ヒトモシはおつかいを頼まれました。知り合いでシェフをやってるおじさんに、今日使う分の材料を届けに行くのです。
持てるサイズのバスケットに木の実やお魚、お肉を入れてさぁ出発。一匹で大丈夫かな?
てくてく森を歩いていると、お腹をすかせたメラルバと出会いました。もう三日も何も食べていないというので、ヒトモシはバスケットから木の実を出して、メラルバにあげました。
お礼に「ぎんのこな」を貰って、ヒトモシはまたてくてく歩いていきました。森を抜けて湖の近くを歩いてると、これまたお腹をすかせたスワンナに出会いました。怪我をして魚が取れなくなってお腹がぺこぺこだというので、ヒトモシはバスケットからお魚を出して、スワンナにあげました。
お礼に「きれいなハネ」を貰って、届け先のホテルの近くまで乗せてくれました。濃霧を抜ければホテルはすぐそこです。
霧の中を歩いていると、オニドリルに出会いました。オニドリルはヒトモシを見つけるなり襲い掛かってきて、バスケットの中にあったお肉をむしゃむしゃ食べてしまいました。そのまま飛び立とうとしたので、ヒトモシはおにびを何発かぶつけてやりました。
やけどを負ったオニドリルは「するどいくちばし」を落としましたが、どこかへ飛んで行ってしまいました。どうしましょう、バスケットにはもう食べ物がありません。
とりあえず貰ったものと拾ったものをバスケットに入れて、ホテルに向かいました。どことも知らぬ場所にあるそこは、入口にかけられたろうそくが怪しく揺らめく、グレイブビューが自慢の素敵なホテルです。
シェフは調理場でヒトモシが来るのを待っていました。道中を説明する間もなく、バスケットを受け取るとシェフは調理を始めてしまいました。こうなるともう聞く耳を持たないので、ヒトモシは料理が出来上がるのを待つことにしました。
しばらくすると料理が運ばれてきました。しかしどうしたことでしょう、シェフはとってもご機嫌なのです。
なんとヒトモシが持ってきたものが、今作っている創作料理に必要なものばかりだったのです。普通の食材を使う料理にマンネリ気味だったシェフは、ちょうどいいものを持ってきてくれたと喜んでいたのです。
「太陽のように赤い実とぎんのこなを練りこんだふわふわのパン」「きれいなハネを浸すことで味が変わる優雅で不思議な白いスープ」「するどいくちばし擦って振りかけた香ばしいステーキ」を振舞ってもらいました。よかったね、ヒトモシ。
きょうのおはなしは、これでおしまい