第1話 終点…あれ?

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忘れる前にと打ち出したもの。要するにネタが思いつくまでの暇つぶし。
悪いところがありましたら指摘のほどよろしくお願いします。
「君…明日から来なくていいから…。」
「はい?」

部屋の片隅で係長に肩を叩かれて振り向いた矢先の一言だった。その一言で私の三年間の苦労が脆くも崩落した。何のために私はこのヅラ係長の小言に耐えたのか?なんどこのヅラ係長のヅラがずれそうになったことか…。そんなときどんなに苦労して気づかれずに元の位置に直したか。このヅラから伝えられた事は要約するとリストラ宣告……。周りの目が痛い。私は係長に机、片付けといてね。と止めを刺されて呆然と固まっていたが、ふと我にかえるとふつふつと怒りが込みあがってきて叫んだ。

「馬鹿ヅラ係長!!今までお世話になりました!!!」

そういって私はバンと机を叩いた。




その帰りの…いやこの会社勤め最後の居酒屋。同期に誘われて酒に溺れにきたのだ。もうここについてからかれこれ二時間ぐらいたっている。

「ゆみ~、飲みすぎよ。おじさ~ん!お勘定。」
「まだまだいけるぜ!おやじ~熱燗もう一本!」
「おじさん勘定で!」
「なんだと~ワシの酒が飲めんのかぁ?な~んつって!ぎゃははははは!!」

そんなこんなで千鳥足で同期に駅まで送ってもらったのだがいかんせん一向に前に進まない。進まないどころか逆に遠ざかっている感じがする。横に行ったり前に行ったり……見かねた駅員さんが駆け寄って来てくれたからよかったものの来てくれなかったら終電にまにあわなかったかもしれない。駅員さんにお世話になりながらもやっとこさ電車の座席に座る。

「ねえ、駅員さん独身?そっか~ならこんな女の人はどう?今ならあんな事やこんな事………」

お世話になっておきながら酔いの勢いで誘う。だが駅員さんは風のように消えてしまった。ちえ~と私は呟いた。
さすがに終電にもなると乗る人はあまりいない。そのため私は三つほど空いた座席に横になった。私の降りる駅はどうせ終点の上野だ。寝過ごすなんてことはないだろう。どうせ駅員さんが起こしてくれるし…。そう考えると私はゆっくりと目を閉じた。




「ちょっと起きなって、もう終点だから!」
何だ、もうついたのか。なんか気持ち悪い…
私は体をむくりと起こして大きくあくびをした後、猛烈な吐き気に襲われた。そして…

「ゲェェェェェェ!!」
「ちょ、ああ!俺の毛がぁぁぁぁぁ!!」

きーんと頭に響く獣の雄叫びのような叫び声が聞こえた後私はふと前を向いた。もしかして頭にでもかけてしまったかなと思ったためだ。

「す、すいま……せ…ん?」

目の前にはクリーム色の毛が広がっていた。そこに私の吐瀉物が広がっていてわなわなと震えている。
ひと?じゃない。なにこれ…
そんなことをしているとアナウンスが車内に響いた。

『まもなく…終点、コガネ~コガネ~』

こが…ね?そんな駅が常磐線にあったかということをぼけた頭のなかの思考という名の列車を走らせていると私の上着が引っぺがされた。

「ちょ!」

私は思わず立ち上がった。そこで目にしたのは真っ赤な瞳にねずみみたいな顔、深緑の胴体にくびれがまったくといってもいいほどない胴長な体。そして先程私が吐き出したものがクリーム色のお腹についている。身長は私と同じくらい。
私がジーと眺めているとねずみみたいなやつはキッと睨んでいった。

「何だよ。これはおまえがつけたんだろ!」
「ねずみやろぅぅぅ…私の上着で拭くなあぁぁ…オエップ…ゲェェェ……」

私はまた吐き出した。それを見たねずみのようなやつは明らかにいやな顔をして私から一歩離れ、また私の上着で体を拭き始める。そのとき私の上着からポロッと切符が落ちた。

「……うえの行き?どこだそれ?」

どこだそれ?その言葉に私は疑問を感じた。これは常磐線じゃないのか?それよりも……

「ね、ねずみが喋ったぁぁぁあああ!?」
「ね、ねずみ!?俺はねずみじゃないぞ!?俺はちゃんとしたバクフーンのレンだ!……確かに似てるけど………そういえばお前なんていうポケモンなんだ?見た事がない顔してるけど……」

だんだんと頭がさえてきたぞ。ちょっとクラクラするけど…まず思い出した事。常磐線にこがねと言う駅はないということ。
このねず…違った。レンは人という種族を知らないと来た。あと、ポケモン?あのゲームやらアニメやらの?

「ぽ、ポケモン?ポケモンって架空の生き物じゃないの!?」
「はあ?何いってんのこのご時世に。今時そんなジョークははやらないと思うぞ?」

私のポケモンの情報は小学生のときに買ってもらった『銀』しかやった事がない。それも殿堂入り前に飽きてやめてしまった。……そういえば手持ちに名前をつけてたような…。なんてつけたっけ?

「な、なんだよ。そんなに見つめても何もでねえぞ」

レンの赤い瞳を見ていたら顔をプイッと背けられてしまった。どことなく顔が赤い。そうそう、もう一つ思い出した。バクフーンは私の『銀』での最初の手持ちだったっけ。古い記憶と目の前の新しい光景を照らし合わせてこんな鮮やかな色なのかと思いをはせているとまたもや吐き気が襲ってきた。

「うぷっ」
「はぁ…そのままじゃ家につけないだろ。俺んちに泊まるか?」

その案に私は素直に応じる事にしてレンの深緑のふかふかした背中におぶられながら吐きつつ瞼を閉じる事にした。
う~ん…。微妙……。あと短い。とりあえず一話終了。これ実は電車で寝ぼけて思いついたやつ。酔っ払いってあれでいいのかな?いかんせん酒を飲んだ事がないからわからん。

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