2章 1.私の過去

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「出番よこせって五月蝿いのがいないか?」
「イズミ。気のせい」
「だよな」
 私は、ある半鎖国状態の南国の島国。クラ諸島の生まれ。
 その島々は、ポケモン保護で有名な南国の楽園。だけど、本当は昔から珍しいポケモンを密輸していた。近年希少ポケモンの保護を訴える流れで、保護施設を作って保護活動の世界の最先端を行く。でも、その実は計画的に希少ポケモンや伝説級ポケモンを繁殖させて、世界中に出荷するためのファクトリー。
 私は、その研究所に連れ込まれた子供の一人。当時、研究所ではオーレ地方で頓挫していたダークポケモンの研究をしていた。私は、心を閉ざしているが為に制御が難しい、ダークポケモンの制御用トレーナーとして連れてこられたサンプルの一人だった。

 私の脳に何をしたのかはよくわからないけど、私の頭の中には特殊な被膜で包まれたブラックボックスが入っている。私はそれを通して私のポケモン達とコンタクトをとって、その副産物でネットワーク空間に意識をダイブさせる事ができる。
 私と他数名の子供達は、被験者として様々な実験に付き合った。その結果、ダークポケモンを制御するには特殊な条件。私の病状のようなデジタル適応が高い人間か、強固な心理防壁。心を閉ざしているとか、超人的な精神力の持ち主。そんな人間でないと、ダークポケモンとの直接のリンクは難しいと結論づけられた。あとは、決定的なのはたとえ条件を満たした人間でも、2〜3歳までの間に電脳適合処理を行って訓練を積み重ねないといけないと言う事。大人で条件が合う人で試した結果、ポケモンと共に化け物になって手がつけられないと言う結論しか出なかった。

 だから、私は偶然適合して偶然正気を保てている。

 採算性が合わない。だから、実験が終わったあと研究所にいつまでも置いておく事はできない。
 私はお祖母様の一族の元に戻された。もちろん監視付きで。いまも、どこかで誰かが監視しようとしている。ただ、お祖母様の一族は国の有力者であり、お祖母様自身は世界有数の情報網を持つ情報屋。国を出た今は監視の目はない。監視しようものなら、その人は消されてしまうだろう。
 と言う訳で、私は電脳空間を経由してポケモンとリンクをしている。
 良いか悪いかは知らない。意識がはっきりとした頃からずっとそうだったし、私自身は何の不都合もないから。まあ、周りがどう思っているかは知らないし、ここクチバでは不思議な女の子としか思われていない。だから、気ままに生活している。でも、故郷だとそうは言えない、一族の目の届かない所では、データ取りがしたいのか時々電脳上へちょっかいをかけられていた。まあ、それ以上の事はないからとりあえずは気にはしてないのだけど。一族の心配事は、研究所に連れ戻されて再び被験体になるんじゃないかという事。私としてはどっちでも良いけど、一族から成年に近い年齢の人質が出るのは政治的に困るらしいね。死んでも良い何の影響もない子供なら、研究で死んで切り刻まれた死体が帰ってこようとも気にならないけど、生産年齢に近い一族の構成員を連れて行かれるのは困るのだそう。

 だから、一時的な避難。私がもう少し成長して、自分の身を守れて故郷で生活出来るようになるまで外国で暮らす事になった。

 まあ、それだけの事。
 私の事だけど、今までは私の意志は関係なく進められてきた。今は、私の意志を確かめられる事が多いと思う。何故かと言うと、中学という学校に通う身で主体的に行動の選択を迫られる事が多くなってきたから。
 行動の選択を迫られる時、私はポケモン達と相談し決議する。私もポケモン達も命令されたりするのは出来るけど、自分で考えて何かするのは不得意だから。だから、それぞれが手持ちの情報を基に行動の規範を決議で決定する。
続く

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