第34話 天候:強い日差し
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
「そう、あなたコウって言うのね。私はアヤノ、アヤって呼んでちょうだい」
「……ア、アヤ。なぜそんなに親しくする? もう二度と会わないかもしれないのに」
コウはエンジュシティから戻るような形で一歩手前の道路にいた所、人探しをしていたアヤノに捕まってしまった。
だが、コウが盗みをしたとは知らないアヤノは他の人と同じように接する、そのためコウが違和感を覚え、ガラにもなく疑問を投げかけた。
「私は目的があるの。だから、コウ」
「お、おう」
真剣な眼差しを向けられ、コウの紅い瞳に、アヤノの蒼い瞳が映り込み、たじろいでしまう。
「マイさんを見つけたら連絡して。これ、ポケギアの番号よ」
「ああ、分かった。だが、すまない……このポケギアの使い方がイマイチ分からないんだ。代わりに登録をやってくれないか」
コウにも目的があるので、アヤノの目的という言葉に強く反応してしまった。
普段のコウならもっと警戒をするだろうが、アヤノの力なのかコウはポケギアを手渡してしまう。器用に使いこなすアヤノを見つめていたら、アヤノは照れたように髪を耳に掛けながらポケギアをコウに返す。
「別にマイさんが見つからなくても、コウが困ったりしたら迷わず連絡をしてもいいからね。じゃあ、私は戻らなきゃ。またね、コウ」
「ああ、アヤも困ったら連絡してくれ。またな」
アヤノはギャラドスを出しながらコウに告げる。段々と宙に浮かんでいくアヤノを見上げながら手を振る。
「はあ、俺は一体何をしてんだ……」
歌舞練場で疲れたポケモンを自然公園で遊ばせようとここまで来たのに自分が疲れてしまってどうするんだ、と肩を落としてため息をつくコウであった。
◆◆◆
「シャワーズ、水鉄砲でまずは相手を見極めるのです!」
口から鉄砲弾の如く水が噴き出すシャワーズ、ゴールドはヒマナッツに避けろとも攻撃を掛ける指示も出さずにその場に待機させる。
マイはヒマナッツが水に苦しむ姿を見たくないのか目を両手で覆った。しかし、聞こえてきた声は気持ちの良さそうな声。
「え、キマちゃんが水浴びしてる?」
「そうだよく見てろマイ。草タイプに水タイプの技は経験の差がそんなになければ無効のようなもんだ!しかも、さっきのバトルでこのジムは相当暑くなってきてる、キマたろうにとっちゃこの水は天の恵みってわけよ!」
炎タイプ同士のバトルは七月の暑さにサウナ状態だった所に水の恵みでヒマナッツは元気に、シャワーズは逆に暑さでバテていそうだったが自らも水浴びをし体調を取り戻した。
「さあ本調子に戻ったところで反撃だ! キマたろう、宿り木の種だ!」
「そんな小細工は通用しませんことよ? シャワーズ、体当たり!」
「ただの小細工なんかじゃねえ、こいつの特性を生かすためには宿り木の種が必要なんだよ!」
シャワーズに宿り木の種を植え付け、体力を少しずつ奪って行くが、それ以上にシャワーズの体当たりもヒマナッツの体力を奪って行く。
「ヒマナッツの特性は大抵が葉緑所、素早さが上がるだけのはず、シャワーズ連続で体当たり!」
「普通だったらその特性だ。けどなぁ、俺のキマたろうはサンパワー! こんだけ日差しが強けりゃ攻撃力もいつもの倍になるわけよ!」
「サンパワーは確かに攻撃力は上がる、けれど同時に体力を奪っていく……そういうこと! 体力を削られた分、ウチのシャワーズの体力を奪う!」
マイは二人の会話についていくことができず頷く暇すらなかった。ヒマナッツは暑い日差しによって攻撃力が一.五倍、体力を熱に奪われる分、シャワーズから同じ量を奪い取る、ゴールドは戦略を立てて宿り木の種を指示したのだ。
しかし、シャワーズも負けてはいない。渾身の力を入れヒマナッツに体当たりをする。
「キマたろう、ソーラービーム!」
「そんな簡単に撃てるモノではあらんは……ず!?」
ヒマナッツは口を目一杯開け、光を一気に貯める。アカコはまだ逃げる隙があると勘違いをしたが、日差しが強いおかげで光の力を貯める時間を短縮させ、シャワーズに逃げる暇も隙間も与えない。アカコは目を大きく開け、シャワーズが光に撃たれて行く姿を目撃してしまう。
「よっし! キマたろう、お疲れ様」
「ウチのシャワーズがこんな小っぽけなポケモンに……強いなぁ。ありがとう、ウチは修行に戻るでぇ……トホホ」
ヒマナッツをボールに戻し、次の対戦相手を待つ。アカコが戻って数分、今度は黒い着物を着た舞妓さんが現れた。
しかし、この舞妓さんよっぽど自信があるのか胸を張って出てくると、袖の中からボールを取り出しポケモンを外へ飛び出させる。
バチバチと音を身体から鳴らして威嚇のようにも感じ取れた。
「ワテの名前はクロコ。そしてこの子はサンダースや、ワテの子は速さが売り。このスピードについてこれますか?」
「マイ、よく考えてポケモンを選ぶんだ!」
わかった、と頷いてステージに上がるマイは何を繰り出すのか。