この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
これはマイとシルバーがひょんなことから知り合うきっかけになる話である。
マイをきっかけにゴールドとも知り合うことになったのだけど、それは案外必要なかったのかも、しれない……。
「おい、そこで何をしている」
「あっあああの」
「なんだ、これお前のだろう。ほら、しっかり持ってろ」
「ありがとうございます……」
視界を遮って落ち葉がパラパラと雨のように降る。向こう側の世界に、ワカバタウンでは珍しい「赤色」の髪をした少年がゴールドの帽子を持って立っていた。
向こう側から来た少年によって踏まれた落ち葉はかわいた音を立てて姿を無くす。
「お前、ここのこと知っているか?」
「えっとワカバタウンのことですか? はい、それならちょっとだけ知ってます」
「そうか。聞きたいんだが――」
赤い髪が秋風に優しく吹かれて綺麗に揺れて、少年はガサツに髪を手グシで整える。
少年から帽子を受け取ると、そんなことを言われ、大きな目を一、二回瞬きさせてから自信無下げに言う。
マイにそう言われると目を伏せながら質問を投げかけようとした、その時――
「マーイ! 大丈夫か、おいこら俺のマイになんか用か」
「ちっちがいますよ、ゴールドさん! この人はわたしを助けてくれた人で」
前髪が爆発したような髪型をした黒髪の少年、ゴールドが遠くから声を上げて走ってきたと思えばすぐにマイの前に立って赤い髪の目つきの悪い少年から庇うように後ろに下げる。
マイが慌てて説明しようとするも言葉が思いつかずに涙があふれ出そうになったら少年が深いため息をついて代わって説明をしてやる。
「こいつが手に持っている帽子をマンキーが奪い去り、俺が取り返した、そして今に至る。説明は以上だ」
「そうなんですよ、ゴールドさん! この人は悪い人じゃないです! マンキーから帽子を返してもらう時のこの人かっこよかったですよ!」
「あ~? チッまあいい、帽子に関してはサンキュな。ほらマイ行くぜ、ウツギ博士に焼き芋持っててやろうぜ!」
少年が無駄なことは一切なくして説明をしてやったのにゴールドに舌打ちをされる始末。何かお返しでもしてやろうか、なんて思っていないのかゴールドを相手にしていないのかは分からないが少年は反論してこない。
しかし「ウツギ博士」という言葉に耳をピクリと動かした。
「なあ、マイだったか? ちょっとこっちに来てくれ。マイはウツギ博士の研究所を知っているのか?」
「え、はい! 知ってますよ、もしかしてはかせに用事ですか? ゴールドさん、一緒に行きましょうよ!」
「ハァーめんどくせえ。大体、名前なんだよ、ナ・マ・エ。名前を名乗らないやつに道案内する気にはならねえよ、怪しいやつかもしれないしな!」
黒い手袋をつけた手でマイを手招きして呼ぶ、ゴールドの腕から離れて聞きに行けば素直に答え、ゴールドが珍しく正論を述べているがマイは突っ込まない。
「俺はシルバー、マイよろしく」
「シルバーさんって言うんですね。ゴールドさんと兄弟みたいですね、えへへ。あっわたしは知ってると思いますけどマイです」
「ああ!? どっちが兄でどっちが弟だって? あと、どっちがかっこいいか決めてもらおうじゃねえの」
「えええ、えっと……」
シルバーと名乗った少年に手を差し出されて握手を交わす。年上と思える相手からの握手に嬉しくなったのか余計な言葉まで言ってしまい、ゴールドの癇に障ってしまう。
マイの肩に手を回して自分の定位置に戻すと脅すように金色の瞳を光らして問う。
問われた本人は大量に汗を掻き、両手の人差し指同士をくっつけたり、離したりを繰り返すマイにシルバーは顎でゴールドを指し示す。
「ご、ゴールドさんです……?」
「疑問形だけどそれはなんだ」
「ゴールドさんです!」
「よし! しゃーねえなあ、弟のシルバーちゃんが道が分かんねぇっつーなら仕方ねえ連れて行ってやるよ!」
「シルバーさんすいません……」
「気にするな」
ゴールドがお兄ちゃんでゴールドが一番かっこいい! と言われたような気になり調子に乗ったゴールドがシルバーの肩を強く叩いて着いてこい、と言う。
小さな声でゴールドに聞こえないようにマイが小さくシルバーに謝れば、そのような返答が返ってきて安心をする。
◆◆◆
「はかせーただいまですー」
「ん? ウツギ博士と血縁者か?」
「けつえんしゃ?」
「んーまあ、そういうこった。なあウツギ博士! シルバーってやつが話あるってよ! マイに絡んでたやつだぜ!」
あることないこと、せっせと吹き込んでウツギ博士を困惑させるがマイが首を激しく振っているので後半のことはウソだと判断してシルバーにお礼をはじめに言う。
「シルバー君、マイちゃんを助けてくれてありがとう。今ちょうどトイレに行っちゃってね、少し待ってて……あ、来た来た。オーキド博士、こちらです」
ゴールドとシルバーの頭の上には電球に光が灯り、マイの頭にはクエスチョンマークが飛び交っている。
「オーキド博士になんの用だよ」
「俺が知るか、呼ばれたから来ただけだ」
(お、おおきどはかせ?)
話しについていけないマイを置いてどんどんオーキド博士は話を進める。
ここからちょびっと過去の話が入ります。ごめんなさい!