41話 力の証明

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 やや暗がりの晩の公園で、学生とポケカの開発者がバトルベルト制作者の陰謀を交えて対戦を始める。全く意味がわからん。
 何が何だか。俺の必要のなさを考慮して帰らさせてくれないかな。
 さて拓哉の最初のポケモンはフワンテとヨマワル。一方で松野さんのポケモンはポチエナだ。
 風見杯とかで3D投影機とは違い、ポケモンの左下に緑色のバーがついてある。その緑色のバーのすぐ上には、たとえばフワンテには「50/50」、ポチエナにも「50/50」とある。これはHPの数値だ。きっとダメージを受けるとバーは減っていく仕組みだろう。
「先攻は俺がもらう! ドロー」
 拓哉の使うゴースト(超)タイプは基本的に悪タイプが弱点となっている。相性で既に負い目を背負っている拓哉だがどう戦っていくのだろう。
「手札の超エネルギーをヨマワルにつけ、ベンチにムウマージGL(80/80)を出す」
 どうやら対戦を見ている限り、『バトルベルト』とやらはやはり3D投影機を簡易化にしたもののようで、風見杯と同様にポケモンが実際にいるように映像が見える。
「へぇ、ゴーストタイプねえ。じゃあ今度は私の番よ。まずは手札からスタジアム発動。破れた時空!」
 松野さんはバトル場の左にあるスタジアム置きに破れた時空のカードを置いた。すると、先ほどまで夜の公園だった辺りが一気にダイパなどで見た槍の柱に変わる。そして松野さんの背景には破れた世界の入り口が現れる。
「このスタジアムがあるとき、お互いにその番に出たばかりのポケモンを進化させれるわ。その効果によって、ポチエナをグラエナに進化させる」
 ポチエナがより立派な体躯に進化する。左下のバーの数字が50/50から90/90へと変わる。
「そして手札からスカタンクGを場にだす」
 スカタンクG……。風見杯本戦一回戦を思い出す。半田さんに使われたあの毒コンボには苦しめられた。
「拓哉! 気をつけろ!」
「行くわよ。スカタンクGのポケパワー発動、ポイズンストラクチャー」
 スカタンクGの体から紫色の霧が噴出され、バトル場のグラエナとフワンテを覆う。
 このポケパワーはスタジアムがあるとき、互いのバトル場のSPポケモン以外を毒にするポケパワー。風見杯の時は相手もSPポケモンを使っていたから毒を食らったのは俺だけだったが、グラエナはSPポケモンではない。自分のポケモンを巻き込んでまですることか?
「そしてグラエナで攻撃。グラエナのポケボディー、逃げ腰によってグラエナが状態異常の時、ワザエネルギーは全てなくなる。やけっぱち攻撃!」
「な、なんだと!?」
 グラエナが首をあちこちに振り回して暴れながらフワンテに頭から突進をかます。フワンテは「50+10」と書かれた数字を表記しながら思い切り跳ね飛ばされると、左下のHPバーがゲームのように減少して0になった。
「見やすくなっただろう?」
「ああ。さっきのフワンテに現れた数字は食らったワザのダメージだろ?」
「そう。通常のワザダメージは青文字で。弱点補正が入るときはさっきみたいに+10が赤文字で書かれる。×2とかもあるぞ」
 しかし気になるのは笑顔で解説する調子の良い風見ではなく、明らかに苦しい試合運びにされてしまった拓哉だった。
「サイドカードを一枚引くわ」
「クソっ、だったらムウマージGLをベンチからバトル場に出す」
「そしてポケモンチェック。グラエナは毒なので10ダメージ受けるわ」
 グラエナが体を苦しそうに縮める。紫色の文字で10と表記表記され、HPバーがわずかに削られる。しかしまだ80/90もあるのだ。拓哉はこれをどう攻略するか。
「俺のターン!」
 山札からカードを引いた拓哉は、怒りで爆発しそうなほど不機嫌だった。
「クソッ! ヨマワルをサマヨールに進化させる(80/80)! そしてお前が出したスタジアムの効果でヨノワール(120/120)にまだ進化させる! さらに超エネルギーを……」
 そう、ムウマージGLにはつけたくてもつけれない。ムウマージGLが超エネルギー一枚で使えるワザはサイコリムーブのみ。しかしこれは与えるダメージが10しかなく、グラエナは超タイプに抵抗力をもつため結果的に与えるダメージは0となる。ワザの効果も、コイントスを二回行い両方ともオモテなら相手のエネルギーを全てトラッシュするというものだがグラエナにはそのエネルギーが初めからついていない。
「ヨノワールにつけてターンエンドだ……」
 渋った結果、控えのヨノワールにつけるだけで何も出来ない。
 そしてグラエナは更に毒のダメージを受ける。これで残りHPは70/90となるも、拓哉からの攻撃はまだ一つも受けていない。
「私のターン。ベンチにポチエナを出し、さらに破れた時空の効果でグラエナ(90/90)に進化させる。そしてクロバットGをベンチに出す」
 クロバットGはHP80/80。バトル場のグラエナの残りHPを上回るくらいだ。忙しそうに羽を羽ばたかす。
「そしてこの瞬間にクロバットGのポケパワー発動、フラッシュバイツ!」
 視界が一瞬白に変わる。まばゆい光に思わず目を腕でかばう。ようやく目が見えると、ベンチにいたヨノワールのHPが110/120に変わっていた。
「クロバットGのフラッシュバイツはこのカードを手札からベンチに出した時、相手のポケモン一体にダメカンを一つ乗せる効果を持つ。これでヨノワールも圏内だ」
 風見が関心するように解説をする。圏内、というのも、グラエナのやけっぱちは相手が自分よりつけているエネルギーが多いと与えるダメージが+30され、80ダメージになる。さらにヨノワールの弱点は悪。さらに30ダメージ食らうことになり一撃で倒されてしまう。ここまで計算されているプレイングは拍手物、流石だ。
「さらにユクシー(70/70)をベンチに出してポケパワー、セットアップを発動。その効果により手札が七枚になるよう、つまり五枚ドローする」
 そう宣言すると、松野さんのデッキの上からカードが五枚突き出される。へえ、バトルベルト。中々便利だ。前の風見杯のやつは自分でカードを引かないと行けなかったし。
「そしてグラエナで攻撃。やけっぱち!」
 ムウマージGLもフワンテと同じようダメージを受ける。50×2と表示され、80/80あったムウマージGのHPも一瞬で0/80となる。
「あら、ケンカ売ってこの程度? がっかりもいいとこね。これで私の残りのサイドは一枚よ」
「くっ……、俺の最後のポケモンはヨノワールだ。それでお前のグラエナにはこのポケモンチェックのときに毒のダメージを受けてもらう」
 完璧、と言っても過言ではない松野さんのプレイングだが、たった一つだけミスを犯した。まだ可能性はある、かもしれない。今のグラエナのHPは60/90こちらも圏内だ。
「俺のターン! まだだ、ヨノワールのポケパワー発動。消えてなくなれ! 闇の手の平!」
 ヨノワールがバトル場から姿を消すと、松野さんのベンチのグラエナの背後に移動していた。そして音も立てずグラエナを両手で握る。すると、そのままグラエナは音も無く消えてしまった。
「相手のベンチに四匹ポケモンがいるとき、そのうち一匹についているカードを全て山札に戻してシャッフルしてもらう」
「へぇ……」
 松野さんが苦い顔をしてベンチに置いていたグラエナとポチエナのカードをデッキポケットに差し込む。すると、勝手にシャッフルし始めた。
「便利だろう?」
 風見がやってやったと言わんばかりの表情、どや顔でこちらを見る。そんなに自信に満ちた表情をされるとちょっと腹が立つ。
「ヨノワールにエネルギーをつけて呪怨! このワザは相手にダメカンを五個、さらにプレイヤーが既に取ったサイドの数のダメカンを乗せる。よって合計七個だ! そしてこれはダメカンを『乗せる効果』なので抵抗力は無視できる」
 今のグラエナのHPは60。そして呪怨によってのせられるダメカンは七、つまり70ダメージ。ようやく逆転の一手だ。HPを削られたグラエナは少しのたうちそのまま倒れていった。
 しかも相手のベンチにはロクに戦えそうなポケモンもおらず、どれもエネルギー一つさえ乗っていない。巻き返せるか。
「よし、サイドを引くぜ!」
「私の次のポケモンはユクシーよ。私のターン、手札のサポーター、ハマナのリサーチを発動。山札の基本エネルギーまたはたねポケモンを二枚まで手札に加える。私はポチエナとユクシーを選択」
 デッキの中途半端な位置からカードが二枚突き出る。デッキの中のカードを勝手にサーチもしてくれるのか! いちいち自分でデッキを見るよりよっぽど早い。これはすごいぞ風見!
「ポチエナをベンチに出し、グラエナ(90/90)に進化させる」
「なっ、バカな!? 三枚入れてるのか?」
「悪いわね、このターン引いたカードがグラエナだったのよ。運も実力のうちってことね。破れた時空をトラッシュして月光のスタジアムを発動!」
 辺りがやりの柱から公園に戻る、のもつかの間で今度は薄暗い夜の草原に変わった。松野さんの上空には綺麗な三日月が浮かんでいる。
「月光のスタジアムがある限り、超と悪タイプの逃げるエネルギーはなくなるわ。ユクシーを逃がしてグラエナをバトル場に出し、スカタンクGのポケパワー、ポイズンストラクチャー発動。これでお互いに毒状態にさせるわ」
 拓哉が右手に作った拳は外から見ても汗ばんでいるのが分かる。もうここから逆転は無い。拓哉の番が回ることはない。
「そして逃げ腰の効果でグラエナはワザエネルギーが必要なくなった。グラエナで攻撃。トドメよ、やけっぱち!」
「くっ……!」
 グラエナの攻撃により吹き飛ばされたヨノワールに「80+30」のダメージ値が表示され、ヨノワールのHPバーは尽きた。
 松野さんが最後のサイドを引き、勝負の決着と共に夜の草原やポケモンが消えて元の公園に戻る。
 公園の街灯が、圧敗して項垂れる拓哉を悲しく照らしていた。



松野「今日のキーカードはグラエナよ。
   特殊状態にさえなっていればワザエネルギーは不要よ。
   やけっぱちとのシナジー性もバッチリね」

グラエナLv.47 HP90 悪 (DPt1)
ポケボディー にげごし
 このポケモンが特殊状態なら、このポケモンのワザエネルギーは、すべてなくなる。
悪無 けったく  20+
 この番に、自分が手札から「サポーター」を出して使っていたなら、20ダメージを追加。
悪悪無 やけっぱち  50+
 自分のエネルギーの数が、相手のエネルギーの数より少ないなら、30ダメージを追加。
弱点 闘+20 抵抗力 超-20 にげる 0

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