66話 機転

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「私の番です!」
 桃川めぐみのバトル場はグレイシア70/100。ベンチには悪エネルギー一つついたブラッキー70/100とエーフィ100/100、ネンドール80/80が控えている。
 その一方で私の場は達人の帯と水エネルギー二枚、鋼と闘エネルギーが一枚ずつついているレジギガスLV.X120/190。そしてベンチにはレジアイス90/110、闘エネルギー一枚と鋼エネルギーが一枚ついたレジロック90/110、ユクシー70/90がいる。
 私の場のポケモンのHPの高さからも予想できるでしょうけど、スタジアムはたねポケモンのHPを20上げるキッサキ神殿が発動している。
 サイドは共に五枚だが、どちらが有利かは誰だって分かるだろう。
「グレイシアに水エネルギーをつけて、手札からグッズカードのポケモンレスキューを発動。トラッシュのポケモンを一枚手札に戻します。私はイーブイを手札に戻し、ベンチへ出します」
 さっきからのプレイングを考えるともしやこのデッキでメインで戦えるポケモンはイーブイしかいないのかしら。イーブイの元のHPは60だが、キッサキ神殿の効果で20増幅し80/80とネンドールと同値になっている。
「更にネンドールのコスモパワーを使います。手札を二枚デッキに戻して六枚になるようにドロー」
 彼女の手札は最初は四枚。二枚戻したので引くカードは四枚だ。
「ミズキの検索を使います。手札を一枚戻してデッキから好きなポケモンを一枚手札に加えます。私はシャワーズを選びますね」
 今引いたシャワーズ以外にもグレイシアとエーフィ、ブラッキー以外にもブイズがまだまだ控えているようだ。
「グレイシアで雪隠れ! コイントスは……オモテです」
 雪隠れは威力30のワザで、効果でコイントスを投げてオモテの場合このグレイシアは次の相手の番にワザのダメージや効果を受けない。激しい吹雪が発生し、レジギガスLV.Xを襲ってHPを90/190まで下げると同時にグレイシアの周りに雪のカーテンのようなものが現れる。
「私のターンよ。レジギガスLV.Xのサクリファイスを発動。ベンチのポケモンを一匹気絶させ、ダメカンを八つ取り除くわ」
 80も回復したためHPは170/190とほぼ全回復。サクリファイスはこれ以外にもトラッシュの基本エネルギーを二枚まで選んでこのポケモンにつけるという効果もあるのだがトラッシュには残念ながら基本エネルギーがない。とにかく今は主軸となっているレジギガスLV.Xを気絶させないことだけを念頭にするべきだろう。
 その巨体を180度回転させてこちらにむいたレジギガスLV.Xは私のベンチにいるユクシーをガッシリ握ってそのまま握りつぶしてしまう。何度も見たが決して楽しい光景じゃないわね。
「サイドを一枚引きます」
「攻撃が防がれているからやることがないわ。ターンエンドよ」
「私の番ですね、手札の水エネルギーをイーブイにつけてこのイーブイをシャワーズに進化させます。ネンドールのコスモパワーを発動! 手札を二枚戻して四枚ドローしますね。ではグレイシアで再び雪隠れ!」
 シャワーズは進化したためキッサキ神殿の恩恵は受けれなくなったが代わりにエーフィのサンライドヴェールの効果を受けれるようになり、再びHPが20上がって110/110。
 コイントスの結果は再びオモテ。先ほど回復したばかりのレジギガスLV.XのHPを140/190へと削っていく。
「私のターン。……」
 基本的に私のデッキは力でゴリ押す短期決着型のデッキ。不本意にもこういう風に長期戦を強いられるとやることがなくなってしまう。
 それに追い打ちをかけるかのように、手札のカードは良いとは言えない。
「エムリットをバトル場に出すわよ。そしてサイコバインドを使うわ」
 エムリット90/90(キッサキ神殿の効果でHPが+20されている)のポケパワー、サイコバインドはこのカードを手札からベンチに出した時に使え、次のターン相手のポケパワーを使えなくさせるというカードだ。だが相手のポケパワーを持ったポケモンはネンドールのみ。あまりプラスの方向には働いてくれなさそうだ。
「エムリットに超エネルギーをつけてターンエンド」
「行きますね、私は水エネルギーをシャワーズにつけてグッズのミステリアス・パールを使います。サイドを全て確認し、その中にあるポケモンのカードを一枚手札に加えて発動したミステリアス・パールを新たにサイドに置きます」
 攻め手にかける桃川と、攻めあぐねる私。どちらも膠着状態だったのだが、その膠着がようやく解ける。
「グレイシアでもう一度雪隠れ行きます」
 しかしここでのコイントスはウラ! ようやくグレイシアを守る盾はなくなった。攻撃を受けたレジギガスLV.XのHPは110/190と半分に近くなっているが今はそんなに重要ではない。
「私のターン、ハマナのリサーチを発動。デッキから基本エネルギーまたはたねポケモンを手札に二枚まで加える。私はユクシーとアグノムを手札に加えるわ」
 今引いた二匹を両方ともベンチに一気に出すとベンチが埋まってしまう。レジギガスLV.Xのサクリファイスを使えば減ると言っても、結局は気絶扱い。そんなに調子に乗るわけにはいかない。ここは温存か。
「レジギガスLV.Xでギガブラスター!」
 轟音と巨大な橙色のレーザーがグレイシアと手札、デッキポケットを襲う。ギガブラスターの効果は攻撃した後相手のデッキトップと手札のカード一枚を強制的にトラッシュさせるものだ。
 相手のデッキの一番上からはブラッキー。手札からは悪エネルギーがそれぞれトラッシュされる。
 肝心のグレイシアは威力100に達人の帯で20足された120ダメージを受けて気絶。これで雪隠れで攻めあぐねる心配は取り払われた。
 次の桃川のポケモンはシャワーズ。先ほどからベンチで育てていたポケモンだ。
「サイドを一枚引いてターンエンドよ」
「私の番です、手札から時空のゆがみを使います」
 時空のゆがみはコイントスを三回し、オモテの数だけトラッシュにあるポケモンを手札に加えるグッズカードだ。そのコイントスの結果はウラ、オモテ、ウラ。彼女はイーブイを再びトラッシュから手札に戻した。
「シャワーズに雷エネルギーをつけてイーブイをベンチに出し、更にサポーターカードのクロツグの貢献を発動。トラッシュの基本エネルギーまたはポケモンを合計五枚まで選んでデッキに戻します。私はトラッシュの水エネルギー三枚と、グレイシア、グレイシアLV.Xをデッキに」
 イーブイのHPはスタジアムの効果で20追加され80/80。これで通算六回目の登場だ。 
「シャワーズで破壊の渦潮攻撃! この効果でウラが出るまでコインを投げます」
 コイントスはオモテ、オモテ、ウラ。このコイントスのオモテの数だけ、相手のエネルギーをトラッシュさせるという効果を持つ。
「それではレジギガスLV.Xの水エネルギーを二枚トラッシュしてもらいます!」
 レジギガスLV.Xの足元に大きな渦潮が発生し、レジギガスLV.Xを飲み込もうとする。エネルギー三つで使うワザとしては60ダメージに二枚のエネルギーをトラッシュというのはかなり上々だろう。これでレジギガスLV.Xの残りHPは50/190。
「私のターン。アグノムをベンチに出してポケパワー、タイムウォークを発動」
 ベンチに出てきたアグノム90/90(通常は70/70だが、スタジアムのキッサキ神殿の効果でHP+20)の足元(?)を中心に紫色の波紋が発する。
「この効果はサイドを確認し、その中にいるポケモンを望むなら一枚手札に加えれるもの。加えた場合は手札から一枚カードをサイドにセットするの。……、ノーチェンジね」
 というのも単純にサイドにポケモンがいなかっただけなのだが。
「そしてエムリットに超エネルギーをつけて手札からグッズカードレベルMAXを発動。コイントスをしてオモテなら自分のポケモンをレベルアップさせるわ」
 レベルアップさせるだけならなんてことないと思うかもしれないが、レベルアップできるのはバトル場にいるポケモンのみ。この効果でならベンチのポケモンもレベルアップさせることが可能だ。
「オモテね。ベンチのアグノムをアグノムLV.Xにレベルアップ!」
 このときレベルアップするLV.Xのカードはデッキから選択しなければならない。手札やトラッシュでは意味がないのだ。また、アグノムLV.X110/110はサイキックオーラというポケボディーを持っている。これにて自分の場の超ポケモンの弱点はすべて無くなる。
「そしてサクリファイスを発動。ベンチのレジアイスを気絶させ、トラッシュにある水エネルギー二枚をこのポケモンにつけてHPを80回復させるわよ」
 トラッシュさせられたエネルギーも、受けたダメージもこれで大丈夫HPは130/190。これでなんとか……。いや、違う。これはわざとサクリファイスを使わせているのか。
「サイドを一枚引きますね」
 そう、達人の帯がついている上に高火力を誇るレジギガスLV.Xは私の攻撃の要。その分ダメージを受けるとすぐにサクリファイスで回復させているのだがそれを逆に利用しているのか。
 自力で高HPを誇る私のポケモン一匹ずつ倒すより、レジギガスLV.Xによる攻撃を無理に受けてまでもサクリファイスによって引くことのできるサイドで自分のサイドを減らしていく作戦のようだ。しかし分かってしまえば怖いことはない。
「レジギガスLV.Xでギガパワー!」
 ギガブラスターは使った次のターンにもう一度使えないという反動効果を持つので不本意だがこのワザを使うしかない。
 ゆっくりと、それでいて力強く前進するレジギガスLV.Xはシャワーズの元に来ると両手を組んでそのままハンマーのように両手を振り下ろす。ズシンという鈍い音が響いた。
 このワザの元の威力は60だが、効果で40ダメージ追加することができる。その分レジギガス自身が40ダメージを受けるのだが。達人の帯の効果も含め120ダメージ、110しかHPのないシャワーズはこれで気絶。一方攻撃した方も90/190。このままレジギガスLV.Xを捨てるのか維持するべきか。
 次のポケモンはまだ進化していないイーブイ。私がサイドを引いたことでこれで両者残りのサイドは三枚。ここからが終盤、油断はなおのこと出来ない。
「それじゃあ私の番ですね。手札からポケモンレスキューを使い、イーブイを回収してベンチに出します」
 七回目のイーブイ80/80(キッサキ神殿の効果含め)を見ると、流石に萎えてくる。
「バトル場のイーブイをブースターに進化させ、炎エネルギーをつけます」
 ブースター110/110(エーフィのサンライドヴェールの効果含む)、シャワーズと来ると次は予測できる。それにさっきのシャワーズに雷エネルギーがついていたということが予想をより盤石にする。
「ネンドールのコスモパワーで手札を一枚デッキボトムに戻してデッキから六枚引きます。それではブースターで炎の牙攻撃!」
 ブースターがレジギガスLV.Xの元に駆けつけて足に炎を纏った牙で噛みつく。大きさ的に大したことはなさそうに見えるのだがHPバーはしっかりと30削って60/190。
「コイントスをしてオモテだったら炎の牙の効果で相手のバトルポケモンは火傷になります」
 ここで下手に火傷になると相手の思うツボ。だが運よくコインはウラを出してくれた。
「それじゃあ私のターン。手札の闘エネルギーをレジロックにつけ、手札からユクシーを場に出してセットアップを発動。今の手札は三枚なので四枚ドロー」
 ユクシーもキッサキ神殿の効果を受けHPは90/90。しかしさっきからドローで引いてくるカードがイマイチだ。
「レジギガスLV.Xでギガブラスター!」
 あえてここでサクリファイスを使えばそれこそ思い通りになってしまう。ここはレジギガスLV.Xを切る勢いで突っ込んでいってしまおう。
 再び破壊力抜群の攻撃がブースターを。手札を。デッキを襲う。あっという間にブースターを気絶に追い込み、相手の手札の時空のゆがみとデッキの一番上にあるグレイシアLV.Xを丸ごとトラッシュだ。しかしまたしても出てくるポケモンはイーブイ。
「サイドを一枚引いてターンエンドよ」
 ようやくサイドが私の方が一枚上回った。このままあと二枚、なんとか突っ切れるか。
「私だって、行きます! イーブイに雷エネルギーをつけ、ミズキの検索を発動! 手札を一枚戻してデッキからサンダースを手札に加えます。そしてイーブイをサンダースに進化!」
 これでサンダースもHPが110/110。イーブイから進化するポケモンのHPを20上げるサンライトヴェールがやはり厄介だ。
「サンダースで雷の牙!」
 さっきと同じような感じのワザだが、威力はブースターのそれに比べて10劣る20。レジギガスLV.Xは40/190とまだ二発は耐えれる。
 そしてここでもコイントス。今度は火傷よりも厳しくマヒだ。だが今さらどっちもどっちのような気がしないでもないが。
「オモテです」
 レジギガスLV.XのHPバーにマヒと黄色い字で表示される。マヒはワザを使う事も逃げることも出来ない特殊状態だ。そしてサクリファイスも特殊状態だと使えない。そして桃川の顔が少し緩む。
 頬が緩むと言う事は余裕が出来たと言う事か? まだHP40をあるが、それをあっさりひっくりかえせるのだろうか。いや、意外と簡単だ。キッサキ神殿をトラッシュしてしまったり達人の帯をはずしたりすればHPは20下がり、次のサンダースの雷の牙でも十分倒せる。
「私のターン、ドロー。マヒで自分から逃げられないのならば、手札からワープポイントを発動するわ。その効果で互いにバトル場とベンチのポケモンを入れ替える!」
 桃川はブースターからエーフィへ。私はレジギガスLV.Xからユクシーへ。私の今の場ではレジギガスLV.X以外でエーフィを一撃で砕くポケモンがいないと踏んだからか。
「ユクシーに超エネルギーをつけて、ユクシーをレベルアップさせるわ。そしてユクシーLV.Xのポケパワー、トレードオフを発動するわ」
 ユクシーLV.X110/110(キッサキ神殿の効果含め)のトレードオフは自分のデッキのカード上から二枚見て片方手札に加えてもう片方をデッキの底に戻す効果だ。今確認した二枚はプレミアボールとポケドロアー+。わたしが選んだのはプレミアボールだ。
「続いてグッズのプレミアボールを発動。デッキまたはトラッシュからLV.Xのポケモンを手札に一枚加える。私はデッキからエムリットLV.Xを加えるわよ。そしてユクシーLV.Xの超エネルギーをトラッシュしてベンチに逃がし、ベンチのエムリットをバトル場に出してレベルアップ!」
 これでシナジー完成! エムリットLV.X110/110(キッサキ神殿の効果含む)が私のレジギガスLV.Xに次ぐもう一枚のキーカード。
「エムリットLV.Xで攻撃。ゴッドォブラスト!」
 エムリットLV.XとアグノムLV.X、ユクシーLV.XがZ軸方向に輪を結ぶように集まり、回転し始めるとと三匹の間に紫色のエネルギー球体が集まる。そして回転が目まぐるしく早くなった刹那、エネルギー球体がレーザーとなってエーフィめがけて襲いかかる。
 このゴッドブラストはアグノムLV.X、ユクシーLV.Xがいないと使えない上エムリットLV.Xについている全てのエネルギーをトラッシュしないと使えないワザだが威力はポケモンカード最強の200。今のところ200を越えるカードがないので実質一撃必殺だ。しかも追い打ちをかけるようにエーフィの弱点である超タイプを突いているので+20され220ダメージ。HPが100しかないエーフィには十分すぎる。
 これでエーフィが気絶したのでサンライトヴェールの効果は失われ、ベンチにいるブラッキーとサンダースのHPはそれぞれ20下がって元通りの50/80と90/90に戻る。桃川は次のポケモンにサンダースを選んだ。だが、
「サイドを一枚引いてターンエンド!」
 これで残りサイドは一枚。実質桃川は詰みである。
 たとえ雷の牙で連続してマヒを出してエムリットLV.Xを倒したところでその次に控えているレジギガスLV.Xは倒せない。
 彼女のブイズデッキは小粒揃いのテクニカルタイプ。こういう状況に持ち込まれるとどうしようもないのは本人が一番分かっているはずだ。
 しばらく黙りこんでいた彼女が口を開いた時、やはりね、と思った。
「……参りました」
「どーも。いい勝負だったわ。途中何度か危ないと焦ったわよ」
「いえいえ、私の力不足です。またいつか対戦するときがあれば今度は負けませんよ」
「ええ、望むところよ」
 対戦に熱中していたため気付かなかったが隣の山本信幸が戦っていたステージはもう勝負は終了していた。様子を見る限り予想通りというか山本信幸が勝ったようだ。
 次の二回戦ではとうとう山本信幸との対戦。それを意識すると嫌な汗が背をつたうのを感じた。



松野「今回のキーカードはレジギガスLV.X。
   サクリファイスは相手にサイドを引かせてしまうけども超強力。
   そしてなによりギガブラスターは破壊力ばっちしよ!」

レジギガスLV.X HP150 無 (破空)
ポケパワー  サクリファイス
 自分の番に1回使える。自分のポケモン1匹をきぜつさせる。その後、自分のトラッシュの基本エネルギーを2枚まで選び、このポケモンにつけ、このポケモンのダメージカウンターを8個とる。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。
水闘鋼無  ギガブラスター 100
 相手の山札のカードを上から1枚トラッシュ。相手の手札から、オモテを見ないでカードを1枚選び、トラッシュ。次の自分の番、自分は「ギガブラスター」を使えない。
─このカードは、バトル場のレジギガスに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 闘×2 抵抗力 - にげる 4

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