この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
<SIDE ピカチュウ>
アンディとサーナイトさんを引き連れ、今までで一番異様な雰囲気のダンジョンへ足を踏み入れる。
ポリゴン/アンディ
「何だか僕、今日は一際緊張してるなぁ・・・」
ピカチュウ/廉太郎
「俺もだ・・・。 世界の運命を賭けた、最後の戦いが始まると思うと・・・」
そんな言葉を交わしてから間もなくの事。
目の前に大勢の敵が現れ、行く手をふさぐ。
ヘルガーの衛兵たち
「・・・一斉に火炎放射・・・!」
「ラジャー!」
サーナイト
「マジカルシャイン・・・!」
ピカチュウ/廉太郎
「瓦割り・・・!」
ヘルガーの衛兵たち
「ぐわあっ・・・!」
「おのれぇっ・・・!」
4、5匹ほどの敵兵を蹴散らし、急ぎ目のペースでダンジョンを奥へと向かう。
サーナイト
「・・・今のうちに奥へ向かいましょう!」
ピカチュウ/廉太郎
「はい・・・!」
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それから、狭い通路をしばらく進んでいると・・・。
ポリゴン2の衛兵
「・・・全軍、シャドーボール・・・!」
今度は3匹の敵兵たちが道をふさぐ。
ポリゴン/アンディ
「ここは僕が前に出る! ・・・10万ボルト!」
アンディの10万ボルトが敵を阻むとともに、俺とサーナイトさんはその背後へと飛び上がる。
サーナイト
「サイコキネシス・・・!」
ピカチュウ/廉太郎
「瓦割り・・・!」
それから息を合わせ、それぞれの技を勢いよく敵に叩きこんだ。
ポリゴン2の衛兵たち
「・・・・・・・・!」
そして俺たちは、足並みをそろえ素早くその場を後にしようとするのだが・・・。
ポリゴン2の衛兵たち
「・・・敵前方、全軍冷凍ビーム!」
サーナイト
「・・・リフレクター!!」
サーナイトさんは技を片手で受け切るのと同時に飛び上がった。
サーナイト
「・・・続けてマジカルシャイン・・・!!」
ポリゴン2の衛兵たち
「・・・・・・・・!」
敵兵たちがマジカルシャインを受けてばたばたと倒れていく。
それを尻目に、俺たちはダンジョンの更に奥へと急いだ。
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こうして俺たちは、やっとの想いで最奥部へと辿り着く。
そこにはヒスイバクフーンとドータクンが待ち構えていた。
ヒスイバクフーン
「・・・よくここまで来てくれた、世界樹の記憶を継ぐ者よ」
ピカチュウ/廉太郎
「バクフーン・・・! ・・・とにかく早く決着を付けましょう」
ヒスイバクフーン
「解っているさ。 ・・・百鬼夜行!」
ピカチュウ/廉太郎
「雷パンチ・・・!」
俺がヒスイバクフーンの懐へ飛び込むのとほぼ同じ頃。
ドータクン
「・・・親方の邪魔だけはさせねぇぜ、サイコショック!」
サーナイト
「・・・・・・・・!」
ポリゴン/アンディ
「危ないっ・・・! ・・・シャドーボール・・・!」
サーナイト
「ハイパーボイス・・・!」
3匹の技が激しくぶつかり合って消える。
ヒスイバクフーン
「シャドークロー・・・!」
ピカチュウ/廉太郎
「アイアンテール・・・!」
俺たち2匹もお互いに、激しい衝撃を受けて吹き飛ばされた。
ピカチュウ/廉太郎
「・・・ところで、どうして世界を滅ぼそうだなんて考えたんだ・・・!」
ヒスイバクフーン
「・・・この世の全ての絶望を断ち切る為だ」
ピカチュウ/廉太郎
「全ての、絶望を・・・?」
ヒスイバクフーン
「・・・ああ」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・それだけで、本当に断ち切れるって言うんですか?」
ヒスイバクフーン
「・・・そう信じて今までやって来たんだ」
一方その頃。
ドータクン
「ステルスロック・・・!」
ドータクンは四方八方にステルスロックを飛ばし、アンディとサーナイトさんを妨害しようとする。
サーナイト
「ハイパーボイス・・・!」
サーナイトさんの技が飛び交う岩を一気に砕いていく。
ポリゴン/アンディ
「もう一度シャドーボール・・・!」
ドータクン
「ちっ・・・!」
ピカチュウ/廉太郎
「雷パンチ・・・!」
ヒスイバクフーン
「シャドークロー・・・!」
それから自ら技を叩き込んだり、敵の技を避けたりするのを、互いに必死になって繰り返していた。
ピカチュウ/廉太郎
「・・・・・・・・!」
ヒスイバクフーン
「・・・・・・・・!」
しかし、数分後。
ヒスイバクフーン
「・・・百鬼夜行・・・!!」
いつになく苛烈さの感じられる技だ。
俺の身体は一瞬のうちに吹き飛ばされ、地面に叩きつけられてしまった。
ポリゴン/アンディ
「お兄ちゃん・・・!」
サーナイト
「ピカチュウさん・・・!」
ヒスイバクフーンはその後も、容赦なく俺に迫る。
ヒスイバクフーン
「・・・立ち上がれないというのか」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・全然そんな事は・・・!」
ヒスイバクフーン
「・・・もたもたと戦うより、とにかく早くけりを付けるぞ」
俺は頷きながら再び立ち上がる。
ピカチュウ/廉太郎
「もう一度雷パンチ・・・!」
ヒスイバクフーン
「・・・・・・・・!」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・未来の為なら、俺は何度だって立ち上がれます・・・!」
ヒスイバクフーン
「何が『未来の為なら』だ・・・!」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・未来も希望も諦めた奴に、自分の大事な未来まで奪わせてたまるか・・・!」
ヒスイバクフーン
「ぐっ・・・!」
一方その頃。
サーナイト
「・・・もう一度ハイパーボイス・・・!」
ポリゴン/アンディ
「・・・シャドーボール!」
ドータクン
「・・・・・・・・!」
アンディとサーナイトさんもまた、息を切らしながら最後の一撃を叩き込む。
ドータクン
「気を確かに持て、親方・・・!」
ヒスイバクフーン
「・・・・・・・・」
ヒスイバクフーンは地面へと倒れ伏せる。
ヒスイバクフーン
「諦めた、か・・・
・・・諦めなかったとして、わたしの未来には一体何が見えていただろうか・・・」
ドータクン
「親方・・・」
それから間もなく、彼の身体はドータクンに抱き抱えられる。
ヒスイバクフーン
「・・・ひとまずこれで充分だ。
・・・ようやく、気が楽になったな・・・」
ドータクン
「気を確かにっつってんだろ、親方・・・!」
ドータクンはこのまま、どこかへと姿を眩ましてしまった。
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その後、俺たちはやっとの想いで世界樹の目の前まで到達した。
サーナイト
「・・・早いところ使命を完遂しましょう」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・はい」
俺とサーナイトさんが、ほんの一瞬だけアンディに背を向けた時の事。
ポリゴン/アンディ
「お兄ちゃん、サーナイトさん・・・!」
ピカチュウ/廉太郎
「アンディ・・・?」
ポリゴン/アンディ
「一緒に冒険した事、ずっと忘れないからね」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・ああ」
サーナイト
「・・・ええ」
俺たち2匹は再び振り向くと、ゆっくりと世界樹の扉の方へ歩きだすのだった。
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そして、世界樹の闇を浄化し終わってからの事。
ピカチュウ/廉太郎
「これでようやく世界を救えた、のか・・・?」
サーナイト
「その通りです。 お力添えいただき、本当にありがとうございました」
サーナイトさんの姿が、遠くに消えゆく気がする。
サーナイト
「・・・あちらの世界に戻っても、どうかお元気でいて下さいね」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・ええ」
こうして彼女に別れを告げてから、間もなくの事。
自分自身もまた、虚空に身体を溶かすかのような感覚を覚える。
・・・これで、この世界ともお別れなんだなぁ・・・。
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そして、人間世界へと帰還してからの事。
俺はあの時のように、ぼんやりと時を過ごしている。
・・・俺だけが知る世界のみんなの、日々の安らぎを願いつつ。
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【THE END】
『ポケダン外伝 重なり合う運命』の本編は、これにて完結となります。
全49話に渡って本作をお読み頂き、本当にありがとうございました!