この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
ざざぶーん
いいきぶーん
「プールでも入るか? って水着持ってきてねえか……。足だけでも入るか?」
「うん! きっと涼しいよね。リューくん達もプールに入れるみたいだし行きたい!」
デッキに出たついでに辺りを散歩していたら大きな野外プールがあった。身体全身が入れるプールはもちろん、足だけ入ってポケモン達と遊べる深さが浅いプールもある。流石、豪華客船。
ゴールドとマイはポケモンを出して泳がせたりで楽しそうにしていた。今までの険しい道のりが嘘のように感じ取れた。
そんな平和な時が終わってしまうのが、旅の醍醐味だったりする。
「おめでとうございます!」
「わっ! えっなに? 確かにわたしは頭は悪いけど、人からおめでたいなんて言われる筋合いはない!」
「いやマイそれは違うと思うけど、一体なにがおめでとうなんだ?」
突然、後ろから声を掛けられて首に色鮮やかなハイビスカスのレイを掛けられる。振り返って相手を見れば長い金髪を真ん中分けた若いギャルがいた。
「ふふアタシはこの船の従業員のレイカ。あなたでちょうど百万人目のお客様だったんです!」
「なるほどな、よかったじゃねえか! んで、何かくれんのか?」
「もちろんです! こちらをどうぞ! 秘伝技の波乗りでございます! 手持ちのポケモンちゃんにどうぞ飲ませてあげてください!」
レイカから渡されたのは「波乗り、ざざぶ~ん」と書かれた小瓶。波乗りならゴールドが言ってたなあ、なんて思い出してプールに向かってモンスターボールを投げると中から出てきたのはラプラス。
珍しいポケモンに周りの人も目を奪われる。ゴールドに小瓶の蓋を外して開けてもらうと中の薬をラプラスに飲ませる。美味しそうに食べる姿を見てマイはほほ笑む。
「これで波乗りって技が使えるようになるんだ~。よかったね。背中乗ってみたいけど……まだ乗れそうにないねえ」
縦横無尽に泳ぎ回るラプラスに涼しそうでいいね、と声を掛ける。もうすぐで日が落ちるとゴールドが言ってきてラプラスをボールに戻す。
確かに握られた手は暑かったし相当な時間をデッキで過ごしていたようだ。
◆◆◆
時間はあっという間に過ぎてしまい、船内でのパーティにポケモンバトルこの一日でよっぽど疲れたのかお風呂に入ったらすぐに寝てしまったマイ。
月が夜空に浮かんだ深夜二時に目が覚めてしまったようだ。キョロキョロと部屋の中を探すもゴールドの姿がなかった。
「……ごーるど?」
寝起きの声で呼ぶもやはり返事は返ってはこない。意を決して部屋から出てみると、廊下は暗闇に支配されている。喉をゴクンと鳴らしてマイが一歩外へ。
(ど、どうしよう幽霊とか出そうだよ……)
部屋に戻ろうとも思ったがゴールドがいないので結局また眠れないだろうということで探すしかなかったのだ。
暗闇にはフラッシュ! ピカチュウを出し辺りを照らしてもらう。
(痛ッ。やっぱりまだ腕が痺れる時があるや……)
「ピィカ?」
「ううん、なんでもないよ。一緒に来てくれる? ゴールド探しの大冒険だよ」
「ピッカ! ぴかぴかちゅ! ぴ~かぴか!」
右腕を摩っているとピカチュウが心配そうに寄り添ってきた。だいじょうぶだよ、というが無理しないで! 僕がついてるよ! ま~かせなさい! と胸をトントンと叩いて主張する。
ピカチュウを前にしてマイがへっぴり腰で着いて来る。怖いところと幽霊が出るかもしれないという恐怖心が中々前へ進ませてくれないのだ。
「ぴーぴか、ぴーぴか」
「ゴールドって言ってるのかな。わたしもがんばるね!」
「ぴか、ぴかぴかちゅ~」
小さなピカチュウが頑張っているのだからわたしも頑張る! と両手で拳を作り気合を込める。
「ピカ―!! ピカッチュー!!」
「どうかしたの? ん、後ろ? 何もいないけど……」
何を思ったかピカチュウが頬袋から電撃をぱちぱちと音を立ててマイの後ろを見ている。しかもちょっとだけ汗をかいているピカチュウ、怖がっているのかもしれない。
マイが後ろを振り返れば何かいるだろうと思ったが何も、誰もいない。と思っていたのだが、床下からぬぬっと透けて何かが出てきた。
「ゲンガー!」
「ぎゃー!! 幽霊ー!!」
「ピカチュー!」
ピカチュウを抱きかかえ全力ダッシュ! どこまでも続くかのように思えた廊下に一筋の光が見えた。外だ!
「ゲンガー!! ゲ~ンガー!」
「いや~! 追って来る~!! ゴールド助けてー!! うわああん!」
扉を雑に開け、飛び出すマイと抱えられたピカチュウが柔らかい何かにぶつかった! また幽霊!? とマイは目をぎゅっとつぶるがそこにいたのは—―。
マイの台詞にピンと来たあなた!
そうです無印時代のサトシの台詞です笑