レプテルア支部

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

ガイラル達との話を終え、俺達三人はエレベーターに乗っていた。…言葉を話すアンノウンの話を聞き、頭の中でぐるぐると得体の知れない不安に駆られていた。
…言葉を話す。その行動は、知能が無ければ不可能な行動だ。つまり、アンノウンはなんらかの生物体であると言える。それに…形はポケモンと同じ。いや…形だけではなく、『ポケモン』そのものなのかもしれない。だとしたら…俺たちは…

「…ト。…ルト!」
「っ!?…シャル…どうした?」

隣から不意にシャルの声が聞こえ、意識がはっきりと冴えた。

「どうした?さっきの話でもやもやしてんのか」
「…ああ。予想外だったからな…」
「確かにそうですよね。アンノウンはアンノウンという『何か』だったというのに、言葉を話すとなれば…れっきとした生物と言いきってもおかしくないです。…いずれ、全てが解るんですかね」

二人とも、やはり先程の話で不安を感じているようだ。無理もない。霞がかっていた不安が、段々と明るみに出てきたんだ。

そして、ガイラルはこんなことも提案してきた。

「『一度、レプテルア支部の任務に出てみないか?テレポートポイントの設置に必要な作業員の調達も兼ねてな。一応電話はしてあるが…直接伺ってこそ礼儀ってもんだ。本来は俺が向かうべきだが…すまん、忙しくてな。あちらには俺の知り合いも何人かいる。そいつらに話を通しておくといい』」

…との事だ。
【レプテルア大陸】。ミラウェルの創生に携わった王族、『ミロカロス・ジャロス』の出身地であり、かの悪神アルセウスを討ち滅ぼした地だ。アルセウスはレプテルア大陸を収めた後、他の大陸に攻撃を仕掛け、世界の作り直しを計画していた…と聞いたことがある。
ミラウェルの誕生に大きく関わった大陸なので、レプテルア支部の規模は他大陸よりも大きく強い。何しろ、王族ジャロス家の城をそのままミラウェルとして作り替えたという話だ。

そして俺たちは、その支部に向かい、テレポートポイントの設置の話を伝える。そして、いくつか任務を受けてエルディム支部に戻る…という事になった。

今は、レプテルア支部へ移動する為のテレポートポイントに向かう途中だ。
ミラウェルの最下層…地下一階にそれはある。
そこへ階段を降りながら向かっていた。…エレベーターもあるが、今は考える時間が欲しかった。

やがて、地下一階に着く。
大きなフロアが一面に広がっており、真ん中に青白く光る魔法陣がある。テレポートポイントだ。
地下一階は一般人用の避難施設もある。そして、今はドットの街のポケモンを避難させているらしい。普段は無人の地下が、何人かの住人の声で賑やかだった。

「…ドットの住人…。ガランドさん達、頑張ってるんだろうな」
「だな。【竜の兵団】が動くほどの大規模作戦…か…。さぞ大変だろうナ」

シャルは住人を見ながら、複雑そうな表情で呟いた。
…竜の兵団は、ミラウェルの中でも特にメンバーが多い派閥。ドラゴンのタイプを持つポケモンが数多く参加している…んだったな。
なにしろ、創設者がガブリアスだ。学びたいポケモン、鍛えたいポケモン。それらが集まれば凄い数になるのも頷ける。

俺達は、魔法陣の前まで辿り着いた。
ホログラムデータを開き、テレポートを使用する為のパスワードを打ち込む。

無事打ち終わり、ロックが解除されていく。
…いよいよ、レプテルア支部への移動だ。

「行くぞ」
「おう」
「はい!」

3人が陣の真ん中に立ち、瞬時に消え去った。

………

パッと視界が明け、体に感覚が戻ってくる。…慣れたが、このテレポートする瞬間の脱力感は苦手だ。まるで立ち眩みのようで。

辺りを見回すと、先程のエルディム支部と似たフロアが広がっていた。
ガイラルさんから聞いた話だと、支部の中身に大きな違いは無いらしい。
ただ、今いるレプテルア支部は広く、ポケモンも多い。名実ともに、ミラウェルの本元という所だ。

「…さて、と」

面白そうに辺りをうろつくシャル達を呼び、今度はエレベーターを使って上に上がった。

…目的地は、2階のエンジニアフロア。作業員のいる場所だ。

………

2階に着くと、一気に騒音に包まれた。
ガラス貼りの研究室のような所でマテリアの微調整を行うエンジニアや、マテリアの修理を申し込む兵士達。その他大勢のポケモンで賑わっている。

「おほー…流石に多いなぁ」
「ですね…本元ならでは、でしょうか」

二人は驚いていた。無理もない。

「…やぁ、君達がガイラルの遣いかい?」

すると、突然背後から声を掛けられ、全員が後ろを振り向いた。
そこには、ジャローダ族のポケモンがニコニコと笑顔で立っていた。

「あ、はい!私どもはルト隊の者です。テレポートポイントの設置の件で挨拶に伺いました」
「うん、ガイラルから聞いてるよ。ルト、シャル、ミリアン…だよね?初めまして」

丁寧な仕草で頭を下げられ、こちらも慌てて頭を下げた。
…育ちが良いんだろうな、挙動一つ一つが丁寧だ。

「僕は『アーリア』。アーリア・ジャロス。レプテルア支部の情報管理長を勤めてる者だよ」
「アーリア…ジャロス!?ま、まさか…王族の…!」

ジャロスの名を聞き、思わず一歩下がってしまった。
確かにアルセウス討伐にジャロス家は関わってる。関わってるけど、その王族の一個人とも知り合いなのかガイラルさんは…!

アーリアさんは、気恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。

「アハハ、そんな身構えないでよ。僕は確かにジャロス家ではあるけど、名ばかりのポケモンさ」
「そ、そうは言われても…」
「いいってば。それで?作業員の派遣…だったよね?もう既に用意してあるから、話は通しておいたよ」

アーリアはホログラムを映し出し、作業員数名のプロフィールをこちらに見せた。
…用意が早い…。レプテルア支部、思った以上の手際の良さだ。

「ありがとうございます!それで私たちはこれから、ほんの暫くの間、こちらで任務を承諾する手筈になっています。それも聞いていますか?」
「うん、聞いてるよ。早速だけど…君達、『アイス』の任務を受けてみるかい?」
「アイス…ですか?」

アーリアの提案に、ミリアンは質問した。

「うん。アイスは綺麗な村でね、こっちに来たんなら一度は見せてみたかったのよ。そんな村に、アンノウンが出現したっていう話を聞いたから、駆除に向かってほしいんだ。この支部から、もう一つチームを送るから、そのチームと連携して任務に当たってほしい。…せっかくの綺麗な村…。薄汚いアンノウンに汚させてたまるかってのよ」
「は、はい!喜んで」

アーリアの態度が少し荒っぽくなり、少しだけ驚いた。

「オッケー、ありがとう。ちょっと待ってね……よし!完了。任務は承諾しといたから、後はそこのテレポートポイントで向かってね」

アーリアはデータを何やら操作し、任務の許諾を申請したようだ。
そして、背中の蔦で指した先に、テレポートポイントが見えていた。
…早速、任務か。

「はい!ルト隊、出動します」

アーリアにもう一度頭を下げ、シャル達と共にテレポートポイントに入った。

「…張り切るぞ!せっかくのレプテルア支部だ。良い成果を上げようか!」
「しゃっ、いっちょやるか!」
「行きましょう!」

本日3度目のテレポートで、アイスへ向かった。

…任務はシンプル。…アンノウンの駆逐だ!
・【アーリア・ジャロス】。前作の敵幹部。ジャロス家の王族だったが、とある理由でアルセウス率いる【神の支配者】に所属していた。
幹部時代は非道で残酷な性格だったが、今は元の優しく悪戯気のある性格に戻っている

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