暴食の死神

作者:きとら

あらすじ

私は何も感じたことがなかった。
喜びも、楽しさも、悲しみも……怒りだけは、少し分かる。

目の前で親が死んだ時も、私の心は静かだった。
思ったことは一つだけ。

お腹すいたな。

本文冒頭

 6月下旬
 午前10時42分
 ホウエン地方北部
 120番道路
 天気、雨



 伝えなければ! 早く、一刻も早く!

 体格のしっかりしたアブソルは、ぬかるんだ地面を蹴って崖を跳躍(ちょうやく)した。体を少しでも前に推し進めようと全身を使って、彼は出しうる最高の速さで走り続けた。
 しかし時折、速さをゆるめて振り返る。昨日から降り続ける雨は、2匹の距離を簡単に離していく。大人のアブソルが走れば走るほど、後ろの小さなアブソルは泥の地面に

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