4話 ギルド到着!

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

ロコンの道具を武器にスピアーと戦い、勝利を収めたアブソル、二匹は遂にギルドのある街へとたどり着く。
森の木々をかき分け、やっとのことで抜け出ることが出来た二匹、その先には沢山のポケモン達でいっぱいの街が広がっていた。

「やっと着いた…ここまで来たらもうギルドはすぐそこだよ!目的地まであと少し!」

街の賑やかな雰囲気に心踊るのか、テンションの高いロコンは前へ前へと進んでいく。しかし、何かを思い出したか、ふと足を止めてアブソルの方を見た。

「そう言えば君はなんでギルドへ向かっているのかな?依頼書を渡しに?それとももしかして私と同じく探検隊になりたいとか!?」

「探検隊になろうかどうかは今は迷ってます……技が使えない以上、僕はただの邪魔でしかありません。ギルドへの用件は親方のプクリンにそれを含めて聞きたいことがあったからなんです。」

アブソルは人間であるということを隠してロコンに事情を伝えた。今の自分は元人間という証拠がない、下手に実は僕、元人間なんです〜♪、なんて言ってしまったら正直ただの怪しいヤツにしか見えないだろう。まずはギルドの親方、プクリンに話して様子を見るのが賢明だ。この世界の不思議を解明していくギルドの親方となればこの人間がポケモンになるという不思議な現象の事もわかるかもしれない…。

しかしロコンはえ?という表情でアブソルを見ていた。しまった…何かおかしい事を言ってしまっただろうか、とアブソルは心の中で慌ててしまう。すると……。

「あの……プクリンのギルドはもっと遠くにあるんだよ。私が今行こうとしてるのはバンギラスってポケモンが親方のギルドなんだ!強くて結構有名なギルドなんだよ…色んな意味で。」

え……バンギラス……?ちょっと待って…バンギラスってあのバンギラス!?おいおいマジかよ待ってくれ、そんな凶悪なポケモンに僕の話は通じるのか!?最悪破壊光線ぶつけられてなにも知らないままゲームオーバーだぞ!?

予想してなかった物語のズレにアブソルは焦った、この世界はてっきり救助隊と探検隊をごちゃ混ぜにして作られた世界だと思っていたから…しかしどうだろう。本来ならばプクリンのギルドに弟子入りするはずがその目的のギルドはまだ遠く…近くには凶悪なバンギラスが親方の強くて有名なギルドがある…。物語通りならまだしもここまで違うとどうしたら良いのか分からなくなってしまう…。するとロコンが不安そうな顔で口を開いた。

「ね、ねぇ…君の聞きたいことってプクリンじゃないとどうしてもダメなのかな?バンギラスも親方としての名声は高いから色んなことを知っているはずだよ!まずはバンギラスに聞いてみたらどうかな?」

「そ、そうですね…確かにそれも一理あります…しかし…」

「うん!そう考えたら善は急げだよ!さ、行こう行こう!」

全て言い終わる前にロコンに押し切られた。先を行くロコンを不安ながらも着いていくアブソル、そして遂に目的のギルドまで辿り着いた……。

そのギルドはバンギラスの顔をした家……ではなかった。石や鉄を使った要塞の様な所だった…これ3階はありそうだな…。

予想とやっぱり違うな…気を引き締めて行こう、アブソルは緊張しながらもロコンと共にギルドへと入っていく。ロコンもそれは同じだった……。

道中のポケモンに声を掛けられ、軽く挨拶をしながら掲示に従って地下2階へと降りていく。その奥にはわかりやすく「バンギラスの部屋♡」と書かれた木の板がかかっている……。綺麗な字だな…同時にやばい感じがすごくする…別の意味で…。

ロコンも同じく最初はその可愛らしい標札?に戸惑いを現していたが親方となれば話は別。深呼吸を一回してアブソルに目を向ける。

「じゃあ……いいかな?」

無言でアブソルは首を縦にふる。それを見るとロコンはぎこちない手つきでその扉をノック……ではなくその横の黒いボタンを押す。

ピンポ〜ン♪

「インターホンあるんですか!?」

突っ込まずにはいられなかった。いやだって、おかしいでしょ!?インターホン何であるの!?、ポケモンの科学の力ってすげぇー!と1人でハイテンションになっていたがロコンのどうどう……の一言で落ち着きを取り戻す、僕は馬かな?そんなやり取りをしていたら中から声が聞こえた。

「あ、はい!ごめん!少し待っててー!」

慌てているのかドタバタと中で動いている音がする…、途中でドンガラガッシャーン!と大きな音がしたが大丈夫だろうか…。そんなこんなで二分くらい待ち、ようやく終わったのか「空いているのでどうぞ!」と元気のよい声が掛けられる。

ドアをゆっくり開けたその先には……


柔らかそうなソファーに身を任せたバンギラスがニコニコ笑顔でこちらを見ていた。

右を見ると本棚が倒れてしまっている…。さっきのドンガラガッシャーンはこれだな……。片付けようとしたら余計に散らかってしまい、簡単に片付けて諦めたのだろう……。

左には探検で使うのか色んな道具が整理されていた。その前にはキングドラの置物がある……それ探検で使うの?というツッコミはしないでおいた。

「ごめんね〜、急な来客に驚いちゃって、ささ、そこに座って座って♪、お菓子もあるからね!」

「あ……はい…し、失礼します。」

なんだこのバンギラス…予想と全然違う!僕の中でのバンギラスのイメージがガラガラと音をたてて崩壊した。怖がることはないと分かったロコンは安心して心の整理がついたか、もう一つのソファーに座る(正確には乗る。)、僕も続いてその横に座った。

しかし僕は座ると同時に手を後ろに回し槍をいつでも取り出せるようにする…。見てしまったのだ。バンギラスの後ろを…赤い液体で一部が染まった机を……。


「その姿を見たら分かるよ。遠い所からよく来てくれたね、それで…用件は何かな?」

バンギラスはアブソルの警戒に気づいていないのか気にせず接してくる。そしてロコンは口に出す。

「こ、ここのギルド入りたくて来ました!お願いします!私を探検隊としてギルドに加入させて下さい!」

ロコンは真っ直ぐとしてその目をバンギラスに向ける。バンギラスもその言葉を聞いてん?と言いたげな顔をしていたがロコンの言葉を整理するとおぉ!と目を輝かせていた。

「そうか!ギルドの加入希望者だったのか!最近はプクリンの所が有名になりすぎてそこにいくポケモンが多いからすごく寂しかったんだよ!いや〜、これは嬉しいな!もちろんOKだよ!これからどうぞよろしくね!」

特に理由も聞かれず、あっさりとギルドへの加入を認められたロコンはあれ?という表情をしていたがすぐに状況を理解し、その顔は笑顔で満たされる。

「よ、よろしくお願いします!私頑張ります!」

うんうんと首を振り、嬉しそうなバンギラス、すると今度はアブソルに目線を合わせた。遂に来たか……。

「君もギルドの加入希望かな?」

「あ、自分は…」

「ちょっと良いか?」

「…え?」

急な第3…じゃない第4者の声にロコンと僕は思わず声のした方向に顔を向ける。そこには置物と思われていたキングドラがこちらを向いていた。置物じゃなかったんだ……。

「話を止めてしまってすまないな…そこのアブソルに聞きたいことがあったんだ。良いか、リーダー?」

リーダーと呼ばれたバンギラスは驚いた時のように目を開いてキングドラを見ていた。そして……

「キングドラ……いつからそこに!?」

「さっきまで一緒に今月の予定を立てていただろうが!?」

「あ、そうだった!うっかりうっかり♪で、聞きたいことって?」

「全く…話を戻そう。そこのアブソル…間違えていたら申し訳ないがダメ元で聞く。もしや人間ではないか?」

……もうバレた……。

「!?……き、気づかれていましたか…正解です。僕は人間でしたがアブソルとなって気がついたらこの世界にいました。」

アブソルの一言にロコンは驚きを隠せず、バンギラスは…表情を変えていない…こちらを見たままだ。しかし、何故分かった?

「よろしければどうして分かったのか理由を聞いても?」

「…お前が後ろで握ってるその槍だ、この世界では人間の世界の科学を取り入れ、色んなものを作ってきた、しかし武器はあまり広まっていない…俺たちポケモンは技が使えるからな…だがお前は必要の無いその武器の知識を活かし、その槍を作っている、それでなんとなく分かった。」

「なるほど……槍だけでそこまで読むとは、素晴らしい観察眼ですね…実は技が何故か使えなくて…それでこのゴローンの石で作った槍を使っていたんです。」

「技が使えない…おそらく人間から急にポケモンになったため、それで身体がついていけていないのだろうな…。」

二匹が淡々と話を進める中、ロコンはやっと話を整理できた。

「君……人間だったんだ…そっか〜、だからあんなにその棒の扱いが上手かったんだね!」

「黙っていて申し訳ありませんでした…。この世界の事について情報が足りなく、下手に話せなくて…。」

「信用されない、と思ったんだな…大丈夫だ、この世界にはそういう奴らが何人かいる。隠すことはないさ。」

「いるんですか!?他にも自分と同じ人が!?」

「あぁ、星の衝突を食い止めたとか世界を闇に染めようとしたダークライの野望を止めたとか…他にも結構凄いことやってるぞ。」

星の衝突は救助隊、ダークライの野望を食い止めたは探検隊の時のものだ。他にも…ということはここはその続きか合間の世界…どんな事が僕に起きても元人間の運命で片付けれてしまう。

「だが記憶を持ったままこの世界に来るケースはお前が始めてだろう、今までの奴らは名前以外覚えていなかったんだ、どうだ?お前の名、良かったら教えてくれ。」

そうだ。自分の名前……僕の……名前は……。


思い出せなかった…。

「名前……あ、あれ?」

「覚えていないのか?、人間の頃の記憶はあるが完全ではないと言ったところか…。焦ることは無い、少しずつでいい、この世界に慣れていってくれ。」

「は、はい……ありがとう……ございます…。」

するとロコンは何かおもいついたのかアブソルに提案する。

「ねぇ!良かったら君も一緒に探検隊やろうよ!一緒に冒険すれば何か思い出せるかもしれないしさ!ね?」

「…しかし、僕は技が…。」

「その事については問題ない、地下の3階にはトレーニングルームが用意されている、そこで俺と特訓して簡単な技を覚えていこう、お前は槍も扱える、うまく鍛えれば優秀な実力を得られると思うぞ。」

「ほら!キングドラさんもそう言ってるしさ!お言葉に甘えようよ!」

「……分かりました。キングドラさん、バンギラスさん、よろしくお願いします!」

「あぁ、じゃあリーダー、新しいメンバー2名加入だ。良かったな……リーダー?」

バンギラスは下を向いて黙っていた……まさか…。

「……寝ているね。」

「寝ていますね。」

「リーダー……いつから寝ていたァァ!」

キングドラの大声はギルドに大きく広がっていった…そして察した、このギルドの一番の苦労人はおそらく彼だろう。

「……リーダーには私から事情を話しておく…、疲れただろう…4階の部屋を手配する、そこでゆっくり休み、明日に備えてくれ。」

「あ、はい、ありがとうございます。し、失礼しました。」

二匹は親方の部屋を出る。バンギラスとキングドラの二匹だけが残った。

「さて、どうしたものか……。」

キングドラは目を回して倒れているバンギラスを見てため息をついた。急な大声で失神している…やりすぎたようだ。










余談

キングドラは翌日気になったことをアブソルに聞いてみた。

「そう言えばお前、何故後ろで槍を構えたりなんかしていたんだ?」

「え、いや……あの…バンギラスさんの後ろの机に…血が一部染まっていたのでもしやと思ってしまい……。」

「あ、それトマトを重視して作った野菜ジュースだな、こぼしてしまったんだ。」

「はい!?」

「リーダーがたまに飲んでるんだ。野菜も取らなきゃダメだと言ってな。」

「な、なんだ、そういうことでしたか。」

「なんだとはなんだ!アブソル君!」

「うわっ!バンギラスさん!?」

「何故土壁から出てくる……。」

「いいかい!?野菜にはね!健康に良い素晴らしいものが沢山備わっているんだよ!特に私はトマトが大好きで……。」

「……行こうか……。」

「え!?……あ……はい。」

「あ、ちょっと!まだトマトの素晴らしさについて語ってないよ!トマト1個分に含まれているリコピンの量はトマト1個分なんだぞ!」

「当たり前だろうが!」

「あ、思わず突っ込んだ……。」

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