るくなったような気がした。
まさかこいつの笑顔の力なのか!?……こんなことを考える俺はもうダメなのかもしれない。
「お兄さん、織姫と彦星って信じてる?」
「これまた唐突だなぁ…。信じてるかどうかで言ったら微妙かなぁ?」
「微妙?」
「そう、微妙」
くりっと首をかしげて眉間にシワを寄せる男の子。
「だってさぁ、うちの店長みたいに何かにすがりたい人は信じてないとやってらんないだろうし、俺みたいに満足してれば信じる必要は無いわけじゃん?」
だから微妙なんだよと説明してみるがいまいち腑に落ちないらしく眉間にシワがどんどん寄っていくばかり。
「うーんと、その時によって人の考えは変わるってところかな?」
「ふーん……じゃあ、今、お兄さんは信じてないんだ」
ちょっと落ち込むように声のトーンを下げる男の子。
「そーゆうわけじゃないんだけどね」
男の子はますます理解できないと言わんばかりに眉間のシワを深くする。
「心が満たされてさえいれば信じるも何もないんじゃない?ってこと」
「わっかんない!」
「ま、もっと大きくなったらわかるさ」
「あ~、お兄さんも子ども扱いしてぇ~!」
んもうっ‼と頬を膨らませてそっぽを向く男の子。
でも…、七夕ねぇ…。ふと時計をみるともう10時を回っていた。
そういやそろそろ相棒が店長連れて帰ってくる頃。
まったく…、人に今日のシフト押し付けて自分だけ悠々堕落な生活なんかさせるか。
「うん、よく考えたら今は信じてるわ」
「どうしたの、急に…?」
「いんやぁ、俺も願い事あったな~って」
「どんな、どんなやつ?」
本当によくもまぁそんなにころころと喜怒哀楽を変えられるな。
俺がそう思うくらいに先ほどの顔とは全然違う。
「これ、これに書いて?」
「え~、いいよ別に…願うほどのものじゃないし」
「いいからいいから!」
どっから取り出したのか男の子の手には真っ黒い短冊があった。
しかし、ペンがない。というよりペンで書いたところで読めんだろう。それくらいに真っ黒。
「手、手をかざして?」
「はい?」
「いいからいいから」
「こんな紙にどうやって書くんだよ」
そう言っても一向にいいからいいからとしか言わない。
あぁもう仕方ない!
「はい、で?」
「願い事、願い事」
「相棒と一緒に元気でいられますように。あと店長のめんどくさがり等、その他もろもろが少しでも改善されますように」
「はい、承りました。その願いかなえてあげましょう!」
は?と俺の口から漏れた。
目の前の男の子は何やら星の被り物の端々に三つの短冊をくっつけたものをかぶっていた。
えっと、何だろう。どっかで見たことのあるような被り物だ。最近特によくテレビとかで………
「あ、ジラーチだ」
「せいかーい!」
ポンッと音を立てると男の子のいたところにジラーチがいた。
えぇぇぇぇええ…と俺の声が漏れたがジラーチは気にもせずくるりと空中で一回転。
にっこり笑って夜空を指さす。それにつられて俺も見ると星がさっき唱えた願い事の形を作っていた。
「うわっ、こっぱずかしい!」
「大丈夫、大丈夫。僕とお兄さんにしか見えてないから」
そんなことよりと目の前に迫ってくるジラーチ。ふよふよ浮いてるから距離感も自由自在である。
「あと、もう一個お願いできるけど?」
と言われてもそんなすぐに思いつくほど俺は困ってない。
時給だってまぁまぁだから、お金にも別に困ってない。
う~んとうなりながら何かないかとあたりに目配せしていると笹の枝が目に留まった。
「あれ、あれの中から一つ願いをかなえてあげて?」
「うけたまわり~!」
そういうとジラーチはくるくると笹の周りを旋回すると一番上にあった一つの短冊をピッと取った。
「これにき~めた!」
どうゆうわけか嬉しそうだ。そんなに願いを叶えることがうれしいのだろうか?
ふと地鳴りのような音が耳に入った。おそらく相棒の足音だろう。相棒はシンオウ地方で出会ってからずっと一緒である。最近ではメガ進化なるものもあるらしいがお金のない俺には関係のないこと。実際、できなくても俺も相棒も困らない。
「お兄ちゃん、お弁当と飲み物ありがと」
「別にいいよ、廃棄するのがもったいなかったからだしさ。それよりもう行くのか?」
「うん、そろそろお父さんとお母さんを会わせないと…」
「織姫と彦星?」
「うん、今日は年に一回会える日なのに二人して寝坊してるんだもん。で、どっちが悪いかってなって喧嘩しちゃった」
俺は苦笑いを浮かべるしかない。
「それならちょっと待ってろ。夫婦の喧嘩話の解決法なら確かレジ下に…」
店長の秘蔵コレクションの中に確か「結婚してからの問題解決」という本があったはず。
ひとり身なのにこんなの買ってどうするんだか……。
本をもって店の外に出てみると相棒のガブリアスがジラーチのことを見ながら戦闘態勢をとっていた。
「うわ、ガブリアス、ダメ、ダメだってば!」
お前、今、流星群使おうとしてたろ!
つーかこんなところでお前が本気出したらこの町無くなるから!
そもそも、流星群使う時点でこの町無くなるからぁ!
俺は息を荒げながらガブリアスに抱き付いて技をキャンセルさせる。
「ジラーチ、これ持って早く行けぇ! 俺が抑えてる間に!」
「別に大丈夫だよ、君くらいじゃ僕は倒せないからね」
そういってジラーチは相棒に向かって短い手を突き出す。
すると俺の相棒はふわりふわりと宙に浮いていく。
そして道路の向こうに飛んでいった。
「サイコキネシス…?」
「ね、大丈夫でしょう?……あ、そうだ、あの子からの願い事もかなえてあげなきゃ」
そういってジラーチは空に両手を広げた。
「…はい、これでこれから面白いことが起こるでしょう。じゃあね、お兄ちゃん。ほんとにいろいろありがとね」
そういって満点の星空の中に帰って行った。
「いったい、何だったんだ…」
しばらくあっけにとられていると遠くから地響きを立てて駆けてくる相棒の足音がした。
俺の姿を確認するや否や胸ぐらをつかみ上げる。
驚きを隠せないでいる俺は何とか逃れようとガブリアスの腕を掴む。
「ゼエ、ゼエ…奴は…奴はどこに行ったのです?」
「もう帰ったけど…」
「もう、私の願い事叶えてもらおうと思っていたのにぃ!」
「え、いや、ガブリアス?」
「はい?」
「「……………」」
あれ、これ、どういうこと?
もしかしてガブリアスの願いって…。
ガブリアスのほうを見ると瞳を爛々と輝かせて騒いでいた。
「私、私……ジラーチ、ありがとうねー!」
空に向かってパタパタと太い腕を振る。
しかし、すさまじく相棒は騒いでいる。俺の両腕を握るなりグルングルンと振り回し、挙句の果てに俺を夜空に放り投げ慌てる俺を抱きしめる始末。
「ねぇ、私、かわいい?」
「え…どちらかと言うと逞し…いや、かわいいよ、可愛いから火炎放射は止めてくんないですかねぇ⁉」
煌々と口の中の温度を上げていく相棒。
「えへへっ、そうでしょ、そうでしょ?」
「……うん、そうだね…そ、そういえば店長は?」
苦し紛れの話題変更。
無理やり感は否めないがもともと相棒を使いに出したのは店長を呼び戻すことが目的なのである。
「あ~、なんか彼氏が出来たみたいで、きれいなイルミネーションの下、二人で腕組んで歩いてた」
「マジで?」
そういえばジラーチがあの笹の葉の中からかなえた願いって…。
ちらっと見ると店長の短冊だけなくなっていた。
………ポケモンってスゲー。


           終わり
終わり方中途半端(笑)

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