Mission #121 サポートミッション、開始!!

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「まあ、こんなところでしょう。予想通りです」
「そうですか……わたしとしてはよく頑張っている方だとは思うのだけど」
「トップレンジャーになるのなら、この程度では全然足りません」
「あらあら、手厳しいわね」
「当然です。わたしの時はもっと厳しかったと思いますよ」
「…………」
「…………」

辛口コメントのハーブに、ニコニコ笑顔のササコ議長。
二人の間で交わされた言葉を、アカツキとダズルは渋面で聞いているしかなかった。
二人分のテストを終えて、講評ということになったのだが……
すぐさまハーブが辛口コメントを述べ始めたのだ。
実力と実績が伴っているトップレンジャーの彼女からすれば、ポケモンレンジャーになって半年足らずの二人のキャプチャは『予想通り』の展開だったのだろうが、ササコ議長は少ない経験なりに培ってきた実力を認める発言をしている。
これには素直に喜ぶことも反発することもできなくて、アカツキとダズルはただ黙っているしかなかった。
無論、黙っている中でもあれこれ考えてはみたのだが。
たとえば……

(ダズルはぼくより上手だったな。
……ぼくがやってたのを見てたからってのもあると思うけど、スクールの頃から比べるとずいぶんと腕が上がったような気がする。
ぼくも負けてられないなあ……)

自分よりも若干ではあるが長く持ち堪えていたダズルのキャプチャを、アカツキは素直に上手だと思っていた。
ただ、二人のキャプチャを見れば、アカツキはどちらかというと慎重、ダズルは大胆と、一長一短の印象が否めなく、ゆえにハーブからすれば中途半端な感が否めなかった。
予想通り(=失敗)の展開だったとはいえ、経験半年にしては『やる』方だとは思っている。議長の眼鏡に適い、トップレンジャー候補として本部に呼ばれただけのことはある。
だが、トップレンジャーとしてはこの程度では物足りない。伝説や幻と呼ばれるようなポケモンはともかく、どんな強さを持とうと、普通のポケモンならしっかりキャプチャできるだけの実力がなければ論外だ。
ハーブが辛口になるのも、二人の将来に期待しているからこそなのだが、それを素直に口にするのは照れくさかったという理由もあった。
凛とした表情や態度とは裏腹に、シャイな一面も持ち合わせているわけだが、あれこれ考えているアカツキとダズルが気づいているはずもない。

「だけど、伸ばそうと思えばいくらでも伸びるところは感じたわ。
普通のポケモンが相手なら、まあなんとかならないこともないってところね」
「……ああは言っていますが、彼女なりにあなたたちの実力を相応に認めています。
経験半年でいきなりトップレンジャーのムクホークのキャプチャに臨んだにしては、上出来だと思いますよ。自信を持ってくださいね」
「ありがとうございます」
「頑張りますっ」

ハーブとササコ議長が実力を認める旨の言葉を口にすると、アカツキとダズルの表情が輝いた。
この半年間に努力してきたことが認められたのだ、うれしくないはずがない。
同時に、これからもっともっと努力を重ねていかなければならないことも痛感したが、それは致し方ない。
なにしろ、自分たちは(本部の都合によるところが大きかったが)将来のトップレンジャー候補として選ばれたのだ。
表情が明るくなり、心なしか目に自信が満ちているようにも思える二人に微笑みかけ、ササコ議長は言った。

「では、机上のテストを行いましょう。場所はわたしの執務室で。準備は済んでいますから、行きましょうか」
「げっ……!!」

『机上のテスト』という言葉に、ダズルの顔色が変わった。
机上&キャプチャのテストであることをすっかり失念していたようだが、フィートを相手に『キャプチャする』以上のことを考えられなかったのだから、失念するのも致し方ない。
ただ、避けては通れないのだ。
アカツキは真っ青なダズルの肩を軽く叩き、こんなことを言った。

「大丈夫だって。普通にやってればいいって、議長だって言ってたじゃないか」
「いや、その普通ってのがちょっと……」

案の定というべきか、アカツキの言葉はダズルにとってなんの慰めにもなっていなかった。






それからササコ議長の執務室で机上のテスト(記述式、選択式を混合したペーパーテスト)が行われたのだが、盛り上がる要素もないため途中経過は割愛する。






「とりあえず、一通り必要な知識はあるようですね。安心しました」

採点が終わった二人の答案用紙を手に、ササコ議長は満足げな笑みを口元に浮かべた。
机上のテストに強い苦手意識のあるダズルは気が気ではなかったものの、議長の言葉に安心してしまったらしく、ホッと胸を撫で下ろしていた。
こちらのテストも点数が悪いから落第という意味合いのものではなかった。
それでも採点はするし、苦手分野があればそれを克服するのに必要な教育を行うものであるから、やるならにはいい成績は取っておきたいところだった。

(そういえば、ダズルはスクールの頃から勉強は苦手だったんだよなあ……)

アカツキはダズルが「あー」とか「うー」とか唸りながらテストを受けていたのを思い返した。
レンジャースクールの頃から、机上での勉強は苦手だったのだが、卒業して現場経験が優先されるポケモンレンジャーになった後に、こうやって机上のテストを受けることになるとは露ほども思っていなかったようだ。

(ぼくは別に苦手ってわけでもなかったけど……)

などと謙遜しているが、アカツキの方は満点に近い点数だった。
ダズルと比べると倍とまでは行かないものの、それなりの差はあった。
元々机上の勉強は苦手ではないし、スクールの入学試験に備えて猛勉強してきたのだ。どちらかといえば得意な方だろう。

(でも、一通り必要な知識はあるって言ってたから、別に問題はないと思うんだけどな)

ダズルはちゃんとできていたかどうか不安でたまらなかったのだろう。それが解消されたのだから、安堵するのは当然といえば当然なのだが。
テストは一時間、問題数は百問だった。
○×で答えるものから、問いに対して適切な選択肢を選択するもの、記述式で理由などを答えさせるものまであった。
ジャンルもそれなりに細分化されており、ポケモンに対する知識やユニオンの歴史、各地方の大まかな地理にまで及んだ。
ユニオン本部所属のポケモンレンジャーはアルミア地方だけでなく、他の地方にもミッションで赴くことがある。ある程度のことは他の地方のことでも知らなければならないのだが、テストでそれが十分に理解できた。

「これでテストは終了ですが、パッと見た限り、アカツキ君とダズル君、二人ともそれほどの差は見られないようです。
若干、アカツキ君の方が知識に優れ、ダズル君はキャプチャの腕が少し上……トータルではほぼ同じだけの力があると見ていいでしょう。
ですが、トップレンジャーになるのにはまだまだ足りないことの方が多いくらいです。
これからじっくりとカリキュラムを煮詰めていきますが、それまでの間はあなたたちで考えて、必要なことをやってください。
地下のトレーニングルームは二十四時間いつでも使えますし、共用のパソコンも同様です。
キャプチャの腕を磨くなり、知識を吸収するなり、自由にやってください」
「はい、分かりました」
「了解です」

ササコ議長の言葉に、アカツキとダズルは深く頷いた。
当分はミッションにも出さないから、自分たちにできる方法でもっと上を目指す努力をしろ——要はそういうことだ。
トップレンジャーは普通のエリアレンジャーと違い、上からの指示によりミッションを遂行することは少ない。
自分でミッションを設定し、行動することが許されるのだ。
ゆえに、自分の頭でしっかりと考えた上で行動することが求められる。今のうちから自分で考えて行動することで、自主自立の精神を養おうという考えだろう。
そんな教育方針までは分からなかったが、今確かなのは……

(ぼくとダズルは同じくらいなんだ……ダズルの方がすごいって思ってたけど)
(こいつの方がすげーって思ってたけど、ちょっと意外だな。まあ、負けるつもりなんてこれっぽっちもねえんだけど)

二人して、今の自分と傍にいる相手の実力がほぼ同じということで、互いに負けたくないと考えていることだった。
これから切磋琢磨して、より高みを目指していく二人を微笑ましげな面持ちで見やり、ササコ議長はこんなことを思っていた。

(若いっていいわねえ……)

齢も六十を目前にした身には、若さあふれる二人の少年はとてもまぶしく、力強く、頼もしく思えてならなかった。
まだ至らないところの方が多いかもしれないが、それは経験を積んでいけば自ずと克服できるところだろう。
自分が彼らと同じ年代の頃、何をしていただろうか。
まだポケモンレンジャーはいなかったし、レンジャーユニオンだって存在していなかった。
後にポケモンレンジャーと呼ばれることになる個人活動家はいても、組織されていなかったために協調性は脆弱で、自然の猛威や犯罪に翻弄されっぱなしだったのを思い返す。
もしも自分とシンバラ教授とあと一人……レンジャースクールのラモ校長と三人でレンジャーユニオンを設立していなかったら、目の前にいる二人はきっと別々の道を歩んでいたに違いない。
過去に自分がしてきたことで、明確に目指すものへの道筋をつかんだ人がいるなら、決して後悔してはならないことなのだろう……
などと哲学めいた考えを脳裏に思い浮かべていると、電話が鳴った。

「おやおや……なんでしょうね」

少しだけ不躾な……と思いつつも、電話を取る。

「はい、ササコです。
……ほう、セブンが助力を要請していると。一人ではさすがに大変といった状況ですね」

突然かかってきた電話に考えが中断され、アカツキとダズルは揃って受話器を耳に宛てた議長を見やった。
相変わらず温和な表情を崩していないが、彼女の言葉から察するに、かなり切羽詰った状況ではないのだろうか。
知らず知らずに、アカツキは表情を引き締めた。
拳をぐっと握る。

「場所は?
……分かりました。そちらに向かいますからちょっと待っててくださいね」

ほんの三十秒ほどで会話は終了した。
電話を切り、議長はアカツキたちに向き直った。

「オペレーションルームへ向かいましょう。
……あなたたちに、もしかしたら現場に出てもらうことになるかもしれません」
「えっ……?」

言い終えるが早いか、歩き出す議長。
アカツキは彼女の背中を見やり、呆然と口を開け放った。
一体なにがなんだか分からなかったのだが、

「行くぜ、アカツキ」
「あ、うん……」

ダズルに脇を突かれ、彼女の後について歩き出した。
ムックやブイもなにがなんだか分からないといった様子だったが、特に表情を変えるでもなくついてくる。
執務室を出て、オペレーションルームまでの廊下を歩きながら、アカツキは議長が口にした『セブン』なる人物のことを考えていた。

(セブンって、人の名前だよね。一体誰だろう? 一人じゃ大変って……)

考えてはみたが、情報が乏しいため答えが出るはずもなく、考えを一巡させ終わらぬ間に、オペレーションルームにたどり着いた。
議長は途中で立ち止まることなく、アルミア地方のゾーンに足を踏み入れた。

「セブンとの通信はつないだままですか?」
「あ、議長……はい、まだつないでます。代わりましょうか」
「お願い」

慣れた様子でオペレーターに声をかけ、ヘッドマイクを受け取る。
ポケモンレンジャーからの通信となればスタイラーを介しているが、ボイスメールに代表される通信機能にはテレビ電話のような映像送受信機能は搭載されていないため、壁のモニターには各ポケモンレンジャーの位置情報しか表示されていない。

(セブンって人は……)

モニター上を視線でなぞってみると、セブンという名前のポケモンレンジャーのポインターが見つかった。
アルミア地方の北東部である、ヌリエ高原だった。
ヌリエ高原といえば、旧時代の遺跡が発掘されたとかで、脚光を浴びていた時期もあったそうだが、今となっては『ちょっと古い時代の遺跡がある』程度で、観光客もほとんどやってこない。
なんらかのミッションでそこを訪れているのだろうが、アルミア地方で暗躍しているヤミヤミ団のことを考えれば、どこで何をしていても不思議はない。
実際、ビエンのレンジャーベースにいた頃、アカツキはビエンの森で秘密裏に活動していた(と思われる)ヤミヤミ団と遭遇したことがあるのだ。
むしろ、ヌリエ高原や高原の遺跡はあまり人も寄り付かない、絶好のスポットと言えるかもしれない。

「ササコです。セブン、状況を教えてください」

アカツキがそんなことを考えていると、ヘッドマイクを受け取ったササコ議長がセブンと名乗るポケモンレンジャーと通信を始めた。

『議長直々とは光栄ですね。
……今、ヌリエ高原の遺跡に潜入してるんですが、なにやらヤミヤミ団の下っ端どもが大勢入り込んでるようです。
一人でもなんとかならないこともないんですけど、それだと間違いなく大暴れすることになるんで、できれば二、三人寄越してもらいたいんですよ』

ヤミヤミ団……!!
どことなく陽気さを漂わせた男の声。
だが、ヤミヤミ団が関係していることが分かり、一帯が緊張した雰囲気に覆われた。
今となっては人気のないヌリエ高原の遺跡(内部にはポケモンが棲みついているため、立入は禁止されている)は、ヤミヤミ団にとって隠れ蓑とするのにもってこいの場所だった。
だが、ヌリエ遺跡はそれだけのもので、考古学上の価値はギリシャのパルテノン神殿よりも遥かに劣る。
そんな場所でヤミヤミ団が何をしているのか……?
どうせ良からぬことを企んでいるのは間違いない。
いくら腕の立つポケモンレンジャーでも、ヤミヤミ団が大勢いるような場所では実力を発揮しきれないだろう。
だからこそ、応援を要請してきたのだ。

「分かりました。では、二人を応援に向かわせます。人選はこちらで決めていいですね?」
『了解です。無理しない程度に探りますんで、よろしく頼みます』

議長とセブンはあっという間に話を終わらせ、通信を切った。
それなりに互いのことは理解しているような関係なのだろう。無駄な文言はほとんど盛り込まず、単刀直入に済ませた。
敵地に潜入しているのだから、長々と通信することは命取りになりかねない。議長もそれを理解しているからこそ、言葉を短くしたのだ。

「……とまあ、今、セブンというトップレンジャーがヌリエ高原の遺跡に潜入しています」
「トップレンジャー……!?」
「そういや、一人みたいだったし……」

議長はオペレーターにヘッドマイクを返すと、アカツキたちに向き直った。
二人の顔は驚愕に満ちていたが、当然だろう。
だが、エリアレンジャーに単独行動は基本的にさせていない。
最低でも二人一組で行動させているため、単独行動が許されるのはエリアリーダーかトップレンジャーに限られる。

(トップレンジャーか……でも、一人でヤミヤミ団がたくさんいる場所に潜入するなんて、やっぱりすごいんだな……)

ヤミヤミ団の貨物船に潜入したことがあったが、あれはタイキと二人で潜入した。
あの時はたとえ一人であっても潜入したとは思うが、一人だったらバロウを助け出す前にヤミヤミ団に捕まっていただろう。
ヤミヤミ団が大勢いる場所に一人で潜入するとなると、やはりトップレンジャーかそれに準じるだけの実力がなければ話にならない。

「さて。アカツキ君にダズル君。
セブンのサポートをあなたたちにお願いしたいんですが、今からでもヌリエ高原に向かえますか?」
『は?』

ササコ議長の突然の言葉に、アカツキとダズルは揃って面食らった表情を浮かべた。
いきなり話を振られるとは思わなかったのだ。
なにしろ、当分は外に出さないみたいなことを言われていたので、突然のこととはいえ、話が来るなどと想像できるはずもない。
唖然としているアカツキたちをよそに、議長は言葉を続けた。

「トップレンジャーは単独行動が基本ですから、一緒に仕事をする機会というのはあまりないんですよ。
ダズル君はカヅキ君と一緒に仕事をしたことはあるでしょうが、時間からして短かったでしょう?」
「そりゃあ、まあ……一時間はいなかったと思います」
「それに、アカツキ君はトップレンジャーの仕事を見たことがないでしょうから、ちょうどいい機会です。
トップレンジャーがどのような存在なのか、その仕事ぶりを見てみるといいですよ。
見るだけでもずいぶんと違います。学ぶところも多いでしょう。
……どうします?」

議長の話を聞いて、いい機会だと、アカツキは素直に思った。
トップレンジャーに危ないところを助けられたり、ミッションでもない時に話したりしたことはあるが、トップレンジャーが『仕事をしている』のを見たことはなかった。
確かに、トップレンジャーと肩を並べてミッションを遂行する機会はほとんどない。人によっては皆無と言ってもいいだろう。
自分たちよりも腕の立つレンジャーなどいくらでもいる中で、自分たちに話を振ってくれたのだ。きっと、勉強になると思って、薦めてくれているのだ。
蹴る理由は——見当たらなかった。探すまでもなかったが。

「分かりました。ぼくたちでよければ行ってきます」
「そうだな。トップレンジャーの仕事がどんなものか、ちゃんと見てみるのも悪くないですからね」
「決まりですね」

アカツキとダズルの言葉を待っていたのだろう、議長は満面の笑みで頷き返してきた。

「では、あなたたちにセブンのサポートを命じます」
『了解!!』

アカツキとダズルは背筋をピンと伸ばし、議長に敬礼した。
ユニオンの最高権力者から直々にミッションを言い渡されるなど、滅多にないことだ。それだけに、嫌でも気合が入る。

「場所はヌリエ高原の遺跡ですが、向かう前にセブンの居場所を正しく把握できるようにしておいた方がいいですね。
……二人とも、スタイラーを起動させてください。
セブンの位置データをダウンロードします」

言われたとおり、アカツキとダズルはスタイラーを手に取り、起動させた。
同じレンジャーベースに所属するポケモンレンジャーの居場所が互いに把握できるよう、相手のスタイラーの固有IDをダウンロードして、位置把握機能を使用するのだ。
知らないポケモンレンジャーでも、スタイラーの固有IDをダウンロードすることで、相手の位置情報を得ることができる。
オペレーターがキーボードをカタカタと何度か叩くと、アカツキとダズルが手にしたスタイラーの画面の表示が変わった。
スタイラーIDのダウンロードが始まったのだが、ダウンロードから登録まで数秒で終わった。

「終わりました」
「よろしい。最後に、パートナーポケモンですが、どの子を連れて行くか、決めてくださいね」
「あー……」

言われて、アカツキはハッとした。
今ここにいるのは、ムックとブイだ。
ミッションに行くとなると、どちらかしか連れて行けない。それはダズルも同じなのだが……

(どっちを連れて行くか……か)

ムックもブイも、やる気満々といった表情で、視線で『連れてって!!』と訴えかけてきている。
どちらかの希望には添えないわけだが、今までだってそうだった。
ただ、今回からはダズルと一緒に行動していく。互いにパートナーポケモンのタイプが被らないようにしていく必要があるのだが……

「よし、セイル。行くぞ」
「ブイっ♪」

相談することもなく、ダズルはセイルを連れて行くことを決めた。
こうなると、タイプの相性などを考えれば、ブイを連れて行くことはできそうにないのだが……一緒に連れて行けと、ムックとは比べ物にならないオーラなど発しながら目で訴えかけている。

「ブイ、一緒に行く?」
「ブイブイっ♪」

こうなっては、ブイを連れて行くしかないだろう。
どちらにしても、根負けしそうな勢いではあったが。

「ムック、留守番を頼むよ」
「ムクバーっ♪」

アカツキが言葉をかけると、ムックは任せておけと言わんばかりの面持ちで頷いた。
……それから、チラリとピートを見やる。
アカツキと一緒にミッションに臨むのもうれしいが、ここに残ってピートと親睦を深めるのもうれしいのだろう。
ちゃっかりしてるなあ……とアカツキが思っていると、ダズルに声をかけられた。

「よし、アカツキ。行くぜっ」
「うん。それじゃあ行ってきます!!」
「ええ、くれぐれも気をつけて」

ササコ議長に見送られ、アカツキとダズルはそれぞれのパートナーを連れてオペレーションルームを飛び出した。
残ったムックとピートは特に不安な面持ちを見せることもなく、彼らの背中が閉まりゆく自動ドアの向こうに消えるのをじっと眺めていた。
信頼するパートナーなら、多少のことがあっても無事に帰ってくると確信しているからだろう。
そんな二体のパートナーポケモンの、どこか誇らしげにも見える顔を眺め、ササコ議長の口元に浮かぶ笑みはさらに深くなった。






To Be Continued...

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