ある日のイツ子

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作者:坑/48095
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本文冒頭

 東に行こうと思った。
 よくあるサイズのコピー紙の、ちょうど真ん中に印刷された一行をもう一度見つめる。ついでに声に出して読んでみた。
「東に来い」
 コピー紙にあったのは、この四文字だけだった。ご丁寧に中央揃えにしてあるから、紙のサイズにしては小さな文字が余計に目立つ。例えばこれが紙全体を支配するくらい大きな文字であったり、妙に洒落たフォントやカラーで書かれてあったりしたら、イツ子も気にしなかっただろう。しかし黒字の明朝体である。なんの変哲もないからこそ、丸めて捨ててしまうわけにはいかなかった。
 イツ子はこの紙を、玄関で手にした。今朝、洗面所へ向かう途中、玄関扉に上手い具合に挟まっ......

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