Ⅵ その様、竜のごとく

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 抜擢(ばってき)されたのは少年三人だった。

 「コレで本拠地を叩けというか」という反論は、「いい経験になるだろ」という一言に却下された。

 というわけで、彼らはハジツゲタウンのチーム・バラストの本拠地に乗り込んだ。



 *   *   *



 大きくも小さくもない、それなりの音を立てて扉が開いた。

 事務所、と言ってもあまり真面目にやっているわけでもない、いわば建前だけの事務所にいた男性は、珍しいこともあるものだと目を上げる。この町にはチーム・クレインという、古参のチームが本拠地を構えている。よほど金に困っているか、酔狂か、さもなくばクレインでは扱わない依頼を抱えた相手しかここには来ない。さてどれだろうと目を上げて、男は拍子抜けした。

 中に入ってきたのは二人の子供だった。

「帰りな。ここはガキの遊び場じゃねえよ」
「ふうん、こっちは遊び場のつもりで来たんだ。楽しみを提供してくれても罰は当たらないんじゃないか」

 つい、返す言葉を失ったのは言い負かされたからではない。こいつあほか? と白々とした目を向けられたのは、黄が強い茶の髪に碧眼の少年だった。十三、四歳というところだろうか。十五になっていないのは確かである。もう一人も似たり寄ったりという体格だった。まぎれない、子供である。

「そう邪険にするなよ。こっちは客だぞ」
「ガキを相手にするほど困っちゃいねえよ」
「こないだ捕まえたハクリューがいるそうだな」

 不意に、空気の密度がかわる。

 やれやれと引っ込みかけた男は思わず振り返った。同じ表情で同じ声音で、その目だけが宿す光を塗り替える。
 表ではなく裏の世界に通じる光をもって。少年は、にっと笑った。

「言っただろ? 客だと」



 *   *   *



 ――こいつが、今回協力するアソック戦闘部門のラファイルだ。

 スズランにそう紹介されたのは自分たちとそう変わらぬ年の少年だった。

「……これが、協力者?」

 困惑全開で相手を観察する。黄が強い茶髪は角度を変えたら金にも見える。目の色は緑色が強い。成長期にしても細身の体は「戦闘」と主軸とするエージェントだとはちっとも見えなかったが、直感はどこか歪(いびつ)だと警告を発し続け、それを後押しするようにスズランはまじめな顔で言い切った。

「見た目で判断するなよ、初心者じゃあるまいし。こいつはまだ、お前より強いぞ。どの戦闘もな」
「まだを強調しますか、朱蘭。俺もそう簡単に抜かれる気はないんだけど」

 はじめて聞いた声はすでに声変わりが終わった、落ち着いた声だった。どれも、とわざわざ断るからには武術も修めているのだろうがしかし、立ち方も警戒の仕方も、どれをとっても彼が自分よりできる使い手には見えない。けれど自分の、めったに外れない勘は「これは危険だ」とがなり立てる。五感と第六感のケンカにシヴァが困惑していると、すっと横でオーランが動いた。ラファイルに向けて手を差し出す。

「トレンの森のオーランだ」
「俺はアソック戦闘部門のラファイル。よろしくな」

 二人は和(なご)やかに握手して。……オーランは呆れたようにもらした。

「諜報か査察に移った方がいいんじゃないのか」
「褒め言葉と受け取っておこう。でも俺は自分で志願して戦闘部門に来たんだ」
「……お前、ケイガと同じくらい狸だな」
「それも褒め言葉だな。礼をいおうか、――“黒”」

 ぴくり、握手していたオーランの手が震える。同時にスズランも眉を跳ね上げ、純粋に驚いた顔を二人に向けた。彼女のそんな顔を見るのは珍しい。シヴァの気も知らず、引き締まる。

「うん――“紅蓮”も捨てがたいが、君は“黒”が一番合うな。あとは、長いこと欠番になっていたこれを、俺が理事会に納得させられるかだが……まあ、大丈夫だろう。ケイガの秘蔵っ子となれば、彼らもイエスと言わざるを得ないだろうからな」
「だだもれだぞ、ラファイル・フリールゼリア……」
「かまいませんよ、朱蘭。彼は将来、エージェント界を背負って立つ一人になる。“十色(じゅっしき)”くらいないと」
「……ずいぶん、買うな」
「そりゃあ、俺を見て諜報が似合う、なんていったの、ことごとく名をはせたエージェントばかりだったからね。同年代に指摘されたのは君が初めてだ」

 にこり、と笑ったラファイルは手を引き抜いた。何気ないその動作にシヴァは目を剥(む)く。

 立ち方、間合いの取り方、周囲に流される視線、その一挙一動足に至るまで。
 何もかもから、「平凡」が拭い去れらた。

「……うわああ、狸……」

 思わずもらす。確かに狸だ、絶対狸だ。化けの皮がはがれたら出てきたのが肉食系というのが笑えるが。警鐘は今や無視できないほどで、その意味も分かった。
 彼は――自分より一つ二つしか上にしか見えない彼は、種類を問わぬ戦闘のプロだった。

「そういうことだ。で、バラスト本拠地はラファイルを中心にこの三人で行ってもらう」
「は!? スズランちょい待て、それはふつう無謀というんだぜ!?」

 ごん!

 かなり、いい音がした。

 シヴァは頭を押さえてその場に沈んだ。

「発言は全部聞き終えてからにしろ。ハジツゲのバラストについ数日前、ポケモンが運び込まれたという〈続報〉があった。ほかのポケモンたちは奴らが秘密裏に持っている倉庫に収められているが、そいつだけ建物の中にいるというのが厄介だ。お前たちの仕事はその保護、そののちに中にいるのを全員押さえること。人を殺さないレベルで暴れてこい」
「そのポケモンの種類はわかるか?」
「それと、建物の中にどれくらいの戦闘要員がいるのか」
「内部にいるのはせいぜいが十人少々、お前なら――といってオーランを見る――楽勝だろう。ポケモンについては、わからん」
『わからん?』
「唯一の情報が『人間よりでかい』だ。あのアホ、これで借りを返したと思っているなら大間違いだぞ……」

 ふっふっふっと不気味に笑うスズラン。なるほど、体面は初だというのにオーランに食いつかなかった理由がわかった。すでにケイガからのフォローが入っていたか。

「狙いはわかったけど、相手は腐ってもエージェントだぜ。その目をどうやってかいくぐって中に潜入しろって……」

 ふ、と視線がラファイルに止まった。
 二発目の拳骨をやろうと構えたスズランも止まった。

「……なーる。それで協力者」
「ああ。お前らにはまだ、無理だからな」

 また「まだ」を強調するスズラン。それは今後の課題、ということだろう。確かに今のシヴァには彼のように完全に「化け」切ることはできない。せいぜいがどこぞの悪がきというところだろう。オーランも、見るからに真っ正直で、狸を見抜くことはできてもなりきることは難しそうだ。結局ラファイルは適任だったのだろう。

「……それでも本命にコレって……」

 エージェント歴半年一名、一人はそれなりらしいが、最後の一人はエージェントですらない。自分を含め、実に不安になる面子だ。

 思わず弱音をこぼしたシヴァにひっこめかけた拳骨をお見舞いして、スズランはのたまった。

「何事も経験だ。行って来い」

 今回もくらってしまったシヴァはわめいた。

「いちいち殴るな、行ってくるわっ!」



 *   *   *



 階段が終わって、シヴァは回想から意識を取り戻した。
 目の前にあるのは地下室への扉だ。いかにも怪しげです、というそこに彼らが案内されたのはひとえに、協力者と称して送り込まれた少年のおかげだろう。――いったいどこからここにいるポケモンが「ハクリュー」だと知ったのだか。

(仲間しか知らない符丁があれば、信用される。ラファイルはそれを引き出した……)

 扉が開かれた。

 まず中から漂ってきたのは、異臭。
 生き物の傷つくにおい。憎悪や怒りといった思いがもたらす腐臭。それをまともに受け、シヴァは内心で顔をしかめた。どれだけの生き物を、自分たちと同じ命をもののようにやり取りしたというのか。

「客か? そいつら……」
「ああ。暴れ者がいいんだとよ」
「へえ、そいつは……」

 中に六。奥におそらく三。扉のそばに二。自分たちを連れてきたので一。
 シヴァは素早く気配を数える。奥にはどうやら傷ついたポケモンがいるらしく、気配が読み取りにくいが、たぶん間違っていない。

「いつまで待たせる? 取引のオプションはいらない」

 温度のないラファイルのセリフに男は物言いたげな顔をしたが、思い直し、奥に歩を進めた。

 奥に置かれた檻が視認できるところまで来て、ラファイルは足を止めた。
 四つ置かれている檻はいずれも人より大きなものを入れるための大きさだった。その中の一つに、うごめく長大な影。

 その檻の手前数メートルでシヴァたちは足を止める。しかしラファイルはさらに数歩、進んだ。

「おい、あんまり近づくと食われちまうぞ?」

 何がおかしいのか上がる笑声。ラファイルも口の端を引き上げた。

「お前らのレベルならそうだろうな」

 ……ケンカ売ったよ。
 ラファイルの考えが読めずにシヴァは吹き出しかけた口元を引き締めた。地下のポケモンを助け出すに当たりラファイルは役割を指示しただけで、これといった作戦も立てなかった。臨機応変といえば聞こえだけはいいが、要するに「各自好きなようにしろ」ということだ。しかしその際、絶対に守ってほしいという二点を仰せつかった。

 合図するまで攻撃はしかけない。
 そしてもう一つは、どれだけ危険に見えても、ラファイルが行うことは黙って見ていろ、だ。

 だからってブローカー相手にケンカ売るか。一気に温度を上げた雰囲気に一度は呑みこんだ笑いがこみあげてくる。潜入だのなんだのややこしいことより、この一触即発の空気の方がずっと自分の好みだ。

「客だからってなんでも聞き流すと思ったら大間違いだぞ」
「事実は客観的に見つめた方がいい。――鍵を開けろ」

 ラファイルが最後の一歩を詰める。

 ぐったりと力なく横たわる、平均より二回りは確実に大きいハクリューがかっと目を見開いたのも、同時のことだった。――ラファイルは檻に手をついていた。

 息をのんだのは一人だけではなかった。
 次の瞬間はハクリューが攻撃を仕掛けると、誰も疑わなかった。

 ハクリューがゆっくり頭をもたげる。その頭からしっぽの先までゆうに六メートルはあるだろう。あちこち色が変わり、血がにじみ、狭苦しい檻に閉じ込められた長大な生き物は悲愴という言葉がぴったりだが――同時にそれはひどく気が立っている、あるいは人間に攻撃性を示す可能性があるということだ。シヴァは緊張してその動向を窺う。
 大方の予想を裏切り一息に攻撃はしなかったハクリューだが、潤んだ黒い目がじっとラファイルを見ている。ちょっと戸惑ってもいるようだ。そこにいるはずのないものを見た、たとえば海で平然と水浴びをするマグマッグを見たような戸惑いと驚き。

「鍵を開けろ」

 捕まえられたハクリューのハクリューらしからぬ凶暴性を知っている人間たちがそろって唖然としている中、ラファイルがもう一度言う。一番近くにいた男がそろり仲間をうかがい、それからおそるおそる人間用の扉の鍵を開けた。ラファイルはなんの気負いもなく、するりと檻の中に入り込む。

 それでもハクリューは攻撃しなかった。ただ、ラファイルが一歩近づくと落ち着かなげに宝珠のしっぽを揺らす。

 そして。

 ――ラファイルがのばした手に、ハクリューが己からそっと頭を寄せた。

「……ど……どうなってやがる……?」
「……驚いたなあ」

 シヴァも思わずこぼした。目の前で展開した光景は、まるで映画のワンシーンのようだった。それくらい現実感がない。そこにいる、多少のことでは動じないはずのエージェントというエージェントが残らずあごと目を落っことしていた。

 その元凶たるラファイルといえば、笑いながら傷にさわらないようにハクリューをなでている。まるで旧知の中のように……いや待てよ。本当に旧知なのだろうか?

 潜入中の身としてはあるまじきことに、一瞬思考をよそに飛ばしたシヴァがボールに手をかけたのは、純然たる脊髄(せきずい)反射だった。

「よし。オーラン。シヴァ。もういいぞ」

 ラファイルが「名前を呼んだ」。攻撃の合図と同時にシヴァの反射はポケモンを解き放っていた。
 シヴァの手元から俊足が飛び出す。彼の最初のポケモンでもあるスピアーは迷わず檻に一番近い――つまり、鍵をもった男を襲った。奪取した鍵をトレーナーに投げ……かけ、思い直して檻の中のラファイルに投げる。さすがスピアー、よくわかっている。

「サンキュ、スピアー!」

 ラファイルは器用に鍵の束をキャッチした。まとっていた気配――シヴァから言わせれば化けの皮――をきれいに脱ぎ捨てる。そうすると驚いたことに声や顔まで変わってみえるから不思議だ。

「なっ、貴様ら――!?」

 気を飛ばしていても迎撃態勢を整えるのはさすがに早い。いや、おとぎ話のような状況から一気に身になじんだ状況になったのに安心してさえいるかもしれない。自分がまさにそうだ、とシヴァは二体目のボールを放った。

「シルフィ、火はなるべく使うなよ! 踏みつけろ!」

 約155キロの巨体にそれじゃ遠慮なくとばかりに「ふみつけ」られ、哀れその男は白目をむいて気絶した。その間にスピアーが「いとをはく」で奥に残った二人を捕まえにかかる。

「ち、おい下に応援を―!」
「呼ばせるわけないだろう、スターミーサイコキネシスっ!」

 扉からオーランが飛び込んできた。合図があってからやや遅れたのが気になるが、乱暴に閉ざした扉前に陣取って相手が開こうとしたボールを「サイコキネシス」で奪う。こういうところは本当にトレーナーらしくない。普通のバトルでこれをやったら顰蹙(ひんしゅく)以前に失格になること請け合いだ。

「どこの手先かしらねェがっ……なめたまねしてくれるじゃねえか、ゴローン転がる!」
「こんな狭いとこでそんな技使うんじゃねーっ! スピアー!」

 文字通り転がってくるゴローンに轢(ひ)かれかけたシヴァは横っ飛びに転がった。そのゴローンの後をスピアーが追う。

「バカか、岩・地面タイプに虫・毒タイプだと? 吹き飛ばしてやれ、ゴローン!」

 接近し過ぎたスピアーがゴローンに跳ね飛ばされた。跳躍して避けたシルフィの下を通り過ぎたゴローンは、案の定うまく曲がりきれず部屋の向こうまで転がっていく。スターミーの「バブル光線」はかわされてしまう。「転がる」は転がり続けるほど、速さと勢いが上がっていくのだ。

「扉の前の奴をつぶしちまえ!」

 指示を受けたゴローンは一直線にオーランめがけて転がる。オーランは四人を同時に相手取っていたが、そのバトルの合間、まさにゴローンがぶつかるぎりぎりのタイミングでさっとわきに退いた。一直線にくる相手、しかも中途半端に速度がある相手ほどあしらいやすいものはない。結果、ゴローンは扉にぶつかった。

 なぜか、おかしな音が響いた。

「……なんだこの金属音」

 文字通り金属同士がぶつかった時に響くあの音である。技の「金属音」ではない。気になって視線だけ向けると、へこんだものの、依然そこにあり続ける扉の前、ゴローンは目を回してひっくり返っていた。
 扉がそんなに頑丈でないことは、通った時に確認している。と、言うことは――。

「何した、オーラン?」
「別に。廊下と階段にテイルを詰めているだけだ」

 スターミーとライボルトに忙しそうに指示をする合間、最後に扉を通ったオーランが返した。テイルとは彼のハガネール、つまりオーランは狭い通路にハガネールを、文字通り「詰まらせ」て、誰も通れないように封鎖してしまったらしい。
 うっかり瓶詰にされたハガネールを想像してしまったシヴァは吹き出した。ハガネールの体はダイヤより硬いとよく言われる。そこにまともに突っ込み、逆にダメージを受けてひっくり返ってしまった、というわけだ。

「んなあほな、そんなでたらめな防御力あるか! 第一がんじょうで一発で戦闘不能にはならないんだぞ!」
「ま、スピアーのどくどくでダメージが蓄積していたはずだからな。それもあるんじゃないか?」
「どくどく!?」

 そのためにスピアーをあれほど接近させたのだ。シヴァの手持ちはスピアーとウインディ、どちらもゴローンとは相性が悪い。だったら状態異状に頼るのは定石だ。シルフィが対岩タイプ用に覚えている「地震」なんぞ使ったら自分たちまるごと生き埋めになるのは必至だし。

 驚愕に隙だらけだった男を、背後からそーっと近づいたシルフィが踏んづけた。

「……あんまり遊ぶなよ、シルフィ」

 まじめな仕事なんだからな、とぼやく間に優秀なスピアーはすかさず「いとをはく」で男を拘束する。奥にいた四人はこれで全部だ。オーランは四人倒し、四人を相手にしている。周囲に制約があるのでビデオで見た時のように縦横無尽に、とはいかないようだが、それにしても強い。

「で、お前は高みの見物かい、ラファイル」
「……鍵を開けるのに手間を取ってたら、出る幕も取られただけだ。でも、まあ、こいつの気もおさまらないみたいだし、あの四人はもらおうかな」

 ラファイルが檻を蹴りつけるとその側面は音を立ててはずれた。側面まるごとはずれるとは一見でわからず、鍵穴を見つけるのに少々時間がかかってしまったのである。

「そのハクリューで四人? 大丈夫か?」
「あまり侮るものじゃない。たたきつけるを食らいたくないのならな。――それにハクリューでもない」

 にやりと笑ったラファイルに「んじゃ何、メタモン?」と返しかけた、その時。

 高い声で鳴いたハクリューの体がうちから輝きだした。

「っ、マジかよ……!?」

 驚愕が勝手に言葉を押し出す。その間にも光の中、影はみるみる姿を変え――新たなる身体を露わにする。

 すべてのタイプの中で最強と目されるドラゴンタイプ。その中でも二段進化をするポケモンたちは、最終進化形においてそのうわさを体現する能力を発揮する。
 鋼鉄にも負けぬ硬度をほこる鱗、進化してその体躯こそ縮んだが、その中に秘められた力はむしろ圧縮され、爆発するときを待っている。

 ドラゴンポケモン、カイリュー。

 一般には戦いを好まぬ温和な性格だと伝えられているが、だからと言って無抵抗を潔しとするポケモンは、まず、皆無だ。黒々とした瞳の中には瞋恚(しんい)の炎が燃え、その視線に射すくめられた生き物はもはや生きた心地もしない。

 ラファイルがふ、と微笑んだ。

「――もらうぞ、そこの四人」

 形のいい唇が滑らかに言葉を紡いだと同時、カイリューが檻を飛び出す。

 ……それから後のことは、もはや描写するまでもないだろう。





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