Special Mission #7

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(結構な実力を持ってるトレーナーだ。
ここで会ったのも何かの縁だし、力を借りておいた方がいいだろう。
……誰かの力を借りることは、決して恥なんかじゃないんだから)

ぐっと拳を握りしめ、右腕に装着されたままのファイン・スタイラーを見やる。
ボーマンダの攻撃を受けて墜落した時に破損したかと思ったが、細かな傷が少しついた程度で、機能には影響を与えていない。
地面に激突するのをムックが防いでくれたのだろうし、あの青年がジェイから匿ってくれていたおかげだろう。

(二年前の僕だったら、誰かの力を借りるなんて考えられなかった。自分だけの力でどうにかしようとしてただろうな。
……現地のポケモンの力を借りるのは別としても、一般の人に協力を要請するなんて、たぶん考えなかった)

森に棲むポケモンたちのことは、青年に一任した。
信頼できるかどうかは別にして、この場では信用しても問題ないと判断したためだ。
彼の手持ちポケモンであるルカリオが消火の陣頭指揮を執ってくれていることを考えれば、アカツキが今やるべきことは決まっている。

――ジェイを撃退し、メタモンを保護する。

先ほどは流星群という思いもよらない手段で不覚を取ったが、次はそうはいかない。
初対面とはいえ、あの青年は信用するに足る人物だろう。安心して背中を任せてもいい……根拠などないが、そう思えるのだ。
洞窟から飛び立って程なく、島の上空に差し掛かる。
眼下に望む島の景色を見やり、アカツキは顔をしかめた。

「ひどい……」

あちこちから火の手が上がり、黒々とした煙が立ち昇っている。
ボーマンダの流星群は広範囲に降り注ぎ、爆発と共に炎を巻き起こした。
手付かずの自然が広がっているはずの島は、長年にわたって享受していた平穏を失っていた。
時折爆音が響き、新たな火の手が上がる。

(ジェイは島に上陸してる。騒ぎを起こしながらメタモンを捜してるってことか……!!)

アカツキは爪が食い込むほどに拳を強く握りしめ、奥歯を噛みしめた。
自分があの時、不覚を取っていなければ……ジェイを止めていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。
どうしようもない後悔が襲いかかってくるが、アカツキは頭を振って、気持ちを切り替えた。

(まだ間に合う。
……ジェイはまだこの島にいるんだ。メタモンが捕獲されたとしても、奪い返すチャンスは必ずある!!)

今は行動を起こすべき時だ。
あれこれ考えている暇があったら、ジェイを止めることを最優先に行動しなければならない。
彼女が単独で行動している以上、そう無茶なことはできないはずだが、凄腕のポケモンハンターの実力を侮ることはできない。
そうなると、あの青年と連携してジェイと対決するのが一番かもしれない……が、いくら実力者とはいえ、一般人をジェイとの対決に巻き込むわけにはいかない。
彼には森の消火とポケモンたちの保護だけを依頼したのだ。
だったら、レンジャーユニオンに援軍を要請して、人海戦術を採るのも手か……?
どちらにしろ、まずは自分でできることをしてからだ。
一人で本当に無理だと分かったら、その時に援軍を要請すればいい。
アカツキは考えをまとめると、ムックに言葉を投げかけた。

「ムック。ボーマンダの気配、追えるかい?」
「ムクホーっ!!」

ムックは当然と言わんばかりに嘶くと、すぐさまボーマンダの気配を捉え、その場所へと移動を開始した。
アカツキの読みどおり、ジェイはボーマンダと共に島に上陸し、火事を起こしながらメタモンを捜している。
研究者たちが、メタモンが変身したレックウザやルギアに追い返されたことを考えれば、メタモンは島の自然を荒らされないよう、様々なポケモンに変身して人間を追い返そうとしているのだろう。
だとすれば、ジェイが相手でも問答無用で攻撃を仕掛けてくる可能性がある。

(ジェイは、自分に攻撃を仕掛けてくるポケモンがメタモンだって確信してるんだ。
だから、派手に騒ぎを起こしてる……)

島に棲むポケモンがいくら強くても、歴戦のポケモントレーナーでもあるジェイのボーマンダには到底及ばない。
だが、メタモンだけは違う。
変身した相手の強さをある程度コピーし、技も扱うことができる。
レックウザやルギアといった伝説のポケモンに変身できれば、ボーマンダの上を行く強さを体現することも可能だろう。
それだけのポケモンに変身できるということは、裏を返せばメタモンがバトルに非常に慣れているということでもあるのだ。
ジェイとメタモン。
両者の考え方から察するに、両者が激突するようなことがあれば、この島がどうなってしまうかも分からない。

(ジェイを止めるのはもちろん大事だけど、それよりも先にメタモンを保護して、できるだけ早くこの島を離れる。
そうじゃなきゃ、被害が広がる一方だ)

当初の想定とは明らかに現状が異なってしまっているが、その変化に見合うだけの考えを持たなければならないのだろう。
ムックが一直線に向かっているのは、島の北東部。
先ほどから立て続けに爆発が起こっている一画だ。
現場に近づくにつれて火事の熱気が強くなるが、酷暑地でのミッションには慣れているため、我慢できない暑さでもない。
爆発が起こっている場所から少し離れた地点に降り立ち、アカツキはムックと共に爆音轟く場所へと向かった。
すでにポケモンたちは避難を済ませているのか、周囲にポケモンたちの気配はなかった。
青年のルカリオがポケモンたちに避難を促してくれたおかげだろうか。

(周囲に気兼ねなく行動できるのはありがたいけど……)

周囲にポケモンがいなければ、ジェイに人質にされる心配がないということだ。
彼女は目的達成のためならば手段を選ばない。
ポケモンたちを人質にすることも十分に考えられるし、もっと卑怯なことだって平然とやってのける。
ただでさえポケモントレーナーとしての実力が優れている上に、冷徹・非情・悪辣な手段を用いることから、レンジャーユニオンでは第一級要注意人物――つまり真っ先に逮捕すべき人物とされているのだ。

(だけど、あまり時間はかけられない。頭が痛くなってきたな……)

ロクに休みもせずに行動を開始したものだから、頭がズキズキと痛みだしてきたのだ。
青年は応急処置として、傷口の消毒を行い、薬を塗ってくれた上で包帯を巻いてくれたのだが、それは本当に応急的な処置でしかない。
本来なら病院に直行して、治療を含めた検査を受けるべきなのだろうが、そうなると代わりのレンジャーを寄越してもらわなくてはならず、時間的なロスが大きすぎる。
だったら、多少無理をしてでも――健康を害する結果になろうとも――ミッションを遂行するべきだ。
どこまでの状態なら引き返すべきか……といった判断は往々にして求められるものだが、今回は無理をしてでもミッションを継続すべきと判断した。
なにしろ、今回の敵は最凶のポケモンハンター・ジェイだ。わずかな時間のロスが、致命的な結果を招くことになりかねない。
などと、あれこれ考えながら走っていると、視界が拓けた。
森の緑が炎の赤に取って代わり、赤々と燃え盛る炎の前に、ボーマンダとジェイの姿があった。

「ポケモンハンター・ジェイ!!」

相手の姿を認めるなり、アカツキは声を張り上げた。
少しでも彼女の注意をこちらに引きつけなければならない――が、大声を出したためにさらに頭に突き刺さるような痛みが走った。
痛みに表情を曇らせながらも、アカツキはジェイを睨みつけた。

「…………助からないと思っていたが、まさかここまでやってくるとは驚いた」

ジェイは抑揚のない声で言いながら、ゆっくりと振り向いてきた。
ボーマンダはムックが少し離れた場所に降り立つ前から、彼らの存在を感知していたため、最初からこちらを向いていた。
ジェイに何かしらのアクションを起こしているのかと思ったが、そうでもなかったらしい。
燃え盛る炎を背に、ジェイは淡々とした表情を浮かべていた。
ドラゴンクローを頭に受け、さらに真下は火事の一画。
そんな状態で墜落して命を取り留めるだけでも十分に奇跡的だというのに、しっかり意識を取り戻して、またしても邪魔をしにやってきたのだ。
助からないと思っていたのは本心だが、だからといって邪魔をしに来ないとも限らない……一つの可能性として、ジェイはアカツキがここまでやってくることを予見していた。
とはいえ、彼女の行動に変わりなどあるはずもないのだが。

「さすがはトップレンジャー候補だけのことはある、と褒めておこう。
だが、貴様は来るのが遅すぎたな」
「なに……!? まさか……!!」

ジェイの言葉に、アカツキは息を呑んだ。
あれからまだ三十分しか経っていないのに、状況は一変したと言うのか……?
悪い予感ほどよく当たるとは言ったもので、ジェイの前に音もなくポケモンが現れた。
音もなく――というのは比喩ではなく、何もない場所に突然現れたのだ。
ボーマンダよりもなお大きく、隆々とした身体つきをしたポケモン……両肩に当たる部分には真珠を思わせる薄いピンクの球がついている。

「パルキア……!? いや、メタモンが変身した姿か……!!」
「ご明察。どのようなポケモンにでも変身できる……とは聞いていたが、実際、半信半疑だった。
だが、まさか本当に伝説のポケモンにまで変身できるとは思わなかった」

目の前に突如立ちふさがったポケモン――パルキアに扮したメタモンを見やり、アカツキは焦りを隠せなかった。
パルキアは北方のシンオウ地方に伝説として伝わっているポケモンで、空間を司るとされている。
無論、伝説として伝わっているポケモンが実在するかどうかという議論は確かにあるのだが、メタモンが扮しているとはいえ、実際に変身できるところからすると、実在はしているのだろう。

(でも、おかしい……パルキアがこんなところまで来るはずがない。
なのに、どうしてメタモンは変身できる……!?)

パルキアが実在しているか否かは別にしても、この場にいないポケモンに変身できるはずがない。
少なくとも、一般常識のレベルからすれば、アカツキの考えていることは間違いではなかった。
目の前にいるのがパルキア本人でないことは分かっていても……メタモンであると分かっていても、パルキアの能力の幾許かを行使できるとなると、まともにぶつかるのは避けたい。
いや、それ以前に……

(ジェイの言うことを聞いている……ゲットされたわけではないだろうけど、どうして?)

島にやってきた人間を追い払うという点では、相手がアカツキだろうとジェイだろうと変わらないはずだ。
しかし、目の前の相手はアカツキにだけ意識を向けてきている。背後に立つジェイには、何も向けていない。
彼女がクライアントから依頼を受けてやってきたならば、ゲットという形は基本的に取らない。
そう考えれば、ゲットされているわけではないのだろうが……
どうしたものかと、焦りを踏み消すように思案をめぐらせていると、ジェイがメタモンに対して指示を出した。

「メタモン、そこのポケモンレンジャーを排除しろ。手段は貴様に任せる」
「……!!」

少なくとも、彼女の指示を聞く状態にはある。
この三十分間で一体、彼女は何をしたのか……?
解決の糸口は、ボーマンダの攻撃を食らって墜落してからここに来るまでの間に、何が起こったのかを知ることだ。
だが、今はメタモンの攻撃をどう凌ぐかに神経を集中させなければならないだろう。
メタモンとボーマンダが波状攻撃を仕掛けてきたら、切り抜けるのは難しい。
……と、不意にメタモンの双眸が妖しく輝いた。

「……? か、身体が……」

直後、アカツキは身体がまったく動かせない状態であることに気づいた。
身体を捩ったり、首を動かしてみたりしたものの、金縛りに遭ったかのように一ミリも動かせなかった。

「ムクホーっ!!」

どうやらムックも同じ状態らしく、しきりに嘶きながらもがいている。

(パルキアの力を少しでも使いこなしてるってことか……!!)

パルキアは空間を司ると言われているポケモンだ。
空間になんらかの干渉をして、こちらの動きを空間的に封じることができたとしても不思議はない……が、メタモンが多少その力を使いこなせるとはいえ、相当にバトル慣れしていなければ話にもならないはずだ。
島にやってきた人間を追い払うべく様々なポケモンに変身して攻撃を仕掛けることを続けるうちに、メタモンの能力(自前の能力は言うに及ばず、変身したポケモンの技や特性)自体が鍛えられていったのだろう。
普通に考えれば非常識極まりないポケモンなのだが、目の前にその非常識の塊が存在する以上、否定したところで何の意味もない。

(まずいな、このままじゃ……)

身動きが取れない状態では、次の攻撃を避けることもできない。
メタモンが本気でこちらを排除しようとしているのか……その判断だけでもつけばいいのだが、見た限り、メタモンは本気のようだ。
しかし、メタモンはパルキアの姿のまま次の攻撃を仕掛けてはこなかった。
その姿がぐにゃりと歪んだかと思えば、瞬く間にドククラゲへと変身を遂げた。

(ドククラゲ……!?)

パルキアとしての力が変身によって途切れたため、金縛り状態から脱することができたものの、メタモンはすぐさまドククラゲの特徴である80本の触手を一斉に伸ばしてきた。
ドククラゲは水中でこそ機動力を発揮できるポケモンだが、触手を伸ばす分には陸上、空中と場所を選ばない。

「ムック!! ……っ!!」

すぐさまムックに声をかけ、その背中に飛び乗って触手の範囲から逃れようとしたが、間に合わなかった。
数本の触手が瞬く間にアカツキの身体を絡め取ってしまったのだ。
他の数本はその脇を通り過ぎ、慌てて空へ飛び上がろうとしていたムックを捉えた。

「く……ぐぅ……っ」

身体に巻きついた触手が万力のように身体を締め上げていく。
手足が完全に触手に巻きつかれて身動きが取れず、アカツキは息苦しさと締め付けられる痛みに顔をゆがめた。
その様子を満足げな表情で、口元に酷薄な笑みなど浮かべて見やりながら、ジェイが口を開いた。

「変身の速度にパワー……非常識もいいところだろう?
クライアントの依頼がなければ、私のモノにしてやりたかったところだ」
「…………」

やはり、ジェイはクライアントの依頼で動いている。
つまり、その依頼がある限りは自分のものにする気はない……モンスターボールによるゲットは行わないということだ。
だったら、メタモンはどうして彼女の言うことに従っているのか……?
脳裏に浮かんだ疑問を、痛みが侵食する。

(まずい、このままじゃ……)

このまま放っておけば、ジェイの言葉通り『排除』されてしまうだろう。
あの青年が助けに来てくれればいいのだろうが、それを自分から望んではいけないのだ。
しかし、それ以外に助かる方法がないのも事実。
指一本動かせない状態では助けも呼べないし、仮に動かせたとしても息苦しさで声が出ない。
ドククラゲに変身することを選んだのは恐らくメタモン。
ジェイはアカツキを排除しろと指示しただけで、それ以上のことはメタモンに任せている。
息苦しさに意識が朦朧としてくる中、アカツキは眼球を動かして、周囲の様子を探った。
もしかしたら、何か希望の星が見えてくるかもしれない。
だが、目に付いたのは近くの木の枝に留まっているネイティだけ。

(ネイティ……?
そういえば、あの時も……)

ダークライに変身したメタモンが現れた時も、その直前にネイティが木の枝に留まってこちらを見ていた。
今は……?
あの時のネイティと同一の個体であるかは断定できないが、偶然とも思えない。
なにしろ、屈強なボーマンダが近くにいるのだ。
『威嚇』の特性も相まって、並大抵のポケモンなら尻尾を巻いて逃げ出すに決まっている。

(ジェイは……あのネイティに気づいてない……?
ボーマンダは気づいてて無視してるように見える……)

ネイティの肝が据わっているだけなのかとも思ったが、その割にジェイとボーマンダはそのネイティに対応していない。
ジェイは気づいていないように見えるし、ボーマンダは気づいていても無視している(脅威と感じていない)。
この事実が何を物語るのか……?
ジェイが冥土の土産と言わんばかりにアカツキにこんなことを言った。

「私が連れてきたポケモンが、このボーマンダだけだと思ったか?
あいにくだが、私には他に手持ちのポケモンがいるのだ。
連中に暴れさせれば、混乱はさらに広がる……メタモンのあぶり出しには成功したが、思ったほどの混乱は起こらなかった。
メタモン以外にも優れた統率力を持つポケモンがこの島にはいるようだな」
「…………?」

何か引っかかる。
朦朧とする意識の中、アカツキはより大きな疑問を抱いた。
肉をつぶし、骨を砕かんばかりに締め付けられる痛みは激痛の域に達しているが、そんなことが気にならないような、大きな疑問。

(まさか、ジェイはあの人の存在に気づいていない……?)

ルカリオを使って、島のポケモンたちを避難させている青年の存在に、ジェイは気づいていないのではないか……?
確証はないが、彼女の口ぶりから察すると、優秀なポケモンが混乱を収めるのに躍起になっているという風に聴こえるのだ。

「私はメタモンにこう言った。
島のポケモンたちの身の安全を保障してほしければ、私と共に来い……と」
「なっ……!!」

続くジェイの言葉に、アカツキはすべてを理解した。
ジェイは手持ちのポケモンたちを島の各地で暴れさせることでメタモンをあぶり出すと同時に、メタモンに対しては島のポケモンたちを人質に取っているとアピールしていたのだ。
実際、彼女の手持ちのポケモンなら、それくらいのことはやってのけるだろう。
メタモンはジェイに島のポケモンたちを人質に取られていたからこそ、彼女の言葉に従うしかなかった。
アカツキがボーマンダの攻撃を受けて墜落し、ここにやってくるまでの三十分弱の間で、そこまでのことをしていたのだ。
――否。上陸する前に、手持ちのポケモンたちを放していた……

(思っていた以上に、ジェイは行動を起こしてた。僕はそれを見抜けなかったんだ……)

まだ上陸していないから大丈夫だと思っていた。
ジェイより先に来ていると勘違いしていたのだ。
さすがは狡猾で、指名手配を受けて逃げ回りながらも仕事を遂行している凄腕のポケモンハンターだけのことはある。
本格的に事を起こす前に、水面下で下準備を進めておくことを忘れない……敵でなければ、その見事な手腕を褒め称えたいくらいだ。
アカツキの苦悶の表情を見やり、彼がそのように考えていることが手に取るように分かったのか、ジェイは口元の笑みを深めた。

「トップレンジャーでない者にしては、貴様はなかなか歯ごたえのある相手だった。
レンジャーとしてもう少し成長していたなら……もっと面白いことになっていたかもしれんな。
……悪いが、貴様はここまでだ。呪うなら自身の運の悪さを……」
「がぉぉっ!!」
「……!?」

言葉を遮って、ボーマンダが咆え――直後に轟音。
ジェイはハッとした顔でボーマンダを見やり、彼(ジェイのボーマンダは♂である)が真横に現れたルカリオを睨みつけているのを認めた。
ボーマンダの声がなければ、まず気づかなかっただろう。
そして、ボーマンダが火炎放射を放っていなければ、ルカリオの放った波導弾がジェイを直撃していたことも。

(一体何が……ルカリオ……? まさか……!!)

アカツキはジェイが向いている方に顔を向けて、ボーマンダとルカリオが対峙しているのを認めた。
ボーマンダに対して敵意をむき出しにしているルカリオだが、その佇まいからして、野生のポケモンではなさそうだ。
……となると、考えられる可能性はただ一つ。

(あの人のルカリオ……確か、名前は……)

朦朧としていた意識が浮上し、同時に激痛が全身を駆け巡るのを感じて、アカツキは思わず身を捩った。
だが、事態が思わぬ方向へ転がり始めたことは理解できた。
先ほどまで最悪と言っていいような状況の中にいたのだ、これ以上最悪になるはずがない。
鋭い視線をボーマンダに注いでいるルカリオの名前――確か、青年が言っていた――を思い出そうとしていると、不意に青年の声が聴こえてきた。

「コワいポケモンハンターがいるって聞いたけど、今のセリフ、三流以下だよね~」
「…………!?」

おちょくるような、からかうような。
この場の緊張感には似つかわしくない――しかし、どこか安心感を与える声音。
ルカリオの近くの茂みから、あの青年とフローゼル(確か、ネイトと呼ばれていたか)が現れた。






To Be Continued...

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