36話 運命の激突

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 宿命と呼ぶにふさわしい対戦。この時を俺はいつの間にか待ち望んでいたらしい。
 奥村翔、あいつに負けてからというものの負けによる虚しさとは違う、俺にとってプラスになる『何か』が芽生えた気がする。
 その『何か』を確かめる為に、今一度手加減のない全力の戦いを望む。迷いは無い、ただ真っ直ぐに行くだけだ。
『決勝戦を始めます。選手は試合会場七番にお集まりください』
 ラストコール。時刻は既に午後の三時半を廻り、初めはたくさんいた人も自分の対戦が終わって興味が失せたという人が散らばり会場の人口が減ってきている。しかしギャラリーはこれだけいれば十分だ。
 そして最後の最後に今まで共に闘ってきた三十枚のカードを見つめる。お前たちは非常に頑張ってきてくれた。お陰で俺はこうして翔と戦える。だから、次の一戦は負けるわけには行かない。
 ステージに立ち、向かい合う。翔は特に負けられない戦いなのだというのに、普段と変わらぬ満面の笑みでこう言った。
「さあ、楽しい勝負にしようぜ!」
「望むところだ」
 ガラになく胸が早く鼓動を刻む。そのせいかデッキを切る手がおぼつかない。ようやっとデッキを切り終わり、カードを引く。そしてサイドを三枚伏せてポケモンのカードを伏せる。
 互いに準備が出来、ポケモンをリバースさせる。俺の最初のポケモンはフカマル60/60。翔のバトルポケモンはノコッチ60/60で、ベンチにヒコザル50/50。
「さあいくぜ、風見。俺が先攻だ! 手札の炎エネルギーをヒコザルにつけてノコッチの蛇取りを発動。その効果で山札からカードを一枚引いてターンエンド」
「遠慮はせん。俺のターンだ。フカマルに炎エネルギーをつける。続いてサポーター発動、スージーの抽選。その効果によって手札のボーマンダと水エネルギーをトラッシュし、山札からカードを四枚引く。更に、トレーナーカードのゴージャスボールを発動して山札からガブリアスを手札に加える。そこで不思議なアメを使い、フカマルをガブリアス(130/130)に進化させる!」
「い、一ターン目からガブリアス!?」
 これでこのターンで一気にデッキが半分を切った。手札とトラッシュは潤ったものの、ガブリアスはエネルギーが足りずノコッチにダメージを与えるワザが使えないのでここで自分の番を終わらせる。
「俺のターン。まずはアチャモ(60/60)を場に出す。そして俺もゴージャスボールを発動だ。山札からゴウカザルを手札に加え、もうひとつトレーナーカード、不思議なアメ! その効果でヒコザルをゴウカザルへ進化させる!」
 ベンチのヒコザルが光の柱に包まれる。そしてゴウカザル110/110へとフォルムを変える。ゴウカザルの雄たけびと共に、ゴウカザルを包んでいた光の柱は拡散しながら消えていく。
「まだだぜ。更にアチャモに炎エネルギーをつけ、ポケモン入れ替えを発動。そしてノコッチとベンチのゴウカザルをバトル場へ出す!」
 先に仕掛けてくるのは翔からだった。ノコッチを引っ込めてゴウカザルから攻勢に入る。早速来たか。
「ゴウカザルで攻撃、ファイヤーラッシュ! このワザでゴウカザルの炎エネルギーをトラッシュしてコイントスを行い、オモテの数かける80ダメージを与える!」
 序盤からいきなりの大技にたじろぐ。これが決まればガブリアスのHPが半分以上持って行かれてしまう。
 それだけは避けたい。……と思っていると、願いが通じたのかウラ。攻撃は不発に終わった。
「調子があまりよろしくないようだな」
「これで勝負が決まるのもつまらないだろ?」
「ふっ、俺のターン。ガブリアスに水エネルギーをつけさせ、ガブリアスでゴウカザルを攻撃、ガードクロー!」
 ガブリアスがゴウカザル70/110に右の翼を叩きつける。攻撃後、自分の場に戻ったガブリアスは両手を自分の前でクロスさせた。ガードクローは相手に40ダメージ与えるだけではなく、次の番に相手から受けるダメージを20だけ軽減させる効果を持つ。攻めと守りを文字通り一体化させたワザだ。
 もし次の番にファイヤーラッシュを食らってもダメージは60だけでHPは70も残る。そして俺の手札には水エネルギーがあるので次の番にガブリアスのもう一つのワザ、スピードインパクトを使って確実にとどめを刺せる。手はずに間違いは無い。
「俺のターンだ。アチャモをワカシャモ(80/80)に進化させ、炎エネルギーをゴウカザルにつける」
 これで翔は手札を使い切った。捨て身の戦法、とでも言うべきか。
「ゴウカザルでもう一度ファイヤーラッシュ! ゴウカザルについている炎エネルギーを一枚トラッシュする。……よし、今度はオモテだ!」
「しかしガードクローの効果によってガブリアスが受けるダメージは60となる!」
 ゴウカザルの炎の一撃を、ガブリアスはがっちりと両手で受け止める。それでもガブリアス70/130は圧されてダメージは受けたが想定通り次のターンにゴウカザルを撃破できる。問題ない。
「俺のターン。水エネルギーをガブリアスにつけて、トレーナー、ミステリアスパールを発動。発動後にサイドカードを確認し、その中のポケモンのカードとミステリアスパールを入れ替える。俺はタツベイを手札に加え、ミステリアスパールを表向きのままサイドに置く。そしてタツベイ(50/50)をベンチに出す」
 今の手札はまだ使えそうなカードがない。ここは後のために温存して今は攻めるのみ。
「ガブリアスでゴウカザルに攻撃、スピードインパクト! このワザのダメージは、相手のエネルギーかける20ダメージぶん、小さくなる。ゴウカザルにはエネルギーがない、よって120ダメージだ!」
 ガブリアスは翼を頭の前でクロスさせると、そのままジェット機のように加速してゴウカザルに突っ込んだ。派手な爆発音とボールのように吹き飛ぶゴウカザル0/110が印象的だ。まだまだ余裕があると思っているかもしれないが、120を叩き出せば並大抵のポケモンは抗えない。それはゴウカザルとて例外ではない。
「ゴウカザルはこれで気絶だ。サイドカードを一枚とる」
 俺はミステリアスパールではないサイドカードを一枚手札に加える。今手札に入ったのは不思議なアメだ。もちろんミステリアスパールの効果でめくったときに確認していたので予定調和だ。ミステリアスパールではトレーナーカードを手札に加えれないので、このタイミングで取らないと次のターン使えない。
 そう、今の俺の手札にはボーマンダもいる。次のターンにベンチのタツベイを一気にボーマンダに進化させ、ゆっくりベンチ育成させる。畳み掛けるように。
 ふとモニターを観ると、次の翔のバトルポケモンは予想外にもノコッチだった。ノコッチはエネルギーなしでワザを使えるが、デッキからカードを一枚引く「蛇取り」と、相手に10ダメージだけ与えてベンチポケモンと入れ替わる「噛んで引っ込む」のワザしかなくノコッチ自身のHPも60。確実に次のターン、ガブリアスの餌食となる。そうとわかっていて何故ノコッチだ。飛んで火にいる夏の虫、と言いたいところだが翔がこうする以上何かあるのかもしれない。
「見てろよ風見! ここからが俺のタクティクスだ!」



翔「今日のキーカードはスージーの抽選!
  手札のカードをトラッシュさせながら、
  一気に複数ドローだ!」

スージーの抽選 サポーター (DP4)
 自分の手札を2枚までトラッシュ。
 1枚トラッシュしたなら、自分の山札からカードを3枚引く。2枚トラッシュしたなら、4枚引く。

 サポータは、自分の番に1回だけ使える。使ったら、自分のバトル場の横におき、自分の番の終わりにトラッシュ。

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