11話 求める記憶…対するリスク

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

2日ぶりにギルドの生活に復帰したアブソル、だがヘルガーへの怒りは消えることは無く……。
〜バンギラスギルド食堂、7:30〜

アブソルが2日ぶりにギルドに顔を出し、メンバーの雰囲気は一気に明るさを取り戻した、現在アブソル達は朝食の真っ最中である、ちなみにアブソルはロコンとエーフィが誰があ〜ん♪をするかで口論し、ミミロップがそれを止めているのを見ながらキルリアのデンリュウの良い所アピールを耳に入れ、ロコン作のパンをモグモグと食べている……正直もうどっちを優先したら良いのかわからない……。

「…疲れた…?」

唯一静かに隣で朝食を食べていたデンリュウが心配してアブソルに声をかける。

「いえ、大丈夫ですよ、ただ…。」

「ただ…?」

「何か忘れてる気がするんです…。」

「…昨日の名探偵コンパンなら…録画…してるよ?」

「あ、それも忘れてました!ありがとうございますデンリュウさん、後で見なくては…。」

「う…うん…じゃあ…アブソルは…何を忘れてるのかな?」

「妙に引っかかるんですよね、うーん…。」


その頃バンギラスはちょっと離れた所からそのやり取りを見守っていた。

「そうだよアブソル君!、私を忘れないで!」

「……話したいことあるならはよ行け。」

「だって恥ずかしいじゃん!」

「告白前の乙女か!」




しばらく(2分くらい)考えているとふとデンリュウがつぶやいた。

「バンギラスさん達…喧嘩…してる?」

「バンギラスさんが?……あ!そうだ!バンギラスさん!聞きたいことが…」

「おぉ!アブソル君が気づいてくれた!そう!今回の事件の事で話し合い…」

「ピチューは無事ですか?」

ズテッ…どんがらがっしゃーん!

「バ、バンギラスさん!?」

「…斜め上の反応に驚いて体制を崩したな…。」

「キングドラ…大丈夫…あれ?」

「デンリュウ、あれはもう日常の一部と化しているから問題ない、あとアブソル、ピチューは無事に帰ってるよ、今頃家で家族といつも通りの生活をしているだろう。」

キングドラは代わりにデンリュウとアブソルの質問にたんたんと答える。

「そうですか…良かった…。」

「良くないよアブソル君!」

「うわっ!復活した!?」

「ピチュー君もそうだけど今は違うでしょ!、ヘルガーのこと!忘れてないよね!?」

ヘルガー…忘れるはずがない、不意をつかれたとはいえ、僕が始めて負けた相手…海岸洞窟のポケモンをただ殺し尽くした悪そのもの…。

「…もちろん…忘れてませんよ。」


「!?」




アブソルの顔が急にヘルガーに対する怒りに変わり、周りに殺気を振りまいていた、食堂にいたメンバーは全員背筋に寒気が走り、アブソルに視線を集めている…バンギラスとキングドラも蛇に睨まれた蛙のように一瞬動けなかった……。

「そっか…じゃあ…後で時間を貰ってもいいかな?、なにがあったか…聞きたいな。」

「了解です…では後ほど。」

「う、うん、じゃあ朝食が終わったら私の部屋に…ロコン君もお願い。」

「あ、はい!分かりました!」

そういうとバンギラスはキングドラを連れて食堂から出ていった、いつの間にかアブソルの殺気は収まっており、先程と変わらない空気になっている。

「…ご飯…食べよっか…。」

デンリュウの一言で全員が意思を取り戻し、朝食に戻っていく。しかしロコンとエーフィ、デンリュウはアブソルが気になって様子を見ていた。

「…ふぅ…なんかまたお腹すきました…。」

いつも通りのアブソルだった。とりあえずはそれに三人共緊張を解く。だが安心は出来ない…。

「アブソルさん!新作のお菓子作ってみたんですけど味見してくれませんか?」

何かを察したエーフィによって一瞬でシリアスが崩壊……ロコンはそれにすぐに対応し、抜けがけは無し!とまた口論に入っていた、デンリュウはポカーンと見ていることしか出来ない…。



最終的に介護の名目で二人でやれば?のミミロップの意見で落ち着き、アブソルはまた微笑ましいの視線を集めながら騒がしい朝食を終わらせた…。








〜バンギラスの部屋、9:20〜

アブソルとロコンはバンギラスの部屋で海岸洞窟のことについて話すことになった。キングドラも一応話を聞くことにしている。現在バンギラスの部屋にはこの四人しかいない…のだが実は部屋の外では他のメンバーが気になって聞き耳を立てている。

「さて、アブソル君、ロコン君、まずは海岸洞窟の依頼ご苦労様、でも…。」

「最初にしては辛すぎるな…気分とかは大丈夫か?」

「自分は問題ありません…ロコンさんは…。」

「私も…もう…大丈夫です…。」

「そっか…無理は禁物だからね、じゃあアブソル君、ヘルガーと何かあったか教えてくれる?」

「分かりました…。」

アブソルはヘルガーとのやり取りを思い出す限り伝えた、大量虐殺の犯人は彼で間違いないこと、その事について罪悪感が無い、むしろゲームの一興として楽しんでしまっていること、それに怒ったこと、止めようとしたがマグナムで返り討ちにあったこと…バンギラス達は苦虫を噛み潰した様な顔をしながらそれを聞いていた、アブソルの話を聞いたことで彼らにもヘルガーにしかぶつける事の出来ない怒りがこみ上げていたのだ…。

「…なるほど…そんな事が…。」

「申し訳ありません…自分がもっと強ければ…。」

「お前が謝ることはない、むしろよくやってくれた、ヘルガーの右手に負傷を負わせただけでもお手柄だ。」

「ヘルガーは今どこにいるか分かる?」

「…その事は何も。」

「まぁ自分の拠点を暴露するほどの余裕はないか…右腕使えなくなったし…。」

「だが回復したらまた始めるだろうな…。」

「今度は…止めて見せます。」

「アブソル……。」

「話はちょっと変わるけど…アブソル君…ヘルガーが使っていたのは人間の武器…で間違いないよね?」

「はい…銃と言う遠距離武器です。」

「アブソル君…君も使うのかな?」

バンギラスはこの際だとアブソルに銃のことについて聞いてみることにした、もう弾を作っていることから本体も作っていることは分かっている、隠すなら…仲間…という可能性…つまり今までのは演技だと考えてしまうこともある。それだけは嫌だった、だからバンギラスは心の中で祈っていた、正直に話して、ロコン君のためにも…と。

そしてアブソルは意を決して口を開く。

「実は自分も独自で一つ制作しています…これを作らなくては…という衝動があったんです…それが自分にとって正解なのかは分からなくて…なので弾は抜いた状態で今も保管しています。」

それを聞いてバンギラスとキングドラは安心した。思わず息を吐く。

「良かった…アブソル君、これを。」

バンギラスはアブソルが作った銃弾を返す。

「これは…僕が無くしていた…バンギラスさん…もしかして……?」

「うん、ごめん、試してた…でも今ので確信したよ、君とヘルガーは仲間じゃない、これは演技でも無く、その怒りは本物だったって。」

「…ヘルガーはあの後どうなりました?」

「指名手配S、最高ランクとして探し出されている…だが今はまだ情報は入ってない…。」

「そうですか…。」

「アブソル…その…私も出来ることはするから…。」

「ありがとうございます、ロコンさん。」

「ねぇ…アブソル君はヘルガーの事…どう思ってるかな?」

「もちろん…許せません、ですが…。」

「何か気になる?」

「はい、自分とヘルガー、何か引っかかるんです、こう、忘れてはいけないことを思い出そうとしているような…。」

「一部の失われた記憶にそれが入っているかもしれないんだな?」

キングドラの問いにアブソルはコクリと首を縦に振る。

「リーダー…。」

「こうなっちゃったか…仕方ないよね…。」

「あの…アブソルの記憶のヒントになるものが?」

ロコンがアブソルを気にしてバンギラスにおそるおそる聞いてみた。

「ロコン君の言う通りだ、記憶の泉という所にいけばアブソル君の失われた記憶が取り戻せるかもしれない…。」

「本当ですか!?では今日すぐにでも…。」

「待って!、思い出すのは良い事ばかりじゃないよ…。」

「…というと?」

「辛いこと、嫌なこと、自分が忘れたいと思っていることも無理矢理思い出させるんだよ…あそこは…。」

「でもそれくらいなら…。」

「リーダーはこう言いたいんだ、下手をしたら精神を貪られ、心がおかしくなってしまう、自分を取り戻せなくなるんだ…。」

「そんな……!?」

アブソルとロコンはどうしたら良いのか分からなくなった。目の前にアブソルの記憶のヒントがある。だがそこは行くにしたらリスクが大きかった…。

しばらくしてアブソルは迷いつつもよし、と何かを決心する、そして…。

「…構いません、それで自分がヘルガーに対して何かあるのなら尚更のこと、僕が止めなくてはならないのですから…。」

「アブソル…いいの?」

「もう決めた事です、これしきのことでは諦めることは出来ません。」

「ありがとう…アブソル君、じゃあ…キングドラ。」

「あぁ、記憶の泉の最深部はバンギラスと俺しか知らない…だから俺が奥まで案内しよう。」

「じゃあ、今回は…。」

「俺とアブソル、ロコンとあと一人だ。」

「私の他にも一緒に?」

「心の支えは多い方が良いからな…だが四人以上は難しい…。」

そう言うとキングドラは入り口のドアをバン!と開ける。こっそり聞いていたメンバー達と目があった。

「あ…気づいてましたか…。」

「当たり前だ、話は聞いていただろう、誰か来てくれるものはいないか?」

ギルドのメンバーはしばらく考える…アブソル、元人間の心を支える、更には今回の事件の首謀者と関係があるかもしれないのだ…責任は重い、気軽に手を挙げることは出来ない。

流石に難しいかとキングドラも諦めようとした時、スッと手が一つあがった……エーフィだった。

「エーフィ…いけるか?」

「はい…アブソルさんは私にとっても、みんなにとっても大切な人…いざと言う時は必ず…。」

「エーフィさん…。」
「エーフィ…。」

アブソルとロコンも名前を呼ぶだけで反論はなかった。ギルドのメンバー達にも反対の意見はない。

「分かった…じゃあ三人とも、準備を頼む、昼食を済ませて13時に出発するぞ、ほかの者は三人を手伝ってやってくれ、解散。」

キングドラが解散を伝えるとギルドのメンバーは全員静かにいなくなった。

「キングドラ…。」

「リーダー、言ったろう?大丈夫だと、アブソルも同じだ、すぐに戻る。」

「……気をつけて。」







その日の昼食はとても静かだった……。










〜記憶の泉、入り口、13:45〜



アブソル、ロコン、キングドラ、エーフィは記憶の泉入り口で待機していた、50分に入る予定だ。

「…三人とも、準備は良いか?」

「大丈夫です…。」
「私も…。」
「問題ありません。」

「良し、迷うことはないだろうがしっかり付いてきてくれよ、何かあったらすぐに合流、いいな?」

……コクリ…。

「…50分だ、行くぞ、アタック開始だ。」


四人は記憶の泉へ繋がる洞窟に入っていった…。


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