第31話 ポケモンリーグ1回戦!

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台風とか中間テストとか。辛いです










あれから一か月。私たちは特訓を重ね続けた。そして特訓していてたくさん発見することができた。

体が小さめのブラッキーは攻撃力は普通だが素早さが異常に高い。多分メガシンカしたバシャーモと同じくらいの素早さだ。リーグでは素早さを重視したバトルの時に大活躍するに違いない。

チルタリスは自慢の羽のおかげで防御がとても高い。小さな攻撃であればかすり傷程度で済む。チルタリスの防御はメンバーの中でも一番高いはずだ。HPもあるので持久戦に持ちこたえることもできる。

サーナイトは特攻が高く、サイコキネシスなどが効きやすい。素早さもあるのでテレポートを使わず素早い動きに頼ることにした。リーグではサーナイトを中心にメガシンカすると思う。

素早さも兼ね備えているバシャーモは攻撃力が高い。おまけに特性が隠れ特性である『かそく』のおかげでバトルの後半では素早くかつ非常に高い攻撃力で倒せるはずだ。メガシンカをすればもっと強くすることができるがリーグではあまり使わないことにした。

体力が一番あるルンパッパは持久戦が得意だ。素早さはあまり高くないものの攻撃、特防も高いためあと一息のところで大活躍するはずだ。

ジラーチは攻撃、防御、特攻、特防、素早さがバランスよく取れている。そしてジラーチの専用技、『破滅の願い』もとても強いので期待できる。

そしてカエデと私のポケモンの合体技、「破壊のシンフォニア」は最近、やっと成功するようになってきて今ではサーナイトとエルレイド2匹しか使う事ができなくなった。


「んー、疲れた・・・。」

「お二人とも!休憩してください!」

ここはポケモンリーグ会場のあるサイユウシティのポケモンセンターのバトルコートだ。サイユウシティのポケモンセンターのほとんどの利用者がポケモンリーグ出場者なので沢山のバトルコートがある。バトルコートは予約制でしかも先着順なのでこのバトルコートを取れなかった日は部屋でノートなどを使って作戦を考えることが多かった。また雨の日はコート使用者が少ないのでポケモン強化のため雨の中特訓したり、その日は部屋で作戦を考えたりなどして有効活用した。セイラちゃんもジムリーダーとして過去のジム挑戦者の話をしてくれたおかげでどんな人がリーグに挑戦するのか知ることができた。

「いやー、今日も戦ったね。何戦したんだろう?」

「今日だけでもう11戦してますよ。本番は明日なので明日のために体調管理を忘れずに。」

「うん!ありがとう、セイラちゃん!・・・・ケホッ」

「どうしたの?サキ?」

「ゲホゲホ・・・いや、ちょっと今日、咳が止まらなくって・・・。ゴホゴホ」

今日は朝から軽い倦怠感と咳が続いていた。

「もしかして風邪ひいた?」

「んー・・・。あ、ちょっと熱いですよ?!」

セイラちゃんがピトッと私の額に手を当てる。

「じゃあ今日は無理しない方がいい。もう部屋に戻ろう。」

「え?!いや、全然大丈夫だよ!?元気だし・・」

「何言ってるの?!明日だからちゃんと体は休ませるの。行くよ。」

カエデはリュックサックを持ってスタスタと歩いて行ってしまった。

「ゲホゲホ、ゲホ、ま、待って!」

踏み出そうとするが下手に踏み出してしまいバランスが崩れる。

「ぎゃっ!」

そのまま地面に倒れてしまった。

「さ、サキさん!大丈夫ですか?!」

「いたたたた・・・。うん。大丈夫だよ。ゲホゲホ」

「荷物、私が持ちます。足首捻ったりどこか痛いとかありませんか?」

「ないよ。ありがとう。行こうか。」

「そうですか。良かったです。」

私達はポケモンセンターの部屋までの道のりの間私の咳だけがゴホゴホと続いていた。


「う~ん・・・。」

部屋についてベットにダイブした瞬間体が今まで以上に重たく感じた。

「サキさん、体温計で計ってみてください。」

「ん。」

私はセイラちゃんから体温計を預かって脇に挟む。計り終わるまで部屋はしんと静まり返っていた。

ピピピピ ピピピピ ピピピピ

「ん。えーっと37度5分・・・かぁ微妙だな・・・。」

「じゃあ今日は部屋で考えよう。これ以上バトルすると次の日サキきっと倒れちゃうよ。」

「私もその方がいいと思います。」

「ん・・・そうしようか・・な。」

カエデとセイラちゃんは安心したような笑顔を浮かべてカエデはノートを取り出し、セイラちゃんは温かいお茶を持ってきてくれた。

「じゃあさっきの反省だ。」

とうとう明日、ポケモンリーグが始まる。私たちは1番最初に戦う。ここで負ければ私たちの夢は終わってしまう。気を引き締めないと。









「さぁ!いよいよ始まります!5年に1度のポケモンリーグ!今年、栄冠をつかむのは誰なのでしょうか!まもなくポケモンリーグが始まります!」

朝起きたら異様な興奮にサイユウシティが包まれていた。当たり前だ。何せ今日から参加者全員が四天王への挑戦権を賭け、戦うのだから。

しかし私はというと・・・朝からの頭痛やら腹痛やら熱やらで全くやる気は起きなかった。

「ゲホゲホゲホ・・・。うぅん・・・。」

「サキさん大丈夫ですか?」

「ゲホゲホゲホ・・・・。」

私は朝から喋る度に咳が止まらなくなり、ろくに喋れず頭もボーっとする。

「だ、大丈夫か?」

「うぅん・・・大丈夫・・ゲホ」

「今日は初戦なんだ。これだけ頑張れば今日はもう終わり。少しきついかもしれないけど頑張ってくれるかい?」

「うん。分かってる。頑張らないと。」

ふとモンスターボールを見ると心配そうに私を見つめているポケモンたちの姿があった。

「じゃあ行きましょう。私たちの席は取ってあるので。」

「う、うん。」

会場に入る。会場はものすごい熱気だった。

「それじゃあ僕たちは控室に行ってくる。」

「はい!行ってらっしゃい!応援してしていますよ!!」

「行ける?サキ?」

「うん。大丈夫・・・多分。ゲホゲホ」

私とカエデはリュックを持ち控室のある第3ラウンジに移動した。

ラウンジに着いた途端、怠さが体に襲ってきた。

・・・若干気持ち悪い。

「さ、サキ?顔真っ青だよ?」

「え・・・?え?」

「僕たちの番までまだ30分くらい時間あるからトイレ行ってきた方がいいんじゃない?行ける?」

「いや、今はここでじっとしていたいから。大丈夫だよ。」

「そっか。分かった。じゃあ僕トイレ行ってくるけど・・・1人で平気?」

「うん。ありがと。いってらっしゃい。」

カエデはハンカチだけ持ってラウンジの外に出た。






・・・・・・・いやな胸騒ぎがする。

カエデはトイレに行ったままもう15分が経つ。いくら何でも遅くない?

私は鞄を持ってラウンジの外に出てカエデの行った男子トイレを探す。

男子トイレは第3ラウンジから歩いて1分もかからない場所にあった。男子トイレなので覗けないが人がいる気配はなかった。

ついでに・・・と言う事で第2ラウンジの方に歩く。

この建物は丸くなっていて第3ラウンジの反対側に第2ラウンジがある。パンフレットによると第3ラウンジから第2ラウンジまで歩いて5分かかるという。ラウンジの近くには必ずトイレがあるので第2ラウンジ使用者は第2トイレと呼ばれるところにいくそうだ。

フラフラと歩いていると第2ラウンジの前に着いた。第2ラウンジには対戦相手がいるはずだ。

このポケモンリーグのラウンジはルール違反をしないようにラウンジの壁はガラスで中が透けるようになっているんだとか。私たちの部屋もガラスの壁だった。

中には誰もいない。いや、一人倒れている。ソファに隠れて見えにくいが足だけほんの少しはみ出ている。

あの靴・・・どこかで見たことがある。あの靴はカエデの靴だ!

心臓がどきどきと激しく脈打つ。

嫌な想像をしてしまった。もしかしたらあそこでカエデは寝かされているのかもしれない。いや、でもよく考えたら同じ靴を履いた対戦相手が寝ているのかもしれない。

私はそっとノックをする。

返事はない。

周りの様子を確認してから静かに中に入る。

そぉーっとソファに近づく。

カエデが寝ている。しかも頭から少しだけ血を流して・・・。

え、え、え、・・・?

その途端思考回路はピタリと停止し、私はただひたすら叫んでいた。

「きゃあああああああ!!!」

その叫び声に気が付いたカエデはピクリと体を動かす。

「ひぃぃぃぃぃ!」

「う、うん・・・・?」

「か、カエデ・・?生きてるの?」

「サキ?・・・ここ・・は?」

「い、急いで医務室に連絡しないと!ちょっと、待ってて!!」

確かラウンジには医務室連絡用の携帯があるはずだ。

私は急いで受話器を取り連絡する。


その後はよく覚えていない。白衣を着た人たちがカエデを担架に乗せていたような、乗せていなかったような。とにかく記憶があやふやで我に返った時はカエデのベットのそばの椅子に腰かけていた。

「サキ!サキ!」

「え?」

カエデが私の袖口をちょいちょいと引っ張る。

「僕の事はいいから君は挑戦者入り口に行くんだ。」

「そ、そんな事できないよ!」

「君が行かないと相手は不戦勝で勝ってしまう。僕たちのこの努力が無駄になるんだ。サキ、君が行けば不戦勝にはならずに済む。だから行って。」

「そんな!」

「大丈夫。もし君が負けても僕は君を責めない。それにもしかしたら僕たちの順番を後回しにしてくれるかもしれないからさ。お願い。行って。」

「・・・。」

私は唇をかみしめる。そしてカエデの方を見て小さくうなずく。

「分かった。行ってくる。終わったら何があったのか教えてね。」

私は医務室を飛び出し第3ラウンジに駆け込む。そしてカエデのかばんを持って挑戦者入り口に入る。

『さぁ!四天王への挑戦権を賭けた戦いが帰ってきました!ただいまより開会式を行います!!実況、解説は私マルキと』

『ハチでお送りしまぁーす!』

いよいよ始まる。スピーカーを通しても会場の熱気が伝わってくる。

『それではルール説明です!今年から新たにマルチバトルでの挑戦も始まりました!なんと今回の挑戦者はシングル、マルチ合わせて100人以上!』

『マルチバトルでは挑戦者1人につき使用ポケモンは2匹。シングルバトルでは1人4匹、使用することができます。トーナメント戦なので負けた時点で敗北となります!最終的にシングルバトルでの優勝者、マルチバトルでの優勝者が戦っていただき、勝者が四天王への挑戦権を手に入れるのです!!なお道具の使用はメガストーンのみとなります!』

『なお!ルール違反をした場合、勝っても負けてもルール違反をした方は負けとなります!!』

『それではまずマルチバトルからスタートです!』

『西ゲートから登場するのはリュウ&ダイギ選手!』

対戦相手が入場すると会場は拍手喝采で包まれた。

恐らくリュウと呼ばれる方はゴツイ体つきに黒いタンクトップ。ダイギと呼ばれた方はひょろっと背が高くとても目つきが悪い。

『続いて、東ゲートから登場するのはサキ&カエデ選手!』

名前を呼ばれて私はモンスターボールを持ちスタジアムに入った。

もちろんカエデはいないわけだからざわめきがおきる。

『おぉーっと!カエデ選手が見当たらない!これはどういうことだぁー!』

「へっ、嬢ちゃん。坊やは怖くて逃げたのかい?」

私たちは服にピンマイクを付けている。だから相手の声も聞こえるのだ。

「それなら俺たちは不戦勝と言う事でいいだろ?な?」

相手の迫力に何も言い返せず思わず後ろに後ずさりしてしまう。

「残念だったな。嬢ちゃん。」

そして風邪のせいで頭もボーっとする。

しかしある事に閃いた。

「あ、あの・・・。」

会場がピタリと静かになる。

「おぉ?!なんだなんだ?降参か?」

「あの、一つ伺いたいのですが・・私たち初対面ですよね?なのにどうしてカエデが男だって知ってるんですか(・・・・・・・・・・・・)?」

「え、」

相手からギクリと聞こえてきそうな声だった。

「ゲホっ・・・私のは相棒(パートナー)あなたたちのラウンジで頭から血を流して倒れていました。今彼は医務室にいます。しかしあなた方は入ってきていないはずです・・・。どうして、カエデが男だと知っているんですか・・ゲホッ」

うぅん、いまいちびしっと決まらない。

しかし男たちは映し出されているスクリーンを見ると冷汗がだらだらと垂れている。

「そ、それはほら、名前が男っぽかったからだよ。な、なぁ。それにお前がいないところで俺たち会ってるかも知れねえじゃないか?」

「おぉ、そ、そう言えばあいつとはトイレであったぜ!」

「カエデ・・・そんなに男っぽい名前でしょうか。ゲホゲホ・・それに私たちがいた第3ラウンジには第3トイレがあり、第2ラウンジにいたあなた方は第2トイレを使うはずです。あなた方とカエデが合うはずありません。・・・・もしかしてあなた方はカエデを殴りつけ不戦勝で勝とうとしましたか?」

「い、いや、そんな訳ないぜ。証拠でもあるのか?」

「証拠・・ですか。それならラウンジの監視カメラでも見たらどうですか?きっとあなたたちの犯行が写ってますよ?それにカエデに聞いてしまえばあなたたちの犯行は立証されますよ?」

「ぐ、ぐうぅぅぅ」

「すみません!スタッフの方、第3ラウンジ付近のトイレの監視カメラを見てみてください!」

しばらくしてカエデがトイレに出入りするシーンがスクリーンに映される。

そこには私の予想通りトイレから出てきたカエデを殴りつけ運ぶ2人組の男がいた。

『おぉーっとこれはルール違反だ!この時点でリュウ&ダイギは負け確定だぁー!』

『よってこの勝負、不戦勝でサキ&カエデの勝利!!!』

わぁーーーーーーーー!

一気に歓声が沸く。

私は力が抜けてその場に座り込んでしまった。

リュウとダイギはジュンサ―さんによって捕まえられる。多分暴行罪で逮捕されるのだろう。

座り込んで一息つくと咳も収まっていたし少しだけ元気が出た。スタッフさんが来て私の手を取り、第3ラウンジに連れて行ってくれる。

第3ラウンジの前に着くと中にカエデとセイラちゃんがいた。

急いで中に入るとセイラちゃんがギュッと抱きしめてくれた。

「おめでとうございます!一時はどうなるかと思いました!」

「サキ、本当にありがとう。君のおかげでおそらくあの2人は反省すると思う。それに勝つこともできた。本当にありがとう。」

カエデは頭に包帯を巻いている。

「ううん。カエデのおかげでもあるよ!」

するとガチャっと音がしてドアが開いた。ドアの向こうにはショウちゃんとソウちゃんが立っていた。

「カエデ兄!大丈夫!?」

「サキさん、お疲れさまでした。」

ショウちゃんとソウちゃんは少し見ないうちに髪も伸びている。そしてイメチェンをしたのかスカートを履いている。

「いやー、それにしてもサキちゃん、凄かった!良く閃いたね!僕は無理だなぁ。」

「え、僕?」

ソウちゃんはいつも自分の事は『俺』というはずだ。

「あ、実はこれから少しでも女らしく生きようと思って『俺』から『僕』に。ショウは『僕』から『私』に一人称を変えたんだ。まだ慣れないけど頑張るつもり。」

「そっか。頑張ってね。」

「ショウさん、ソウさん、来てくださってありがとうございます。」

「いえ、いいのです。ぼ・・私たちも次にこの部屋を使わせていただくので。」

「え?!ショウたち、ポケモンリーグに挑戦するの?!」

「あったりまえじゃん!絶対カエデ兄とサキちゃんに勝って見せるからな!油断してると痛い目にあうぞ!」

「ふっふっふっ。私たちを甘く見たら困るのは君たちの方だぞ?それでもいいのかな?ソウちゃん。」

「へっ。やってやらぁ!」

とにかく。これで1戦目は終了だ。今回は不戦勝だったけど、次からは本気で戦わないと勝つことができない。

「サキ。今日はもうないから一回帰ろう。風邪もまた悪化しちゃうからね。」

「そうだね。」

「それじゃあカエデ兄、サキちゃん、セイラちゃん、バイバイ!」

「うん!がんばってね!」

「見れなくてごめんなさい!でも応援していますよ!」

私たちはラウンジを出てポケモンセンターに移動する。


お父さん、ポケモンリーグでチャンピオンを倒すための駒をまた一つ進めることができたよ。もう少し待ってて。

不意に耳元で『頑張れ』と声が聞こえた気がした。




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