人魚の背鰭

作者:四葉静流

本文冒頭

 夜が明けている事はイヤホンで聞いていたラジオで知っていたが、窓に目を移すとカーテンの隙間から光が漏れていた。
 合皮の革張りの椅子から立ち上がって、カーテンを開ける。やはり窓の外は夜が明けていた。地上に降り積もった雪を朝日が照らしている。目晴らしの良い緩やかな丘の中腹に建てられた我が家からは、雪化粧を施した公園や遊歩道が一望できる。子育てに適した新興住宅地だが、積雪だけはここに来て数年経った今でも微かに疎ましく思う。
 背の高いフロアランプを消した私は椅子に戻って、机の上に散らかした書類やタブレット端末上のデータを整理する。しなくてもいい徹夜をするのは学生時代から

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つながり