第45話 モーモー牧場
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
「ごめんね、リューくん! 気を付けて!」
「甘いな! ギャラドス、かみつく!」
地面の底から鳴らしているかのようにギャラドスがハクリューにはって近寄ってくる、そしてその巨大な口を思い切り開け、ハクリューに襲い掛かる! 咄嗟の判断で空中へ大ジャンプをするハクリュー。
「逃がすな! もう一度かみつくだ!」
「どうしよう! リューくんがやられちゃう!」
「ハクリュー、そのまま下に向かって10万ボルトだ!」
「リュー!」
ジャンプをしたため逃げることが出来ないハクリューに、滅びの歌で戦闘不能となったハクリューが重なりパニック状態に陥る。バトル中だというのにゴールドに助けを求めてしまった。
ハクリューはゴールドの指示にも的確にこたえ、上に上がった顔を下げ、下から迫りくる恐怖のギャラドスに向かって10万ボルト!
「むむむ、やるなあ……お嬢ちゃん! しかし、いい試合だった! ありがとう! じゃ、ワシはポケモンセンターでみんなを癒してくるかな!」
「あー、ありがとうございました! 気を付けて!」
釣り人が手を振ってキキョウシティへ向かう。はたして船に間に合うのだろうか? ゴールドがそんなことを考えていると、ハクリューをボールに戻したマイが下を向いたままになっていたので肩を叩いてやる。
「どうしたよ、勝ったんだぜ?」
「でも……あの時リューくんに指示が出せなかった。わたし、ジムバッジを持ってるからって調子に乗ってた……」
あの時とは、ゴールドがハクリューに指示を出した時だ。マイが手でキツくスカートを握りしめる。
「うーん、まあよくあるこった気にすんな! それにあれはジム試合じゃねえしな。俺もつい口に出しちまった、すまねえな」
「ううん、ゴールドは悪くないの! わたしがもっとしっかりしないと……」
反省しながらとぼとぼと歩いていたら39番道路へ出た。すると見覚えのある声が聞こえてきた。
「お、ほら! マイ、モーモー牧場だ! アイス食えるぞ! 元気出せ!」
「わー! 行く行く! 次からがんばればいいよね!」
「おーそうだそうだ。次に生かせよ~」
アカネ戦で戦ったミルタンクが牧場に数多く放たれていた。一瞬だけボールの中でエーフィが動いたのだが、すぐに戦闘意欲はないと感じ取ったのかボールの中で再びしなやかに座っていた。
マイが立ち直ったのはいいのだが、今までポケモンバトルで落ち込んだことがなかったのでいい刺激にはなかったのかな、とプラス思考で考えることにした。
「すいやせーん、モーモーアイス二つくださーい」
「はいはーい。あらー可愛いわねえ。兄妹かな? どうぞどうぞ、席に座って~」
開けっ放しになっている両開きの扉を抜けて、ゴールドが先に店に入る。マイが後で続けて入ると、店員らしきオバサンが明るい声で迎えた。
簡易的な長椅子に座るとオバサンがソフトクリームを持って来て、マイが舌を使って落とさないように舐めながら食べている。
(こいつ、この後落とすな)
「え? なにゴールド? 顔についてる!?」
「ついてねーよ、落とすなよ」
落とさないよー! と頬を膨らまし、向けていた顔を正面に戻してアイスに集中している。ゴールドは視線を外へ向ける。のんびりとミルタンクが牧草を食べていて、あの激しいバトルをしたとは思えない。
「あー! 落としちゃった……」
「やっぱりなー。ほら、これ食えよ。おばちゃーん、ごめんアイス落としちまってよー」
ゴールドのアイスをもらって満足げにしていたら、呼んだオバサンがミルタンクを連れてきた。床に落ちたアイスを舐めて綺麗にしてくれていた。
「ごめんなさい、ありがとうミルタンクさん」
「も~」
「ふふふ気にしないで~って言ってるのよ。はい、これ新しいアイスクリーム」
今度こそ落とさずに食べきったので手を洗って外へ出る。海が近い、鼻が潮の香りを察知する。
そうだ、とマイはゴールドからタマゴをモンスターボールから出してもらって話しかけた。
「タマゴさん聞こえてる? あなたと同じ色の場所にもうすぐで着くんだよ」
「反応するか~? ってしてんな! どうしてだ?」
「うーん、やっぱりおんなじ色してるからだよ! これからはボールから出して歩こうよ! わたし持って歩きたい!」
マイがタマゴを両手で抱えて上へ上げると、タマゴが大きく動き反応した。もしかしたら本当に海に反応しているのかもしれない。
博士の助手からは「マイだと落とすから預かってくれ」と頼まれたのだが、ここまでマイと来て少しは信頼してみるか、と託すことにした。
「あ! 待てマイ! タマゴ落とすなよ!? アイスとは違うんだぞ!?」
「分かってるよ~。あっ! あーっ!!」
「オイオイまじかよ~!?」
突然の強風にマイからタマゴが落ちてしまった。下り坂になっていたためタマゴがコロコロと転がって行く。
モーモー牧場を抜けると、様々な国旗で彩られた大きな門が見えた。そこすらもタマゴはぶつかることなく転がってしまって……。
「と、止まった……」
砂浜まで行ってようやくタマゴは止まった。マイが息を切らしながらもゴールドに追いつくとヒビは入ってないと教えてもらう。心底ほっとしたマイがごめんね、とタマゴを抱きかかえて撫でると、先程と比べ物にならないほどの反応を示した。
「孵化だ!」
「どんな子が生まれるんだろう!」