27話 一撃必殺

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「お! よっしゃあ! まずそこのペラップから倒してやるぜ!」
 風見杯二回戦。俺、長岡恭介と相手の喜田敏光の対戦はまだまだ序盤。どちらもサイド三枚だが、ダメージの比重は俺に分がある。
 雷エネルギーが二枚、炎エネルギーが一枚ついた俺のヒートロトム80/80がバトル場にいて、ベンチにはエレキブル100/100とウォッシュロトム90/90。
 対する向こうはバトル場に超エネルギーが二枚あるキルリア80/80に、ベンチにペラップ10/60。そして今俺の手札の中にはペラップをどうにか出来る手立てがある。
「行くぜ、手札のサポートカード。プルートの選択! このカードの効果によって俺のロトムはダメージカウンターとエネルギーをそのままにしてフォルムチェンジが出来る。ヒートロトムを山札に戻し、フロストロトムを場に出すぜ!」
 これがペラップ撃破への秘策だ! ロトムは電子レンジから離脱し、普通のプラズマ体であるロトムに戻る。ロトムがいなくなった電子レンジは、ふっとその場から煙のように消えると、代わりにどこからか冷蔵庫が現れる。それに気付くや否や飛び付くようにロトムは冷蔵庫に入り込み、これでフロストロトム90/90の誕生だ。
 ヒートロトム達と同様に、フロストロトムも例外なくポケパワー、フロストシフトで水タイプになることが出来る。とはいえ、やはり今は不要な効果なのでスルー。
 なによりも大事なのはワザ。ベンチにいるペラップの息の根を止めることは、ヒートロトムには出来なくてフロストロトムに出来る技術。一発ぶち込んでやりますか!
「ベンチのウォッシュロトムに水エネルギーをつけて、俺はフロストロトムで攻撃する、霰!」
 霰というには少々、いや、相当おこがましいエフェクトだった。フロストロトムが自身の冷蔵庫の扉を開くと、そこからマシンガンのように大量の小さな氷弾が飛び出て相手側全方位にこれでもかというほど叩きつける。
「この霰は相手のポケモンならばバトル場だろうとベンチだろうと全員に10ダメージを与えるワザだ。これでペラップも撃破!」
 キルリア70/80の後ろでキルリア同様霰を喰らったペラップ0/60が倒れ、喜田は「ああっ」という情けない声をあげながら僅かに右手をのばした。
「サイドを一枚引いてターンエンドだぜ」
 よし。サイドを一枚引いたのにまだ俺のポケモンはダメージを受けていない。
 理想以上の展開が来てる。もしかしたら俺勝っちゃうかもしれないんじゃね? いやいやいや。そういう油断でいつも失敗するじゃんか。落ちつけ俺。一人頭を横に振る。
「俺の番、行くよ。えっと、キルリアをサーナイトに進化させて超エネルギーをつける。そしてサーナイトで攻撃、サイコロック!」
 進化したてのサーナイト100/110は白く細い腕でフロストロトムに標準を合わせると、紫色の小さな念波弾が冷蔵庫を後方、つまり俺の方に飛ばす。
 ズドン、ドガーン、グシャーン、と騒々しい音三連打に、ついつい耳を塞いでしまった。
 しかし立ちあがったフロストロトム30/90は、ワザを受け終わった後だというのに体が先ほどの念波と同じ紫色に包まれて、身動きがとりづらそうにしている。いいや、フロストロトムだけじゃない。ベンチのウォッシュロトムも、エレキブルも。一体ぜんたい何が起きてるんだ?
「このサイコロックを受けると、次の番君はポケパワーが使えなくなる!」
「なっ、なんだって!? っていうかロトムだけじゃないの!?」
「そういうこと」
 ポケパワーを封じられるなんて。ロトムはもちろん、発動条件が満たせていないがベンチのエレキブルだってポケパワーを使えるはずだったんだが。
 とはいえロトムのポケパワーに旨味はないし、気にせず全力で行くだけだ。
「俺のターン!」
 引いたカードはまたまたエネルギー付け替え。だが今このタイミングで来たのは喜ぶべきだ。いいタイミングで来た。
 というのも、フロストロトムのもう一つのワザ、アイスクラッシュに必要なワザエネルギーは水無無。そして当のフロストロトムには炎雷雷しかついていないためワザの発動条件を満たせていない。
 悪いけど、フロストロトムにはここでは壁になってもらうしかない、か。
「雷エネルギーをウォッシュロトムにつけて、エネルギー付け替えを使わしてもらうぜ。フロストロトムの炎エネルギーをウォッシュロトムに付け替える。そしてもう一度霰攻撃!」
 どれだけ激しい霰が降ろうと、与えるダメージは僅か10ダメージ。サーナイト90/110を見てみれば、なんてことの無いようにピンピンしている。もうちょっと痛そうな素振り見せてくれないと無駄みたいで悲しいじゃねーか!
「俺のターン、まずはトレーナーカードのポケモン図鑑HANDY910isを発動。山札の上から二枚を見て、一枚を手札に、もう一枚を山札の下に置く。そしてサーナイトで攻撃! サイコロック」
 攻撃をくらったフロストロトムは再度後ろへ吹っ飛ばされる。冷蔵庫から命からがら脱出したロトム0/90だが、そのまま起き上がること無く力果ててしまう。
 壁にして悪い。でも、その分きっちり後に引き継がせてやる。俺はバトル場にウォッシュロトム90/90を送りだした。
「サイドを一枚引くよ」
「なんの、俺のターン!」
 俺のベンチにいるエレキブルのポケパワー、電気エンジンはトラッシュに雷エネルギーがあるとき、自分の番に一回だけ雷エネルギー一枚をエレキブルにつける効果。
 しかしサーナイトのサイコロックでそれを阻まれてしまっている。歯がゆい、ようやくサイコロックの鬱陶しさを掌握したぜ。
「だったらバクのトレーニングを発動! 山札からカードを二枚引く。そしてエレキブルに雷エネルギーをつけてウォッシュロトムで攻撃だ! 脱水! このワザは30しかダメージが与えられないが、コイントスをウラが出るまで行え、その数だけ相手の手札をトラッシュさせる効果がある!」
「手札破壊だって!?」
「さらにバクのトレーニングの効果で、この番自分のポケモンが相手に与えるダメージをプラス10する!」
 これで合計40ダメージだ。そしてワザの効果の判定に移る。コイントスのボタンを押せば、オートで結果がモニターに現れる。続けざまに出るそれは……オモテ、オモテ、ウラ。
「よし。それじゃあ一番左のやつとそれの二つ隣のやつをトラッシュしてもらうぜ!」
「あぁ、ラルトスとサーナイトLV.Xが!」
 サーナイトLV.Xをトラッシュ? やった! LV.Xとはいえ、サーナイトもサーナイトLV.Xも同名カードとして扱われるし、ハーフデッキでは同名カードは二枚まで。
 つまりもう喜田のデッキにはサーナイトもサーナイトLV.Xも入っていないってことになる。LV.Xなんて切り札級のカード、使われる前に対処出来れば最高じゃねーか。
 それに加えサーナイトの残りHPも40/110まで追い詰めた。OK、良い感じだ。
「まだまだ、俺のターン。手札のポケモンレスキューを発動! トラッシュのポケモンカードを手札に加える。俺はサーナイトLV.Xを選択し、バトル場のサーナイトをレベルアップさせる!」
「あれっ!?」
 サーナイトが光の帯に一瞬包まれ、サーナイトLV.X60/130へレベルアップする。この投影機ではLV.Xと普通のポケモンが大差ないのが、分かりにくい。
「そしてサーナイトLV.Xにポケモンの道具、達人の帯を持たせる。達人の帯をつけたポケモンはワザで与えるダメージと最大HPが20増える!」
 サーナイトLV.Xは突如上から降ってきた帯を腰に巻き付ける。HP増強の効果もあり、残りHPは80/150、さっきの番と同じじゃねえか。だがその代償として、達人の帯をつけたポケモン、サーナイトLV.Xが気絶したとき俺はサイド二枚引くことが出来る。要するにこいつを倒せさえすれば勝てる……!
「このサーナイトだけで勝負を決める! サーナイトのポケパワーを発動。テレパス! このポケパワーは相手のトラッシュにあるサポーターのカードと同じ効果を得る。俺は君のトラッシュにあるバクのトレーニングを発動。山札からカードを二枚ひき、このターンサーナイトLV.Xのワザの与えるダメージが10増える」
 達人の帯とバクのトレーニングの効果ですでにサーナイトLV.Xのワザの威力は+30。ヤバい、ワザを受ければ一撃もある。
「サーナイトLV.Xで仕留める攻撃!」
 技の宣言と同時にパァァンと銃声に似たような音がする。何があったのか、まさか発砲かときょろきょろ場を見渡すと、知らぬ間にウォッシュロトム0/90が倒れ伏していた。
「このワザはサーナイトLV.X以外で残りHPが一番低いポケモン一匹を気絶させるワザ。つまり今現在この場で残りHP90で最も低いウォッシュロトムを気絶させる」
「いっ、一撃で!?」
「サイドを一枚引いてターンエンド」
 マズい、次のターンで何か手を打たなければ負けてしまう。
 俺のバトル場には新たに出たエレキブル100/100。しかしベンチには他にポケモンがいない。
 今の喜田のサイドは一枚、つまり一度でも仕留めるを使われてしまうと俺は負けてしまう。
 負ける? イヤだ。負けたくない。勝ちたい。勝つんだ。勝つにはどうする? そんなの決まってるじゃないか。
 この番でサーナイトLV.Xを倒さなくちゃいけない。でも、どうやって倒す……?
 達人の帯でHPも上がったサーナイトLV.X80/150を倒す以前にエレキブルでワザを使うことさえままならない。
 今のエレキブルにはエネルギーがついていないのに、エレキブルの唯一のワザ放電には雷無無の三枚が必要。
 どうしろって言うんだ、くっそ!
「俺の、タァーン!」
 エレキブルLV.X。そうか、その手があったか! 今引いたこのカードが最後のチャンス!
「行くぜ、俺はバトル場のエレキブルをレベルアップさせる!」
 エレキブルは両腕でガッツポーズを取り、地鳴りのような雄叫びをあげながら光に包まれてエレキブルLV.X120/120にレベルアップする。
「まずエレキブルLV.Xに雷エネルギーをつけ、こいつのポケパワーを発動する。電気エンジン! トラッシュの雷エネルギーをこのポケモンにつける!」
 レベルアップ前は放電しか使えなかったけど、今はもう一つ新しいワザが使える。そのワザを使うためのエネルギーは用意出来ている。
「エレキブルLV.Xで攻撃。パルスバリア! このワザは通常の50ダメージに加え、場の相手のポケモンの道具とスタジアムをトラッシュさせる! サーナイトLV.Xの達人の帯ごと粉砕だ!」
 達人の帯が無くなりかつパルスバリアのダメージを受けたことによってサーナイトLV.XのHPは10/130になる。気絶させるにはギリギリ届かなかったか。
「残念だね。頑張って攻撃したのはいいけれど、HPが10でも俺の番が回ってこれば何も問題はない! 俺のターン。これで終わりだ! サーナイトLV.Xで仕留める攻撃!」
 再び銃声。と同時に耳に響く甲高い音が鳴る。決まった。ニヤリと笑ったのは……俺だ。向かいの喜田は起こり得ないハプニングに驚いて可哀そうなほど青ざめている。
「なんでエレキブルLV.Xは倒れない……。場にはサーナイトLV.XとエレキブルLV.Xしかいないから、どうしてもエレキブルLV.Xが倒れるはずなのに……?」
「甘いな! 前の番に使ったパルスバリアのもう一つの効果だ。このワザの効果で相手のスタジアムかポケモンの道具をトラッシュしたとき、次の相手の番にこいつはダメージもワザの効果も一切受けない!」
「な、なんだって!?」
「さあこれで終わりだ! 俺のターン。もう一度パルスバリア!」
 二度目のパルスバリアがサーナイトLV.Xの残りHPを削り取る。力を失ったサーナイトLV.Xはふらふらと前に倒れていく。
 まだ俺のサイドは後一枚残っているが、相手に戦えるポケモンがいなくなり、これで俺の勝ちだ。
 決まった! やれば出来るじゃん俺、この調子で勝ち進んでやる。準決勝、一体誰が俺の相手になろうとも全力でぶつかるだけだ。



翔「今日のキーカードはエレキブルLV.X!
  エネルギーをのせた相手にダメージ!
  パルスバリアで守りながら攻めれるぞ!」

エレキブルLV.X HP120 雷 (DP2)
ポケボディー ショッキングテール
 このポケモンがバトル場にいるかぎり、相手プレイヤーが、手札からエネルギーを出してポケモンに1枚つけるたび、そのポケモンにダメージカウンターを2個のせる。
雷無 パルスバリア  50
 場にある相手の「ポケモンのどうぐ」「スタジアム」を、すべてトラッシュ。トラッシュした場合、次の相手の番、自分はワザによるダメージや効果を受けない。
─このカードは、バトル場のエレキブルに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 闘×2 抵抗力 鋼-20 にげる 3

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